透明人間⦅映画[1933~]&原作小説⦆の英語は?完全ネタバレ!
きっと透けてしまう。
僕は透明人間さ
もと透けて居たい」
というのが東京事変さん
のヒット曲『透明人間』
(椎名林檎作詞)のサビ
ですが、H・G・ウェル
ズの小説(1897年)に
始まった透明人間って
本当に透けるんですか❓
わけではないのでは?
原語はInvisible(見え
ない)ということで、
Transparent(透明)と
言ってるわけじゃない
ですからね;^^💦
映画『インビジブル』が
1933年の『透明人間』の
パロディだということも
はっきりしますね。
『透明人間』も『インビ
ジブル』も天才科学者が
自分を不可視にしたは
いいが、元に戻れない
という悲喜劇(😹)
ちゃうかという理由は
サッパリわかりません
でした。
物理学的にきっちり
やっています。
装置が完成するとまず
猫で実験するんですが、
この猫は全身消えても
目だけ残った(👀)
というんです。
なぜ目だけ?
網膜まで”透明”になっ
ちゃうと、もはや光を
吸収しないから像を
結ぶこともない。
ならばその目に視力
はないはずですね。
でも、目まで完全に
透明化した主人公が
あんなに活躍できた
ところを見ると、
目は見えていたと
しか…。
だから猫の目が残った
という挿話は、科学的
には無理なこの設定
へのエクスキューズ
(言い訳)だったん
ではないかと…。
というわけで、おなじみ”あらすじ”暴露
サービスの第172弾(“感想文の書き方”
シリーズ第239回)はH・G・ウェルズの
小説『透明人間』(The Invisible Man,
1897 👇)で参ります。
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映画はジェームズ・ホエール監督作品
(1833)に始まって『インビジブル2』
(2006)に至るまで、数えきれないほど
ありますが、その多くは、覗き見などの
ヤバい願望をこっそり満たしてやろう…
というお色気もの。
ここで採り上げるのはもちろんそういう
二級品ではなく、続々と出現した
“透明人間”(ホントは”出現”しないのが
透明人間なんですけど;^^💦)の源流を
なしたともいえる映画化第1号です。
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おおまなかストーリー
ではさっそく原作の世界に入っていきましょう。
話の流れをごく簡単に押さえれば
要するにこういうことなんですよ。
(早くもネタバレになりますが;^^💦)
- ある宿屋に、顔を包帯で巻いて
青メガネをかけた自称「科学者」が
長期滞在して実験を続けている。 - やがて体が”透明”(不可視)だと
知られた男(グリフィン)はだ、
騒動の末に逃亡し、”透明”なのを
いいことに盗みなどの犯罪も犯す。 - 警察の手を逃れたグリフィンが
偶然入り込んだのは大学時代の仲間、
ケンプ博士の家で、ここで彼は
これまでの経緯や”透明”化の原理を語る。 - ケンプの通報によって警察に
踏み込まれ、グリフィンは抵抗も
空しく倒され、死んではじめて
姿をあらわす。
ん? なんだかよくわからない?
それではやはり詳細な「あらすじ」の
方を読んでいただくしかありませんね。
かなり詳しいあらすじ
ウェルズの小説は全28章と「エピローグ」から構成されていますが、ここではその
全体を「起承転結」の4部に分け、
映画での変更部分に注意しながら
ストーリーを追っていきます。
あらすじ中、「 」内や「”」印の
囲みは上記文庫本からの引用です。
映画と大きく異なる部分、とりわけ
映画ではスッ飛ばされた感のある、
科学的説明の箇所などは、ここでは
しっかり追いたいので、👉印で
注釈を入れていますが、うるさいと
思う人は飛ばしてください。
ともかく⦅完全ネタバレ📢⦆になります
ので、あらかじめご了承を;^^💦
それは「かなり詳しいあらすじ」の
始まりです。
👀【起】(1~8)
英国南東サセックス地方、アイピング村。2月の大雪の日、ホール夫妻が営む宿屋
「駅馬車亭」に、顔を包帯でぐるぐる
巻きにして大きな青メガネをかけた
奇妙な男が現れ、部屋を取る。
金貨を二枚も投げ出したので、喜んだ
ホール夫人はコートや帽子を預かろう
とするが、客は拒否し、口にハンカチを
当てて話す。
