夏目漱石 門の徹底解説【あらすじを簡単に&詳しく 】なぜ円覚寺へ?
やあやあサイ象です。
“感想文の書き方”シリーズもはや
第49回、あらすじ暴露サービスの
第26弾となります。
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今回は夏目漱石の『門』(1910)について
「あらすじ」を押さえながら徹底解説
していきたいと思います。
『門』といえば、『三四郞』(1908)
『それから』(1909)と来た三部作の
掉尾(ラスト)を飾る名作です!
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さて、一口に「あらすじ」をといっても、
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文やレポートを書くんだから、
ある程度詳しくないと……という場合まで、
千差万別でしょう。
そこで出血大サービス((((((ノ゚🐽゚)ノ
「ごく簡潔なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意してますよ~(^^)у
全体の内容はザッと以下のとおり。
ごく簡単なあらすじ(要約)
それではさっそく参りましょう。まずはぎゅっと要約した
「ごく簡単」ヴァージョンのあらすじ。
野中宗助は京都帝大中退者で、今は
下級の役人として妻の御米と
東京に借家住まい。
叔父の佐伯の急死により、父の遺産が
なくなっていること、佐伯に預けていた
十歳下の弟、小六も引き取らざるを
得なくなる。
借家の家主は坂井という気さくな
“高等遊民”で、宗助は坂井家を
訪問するようになる。
ある日、宗助がお米に、坂井家が
陽気なのは子供がいるからだと口に
すると、御米は苦し思いを打ち明ける。
御米はかつて宗助の学友、安井の妻の
身で宗助と結ばれてしまったという
過去があった。
「その罪」のせいで子供は育たない
と易者にも宣告されたという。
『門』スペイン語版表紙
年始の日、坂井が、モンゴルで活動する
弟が友達の「安井」をつれて来ると
言い、宗助はその名に衝撃を受ける。
思い悩む宗助は、やがて休暇を取り、
鎌倉円覚寺で参禅修行を試みる。
が、光は見えないまま帰京し、
役所通いの日常生活に戻る。
4月になると昇級があり、
御米は喜ぶが、「うん、然し
又じき冬になるよ」と宗助。
下級の役人として妻の御米と
東京に借家住まい。
叔父の佐伯の急死により、父の遺産が
なくなっていること、佐伯に預けていた
十歳下の弟、小六も引き取らざるを
得なくなる。
借家の家主は坂井という気さくな
“高等遊民”で、宗助は坂井家を
訪問するようになる。
ある日、宗助がお米に、坂井家が
陽気なのは子供がいるからだと口に
すると、御米は苦し思いを打ち明ける。
御米はかつて宗助の学友、安井の妻の
身で宗助と結ばれてしまったという
過去があった。
「その罪」のせいで子供は育たない
と易者にも宣告されたという。
『門』スペイン語版表紙
年始の日、坂井が、モンゴルで活動する
弟が友達の「安井」をつれて来ると
言い、宗助はその名に衝撃を受ける。
思い悩む宗助は、やがて休暇を取り、
鎌倉円覚寺で参禅修行を試みる。
が、光は見えないまま帰京し、
役所通いの日常生活に戻る。
4月になると昇級があり、
御米は喜ぶが、「うん、然し
又じき冬になるよ」と宗助。
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いかがでした。
これでおおよそ、どんな小説かは
見当つきましたよね?
ん? でもやっぱりもう少し立ち入って
もらわないと話の流れも、面白みも
よくわからない?
まあ、それはそうですよね。
というわけで、結局「詳しいあらすじ」
の方へ進んでいただくことになる
のですね;^^💦
かなり詳しいあらすじ
それでは参りましょう。漱石作品中の”いぶし銀”とも評される
この『門』、派手な展開には乏しいの
ですが、『それから』を読んだ人なら、
友人から妻を奪った主人公が”それから”
どうなるのか……
という興味で読んでいくことも
できるんですね。
それでは入っていきましょう。
「一」から「二十三」まである章を私の
判断で「起承転結」の4部に分け、
ところどころ👉印で注釈・解説を
入れながら進めます。
「 」内は上記文庫本からの引用です。
【起】(一~五)
役所勤めの野中宗助と妻の御米は、日当たりの悪い崖下の借家に
住んでいる。
秋の日曜日、縁側で横たわる宗助と、
茶の間で裁縫する御米は、叔父に
先立たれた佐伯の叔母との交渉について
「行ってよく話を」するか、手紙で
すますか、などについて話す。
宗助は東京育ち、京都帝国大学を経て
広島、福岡と移り住んだ人間だが、
広島にいた時に父に死なれた。
この時、母もすでになく、長男であった
ため、上京してこの叔父に家屋敷や
骨董類の売却など諸事万端を依頼し、
同時に十歳下で当時十六歳の弟、小六も
学資千円とともに預けていた。
ところが、家屋敷の売却代金などに
