人形の家のあらすじ【イプセン 舞台】ノラのその後と日本への影響は?
ヒロインのノラは
それまでの自分が
父から夫に受け渡され
た人形にすぎなかった
と気づいて家を出る…
という問題劇です。
んで、出て行って
ノラ猫(😹)に?
考えましょう;^^💦
子供はなかったん
ですか?
8年目ですからまだ
幼いのですが、彼らも
母親に捨てられることに
なりますね。
決断ですが、その後
ノラはどうなるん
でしょうか❓
その後のことは全然
わかりませんが、
2017年に制作された
『人形の家Part2』は
まさにそれがテーマ。
また実は日本でも、
松井須磨子がノラを
演じた1911年に、平塚
らいてうがノラのその
後を洞察するような文章
を書いているんですね。
興味津々。
というわけでおなじみ”あらすじ暴露”
サービスの第246弾(“感想文の書き方”
シリーズとしては第333回)となる今回は、
ジェンダー問題・結婚問題を扱って現代も
なお上演・映画化の続くヘンリク・
イプセンの代表的傑作『人形の家』
(1874)に挑戦です((((((ノ゚🐽゚)ノ
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まずは2022年の俳優座公演『音楽劇
人形の家』の予告編をご覧ください。👇
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文やレポートを書くんだから、
ある程度詳しくないと……
という場合まで、読者さんにより
需要は千差万別でしょう。
そこで大盤振る舞い!
“ごく簡単なあらすじ(要約)”と
“かなり詳しいあらすじ”の2段階で
お届けしますよ~(^0^)📢
内容はザッと以下のとおり。
ごく簡単なあらすじ
では参りましょう。まずはぎゅっと要約した”ごく簡単”
ヴァージョンのあらすじ。
妻のノラを「うちのヒバリさん」
などと呼んで可愛がっている。
年明けから信託銀行の頭取に就任
することになったヘルメルは、
旧知の間ながら悪いうわさもある
職員のクログスタットを解雇する
つもりでいる。
そのクログスタットがノラに面会し、
あなたの犯罪の証拠を暴露されたく
なかったら、解雇しないよう夫に
働きかけろと脅す。
犯罪とは、かつてヘルメルが重病で
イタリア転地した際の費用を彼から
借りたのだが、その借用証書の保証人
となるべき父が死の床にあったため、
署名を偽造した、つまり偽署だ(
ノラは、彼女を慕うランク医師や
10年ぶりに再会した旧友リンネ夫人
の協力を得ながら、知恵を絞って
ヘルメルの翻意を促すが、夫は
取り合わない。
画像出典:LATW
ヘルメルは解雇通告の手紙を出し、
クログスタットは予告どおり
秘密を暴露する手紙を送りつける。
事情を知ったヘルメルは激怒し、
ノラをさんざんに罵倒するが、
そのさなか、リンネ夫人との関係
修復(若いころ恋愛関係にあった)
によって心変りしたクログスタット
から偽署のある借用証書が届く。
安堵したヘルメルは証書や手紙を
焼いて、態度を豹変させてノラを
許し、やさしい言葉をかける。
が、ノラは最後の話し合いを求め、
自分は父から夫へと渡された「人形」
にすぎなかった、これからは「自身に
対する義務」を優先して夫も子供も
捨てて家を出ていくと宣言し、
それを実行する。
いかがですか?