翌日、10個以上の木箱などの荷物が
駅から届き、それらを運び入れる作業の
半ばに、男は手と足を犬に噛まれ、
治療のため部屋に入る。
追って行った亭主のホールが部屋に入ると、
男は手首から先がなく、白い顔には3つの
大きな穴があいていてパンジーのよう…。
亭主に気づいた男は彼を突き飛ばす。
男は「科学者」を自称し、届いた器具を
部屋に並べて毎日実験に余念のない様子。
4月末には金も底をついたか、宿屋との
いざこざも増え、逃亡中の犯罪者では
ないかとの噂も発生。
募金のため訪問したカス医師は、
男の機嫌を損ねてしまい、見えない手で
鼻をつままれ、青くなって逃げだす。
バンティング牧師の館で窃盗事件が発生。
牧師夫妻は現場を押さえ、音は聞いて
いながら泥棒の姿を目にすることは
ついにできなかった。
宿代のことでホール夫人と口論になり、
怒った男は、「おれがどんな人間かを
見せてやる」と顔につけているものを
すべて取り去って「からっぽ」の顔を
見せる(
騒ぎになって村中の人々が押し寄せ、
巡査も来て牧師館窃盗の容疑で逮捕
しようとする。
が、男は服もすべて脱ぎ捨てて
不可視となり、逃げ切る。
👀【承】(9~14)
アイピング村から2.5キロ離れた辺りまで来た不可視の男は、トマス・
マーヴェルという小太りで汚いが
一応は紳士の服装をしたに話しかける。
声はすれども姿は…と驚くマーヴェルを
「言うことをきかないと殺すぞ」と脅し、
駅馬車亭に戻ってノートや服を
取り返す計画を手伝わせる。
👉このマーヴェルという人物は映画には
出て来ませんが、小説の記述からすれば、
作者ウェルズも親交があったという、あの
チャールズ・チャップリンの乞食紳士を
太っちょにしたような感じ。
出しても面白かったのではないかという
気もします。
マーヴェルの代わりに協力させられるのは
小説では15章から出てくるケンプ博士。
映画では、このケンプと主人公はともに
ある教授の助手を務めていたという設定で、
ケンプと教授、そして教授の娘フローラの
3人が研究室でやりとりする場面が
【起】の半ばあたりから、アイピング村の
場面と交互に出てきています。
彼らの口から「ジャック・グリフィン」
という主人公の名も明かされるのですが、
このグリフィンとケンプとは研究上の
ライバルであるのと同時に、フローラを
挟んでの恋敵でもあるんですね。
どうしても美人女優を入れたい映画製作者
側の要請から来る改変なのでしょうが、
原作はそういう色気の一切ない、ほとんど
男ばかりの世界だというのが大きな
違いです。
駅馬車亭では医師と牧師が男の残した
3冊のノートを解読しようとして
いたが、突然「動くな」と、
見えない手に首をつかまれる。
不可視の男が自分の研究ノートや服を
取りに来たのだったが、人の目に見えない
状態で暴行することが面白くなってしまい、
大いに暴れて大騒ぎを起こして立ち去る。
取り返した3冊のノートはマーヴェルに
運ばせていたのだが、いつかはぐれて
ノートもろとも金を持ち逃げされる形に。
マーヴェルは逮捕されると、自ら
すすんで警戒厳重な留置所に入る。
「透明人間」の記事が新聞を賑わし、
また金貨が宙に浮かんで動いていた
という類の目撃情報が、近隣の
いたるところで発生する。
👀【転】(15~23)
家にいたケンプ博士は突然あちこちに血痕を発見して驚くが、やがて
「ああ、よかった! ケンプじゃ
ないか!」という声を聞く。
撃たれて傷を負った透明人間が
血で汚れた包帯を替えようと潜入
したのは、偶然にも大学時代の
仲間の家だったのだ。
自分はグリフィンだと名乗り、
「学生のころは髪や顔が白っぽかった。
ピンク色の鼻に赤い目をしていた。
科学で優秀賞のメダルをとった」と
語って思いださせる。
👉このセリフでグリフィンがアルビノ
(メラニン色素の欠損した個体。先天性
色素欠乏症)であったという設定が
明らかになります。
メラニン色素ばかりでなく、血液の
ヘモグロビンなどあらゆる色素を無化
できれば……という発想の生まれやすい
境遇といえますね。
主人公の人物像を深く知る上では
欠かせないポイントと思われますが、
映画では無視されてしまいました。
捕まえたりしないと約束したケンプは、
グリフィンに食事をとらせ、さらに
ウィスキーやタバコでくつろがせて
大いに話させ、二階の寝室で休ませる。
あいつは「頭がおかしくなっている!