ついて報告もないまま叔父が急死し、
小六の今後などの諸問題が発生した。
もう学資は出せないと叔母が言っている
と小六から聞き、宗助は佐伯を訪ねる。
叔母いわく「売却で手許に残った金は
四千円以上あったが、それで購入した
神田の家屋が火事で焼けて無に帰した」
また言う。「宗助はあんな事をして
廃嫡(はいちゃく)に迄されかかった奴
だから、一文だって取る権利はない」
と叔父は言っていた……と。
👉その「あんな事」が何なのかは
この時点ではまだ謎。
同じような謎めいた伏線がいくつか
張られていきます。
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【承】(六~十二)
結局、小六は佐伯の家から宗助宅へ転居することに決まる。
彼の部屋を確保する必要から、宗助
夫婦は佐伯から持ち帰って場所を
取っていた父の遺産、酒井抱一の
屏風を売ることに決め、古道具屋と
数次の交渉の末、35円で売り払う。
毎月家賃を届けている崖上の家主は、
坂井という富裕で子だくさんの賑やかな
家だが、ある夜、ここに泥棒がはいって
宗助宅の庭に手文庫を落としていく。
それを届けたことから近づきになり、
宗助は坂井家を訪問するようになる。
👉帝国大学を出ながら職に就かない坂井は、
漱石の小説によく出てくる「高等遊民」。
京都帝大にいたことのある宗助とで互いに
興味を持ち合っても不思議はありません。
(大学出は希少な時代)
ある日、宗助は坂井の家に、宗助が
売り払った屏風があるのを見て驚く。
事情を話すと、坂井はこれは80円で買った
「掘り出し物」だ、そんなことなら、
あなたから直接買えばよかった、
古道具屋のやつ「けしからん」と怒り、
これにより二人の親交が深まる。
【転】(十三~十六)
坂井家のことが夫婦の話題に上ることも増え、宗助はある時、明るいのは金が
あるからだけじゃない、「子供さえ
あれば、大抵貧乏な家でも陽気になる
ものだ」と一般論として口にする。
これを重く受けた御米は、その夜、床に
ついてから、打ち明けて謝ろうと思い
ながら「貴方に御気の毒で」この日まで
言えなかったことを語り出す。
これまで三度妊娠しながら一人も
育たなかったが、三度目は妊娠中、
足を滑らせて尻餅をついたせいで、
自分が殺したのと同じだ()と
その罪を自責してきた。
易者に見てもらうと、「あなたは人に
対して済まない事をした覚がある。
その罪が祟っているから、子供は
決して育たない」と宣告された…と。
👉このエピソードをとっかかりに、
物語はおもむろに過去へと
さかのぼります。
京都帝大在学中、親しくしていた安井が
同棲し、「これは僕の妹だ」と宗助に
紹介した女が御米だった。
宗助と御米の間の「事」は早春に始まり
初夏に終わった。
「大風は突然不用意の二人を吹き
倒し」、二人は家族、友人、一般社会
から、そして大学からも棄てられた。
👉「事」の経緯は詳述されません。
正月の三日には坂井に呼ばれ、
小六が遊びに行く。
七日に宗助が遊びに行って話すうち、
坂井の家には今、書生がいないので、
小六をよこしてはどうかと坂井が
提案し、宗助は喜ぶ。
が、そのあと、蒙古(モンゴル)で
「冒険者(アドベンチュアラー)」に
なっている弟がいて、当地での友達の
「安井とか」いう男と飯を食いに
来るから一緒にどうかと誘われる。
現代モンゴルの遊牧風景
満州へ渡ったと聞く「安井」の名が
出たことに宗助は衝撃を受ける()。
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【結】(十七~二十三)
帰宅して寝込んだ宗助は、安井の件を
御米に告げて「共に苦しみを分って
貰おう」とも思うが、勇気が出ず、
ごまかす。
不安感に苦しむ日が続き「心の実質が
太くなるもの」を求めて、「宗教」を
思ううち「坐禅」を思いつく。
禅学に関心のあるらしい同僚から
紹介状をもらい、御米には「少し脳が
悪いから」鎌倉へんで遊んでくると
告げて、鎌倉円覚寺の門をくぐる。
円覚寺 道場への門(観光客は入れません)
老師から「父母未生以前本来の面目」
という公案をもらい、これを考える
ように言われるが、考えても
いっこうにらちがあかない。
数日後、回答を用意して老師の室に
入り、「ただ一句」を述べるが、
「もっと、ぎろりとした所を持って
来なければ駄目だ」と退けられる。
👉この「ただ一句」の内容や、
漱石自身の円覚寺参禅の経緯などに
ついては後章「 」をご参照ください。
「要するに、彼は門の下に立ち竦
(すく)んで、日の暮れるのを
待つべき不幸な人であった」
収穫なく東京へ戻り、役所へ通う
日常が再開される。
春、役所の人員整理の対象から宗助は
まぬがれ、昇級もあったので、
御米はご馳走を用意する。
「本当に有難いわね。漸くの事春に
なって」というお米に「うん、然し
又じき冬になるよ」と宗助。
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解説:宗助の吐いた「ただ一句」とは?
