ぼくは勉強ができない(山田詠美)のあらすじ:賢い劣等生を読む

 


やあやあサイ象です。

おなじみ「あらすじ」暴露サービスも
ついに大台を超えて今回でなんと
106弾((((((ノ゚⊿゚)ノ

「感想文の書き方」シリーズ全体では
165回となる今回は
山田詠美さんの『ぼくは勉強ができない』
(1993)で行ってみましょ~Y^^Y



なにしろ大変な人気作にして問題作!

その一部が大学入試センター試験「国語」の
問題文に使用されたと思ったら(1999)、
別の部分を高校教科書に載せるという話に
なったけれども、文科省の検定に引っかかって
オジャンになった(2002)とか色々と…。

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👉 文科省は勉強ができない?

作者の山田さんはセンター試験について
自身の作品を無断で使用されたことに
不快感を示した上で「選択肢の中に正解が
なかった」と批判(『熱血ポンちゃんが
来りて笛を吹く』2001)。

教科書問題では文科省「検定意見」の、
「馬鹿だから」という言葉が「差別的」で、
これのみならず「全体を通じて差別を
助長する恐れがある」という説明に
「ばかばかしくて、お話にならない」
とコメント(「文科省は勉強ができない」
『文藝春秋』2002.06)。

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いや~どんな面白い小説なんだろうと
ゾクゾクしますよね💛💜💚💓。

そのあらすじを、完全に暴露
しちゃおうというわけ。

もちろんネタバレありになりますが、
この作品、もともと純文学雑誌に短編連作の
形で断続連載されたもので、ネタバラシで
面白味が減るというようなことも
ないと思われます。



👉 かなり詳しいあらすじ

原作は『新潮』に断続連載された8つの短篇と
その連載の途中で『文藝』に掲載された
「眠れる分度器」という”番外編”で
構成されています。

ここでは8つの短篇の大まかな話の流れを
押さえた上で、8篇中少し毛色の違う
「賢者の皮むき」という短篇について
内容を紹介していきたいと思います。


「…」内と「”」印の囲みは、
原作からの引用です。


また文中【CHECK】として、解説・
コメントを入れていきます。

うるさいと思われる方はスルーして
もらっていいんですが、もし読書感想文
などを書こうとしているのなら、ぜひ
目を通してくださいね。

感想文のネタになるはずですから。


【全般の流れ】

選挙の結果、クラス委員長は成績1位を
続ける脇山が、3票差で2位のぼく
(時田秀美)を押さえて選出された。

こういう時よく思い出すのが、小学校
5年の時の委員長選挙で、転校してきた
ばかりで様子の分からないぼくは、
前の席のおっとりした様子の女子の
名を書いた。

開票の途中で、突然担任の男性教師が
怒り出す。
「誰だ!伊藤友子の名前を書いた奴は!?」
「ふざけるにも程があるぞ」

どうしていけないのかと隣の男子生徒に
小声で聞くと「馬鹿だから」という答え。

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文科省の検定に引っかかった
のは、まずここですね;^^💦

ぼくは怒る教師に向き合う。

伊藤の名を書いたのは自分だが、
それはふざけたわけではなく
「親切そうだ」と思ったから。

ぼくの票を「無効」と決めた教師に
「怒り」を覚えながら、
「どうして伊藤さんでは駄目なのですか」
「勉強が出来ないからですか?」
と問いかけるが、教師は完全に無視。

前に目をやると、机に伏せて
鼻を啜(すす)っている
伊藤友子の姿が見えた。

ぼくは、この時、初めて、
大人を見くだすことを覚えた。

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票数で男子2位だったぼくは自動的に
書記に任命され、挨拶する番になると、
「最初に言っとくけど、ぼくは勉強が
できない」と言って大笑いを取る。

小学校時代のこの回想の
を読んだだけで、「ぼく」の
頭が冴えまくっている
ことは見え見えですね。

その「ぼく」が頭悪くて
「勉強ができない」という
ことにし続けなければ
ならないところに、この
小説の苦しさがあります。

山田先生、お疲れさま;^^💦

委員長になった脇山は「勉強出来ないのを
逆手に取るなよな」などと脅しをかける。

ぼくは、幼ななじみで今もぼくを
「愛してる」という真理という美少女に
頼んで脇山を誘惑させ、成績もがた落ちに
させてしまう。

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そんなこともできてしまうほど「もてる」
男であるぼくは、男の価値についても
「女にもてなかったらずい分と虚しい」
という尺度で判断している。

