三島由紀夫 金閣寺の詳細なあらすじ:難解な柏木も読み解く | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

三島由紀夫 金閣寺の詳細なあらすじ 難解な柏木も読み解く

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも、
早いもので第43回。
「あらすじ」暴露サービスとしても
第20弾を突破!

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今回は文学史上に燦然と輝く三島由紀夫の
名作『金閣寺』(1956)に挑戦です。


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「ごく簡単なあらすじ」をお届けした
前回の予告通り、今回は「やや詳しい
あらすじ」の提供です(^^)у
👉「ごく簡単なあらすじ」と「名言」を
含む部分の考察・解説はこちらで
どうぞ。

金閣寺(三島由紀夫)15の名言⦅なぜ金閣(=美)を焼かねばならぬ?⦆

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さてこの小説は、1950年の7月に
実際に勃発した金閣焼失事件に取材し、
事件から6年後に発表されたもの。

放火犯として逮捕された青年僧が
動機として「美に対する反感」云々の
言葉を口にしたことが発端となって
いるように思われるんですね。


放火へのこの「美」的な動機を三島流に
大胆に解釈し、先行する自伝的長編小説
『仮面の告白』(1949)にも通じるきわめて
独特の三島ワールドを構築した作品が
この『金閣寺』…と見られています。

やや詳しいあらすじ

では、参りましょう。

原作は全10章からなっていますが、
私の勝手な判断で各章を「起承転結」の
4部に割り振っています。

🔥【起】(第一~二章)

舞鶴の北東、成生岬の貧しい寺の住職の
子に生まれた「私」(溝口)は、
金閣ほど美しいものは地上にないと
聞かされて育ち、いつかまだ見ぬ金閣を
「美」の象徴のように幻視する
ようになっていた。

体も弱く、生来の吃音もあって
自己表現に困難を抱え、学校で
嘲笑されて極度に内向的となった
「私」には「人に理解されないと
いうことが唯一の矜(ほこ)りに
なっていた」。

      


美しい娘、有為子に「吃りのくせに」
と嘲罵されて以来、彼女の死をねがい
つづけ、すると、この呪いが成就して
彼女が死ぬ(叫び)ということがあり、
「爾来私は、人を呪うということに
確信」を抱く。


死期を感じたらしい病弱の父は、
中学生の「私」を金閣寺(鹿苑寺)へ
連れて行き、かつての僧堂の友である
住職に私を預ける手はずを決める。

その際はじめて見た現物の金閣には、
「美とはこんなに美しくないもの
だろうか」と失望する(iДi)。


父が死に、徒弟として金閣寺に
住み込んだ「私」は、同輩、鶴川の
自分の吃音をからかったりしない
「やさしさ」にふれ、友人となる。

折しも戦況は不利に傾き、「金閣も
空襲の火で焼き亡ぼされる」という
考えが生まれてから、金閣は再び
悲劇的な美しさを増す。

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戦争末期のある日、「私」は鶴川と
南禅寺を訪れ、天授庵の茶室で
若い陸軍士官に茶を供する美しい女が、
自身の乳房から乳を鶯(うぐいす)色の
茶に注ぐのを目撃し(◎◎;)、
「よみがえった有為子その人だ」と思う。

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🔥【承】(第三~六章)

父の一周忌に金閣寺に来た母は、生家の
寺を処分したといい、勉強に励んで
住職の後継者になるよう「野心」を
吹き込む。

が、「私」はその母の昔の行為
──「私」が13歳のある夜、同じ蚊帳の
中で父と子も寝ているそばで、寄宿
中の縁者の男と交わったこと
──
を「私」は恕(ゆる)していなかった。


戦争が終わり「私と金閣とが同じ世界に
住んでいる」という夢想は崩れ、
逆に「金閣が未来永劫存在する」という
呪わしい「永遠」が権利を主張する。

ある雪の日、金閣を案内した米兵に、
倒れている娼婦の腹を踏むよう
命じられ、踏むと、その異和感は
「二度目には迸る喜び」に変わる。


老師(住職)に見込まれたらしい
「私」は大谷大学(仏教系)に入学し、
そこで、内翻足の障害のために歩行の
不自由な級友、柏木に自分の吃音を
重ねて親近感を抱き、接近する。

