三島由紀夫 潮騒のあらすじを簡単に【&詳しく】女性キャラの魅力を考察 | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

三島由紀夫 潮騒のあらすじを簡単に【&詳しく】女性キャラの魅力を考察

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも
ついに第40回到達!
「あらすじ」暴露サービスとしては
第17弾となります。

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今回は三島由紀夫の長編小説で、
何度も映画化されている人気作品、
『潮騒』(しおさい/1954)で行ってみまーす!
  
さて、一口に「あらすじ」を、といっても、
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文を書くんだから多少詳しくないと
という場合まで、千差万別でしょう。

そこで出血大サービス((((((ノ゚🐽゚)ノ

「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у


ごく簡単なあらすじ(要約)

まずは原作(👇)をぎゅっと要約した
「ごく簡単なあらすじ」から。


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貧しい18歳の漁師・久保新治は、村の
有力者である宮田照吉の娘、初江と
恋仲になり、裸で抱き合うなどする
ものの、一線は越えない。

新治と初江のそれぞれに横恋慕する
千代子や安夫に噂を広められたせいで、
二人は会うことを禁じられてしまうが、
周囲の援助もあって二人の愛はつづく。

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新治と安夫とは照吉の持ち船に
乗り組んで沖縄往復の航海に出る。

航海中、暴風のためワイヤーが切れる
という危機に見舞われ、新治は果敢に
海に飛び込んで、船を救う。

新治を見直した照吉は、ついに二人の
仲を認める。
メデタシ、メデタシ(^^)у


どうでしょう?
わりあいシンプルな物語で、
わかりにくくはないですよね? 

古代ギリシャを賛美した三島が
『ダフニスとクロエ』(ローマ時代に
ギリシャ語で書かれた物語)を下敷きにした
といわれているだけあって、ほとんど神話的
ともいいたいストーリー・ラインですね……。

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え? でもこれじゃあまるで
NHK朝ドラ『あまちゃん』の世界じゃん……

近代小説として評価されるゆえんは?

あのひねくれて病的な三島由紀夫の
世界はどこにあるの?┐( ̄ヘ ̄)┌

ハハハ、当然そう突っ込みたいですよね。

で、そのへんを見るには、これまた当然、
「やや詳しい」ヴァージョンのあらすじが
必要になるというわけです。

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やや詳しいあらすじ

では参りましょう。

原作は全16章からなっていますが、
わかりやすさのため、私の判断でこれを
「起承転結」の4部に分けています。


🌊【起】(第一~四章)

鳥羽の神島の漁村。
戦争で父を失い、母と弟を養う18歳の
漁師、久保新治は、ある日、砂浜で
見知らぬ美しい娘を見そめる。

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娘は村の有力者である宮田照吉の娘、
初江で、跡をとるはずの兄が急死した
ため、養女に行っていた家から
戻されたばかりだった。

数日後、二人は「観的哨」跡で
偶然出会って話し、笑い合う。

※「観的哨」は正しくは「監的哨」で、
旧陸軍が伊良湖岬から撃つ大砲の
試射弾の弾着観測をした
コンクリート製の施設跡。

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  和歌山 友々島の砲台跡 


🌊【承】(第五~九章)

その後、新治が落とした給料袋を初江が
拾って届けたり、灯台長の家で
鉢合わせたりといったことが重なって、
お互いの惹かれあう気持ちが高まり、
軽い接吻も交わす。

その一方で、村の名門の生まれで青年会
の支部長、19歳の川本安夫という若者が
「初江の入婿になる」という噂を聞いて
新治は心を乱し、また春休みで東京の
大学から帰省した灯台長の娘、千代子が
新治を「好き」と聞いて初江も
心穏やかでなくなったりする。


雨で漁が休みの日、観的哨跡で初江と
会う約束をしていた新治は、早く着いた
ので焚火し、その暖気で居眠りをし、
気がつくと、そこに雨でぬれた肌着を
脱いで乾かす初江がいる(◎◎;)

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裸を見られた初江は、新治にも裸になる
ように言い、新治がそうすると、今度は
「その火を飛び越して来い。その火を
飛び越して来たら」と要求。

新治は躊躇なく飛び込み、裸の二人は
抱き合うが、「嫁さんになるまで」と
初江が「道徳的な言葉」で制止し、
道徳への「やみくもな敬虔さ」をもつ
新治はこれに従う。

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🌊【転】(第十~十三章)

新治と初江とがすでに一線を越えている
との噂が村に流れ、初江は父により
新治に会うことを禁じられる。

噂のその出どころは実は千代子で、
観的哨から帰る二人を目撃した彼女が
安夫に告げたことが発端だった。

このことへの罪の意識に苦しむ千代子は、
春休みが終わって東京へ戻る前に、
「寛恕をねがう」べく新治に会いに行く。

「あたし、そんなに醜い?」と問うて、
「なあに、美しいがな」と新治に
即答されると、千代子は幸福になり、
自分の悪事を償おうと思う。

    