さて、上記の感想文例は、主人公夫妻の
愛の問題に焦点を絞り、漱石の別作品
『こころ』との比較を試みたものでしたが、
もちろんテーマは愛の問題でなくて
かまわないわけです。
冒頭の問答でも話題になっていたとおり、
『門』は悪く言えば、主題の分裂して
しまった失敗作でもあります。
「愛」の世界と分裂してしまった
もう一方の端にあるのが「宗教」。
こちらの主題に突っ込んでいく
というのも、高度な批評的感想文を
書くための有効な手段でしょう。
上記の「あらすじ」記事の方に記述して
いますが、鎌倉円覚寺に参禅した宗助は
老師から「父母未生以前本来の面目」
という公案をもらい、これを考えるように
言われるが、考えてもいっこうにらちが
あきません。
数日後には、なんとか回答を用意して
老師の室に入り、「ただ一句」を
吐いたものの、「もっと、ぎろりとした
所を持って来なければ駄目だ」と
たちまち退けられるのです。
この「ただ一句」について
考えてみてはどうでしょうか。
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それがどういう言葉であったかは、
作品中には書かれていないのですが、
漱石自身の書いた別の文章のうちに、
それらしきものがあるんです。
すなわち漱石自身、28歳のころ、やはり
円覚寺に参禅した経験があるのですが、
その際、漱石自身も宗助と同じく
「父母未生以前本来の面目」という
公案をもらいました。
そして同じように見解(けんげ。回答)を
提示してやはり同じように「その位な事は
少し学問をしたものなら誰でも云える」
「もっと、ぎろりとした所を持って来い」
と退けられたんですね。
その回答の内容ですが、実はを漱石は
これを、30代の英国留学期以来書きためた
『ノート』のある箇所に書き残して
いるのです。
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物を離れて心なく心を離れて物なし
他に云ふべきことあるを見ず。
物を離れて心なく心を離れて物なし
他に云ふべきことあるを見ず。
(『漱石全集』第21巻(1997),46ページ)
なるほど、哲学的には正しいかもですね。
「父母未生以前」(自分の両親が生まれる
前)には「心」(主観)はないんだから、
「本来の面目」(自分のもともとの顔)
という「物」(客観)もありようがない
(認知が成立しない)と。
まことにごもっともです。
でも「禅学」的にはダメなんですね、
これでは……( ̄∀ ̄)。
その経緯を『門』という小説に
書き著わしたことをどう見るか。
「合理的に思考する者はついに
宗教の門に入っていけない」という
ことなのか、それとも……
そのあたりについて、自分の考えを
述べていけば、これまた高度に
批評的な感想文が書けるはずですよ。
👉禅の公案というものについては
こちらもご参照ください。
・夏目漱石 夢十夜 第六夜のあらすじと解説:運慶が生きている?
・三島由紀夫 金閣寺の詳細なあらすじ:難解な柏木も読み解く
・金閣寺(三島由紀夫)で感想文【2000字の例文】猫を斬る意味は?
まとめ
さあ、どうでしょう?「読書感想文」の書き方の王道としては、
まず自分が宗助なら、御米ならと、登場
人物に入り込んで考えてゆくことですよね。
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でも、そういう主流からはズズッと
ズラした傍流的な行き方もあるわけです。
いわゆる「感想文」じゃなく、「批評文」
とかレポート・小論文などを書こうという
場合はますます、そういうズラシを
考えていいわけです。
たとえば、宗助は東京・京都・広島・福岡・
鎌倉とずいぶんよく移動する人間ですが、
このことの意味(なぜそう設定されたか)
を考えてみるとか、
宗助夫婦の意思疎通が完全ではない
(夫が鎌倉へ参禅に行ったことを
御米は知らないことなど)ことを
どう見るか、とか……。
👉ん? 具体例がほしい?
それでしたら、参考までにこちらの
記事を覗いてみてください。
・夏目漱石 門で批評的な感想文を【800字の例文つき】愛か宗教か…
鎌倉の路傍に…
また『門』は、これに先行する『三四郞』、
『それから』とで三部作ということに
なっていますが、この三作の連続性という
視点から読むと、どうなのか。
👉そのあたりを考えたい人は
ぜひこちらの記事も参照してください。
・夏目漱石 三四郎のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説
・漱石 三四郎で感想文:美禰子の愛は?”無意識の偽善者”とは?
・漱石 それからのあらすじ:簡単/詳しくの2段階で解説
・漱石の名言でたどる恋愛💛『吾輩』猫が読み直す『こころ』etc.
👉そのほかの漱石作品については
こちらでお探しいただければ
と思います。
・夏目漱石のおすすめの本は?小・中学生からシニアまで人生経験の段階別
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夏目漱石の本:ラインナップ
読書感想文・読書レポートを書こう
という場合も、これだけ情報が
あればもう十分ですよね。
頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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