いや、これではほんの骨ばかりで、
音楽劇やミュージカルにもなるような
イプセン作品の豊かな肉付けが全然
見えてきませんよね。
では参考までにBBC制作のデジタル
シアター『人形の家』のサワリを
ご鑑賞いただきましょうか。
まあ、それはそうでしょうね;^^💦
というわけで、どうしても「かなり
詳しいあらすじ」の方をご覧いただく
ことになるのです。
かなり詳しいあらすじ
お待たせしました。それでは、同じ場所の3日間に凝縮され、
かつかなり複雑で意外な変転も見せる、
よく練られた傑作のストーリー展開を
本格的に追ってて参りましょう。
「”」印のある白い囲みの中は原作
(上記新潮文庫の矢崎源九郎訳)
からの引用。
👉印の注釈は、より深く理解したい
人に向けてかなり突っ込んだ解釈や
解説を試みたものですが、お急ぎの
方は飛ばして行ってかまいません。
🚺【第一幕】
弁護士トルワル・ヘルメル一家は結婚8年目で子供は3人。
夫の銀行頭取就任が決まったことで
「お金の心配のいらない」初めての
クリスマスを迎えるべく、居間で快活に
イブの飾りつけなどをする妻のノラ。
ヘルメルは彼女を「うちのヒバリさん」
「リスさん」などと呼んで愛情表現し、
ノラも甘えたふるまいでそれに呼応して
いるのだが、実は夫に隠れて好物の
マクロンを口に入れたりしている。
👉このマクロン(マカロンに同じ)を食べる
ことは「歯に悪い」としてヘルメルから
禁じられていることがあとでわかります。
このあたりにもすでに二人の間の微妙な
疎隔が暗示されています。
マクロンというお菓子の歴史や、森鴎外の
翻訳論では『人形の家』のマクロンを
どう訳していたかなどについては、
こちらで詳しく情報提供しています。
・ホワイトデーに贈るマカロンの意味とは?本命へのお返しに最有力!
古典的なマカロン(画像出典:MANEKINEKO)
そこ親しいかかりつけ医のランクが
来てへルメルは自室へ消え、ほぼ同時に
ノラの親友だったリンネ夫人が突然
来訪して、二人は10年ぶりに旧交を
温める。
夫人は弟らを養うため愛のない結婚をし、
子供もないまま3年前にその夫と死別。
その後は内職などでしのいできたが、
もっと打ち込めるよい仕事を求めて
都会へ出てきたという。
ノラも結婚後の経緯──夫が役所をやめて
から働き過ぎて大病を患い、イタリア
転地のため「大金」をかけ、その後も
毎日、ランク医師の往診を受けていること
──などを話し、リンネ夫人の求職に
ついては夫が力を貸すと請け合う。
夫人がノラの苦労知らずを羨むことへの
反発もあって、彼女は、夫はその「大金」
が亡父から出たものと思っているが、
実は父に金はなかった。
自分で作ったのだが「借りた」のでは
ないとして、こうほのめかす。
ほかの方法で手に入れたかも
しれないわ。
(ソファーにそりかえる)あたしを
慕っているどこかの人からでも
もらったのかもしれなくてよ。
あたしぐらい魅力がありますとね──
謎めいた会話の続いたところへ
法律代理人のクログスタットが来訪して
へルメルの部屋へと消え、入れ替わりに
ランク医師が入って来る。
ランクは、リンネ夫人も知っている
クログスタットは、他人の腐敗を嗅ぎ
だして画策する「道徳上の病人」だが、
今、ヘルメルの銀行である職に就いて
いるという。
これを聞いたノラは笑いだし、それなら
「これからは主人がどうにでもすることが
できますの?」と喜んでマクロンを二人に
すすめ、ランクの口には無理に押し込む。
今こそ自分は幸福だが、もう一つ「やって
みたくてたまらない」「主人にぜひとも
聞かせたいこと」があるとノラは言いだす。
今ならご主人はいないから言えばいいと
言われると、「こん畜生!」って言って
やりたいと言い、二人は驚く(
ヘルメルが現れてランク、リンネ夫人と
ともに外へ出ると、3人の子供と乳母が
外から帰ってきて、ノラとかくれんぼを
始める。
そこへクログスタットが戻ってきて、