  

が、柏木は「私」の内心をすべて
見抜くかのように「吃れ!吃れ!」と
叱咤さえする。

彼は高度の学識と背徳的な狡知を
備えた悪魔的な男で(ドクロ)、その障害を
逆手にとって高い階層の女を
籠絡してさえいた。

「私」の「陽画」であった鶴川と全く
対照的なこの「陰画」的人物との
交際から「私」は多くの刺激を受ける。


童貞であった「私」は、柏木に紹介
された女と行為に及ぶが、今一歩の
ところで、金閣の幻影(「美」)が
立ち現れて「人生」の進展を阻む。

     


鶴川が事故死し、再び柏木により
機会を与えられた女は、いつか天授庵の
茶室で母乳を垂らしたあの美しい女で、
「あの通りにして見せたげる」という
のだが、目の前に出されたその乳房は
みるみる「金閣に変貌」する。

このように「人生」を阻む
「美」=「金閣」を「私」は憎み、
「いつかきっとお前を支配してやる」
と叫ぶ。

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🔥【転】(第七~八章)

正月のある日、雑踏で女(芸妓)を
連れて歩く老師にたまたま出くわし、
「馬鹿者(ばかもん)! わしを
つける気か」と叱咤される。

その後、釈明の機会も与えられないまま
放置され、そのことに耐えられなく
なった「私」は、やがて「老師の憎悪の
顔をはっきりつかみたい」という欲求の
虜となり、老師の愛人の写真を、
老師が読む朝刊にはさんでおく。

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が、写真は無言で「私」の机の抽斗
(ひきだし)に戻され、耐えがたさは
累積する。

学業も振るわず、大学も休みがちに
なって、11月には大学からの注意が
届き、老師は「お前をゆくゆくは
後継に」と思っていたが、もうその
気はないと通告する。
👉金閣寺の住職ともあろうお方が
芸妓遊びなんてまさか…
と思いました?

アハハ、そんなのちっとも
驚くようなことじゃないんですよ。

詳しくはこの本で。
  

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出奔を決意した「私」は柏木に借金を
申し込み、「何から遁(のが)れ
たいんだ」と訊かれると、老師も
含めたすべての「無力」からだと答え、
「金閣も無力か」の問いには、
「無力じゃない。
しかし凡ての無力の根源なんだ」。


出奔し、舞鶴湾岸の由良で荒れる海を
眺めるうち、それまでになかった想念が
生まれて力を増し、「私」を包む。
──「金閣を焼かねばならぬ」。

    

由良の宿で不審に思われた「私」は
警官に保護され、金閣寺に戻される。

今後こういうことがあったら
「もう寺には置かれんから」と老師に
告げられると言質をとった気になり、
決行を急ごうと思う。


老師が代弁するという金を受け取りに
来た柏木は、鶴川から死の直前に
届いた手紙を「私」に見せるが、
そこには、事故死とされた彼の死が
実は失恋の絡む自殺であること、
また鶴川が生来の「暗い心」を隠して
生きていたことが明かされていた。

「私」が衝撃を受けていると見た柏木は
「君の中で何かが壊れたろう」、
「この世界を変貌させるのは認識だ」
と説くが、「私」はこれに対し、
「世界を変貌させるのは行為なんだ」
と反駁する。

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🔥【結】(第九~十章)

老師から渡された学費で、「私」は
五番町の遊廓に行き、ついに「快感」を
味わうが、味わっているのが自分だとは
信じられず、「あらゆるものから
置き去りにされた」感じに襲われる。

錠前なしで金閣に入り込む方法を知り、
準備を整えた「私」は、
「万一あるべき死の支度」に
刃物と薬(カルモチン)を買う。

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7月1日の夜、老師と父の旧友で、
福井県から上洛して金閣寺を訪れた
禅海和尚と話す機会をもつ。