このままじゃ人殺しをしかねんぞ!」
と考えたケンプが警察署長に通報の
手紙を書いていると、頭上の寝室で
物の壊れる音が…。
すぐ行って、興奮したグリフィンを
なだめたケンプが体を不可視にする
方法について説明を求めると、
彼はザッと次のように語る。
それは物体の性質を変えることなしに
「屈折率を、空気と同じぐらいに
低下させる原理」だ。
たとえば細かく砕けたガラスを水に
入れれば見えなくなるが、それは水と
ガラスの屈折率に近いから。
そして人間の体は実はガラスよりもっと
透明だ、髪や血液の色素を除けば…。
だから血の赤い色素を「無色にして、
なおかつ血の機能をうしなわない
ようにする方法」さえわかれば
「透明人間」は可能なのだ。
その探求に3年を費やした結果、
完成には大金が必要とわかり、
ぼくは父の所持金を盗んだ。
その金は父のものではなかったので、
父は追い詰められて拳銃自殺した。
ともかくやがて、波動を起こす2つの
機械の間に対象物を置いて屈折率を
低下させる装置を開発し、これによって
ウールの布切れを消すことに成功した。
次に、下宿の婆さんのネコを麻酔して
これを試みた。
すると、あらゆる色が
うすまり、ついに透明に
なったのだが、ただ、
ふたつの目だけが
のこってしまったんだ。
👉これが冒頭でハンサム教授がふれていた
“消えない目”の問題です。
これについてグリフィンは網膜と胸膜の
間にあって色素に富む「脈絡膜」が
原因だと言います。
しまったということは、この色素の
無化にも成功したことを意味する
はずですよね。
その秘法はきっと例の3冊のノートの
どこかに書かれているはずで、だからこそ
それを人手に渡すまいとグリフィンは
躍起になっているのでしょう。
さて、ここで浮上するのが、そのようにして
網膜の色素も消失した場合、その人間に
はたして視力があるのか……という問題。
これについていちはやく「ない」と
言い切ったのが物理学者にして随筆家の
寺田寅彦でした。
「網膜も透明になれば光は吸収され」ず、
その場合には目のレンズは
もはや光を収斂するレンズの役目を
つとめることができなくなる。
〔中略〕
換言すれば「不可視人間」は
自分自身が必然に完全な盲目で
なければならない。
(「自由画稿」1935年)
👉さすが寅彦先生、偉大です!
さてさて、それではウェルズがこの矛盾に
無頓着だったかといえば、こちらも大先生、
おそらく気づいてはいたのでしょう。
ネコの”消えない目”の話を入れたのは
そのことへのひそかな目配せだった……
というのが私の仮説ですが、いかに❔
いつしか感動のできない人間に
なっていたぼくは、心もすさんで
人に嫌われ、ネコ消失の件でも
ぼくを疑っていた家主からは、
下宿の退去を求められた。
研究ノート3冊は郵便局どめで送り、
研究のあとをすっかり消すために
下宿には火をつけて去った。
自身、透明人間となってからは
「なにをしようが罰をうけない」
ことを知って面白くなり、色々な
騒ぎを引き起こして大いに楽しんだ。
が、やがていつも裸でいるわけにも
いかないなどの不便な点が判明し、
デパートに入って服や包帯を盗んで
身に着けたりもした。
透明人間なんてつまらない
バカげたものだとわかって
きたよ。
〔中略〕
透明になればそれ〔ほしい
もの〕がぜんぶ手にはいる。
けれど、いくら手に入っても、
それを楽しむことが
できないんだ。
👀【結】(24~28,エピローグ)
ケンプをすっかり信頼したグリフィンは今後は国外へ逃亡するつもりだと話す。
さらに「人殺し」はお手のものだから、
これから「正義のさばき」としての
「人殺し」によって「恐怖による支配を
めざさなければならない」とも言い出す。
「わたしは賛成できんね」とケンプが
意見を述べたところで、物音が…。
警察の踏み込みを知ったグリフィンは
「うらぎり者!」と怒り狂ってケンプに
つかみかかり、格闘の末、逃走。
さらに別の場所で新たな殺人も犯した
透明人間は「とらえるべき人類の敵」
と報道され、サセックス地方全域に
厳戒態勢が敷かれる。
やがてケンプのもとへ「恐怖時代の
第一日めを宣言する」などと書いた
「透明人間一世」の手紙が届く。
「見せしめのための処刑」を
ケンプに本日おこなう、と。
警察の厳戒のなか予告通りに現れた
透明人間は、拳銃を乱射して暴れるも、
銃は警官に火かき棒で叩き落とされ、
格闘の末、いったん逃走。
おびき出すためにケンプが道を走り出す。
見えない打撃を受けたので反撃すると、
大勢の人が一斉に加勢して、ついには
「十本以上の手が透明人間をつかみ」