ノラと二人だけで話し始める。
実は旧知のクログスタットは、銀行での
職が保たれるようヘルメルに口添えして
ほしいと言う。
ノラが難色を示すと、クログスタットは
イタリア転地の際に自分から借りた金の
ことを夫に知られてもいいのかと脅し、
ノラはそれも仕方ない、今や彼には支払い
能力があるのだからと突っぱねる。
するとクログスタットは借用書を示し、
借金の保証人になったノラの父の署名が
その死亡の三日後の日付けになっている
ことをつきつける。
つまり署名はノラによる偽署であることを
指摘し、この犯罪が表に出れば、破滅は
お互い様だと告げて立ち去る。
ヘルメルが書類の束を抱えて帰宅し、
クログスタットの道徳的堕落が自ら犯した
偽署の罪を逃れるための策略に始まって
いること、堕落した人間の母親はたいてい
嘘つきだ、などとノラに訓戒する。
🚺【第二幕】
翌日の午後。
ノラが次の翌日の仮装舞踏会の準備など
しているところへリンネ夫人が来たので
衣装の繕いをしてもらいながら話す。
夫人はランクとノラの関係を怪しみ、
例の金もランクに借りているものと
思い込んでおり、「片をつけた方が
いい」と助言する。
ノラは誤解を解き、「片をつける」
べきものはほかにあるなどと言う。
リンネ夫人が去って、ヘルメルが
入って来ると、ノラはおどけて夫の
機嫌を取ってから、朝にも頼んでいた
クログスタットの留任をまた話題にする。
ヘルメルがそれができないことの理由を
列挙したのに対して、ノラが「そんな
ことはくだらない心配じゃありませんか」
と口を滑らすと、夫は怒って女中に
言いつけ、クログスタットの
免職通知書を投函させる。
ヘルメルが自室へ戻ったところへ
ランクが来訪したので、ノラは
彼を引き止めて話しこむ。
自身の死が遠くないという意識や、
リンネ夫人への「やきもち」のことを
言いだしたランクに、ノラはさりげなく
肌を見せたりしながら、「お願い」を
切り出そうとする。
が、その気配に反応してランクが
「あなたのために喜んで命を投げ出す」
「心から愛している」などと言いだすと
ノラはとまどい、「お願い」はもう
「申上げられません」と引っ込める。
そこへの客人の来訪が告げられ、ノラは
ランクをヘルメルの部屋へ行かせて
クログスタットと対面する。
自らの免職を知ったクログスタットは、
ノラの「偽署」について「裁判に持出す
ようなこと」は当分はしないけれども、
ヘルメルにあててこの犯罪を暴露した
手紙を持ってきていると脅す。
それを出さないための条件を尋ねると、
免職を取り消すばかりでなく「前よりも
いい地位」につけることだと言う。
ノラは強く出て「そんなことはさせま
せんよ」「いま、私には勇気が出てき
ました」などと抵抗する。
が、クログスタットは、とにかくご主人も
また仮に「あなたがお亡くなりになった
後の名誉」も「完全にわたしのポケットの
中におさえてある」と突き放し、家を出て
手紙をポストに入れてしまう。
リンネ夫人が修繕した衣装を持って入って
来ると、借金がクログスタットからだと
いうことも、「偽署」のことも打ち明け、
「これから奇蹟が起ころうとしている」
などと言いだす。
夫人は「あれで、あの人もあたしのためなら
どんなことでもしてくれた時代があった
のよ」と告げ、「あの手紙を読まないで
返してくれって言わせましょう」と提案し、
自らクログスタットの家へと向かう。
ノラは夫とランクを呼び入れ、翌日に
披露するはずのタランテッラをわざと
まずく踊ってみせ、夫も一緒に踊って
指導したくなるよう誘って時間をかせぐ。
飲み明かそうということにし、
やがて戻って来たリンネ夫人からは
クログスタットは旅行中だと知らされる。
🚺【第三幕】
翌日の夜。
階上から漏れ聞こえる仮装舞踏会の
音楽を聞きながらリンネ夫人が読書。
クログスタットが現れて、置手紙を
見てきたと言う。
リンネ夫人は若いころ彼を愛しながら