「私を見抜いてください」と言うと、
「見抜く必要はない。みんなお前の
面上にあらわれておる」との答えで、
「私」は「残る隈(くま)なく理解
された」と感じ、行動の勇気が
湧き立つ。


2日の午前1時から「幸福に充たされ
て」:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
計画を実行に移す。

あとは点火するのみ、というところで
「私がその夢を完全に生きた以上、
この上行為する必要があるだろうか」、
「行為」は今や「一種の剰余物」では
ないかともと考えるが、
『臨済録』の「仏に逢うては仏を殺し」
云々を想起することで全身に力があふれる。

「徒爾(とじ)であるから、
私はやるべきであった」。

   

火がつくと、「この火に包まれて究竟頂
(くっきょうちょう。金閣最上階の
第三層部分)
で死のう」という考えが生じ、
扉をあけようとするが、どうしても
開かない。

「拒まれているという確実な意識」が
生まれたとき、「私」は階を駆け下りて
戸外へ駆け出し((((((ノ゚⊿゚)ノ
左大文字山の頂きに達する。

火の粉の舞う夜空を膝を組んで眺めて
いた「私」は、やがて煙草を吸い、
ひと仕事を終えて一服する人のように、
「生きよう」と思う。

感想文、どう書く?

ハイ、お疲れ様でした
(書く方も疲れましたよ~;^^💦)。

これでもう、よくわかりましたよね。

え? やっぱりよくわからん?

うーん( ̄ヘ ̄)、それでは、本文全体を
読み通してもらうしかありませんね。

え? それはしんどくていやだ?
全文は読まないで感想文を書きたい?

それはかなりの離れ業ですが;^^💦、
まあ、どうしてもといわれるなら、
方法がないわけではありません。

   

上記の「やや詳しいあらすじ」のうち
自分の気になったところだけ、
本文に当たって、何か書いて
いけばいいんですよ。


たとえば?

そうですねえ、登場人物で
魅力的なのは誰でした?

私なら、ダントツで柏木ですね。

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👿 “悪友”柏木の魅力

共感する人は、この人の個性について
考えてみてはどうでしょう。

よくいわれるのは、
「メフィストフェレス」的人物ということ。
👉これについてはこちらの
記事を参照してください。

ゲーテ ファウストのあらすじ:名言「時よ止まれ」の意味は?

       


またこれを障害者の問題と絡めたら、
ぐっと現代的になって面白いものが
書けるんじゃないでしょうか。


それから、上記「あらすじ」では省略
しましたが、禅の有名な公案
「南泉斬猫」をめぐって、金閣寺の
老師の説くのとまったく異なる解釈を
柏木は展開します。

南泉が斬った猫は、老師のいう「妄想妄念の
根源」などではなく、「美の塊り」であり、
かつその「美」は、痛むから抜き取って
みれば「こんなものだったのか?」
と思う「虫歯」のようなものだ……
と主張するのです。


そういった個々のエピソードに
目をつけて考察するのも一法でしょう。
👉それで行く場合は、ぜひ
こちらの記事をご参照ください。

金閣寺(三島由紀夫)で感想文【2000字の例文】猫を斬る意味は?

       


『金閣寺』で大きく花開いた、妖しく
アブナイ三島ワールドの先鞭をつけた
のが『仮面の告白』『禁色』などの
LGBT文学。
👉それについてはこちらで。

三島由紀夫 仮面の告白のあらすじ:LGBT文学の先駆作を解説

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        グイド・レーニ画「聖セバスチャンの殉教」(部分) 


また三島文学のなかでは難解度が低く
エンターテインメントに近い作品
としては『潮騒』とか『命売ります』
とかもあります。

👉それらについてはこちらで。

三島由紀夫 潮騒のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説

三島由紀夫 命売ります【解説+あらすじ】シュールな冒険小説

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👉そのほか三島の本を早く安く手に
入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

三島由起夫の本:ラインナップ



さあ、もう書けますよね、
『金閣寺』の感想文……。


ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

👉当ブログでは日本と世界の種々の
文学作品について、「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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