江戸川乱歩 影男は日本版透明人間？あらすじ【ネタバレ】をラストまで

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズもはや
第89回。
「あらすじ」暴露サービスとしては
第56弾となります。

今回は江戸川乱歩晩年の傑作長編
『影男』(1955)で行ってみま～す！
　　

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さて、これから「あらすじ」をお届けする
のですが、その「すじ」をどの程度詳しく
知りたいかも(ネタバレされたくないか
どうかを含め)、人によりまちまち
でしょう。

そこで出血大サービス！

「簡単」版と「やや詳しい」版の
2段階でお届けしますよ～。

簡単なあらすじ

まずはごく簡単なあらすじから。
（といっても全体が長いので
少々長くはなりますが…）




いかがでした？

これでおおよそ、どんな小説かは
わかりましたよね？

でもこれから一悶着も二悶着もあり、
なにしろ”影男”ですから、弾丸が
貫通しても死ぬわけはないのです。

そのあたりまで書いてしまうと
完全ネタバレになるので遠慮しましたが、
次にべる「詳しいあらすじ」では
洗いざらいをぶちまけて参ります;^^💦

かなり詳しいあらすじ

それでは、始めましょう。

もとは『面白倶楽部』という雑誌に
1年間12回にわたって連載されたもので,
ストーリーはなかなか複雑ですが、
これを私なりの解釈でやや強引に
「起・承・転・結」の４部に分けて
記述していきます。

👻【起】

33歳、本名不明の「影男」は、
犯罪者の上前をはねる「ゆすり」で
稼いでいるやせ形の男。

「佐川春泥」の名で犯罪小説を
書くほか、冒険家「速水荘吉」、
地主「綿貫清二」、貿易会社社長
「鮎沢賢一郎」、遊蕩紳士「殿村啓介」
など無数の名と顔をもっている。

また17歳の美少年を含む多くの恋人を、
互いに互いの存在を知らさないまま
保有する「男の女王バチ」でもある(◎◎)

　　　　

大学時代から人間を「犯罪学的に探求
しよう」という生きがいをもつようになり、
生来の運動神経の良さで、手品、曲芸、
穏形術忍法などを会得し、女にも
化ける変装の名人となっていた。

H・G・ウェルズの『透明人間』が理想の
境地であったが、透明になることは無理
なので、「影のような人間」になろう
として日本の忍術を「隠身術」へと
近代化させていた。
👉H・G・ウェルズの『透明人間』と
その映画化作品をめぐっては、
こちらで詳しく情報提供して
いますので、ぜひご覧ください。

・透明人間｟映画[1933~]＆原作小説｠の英語は？完全ネタバレ！




「悪神になる場合が多いが、善神にも
なれるんだぜ」と自称し、12歳の娘が
花売りで稼ぐ金で飲んだくれている
元陸軍大尉のダメ男、大曽根の一家を
助けたりもする。
👉この一家、ドストエフスキー
『罪と罰』のマルメラードフ一家に
恥ずかしいほど似ています。

こちらでお確かめを。

・ドストエフスキー 罪と罰のあらすじ：簡単版と【詳細版 前編】

　　　

👻【承】

影男の犯罪小説家としての顔である
「佐川春泥」にあて、「不思議な
ことがら」で知恵が借りたいので
会いたいという手紙が届く。

密会場所へ行くと、「須原正」と名のる
その小男は、この１年で30人を闇に
葬ってきた「殺人請負会社」（）の
共同経営者の一人で、いま依頼
されている件の顧問になるなら、
謝礼金の4分の一を取らせるという。

　　

応諾した影男は即座に、「底なし沼」を
作ってそこにはまらせるという方法を発案。


これを実行して美女の殺害に成功し、
金を受け取ったものの、
もがき叫びながら沈む美女の姿が
幻影となって彼を苦しめる。


憂さ晴らしに、影男は遊蕩紳士
「殿村啓介」に変身して銀座の
キャバレーで遊興する。

そこに現れて耳もとでささやいたのは
「どこかメフィストめいた」不気味な老人。
👉「メフィスト」すなわち「メフィスト
フェレス」については、こちらの
記事もご参照ください。