振り捨てざるを得なかった経緯を語り、
今「難破した者同士」で手を取り
合ってやり直すことはできないかと
持ちかける。
その気になったクログスタットが、
ではヘルメルに出した例の手紙は、
読まれる前に「返してもらいましょう」
と提案。
これに対しリンネ夫人は、きのうは
自分もそのつもりだったが、その後
この家で目撃したことから考えが
変わったと言う。
「こんな不愉快な秘密」はヘルメルにも
知らせて、夫婦間で「完全に理解し合う
ようにしなければ」と。
階上からヘルメル夫妻の下りて来る
気配から、リンネ夫人に促され、
クログスタットは「こんなに幸福な
気持は生まれて初めてです」と
言い残して立ち去る。
まだ踊ろうとするノラを引きずる
ようにしてヘルメル夫妻が入って
くると、リンネ夫人はノラに
クログスタットとの合意を
耳打ちして去る。
ヘルメルがノラの踊りをほめ、
かきたてられた興奮を伝えている
ところへ、舞踏会の終わりとともに
ランクが入ってきて、タバコを所望。
「次の仮装舞踏会にはぼくは姿の見え
ないものになる」などと言い残して去る。
ヘルメルは郵便受けからクログスタットの
例の手紙とランクが入れたばかりの
黒い十字つきの名刺を持ってき、ランクが
もう死ぬ気でいることを二人は話す。
ヘルメルが自室へ入ると、ノラは彼と
子供らへ「さようなら」を言いながら
玄関から出て行こうとする。
その瞬間、手紙を持ったヘルメルが出て
きて彼女を止め、お前は「一切の将来を
めちゃめちゃにした」犯罪者だと罵倒し
続けながら、ただし世間体は「今までと
変わりないように」するから家に
とどまれと命じる。
そこへクログスタットから、偽署された
証書の入った手紙が届き、ヘルメルは
「助かったぞ!」と喜ぶ。
ヘルメルは証書と手紙を焼いてしまい、
ノラに対しては、すべてを許すから、
今後もおれに守られて生きればよい
などと説教する。
普段着に着かえたノラは、真面目な話が
あるからと夫を坐らせ、父とあなたの
二人は私を少しもわかっていなかった、
「愛していた」のではなく、ただ「かわい
がる」ことを「いいお慰みに」していた
のだと語り出す。
父はあたしのことを人形っ子と
呼んで、一緒に遊んでくれました。
〔中略〕
あなたも父もあたしに対しては
大変な罪を犯していらっしゃる
のです。
あたしが何一つできない女になった
のも、みんなあなた方の責任です。
では「この家へ来て幸福じゃなかった
のか」と問われると「実はすこしもそう
ではなかった」、「ただ面白かった
だけ」で、この家庭は「ほんの遊戯室に
過ぎませんでした」と答える。
あたしは実家で父の人形っ子だった
ように、この家ではあなたの
人形妻でした。
〔中略〕
あたしは先ず自分自身を教育
しなければならないのです。
〔中略〕
あたしは自分というものと外の
世間とを正しく知るために、
自分一人になる必要があるのです。
夫や子供への「神聖な義務」はどう
するのかと詰問されると、「ほかにも
同じように神聖な義務」がある、
それは「あたし自身に対する義務です」
と答える。
今夜起こるかもしれないと期待していた
「奇蹟」は、あなたがあの偽署問題に
ついて名誉も地位も捨てて「その罪人は
おれだ」と名乗り出ることで、自分は
そのために命を捨ててもよいと思って
いたけれども、それも起こらなかった。
だからもう「他人の家で夜を明かす」
ことはできないと、つけていた指輪も
互いに相手に戻す。
もう永久に「他人」なのかと問う
ヘルメルに対し、ノラはそうでなく
なるには「奇蹟中の奇蹟」が必要だと
告げて、家を出ていく。
ノラのその後と『人形の家 Part2』
さて、いかがでした?感動する、あるいはむしろ反発するなど、
感想はいろいろでしょうが、ともかく
「気になる」という人が多いのが
そのエンディングですね。
つまり夫を捨てて出ていくのは理解できる
として、おいおい、3人もいる幼い子供は
どうするんだ?