この価値観が作品全体の
基調をなしていますから、
「差別を助長する」ことを
文科省が危惧するのも
分からないことでは
ありませんね…;^^💦

ぼくのこの価値観をはぐくんだのは、
自分の父親が誰かはまったく知らないまま
母と祖父に育てられたという…
教師らのいう「複雑な家庭環境」。

それはぼくにいわせれば「素晴らしき
淫売とくそじじいぶりのぼくの家族」で、
二人とも奔放な恋愛をし続けている。


母には「格好の良い男になるのよ」と
諭されて育った。

ぼくが女子高生を相手にしないのは
バーで働く桃子さんという年上の恋人が
いて、性的にも不自由しないから。

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ある日、校内で避妊具を所持していた
ことが発覚したぼくは、学年主任の
佐藤先生から、おまえはそういう
「不純異性交遊」のせいで勉強も
出来ないんだ、などと罵倒される。

女手一つで育ててくれた母親の気持ちを
考えろ、などとまるで見当違いの
ことまで言うので「猛烈な怒り」が
湧いて先生の襟首をつかんでしまう。

その瞬間、その場に現れてぼくを止めて
くれたのが担任で、所属するサッカー部の
顧問でもある桜井先生。


なんでも話せる桜井先生にぼくは言う。

あの人たちの言う良いこと
悪いことの基準て、ちっとも、
おもしろくないと思う。

良い人間と悪い人間のたった
二通りしかない

思いますか? 
〔中略〕
女手ひとつだと、母親は、
そんなにも辛酸を舐めなきゃ
いけないって決まってるん
ですか? 

その子供は、必ず歪んだ
育ち方をするんですか? 

人間って、そんなもんじゃ
ないでしょう」

そこまで言ったら、なんだか
涙が滲んで来そうに
なったので慌てた。

結局、ぼくの価値観は、
父親がいないという事柄が
作り出す、あらゆる世間の
定義をぶち壊そうとする
ことから始まっていたのに
気付いたのだ。


でも「余計なお世話で白黒つけられて
いる」のはお前だけじゃない、
と桜井先生。
「人間全部がそうされてる
被害者かもしれない」

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「でも、ぼくは、絶対に、白黒つける
側になりたくないんです」とぼく。

「良い人間と悪い人間の
たった二通りしかない」と見て
「白黒つける」人間観を批判
しているわけですが、意地悪な
見方をすれば、明快なこの
二分法はこの小説自体を貫く
図式でもありますね。

たとえば”良い教師/悪い教師”
と「白黒つける」描き分けの
なんと単純明快なこと……。

教師も人間。

そして「人間って、そんなもん
じゃない」のでは?…;^^💦

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【賢者の皮むき】

学年でもベストスリーに入ろうかという
美少女、山野舞子を見てぼくは思う。

授業中の「可愛いとちり方」までが、
「お茶目という高等技術のように思える」。

確か、鉄棒で失敗した主人公に、
「わざ」と、やっただろう
おまえは、と言葉にならない
冷笑を与えた警告者の登場する
小説があった筈だ。
〔中略〕
うーん、ぼくは、教室が、
あの小説の舞台のように
思えて来たぞ。

念のため言っておきますと、
これ、太宰治の『人間失格』
ですね。

詳しくはこちらを
ご参照ください。

太宰治 人間失格のあらすじ 💔生田斗真主演映画の原作をネタバレありで
太宰治 人間失格で感想文:「恥の多い生涯」という名言から

「ぼくは、確かに、山野舞子に象徴
される何かを憎んでいる」が、
それが何なのか解らないでいる。

友人の川久保はその山野に夢中で、
ぼくは彼から「気持ちを伝えて来て
欲しい」と頼まれてしまう。

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山野に伝えると、「悪いけど、私、
川久保くんとはつき合えない」。