・ゲーテ ファウストのあらすじ：名言「時よ止まれ」の意味は？

　 　　　　　


「こんなものより百倍もすばらしい」
世界に50万円で案内できるというので、
翌日、待ち合わせて自動車で現場へ。

大きな屋敷に入ると、池の水面に
「径1メートルの鉄の円筒」が現れ、
そこから黒シャツの男が出てきて、
「不思議の国」へ案内するという。

入ると、円筒はエレベーターのように
地底へと沈み、そこは「セメントで
自然の岩を模した洞窟」のような世界。

　 　

進んでいくと、黒い岩はだの前に
「全裸の美女」が微笑していたり、
「美しい人魚」が泳いでいたり、
４メートルもの「桃色の巨花」の
シベの部分に「美女の顔」が
笑っていたりする。

「桃色の人花の美しさと恐ろしさ」は
ド・クインシー(Thomas De Quincey)
の「アヘンの夢」そのもの。
👉「パノラマ国」とも呼ばれるこの世界は
『パノラマ島奇談』（1926-27）で描かれた
「パノラマ島」の再現を思わせます。

こちらを参照。

・パノラマ島奇談[奇譚]乱歩最高作(？)あらすじをネタバレ御免で

　　 　

「人造女体の丘を踏みこえて」
導かれた豪奢な客間に待っていたのは
ちょびひげのある太った社長。

密貿易で稼いだ巨富を投じてこの
「パノラマ国」を築いたという社長は、
また、どんなで女でも必ず秘密裏に
ここへ連れてくる「恋人誘拐引き受け
業」も請け負っているという。

👻【転】

そんなことは独力でできる(＠＾(∞)＾＠)y
と笑って勧誘を断った影男は、社長との
親交を約して地上に戻る。

と、恋人の一人である山際良子から、
川波良斎という戦後成金が若妻・
美与子と愛人を捕縛し、二人とも
殺害しようとしているという知らせ。

　　　

庭で二人を首まで生き埋めにして,大鎌で
首を刈り取ろうとしているところへ
「巨大なクモ」に変装した影男が現れ、
手から出る糸で良斎のからだを捕らえて
木の幹に縛り付け、二人を逃がす。
👉『スパイダーマン』の前身、
ここにあり！……ですね。

なお乱歩には別に『蜘蛛男』（1929）
という小説もありますが、こちらは
「蜘蛛」のように残忍な男（クモさん
ごめんね）という意味で、
この場面とは無関係。　
　
　 　

この件を他言しないことを条件に、
逃げた二人と影男自身のぶん、あわせて
300万円をゆすられた良斎は、数日、
悶々として酒ばかり飲んでいる。

その良斎のもとへ「殺人請負会社」の
須原が現れ、二人に600万円、影男に
20000万円出すなら「三人とも」消す
ともちかけ、契約成立。


美与子と愛人の昌吉が借りたアパートに
差出人名「速水荘吉」（影男が二人に
名のった名）でチョコレートが届くが、
不審に思った美与子は、これについて
私立探偵の明智小五郎に分析を依頼。

四日後、速水からのニセ電話で、
六本木近い洋館に呼び出された二人は、
一室に閉じ込められ、良斎の見守る中、
毒ガスで悶死する()。


須原から呼び出されて出向いた隅田川・
霊岸島のボート上で、影男は、ある
「青年紳士」の殺害方法の立案を
依頼される。

その紳士とは実は影男自身だったが、
影男は、自分が新築したばかりの
芦花公園近い書斎での「密室」殺人を提案。

　　