ひきたおす。
やがて透明人間が「息をしていない」
ことにケンプが気づき、「静脈、動脈、
骨格、神経といったものが浮かび」
続いて手や足が形を取っていく。
👉文章で表現されていたこのグロテスクな
情景をCGで実際に映像化してしまったのが
2000年映画『インビジブル』
(👇)
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ただしエロティックな願望が充足される
場面も(当然ながら)ありますので、
PG12指定となっております;^^💦
さて、このあわれな裸の男は…
髪とひげはまっ白だったが、
それは老化のせいではなく、
生まれつきのものだった。
目はガーネットのふかい
紅色を思わせた。
手をにぎりしめ、かっと
目を見ひらいていた。
その表情は怒りと、
絶望そのものだった。
👉グリフィンが生まれつき色素を欠く
アルビノだったことを改めて強調する
エンディングです。
その悪業を肯定することはできないとしても
この人もまたハンディキャップをもって
生まれた人間だったと…。
死後のその目を美しい宝石ガーネットに
たとえたところに、このマッド・
サイエンティストへの作者の愛を
見ることもできるのでは?
こうして透明人間は死んだが、もっと詳しく
知りたければ、看板に「透明人間」とある
宿屋へ行って、そこの小太りの主人に
聞くといい。
(マーヴェルそっくりの)この主人は
他人には見せない3冊のノートを
取り出して解読しようとしている。
「あいつみたいなバカはしない。
おいらはもっとうまくやる」
マッド・サイエンティストの悲劇
さあ、いかがでしょう。
ずいぶんと手垢にまみれてしまった
(しかも多くエッチな方面に)透明人間
ですが、ウェルズの原作の段階では決して
そういう志向の人ではなかったことが
おわかりいただけたものと思います。
たしかに別方面で問題のあるパーソナリティ
ではあったわけですが、それもまた、
もって生まれた異常(アルビノ)や、
それとの関係でねじ曲がった(かもしれない)
研究への異常な執念の結果かもしれません。
とすれば、何らかの運命に駆り立てられる
ようにして自らを改造しようとした人間…
という文学的な系譜に位置づけることも
できるでしょう。
そのような苦悩する人間としてのマッド・
サイエンティストとしては、早い例として
まず『フランケンシュタイン』(1818)が
挙げられますし、ゲーテの『ファウスト』
(1808-33)もその先輩格に位置づけられる
かもしれません。
👉これらの作品についてはこちらで詳しく
情報提供していますので、ぜひご参照を。
・ゲーテ ファウストのあらすじ 👻名言「時よ止まれ」の意味は?
・フランケンシュタインのあらすじ 👻原作小説をネタバレありで
またグリフィンは「不可視化」という
人体改造に成功しながら、消えた体を
元に戻す方法は開発しないまま
自分を消してしまいますね。
愚かといえば愚かなこの振る舞いは、
これもマッド・サイエンティストの
先輩であるジキル博士(1886)の轍を
踏むようでもあります。
ともかく”人体改造”はその後の文学や
映画、そしてマンガなど諸々の
ジャンルでの一大テーマとなって
発展してきました。
当ブログでもそれらの作品の多くに
ついて発信してきましたので、
ご参照いただければ幸いです。
👉たとえばこちらなどです。
・アルジャーノンに花束を(キイス原作) あらすじ【ネタバレ注意】
・ジキルとハイドのあらすじ:スティーヴンソン原作を簡単に…
・東野圭吾 変身 ☯原作小説のあらすじ⦅ネタバレ📢⦆と感想
・羊たちの沈黙のあらすじ⦅原作のラストまでネタバレありで⦆
・ヘルタースケルター 漫画ネタバレ👅 岡崎京子原作の芸術性は?
・伊藤計劃 ハーモニー原作のあらすじと考察 “意識のない”未来から…
まとめ
さて、これだけ知れば、あなたはもう
“透明人間博士”
読書感想文とかレポートとかも
上記の情報を生かしてもらえれば、
スイスイスイのお茶の子さいさいで
書いていけますよね。
ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、当ブログで書きため
ています「感想文の書き方」シリーズ
記事のどれかを参考にしてくださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の
種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
こんなコメントが来ています