新治と初江は秘密裏に手紙の交換をし、
二人を応援する新治の親方や漁師仲間、
初江の海女の先輩たちにも助けられて、
愛を育てていく。


🌊【結】(第十四~十六章)

照吉の持ち船、歌島丸での沖縄往復の
航海に、新治と安夫はともに「炊」
(かしき。甲板見習い)として
乗り組むことになる。

航海中、暴風のためワイヤーが切れる
という危機があり、このとき
「泳いでって命綱を浮標(ブイ)に
つなげ」という船長の要請に
新治のみが応え、この難事を見事に
やり遂げる((((((ノ゚⊿゚)ノ

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歌島丸に新治と安夫をともに乗せたのは
実は、二人を試そうという照吉の
「策」であった。


東京の千代子から母に届いた手紙には、
新治と初江を苦境に陥れたのは自分で、
二人が幸せにならなければ自分は島に
帰れない・゚゚・(≧д≦)・゚゚・とあった。

母はただちに、新治と初江の仲を
認めさせるべく照吉の家に向かい、
その様を見て義侠心に駆られた海女たち
も同行し、乗り込んで直談判する。

すると照吉いわく、
「その話ならもう決っとるがな。
新治は初江の婿になる男や」( ̄ヘ ̄)

船長からの話で新治の「気力」を
知ったからである。

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三島由紀夫の世界は?

どうでしょう。

近代小説らしさ、三島由紀夫らしさを
感知していただけたでしょうか?

え? やっぱりよくわからん?

うーん( ̄ヘ ̄)、それでは、本文全体を
読み通してもらうしかありませんね。

え? それはしんどくていやだ?
全文は読まないで感想文を書きたい?


ハハハ、かなりの離れ業になってきますが、
まあ、どうしてもといわれるなら、
方法がないわけではありません。

上記の「やや詳しいあらすじ」のうち
自分の気になったところをピック・アップ
して、そこだけ本文を読み込んで、
何か書いていけばいいんですよ。

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たとえば?

たとえば私なら、千代子という
脇役に目をつけますね。

新治も初江も「まっすぐ」な人で、
それなりに魅力的な個性を発揮しては
いますが、やはり三島文学としては
物足りない。

全体に牧歌的・健康的で「三島らしくない」
ともいわれるこの作品で唯一「三島らしい」
人が出てくるとすれば、この女性
なんじゃないでしょうか。


「仮面」の女、千代子?

「あたし、そんなに醜い?」と聞かれて
「なあに、美しいがな」と即答した新治は
「お世辞を云えない男」とされています
から、実際「美しい」のでは
ないでしょうか。

にもかかわらず、

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千代子は自ら醜いと
信じている顔の効能を
信じていた。

それはひとたび固化すると、
美しい顔よりも、ずっと
巧みに感情をいつわることができた。

醜さと信じているものは、
この処女の信じている石膏
であった。   (第八章)

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新治と初江を苦境に陥れておいて、その後、
新治の「美しいがな」の言葉によって
「彼の寛恕をねがう」気持ちが実は
「かれのやさしさに触れたい」という
久しい希望の「仮面をかぶったもの」
と気づく(第十一章)……

という千代子の心理には、上記引用文の
ような「石膏=仮面」があったのですね。

この「石膏」は三島の最初の長編
『仮面の告白』(1949)で描かれて
“肉付きの仮面”などと評されている、
多重人格的なパーソナリティに通ずる
ものでしょう。

      

十分な展開を見なかったことが残念とも
いえますが、千代子という登場人物には
このような”三島的”屈折が与えられて
いたのです。

いよ、これぞ三島!
と私なんか声をかけたくなりますね。


もちろん千代子だけではありません。

ほかの人物なり、情景描写なり、探せば
いろいろとポイントは見つかるはずです。

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まとめ

数多い作品のなかで、これぞ三島由紀夫!
というべき最高傑作が『金閣寺』ですね。

この『金閣寺』と照らし合わせてみる、
というのも高度な感想文へ向けての
すぐれた方法になると思います。
👉『金閣寺』についてはこちらの
記事を参照してください。

三島由紀夫 金閣寺の簡単なあらすじ:難解な長編を短く解説

三島由紀夫 金閣寺の詳細なあらすじ:難解な柏木も読み解く

三島由紀夫 金閣寺をどう解釈?”悪友”柏木の「猫=虫歯=美」説で感想文
               
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この『金閣寺』で大きく花開いた妖しく
アブナイ三島ワールドの先鞭をつけた
のが『仮面の告白』『禁色』などの
LGBT文学。
👉それについてはこちらで。

三島由紀夫 仮面の告白のあらすじ:LGBT文学の先駆作を解説

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        グイド・レーニ画「聖セバスチャンの殉教」(部分) 


難解な小説が少なくない三島文学の
なかで読みやすくかつアブナい
エンターテインメントといえば……

👉はい、『命売ります』ですね。
これについてはこちらで。

三島由紀夫 命売ります【解説+あらすじ】シュールな冒険小説笶」

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三島由起夫の本:ラインナップ



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けど、具体的にどう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

👉当ブログでは、
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