井上ひさし 握手で感想文:天国はある。その方が楽しいから?

 


やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも
はや第67回となります。

今回は井上ひさし氏の傑作短編小説
『握手』でいってみましょう。

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まだお読みでない方はこちら……
短編集『ナイン』〔1983〕所収です。



全文を読むのはちょっと…という人は、
こちらの記事で「あらすじ」を用意して
いますので、そちらをご覧くださいね。

握手(井上ひさし)のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説



👉 自分なら…と考えてみる

まずはじめに、そもそも感想文、
それも”学校で評価される”感想文は
どう書いたらよいのかについて、
この「感想文の書き方」シリーズで
繰り返し開陳してきました秘伝《虎の巻》を
今回もひろげさせてもらいます。

  • 学校で評価される感想文は
    作品を読んでの素直な「感想」
    などではなく、それを機に
    自分の生活を反省する」作文。

  • これを書くには、まず、
    たとえば登場人物が何らかの
    行動をとったとき、
    「自分にはこんなことはできない」
    のではないかとか、あるいは
    性格的に「自分にはこんな
    ところはないか」と反省する。

  •        疑問009093
           自分にはこんなところはないか……

  • その上で、「これからは自分も
    こうしよう」という前向きな
    結論
    を決めてから書き始める。
(「Yahoo!知恵袋」での「ikemen_busaiku」さんの回答に触発されています。)

さて、一応この方法で行くことにすると、
自分なら…」と考え合わせてみる
対象(登場人物)を誰にするかを
決めなくてはなりませんが、どうします?

やはりこれはルロイ修道士にするのが
正解でしょう。


彼に再会した「わたし」(語り手)にする
手もアリですが、すこしむずかしいかも
しれませんね。



👉 「わたし」は媒介者

小説のなかでの「わたし」の主な役割は
ルロイ修道士の心中に(徐々に)入り込み、
それを読者に(徐々に)伝えていく……
要するに主人公と読者の「媒介」(仲立ち)
ということですね。

自分なら…」と仮定しても
できたかもしれないことって、ありますか?

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「知らぬ間に両手の人さし指を交差させ、
せわしく打ちつけていた」というラストの
一文に「わたし」の思いを読み取る
としても、「いらだち」「残念」「悲しみ」
などの感情に自分も共感した、ぐらいしか
書けないんじゃないでしょうか。

あるいは「わたし」を通して、結局、
ルロイ修道士を語ることになって
しまうかもしれません。

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👉 ルロイ修道士の生き方

ですから、ここはいっそ、ルロイ修道士に
なってしまう、というふうに割り切った
ほうが賢明でしょう。

感想の書けそうな主題、テーマはわりあい
くっきりと浮かび上がって来ます。
              野球猫matsui-anime
いくつか例を挙げてみましょう。


1.「さよならを云うために」

はじめの部分でルロイ修道士は「わたし」を
呼び出した理由として「さよならを云う
ために、こうしてみなさんに会って
回っている」と説明します。

その「さよなら」が、たんに「故郷(くに)
へ帰る」という意味ばかりではなくて、永別…
つまりこの世への「さよなら」でもあることが
徐々にわかってきた「わたし」は
「冗談じゃないぞ……」と思いますね。

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       トラピスト修道院(北海道)  

なぜ「みなさん」に会おうと
思ったんでしょうか。

そんな義務はないし、運ばれてきた
オムレツも「おいしいですね」と
言いながらちっとも食べないほど
体は弱っているんですよね。

ここに「自分なら…」を考える
余地があるんじゃないでしょうか。

そしてそれを考えるためには、ルロイ
修道士がどう生きてきて、死を前にして
どんな「心残り」を抱えているかを十分に
理解するために、やはり本文全体をしっかり
読み直す必要が出てくるでしょうね。


2.「代表して」ものを云うのは傲慢です

戦時中、日本人監督官に潰されて変形した
指先を見て、「わたし」が「日本人は先生に
たいして、ずいぶんひどいことをしましたね」
と言うと、ルロイ修道士は「日本人を代表
してものを云う」のは傲慢だし、日本人とか
カナダ人とかがあるのではなく、「一人
一人の人間がいる」だけだと答えます。

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ここにルロイという人の人柄、その偉大さが
凝縮的に表現されている、すくなくとも
作者、井上ひさしさんの伝えたかったものの
核心があったのではないか……

まあ、これは私個人の感想ですけれども、
ともかく、ここも「自分なら…」を考えてみるとよいポイントですね。

「一人一人の人間がいる」だけだという
人生観は、天使園の「一人一人」に
「さよならを云う」という行動に
つながっているかもしれませんね。



3.天国は「あると信じる方がたのしい」

「代表して」ものを云うのは傲慢だという
ルロイ修道士の哲学(考え方)は、
キリスト教を教える立場でありながら、
「天国」の存在についても断定しないという
この人の信仰のあり方にも対応している
かもしれません。

「あると信じる方がたのしい」から信じる、
「そのためこの何十年間、神さまを信じて
きた」((((((ノ゚⊿゚)ノというルロイの理屈は、
変といえば変ですよね。

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天国はある?

あると信じたほうが「たのしい」という理由で
本気で「ある」と信じられるものでしょうか?

このポイントも、「自分なら…」を
大いに考えてみるに値しますね。



👉 小説のうまさ

それから、学校の読書感想文ではあまり
期待されていないかもしれませんが、
内容的な主題・テーマを離れて小説の作り方、
芸術的な技法について書くのも当然あり…
というか、より高度な感想文・
批評文になると思います。


たとえば「指言葉」の印象深さ。

ルロイ修道士の癖で、最後には「わたし」にも
伝染してしまうのがこの「指言葉」ですが、
小説の全般にわたって繰り出される
何種類かの「指言葉」に作者はどんな
効果を狙っているのか……。

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また「指言葉」のいくつかは、この小説の
もう一つの大きな特色である「現在と
過去を行き来する
」手法に
絡み合わせられてもいるんですね。

※この手法については「あらすじ」を
こちらの記事のほうを参照してください。

握手(井上ひさし)のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説


たとえばこのような、作者の意図を読むことのできる
文章を一つ一つ挙げて、その成り立ちを
分析していけば、立派な批評文になるはずですよ。


この巧みな小説家、井上ひさしの
もう一つの傑作短編が『ナイン』ですね。

これについて書いた下記の記事も
参考にしてもらえればと思います。

ナイン(井上ひさし)のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説

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ほーら、いろいろと
とっかかりはあるでしょ?

こういうふうにして、どこかに突破口を見つけて
掘り進んでいけば、
感想文なんかへっちゃらですよ。


ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、
日本と世界の種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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