二度と帰らないと言っているところを
みると、これから子供も夫と乳母に
丸投げして、まったく一人で人生を
切り開いていくつもりなんだろうか❓
ここは初演当時から世界的に議論を呼んで
きたトピックですが、138年後の2017年に
なって、アメリカの新鋭劇作家ルーカス・
ナス(Lucas Hnath)による『人形の家
Part2』がある劇場で上演されました。
好評につきブロードウェイでも公開され、
日本を含む各国にも広がったようです。
日本版『人形の家 Part2』は2019年、
PARCOプロデュース、栗山民也演出、
永作博美主演で東京公演(紀伊國屋
サザンシアターTAKASHIMAYA)が
ありました。
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日本への影響:平塚らいてうの批判
さて、さかのぼって『人形の家』が最初に日本に入って来たころのことをザッと
見ておきましょう。
よく知られているのは1911(明治44)年、
文芸協会の第2回公演がこれで(第1回
は『ハムレット』)、ノラを演じた
女優が松井須磨子だったこと。
そしてこの上演には、訳者で演技指導者
だった島村抱月との不倫スキャンダルで
須磨子が文芸協会を追われる…という
オマケもつきました。
原作ではランク医師からノラへの不倫の
恋愛感情は明確に描かれていたわけで、
そこが文芸協会の劇でどう扱われていた
のかも興味をそそるところですが、
録画もないこととで、確認は困難です。
また劇中の「マカロン」は日本人に
分かりにくいから飴玉にしろという
議論もあり、森鴎外がこれに反論
したのは1914年のことでした。
👉この問題については、上で紹介済みの
こちらの記事をご参照ください。
・ホワイトデーに贈るマカロンの意味とは?本命へのお返しに最有力!
さて、1911年といえば女性のみの手に
なる文芸雑誌『青鞜』が発刊されたと
いう意味で、日本のフェミニズムが
産声を上げた年とも言えます。
となれば、この雑誌が『人形の家』を
採り上げないはずもなく、同人の
何人かが誌上で論じているのですが、
最も注目されるのは、やはり主導者
平塚らいてうによる「ノラさんに」
(1912年1月号掲載)でしょう。
『青鞜』創刊号表紙(長沼千恵子装幀)
これを覗いて見た人は、らいてうが
ノラに対して意外に否定的であることに
驚くかもしれません。
ノラさん、あなたは人間の
誰れでももっている二重の生活という
ものをおもちにならなかった。
舞台の上でお芝居する役者としての
生活はもっていらっしゃるけれど、
傍観者として自分のことをも他事
(よそごと)に見ている色も香もない
静平な世界をもっていらっしゃら
なかった。
だからあんなことになったのです。
というふうに書き出して、ノラばかりか
実はヘルメルも「人形」にすぎず、
「物の根底に少しも触れて」いない、
だからこの劇は「どこかおめでたい悲劇」
のようだと、痛烈に批判していきます。
ノラが「ほんとに自覚」するのはこれからだ
という彼女の主張の骨子だけ抜き出すと
ザッと以下のようなところでしょうか。
あなたの行く手には「第二の悲劇」が
待っている、それは「あなたの内部から
湧いてくる」、かつて夢にも知らなかった
「自己心霊上の悲劇」です。
この「悲劇」によって「ノラ」と呼ばれる
もの──「虚偽の自分、幻影の自分」──を
「痕跡もなく殺しつくした時」にこそ、
はじめて「真の意味で心の底からの
新しい女になられる」のです。
その時、
自分に対する義務を尽くす
ために他人よばわりしてお捨てに
なった御良人やお子さんはもとより
全人類が皆んな御自分であった
ことをお悟りになるでしょう。
〔中略〕
奇蹟の奇蹟、ほんとの奇蹟とは
これです。
👉「奇蹟の奇蹟」というのは上記
「あらすじ」のラストで「奇蹟中の奇蹟」
とされていた表現を受けてのもので、
ノラが何度か口にしながら、結局
起きないままに終わる「奇蹟」への
らいてう独自の批評です。
「傍観者として自分のことをも他事に
見ている色も香もない静平な世界」とか
「殺しつくした」とか「全人類が皆んな
御自分であった」とかの表現が禅の
世界から流れ込んでいることは
明白のように思われます。
以上、引用は『平塚らいてう著作集』
(👇)の第1巻から.