２日後の夜、「下検分」に来た須原を
書斎に迎え入れた影男は、懐中電灯で
建物の内外を案内し予定された
「トリック」を説明する。

ところで｢殺される人物」は？
と影男が尋ねると、須原は笑って
「おまえさんなのさ」と発砲。

あおむきに倒れた影男の顔は血だらけ。

👻【結】

佐川春泥の使用人だという白いひげの
じいさん、谷口の通報により
芦花公園の書斎に警察が入る。

死体が運び出されるのと入れ替わりに
「松下東作」と名のる弁護士が現れ、
この殺人のトリックを一通り説明する。

逃げようとする谷口を捕まえて
白いひげをむしり取ると、それは須原。

弁護士も変装を取り去ると影男で、　　
須原のピストルの玉を抜いたことを
含め、すべては相手の計略を見越した
予定どおりの行動だったと説明。

　　

話をつけようと近くの神社の深い森に
入ると、木陰に隠れていた屈強な
手下につかまり、車に乗せられる。

その手下、斎木は、運転しながら
明智小五郎の手が回ったと告げ、
都内にいくつかある隠れ家を回るが、
いずれも警察に見張られており、
須原は進退窮まる。


そこで影男は車を「艶樹の森」こと
地底の「パノラマ国」へと導く。

三人はそこへ入り込み、驚き楽しみつつ
進んでいくが、やがて銃声がして、
案内役の「黒ビロードのメフィスト」
たちは実は警官で、須原と影男を逮捕する。

　

須原が腹心と信じていた斎木がかつらと
顔のマスクを取ると、それは明智小五郎。

「おふたりとも、もう年貢の納めどき
ですよ」と明智は事件の全貌を解き明かす。

”最後の”明智小五郎

さあ、いかがでした？

え？　「善神」にもなったヒーローの
影男が、最後はあくどい須原と
ひとくくりに逮捕されてしまうのが
なんだかなあ…………？

そうですよね。


影男は「鼠小僧次郎吉」の系譜を
引くともいえる魅力ある男。

その活躍を追う波瀾万丈の
ピカレスク・ロマン（悪漢小説）が、
山場へ来ると、彼の上を行くヒーロー、
明智小五郎の登場で尻すぼみ……

しまいは水戸黄門のご印籠みたいに
一気にお縄とは、どうもね┐(￣ヘ￣）┌

　　

この点は、あるいは乱歩自身もできばえに
不満だったたかもしれません。

それかあらぬか、”名探偵”明智の登場は
これ以降、子供向けの「少年探偵団」
シリーズに限定されることになります。
👉「少年探偵団」については
こちらを参照。

・少年探偵団（乱歩）のあらすじ☆怪人二十面相は二度死ぬ？

・江戸川乱歩 怪人二十面相☆少年探偵団結成までのあらすじ

　

ともかくこの意味では”最後の”
明智小五郎だったんですね。

まとめ

というようなわけですから、もし感想文や
レポートを書こうとするのなら、そんなに
むずかしくないでしょう。

明智小五郎に代表される正義の側から
見るか、それとも影男を主役とする
悪漢小説と見るか、どちらかに立場を
決めてから全体を見直してみる…
というのは、どうかな？
👉悪漢小説として考える場合は、
この記事など参考になるかもしれません。

・シェイクスピアのオセロを講義：漱石の名言「白砂糖の悪人」？

　　　　

ともかく乱歩はゾッとさせてくれますね。
👉この大エンターテイナー乱歩の世界を
めぐっては、かなりの記事を
書きためています。

あなたのお気に入りをこちらから
見つけてください。

・江戸川乱歩の本でおすすめ！初心者向きからR18+の淫靡世界まで13作

　　 　　 　 　　　　　　　　


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👿江戸川乱歩の本：ラインナップ👿
　　　　　


ん？　書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でも具体的に、どう
進めていいかわからない(￣ヘ￣）？

それならまず、当シリーズの
感想文の書き方《虎の巻》の
適用例をご覧ください。　　

乱歩以外にも多くの作家・作品をとりあげて、
「あらすじ」や「感想文の書き方」の
記事を量産しています。
👉こちらのリストをどうぞご覧ください。

・「あらすじ」記事一覧

・≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/