任務を果たしたぼくが立ち去ろうと
すると、呼び止めて理由を
尋ねないのかと聞く。

「いや、別に、ぼくの
知ったことじゃないし」…

「ひどい」
山野舞子は、睫毛(まつげ)を
伏せて唇を噛んだ。
〔中略〕
しかし、その下で噛まれた唇に
演技があるとぼくは感じた。

白い小さな歯は、計算されたように
唇を押している。

媚びているじゃないか、こいつ。

ぼくは途端に不快になった。

ぼくは、衝動が肉体を動かすのと、
作為が肉体を使うことの間にある
差というものに非常に敏感な
自分に、その時、気付いた。


「時田くんて、意地悪だと思う」
などと山野は言いだし、眉を
「せつなそうにひそめ」て言う。

「好き」

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驚いたぼくが「ぼく、好きな人、
いるから」と逃げると、
「知ってる。〔中略〕待ってもいい。
だって、ずっと、私、時田くんの
こと、好きだったんだもん」

もてない男の読者にとっては
まことに腹立たしい展開
ですよね。

でも、それはそれとして、
ここでは山野舞子のキャラに
着目しましょう。

「媚びる」という動詞が何度か
使われることも示すように、
これはいわゆる「媚態」
(コケットリー)の完成体。

夏目漱石が「無意識の偽善」
(アンコンシャス・ヒポクリ
シー)と呼んだものを
思わせます。

このあたりをめぐっては
こちらを参照してください。

漱石 三四郎で感想文:美禰子の愛は?”無意識の偽善者”とは?
夏目漱石 三四郎のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説

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山野が桃子さんのことを「不潔だわ」とまで
言いだすので、「あのなあ」とぼくは、
あえて批判の言葉を向ける。

「きみは、自分を、自然に振る舞うのに
何故か、人を引き付けてしまう」という
位置に置こうとしてるけど、それは
「難しい演技をしているふうにしか
見えないんだよ」

と、山野がいきなりぼくの頬をぶつ。

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そして言うには、あんただって
「自然体っていう演技してるわよ」
「優越感をいっぱい抱えてるくせに、
ぼんやりしてる振りをして」…

自由をよしとしてるのなんて、
本当に自由ではないからよ。

私も同じ。

あんたの言った通りよ。

私は、人に愛される自分
てのが好みなのよ。

そういう演技を追求するのが
大好きなの。

中途半端に自由ぶってん
じゃないわよ。

この山野舞子、作品中最も
生い生きとした登場人物の
一人でしょうね。

といっても、『三四郎』の
美禰子とか『痴人の愛』の
ナオミとかが放つ陰影に富む
魅力…というところまで行って
いないとしたら、それは
作者によってはじめから
「白黒つけ」られちゃってる
ことによるんじゃない
でしょうか…;^^💦

谷崎潤一郎の傑作『痴人の愛』に
ついてなら、こちらでどうぞ。

谷崎潤一郎 痴人の愛のあらすじ:ナオミと譲治のM的結末…
痴人の愛(谷崎潤一郎)で感想文…💜妖婦ナオミに抵抗できる?

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この批判にギクリとしたぼく。

桃子さんと話しながら、「世の中の
すべてのものには皮がある」と気づき、
いつか「皮剥き器」が手に入るだろうか、
と考える。



👉 まとめ

さあ、いかがでしょう。

大体どんな感じかはわかって
いただけたましたか?


主人公のぼく(時田秀美)ばかりでなく、
その母、祖父、山野舞子ら生徒たちに
先生たち…

そのほか「あらすじ」に書き切れ
なかった面白い登場人物は
まだまだいます。

そのどれかに焦点を当てれば、感想文
もそんなに苦労なく書けるんでは
ないでしょうか。

あるいは作者も意識した
かもしれないアメリカ版
《反逆劣等生の私語り》
『ライ麦畑でつかまえて』と
比べてみるのも面白いかも。

『ぼくは勉強ができない』
全般につきまとうのは、
「勉強ができない」高校生の
肉体に知的な大人の頭脳が
無理矢理インプットされた
感じの不自然さ。

『ライ麦畑…』にはそれを
感じさせない迫力と
スピードがありますね。

こちらをご参照
いただけると幸い。

ライ麦畑でつかまえてのあらすじ:サリンジャーの原文も参照!

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ん? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/


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