⦅画像引用元⦆日本の古本屋
さてさて、らいてうのこの議論を読むと、
なあんだ、『人形の家 Part2』はすでに
ここにあったではないか❕
と言えなくもないようですが、ともあれ
“らいてう版”『Part2』は、その独特の
言葉遣いからすでに明らかなとおり、
微妙に宗教の匂いのするものです。
実際、彼女の活動の原動力をなしていたのは
日本女子大学在学中から修行に打ち込んで
いた禅(臨済宗)であったこと、それとの
関わりから色々と妙な事件も起こして
しまったことが『青鞜』創刊につながった
ことは、本人も自伝などで隠さずに語る
ところなのです。
👉ん? 「妙な事件」とは?
詳しいことはこちらで情報提供して
いますので、ぜひご参照ください。
・平塚らいてうがホントにすごいのは?若き美才女の不倫心中逃避行…なぜ?
『青鞜』時代のらいてう
またらいてうや『青鞜』、新しい女を
めぐってはこちらも参考までに。
・ドラキュラのあらすじ【簡単&詳しく】原作小説と日本の意外なつながり
・夏目漱石 三四郎のあらすじを簡単に【&章ごとに詳しく】2段階で解説
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まとめ
さて、これだけの情報があればもうだいたいOKですよね。
イプセン『人形の家』と、その
問題含みのエンディング。
劇が終った後のノラがどうなるのかを
めぐって書かれた『人形の家 Part2』
や平塚らいてうの「ノラさんに」の
概要をめぐっては……
いや、まだ不十分だという人は上に紹介
してきた動画や別記事を見直すところ
から、独自に調査していただくほか
ありません。
あるいは視野を広く取れば、《女性が
男性によって人形のように扱われる》
という『人形の家』的問題は、古今東西
多くの小説・演劇・映画などに見ることが
できるので、それらを覗いてみることも
大いに勉強になるでしょう。
👉たとえばバーナード・ショー作の
喜劇『ピグマリオン』(1914)。
1938年に映画化され、さらに1964年には
『マイ・フェア・レディ』と題を変え、
オードリー・ヘップバーン主演の
ミュージカル映画として大ヒットしました。
この流れについてはこちらで詳しく
情報提供していますので、
ぜひご参照ください。
・マイフェアレディ(映画)のあらすじ//辛口の原作はマザコン物語?
映画『ピグマリオン』と『マイ・フェア・レディ』のポスター
ところで、この”My Fair Lady”(私の
〔だけの/ための/特製の〕美女)を
創造したいという情熱は、日本でも
たとえば『源氏物語』で若紫(紫の上)
に、あるいは近代なら谷崎潤一郎の
『痴人の愛』で主人公がナオミに注ぐ
熱い思いにほぼ同じものを見ることが
できます。
詳しくはこちらをご参照ください。
・源氏物語 若紫のあらすじを簡単に/&詳しく登場人物の関係を解説
『源氏物語絵色紙帖』より
・谷崎潤一郎 痴人の愛のあらすじ⦅ナオミと譲治のM的結末⦆
さあ、いかがですか。
これだけの情報があれば、感想文や
レポートの材料には困りませんよね。
ん? 書けそうなことは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?
そういう人は、ぜひこちらを
ご覧くださいね。
👉当ブログでは、日本と世界の
文学や映画の作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。
参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
こんなコメントが来ています