文鳥(夏目漱石)で読書感想文を【あらすじ&2000字の例文つき】 | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

文鳥(夏目漱石)で読書感想文を【あらすじ&2000字の例文つき】

サクラさん
読書感想文は夏目漱石で
行こうと思うんですが、
『こころ』などの長編
小説は長いし『夢十夜』
のどれか1本だと逆に
短かすぎてうまく
書けません。

どうしたらいい
でしょうか(😿)

ハンサム 教授
困った人ですね;^^💦

『文鳥』という短編
小説はどうですか。

『夢十夜』全体と同じ
ぐらいの分量です。


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サクラさん
あ、それいいかも(😸)

で、どんな内容ですか?

ハンサム 教授
文鳥が死んでしまった
のを怒って、漱石先生が
16歳の下女を怒鳴り
つけるんです。




サクラさん
ギャー(叫び) つまりそれ
ほど文鳥を愛していた?

ハンサム 教授
う~ん、どうかな。

文鳥に透かし見ていた
「昔の女」への思い
なのかもしれない。

サクラさん
キャー、ますます
面白そう(😻)


というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ第268回となる今回は
夏目漱石の短編小説『文鳥』(1907)
に挑戦です((((((ノ゚⊿゚)ノ
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簡単なあらすじ

ストーリーがわかっていないとやはり
お話になりませんので;^^💦、まずは
簡単にあらすじを紹介しておきましょう。

「自分」は「三重吉」の勧めで文鳥
(白い品種)を飼い始める。

二、三日後の朝、籠を箱から出して
やると、文鳥は「いきなり眼(め)を
しばたたいて、心持首をすくめて、
自分の顔を見た」。

  

その時「昔し美しい女を知っていた」
と記述は過去に飛び、この女の首筋
あたりに「いたずら」をした「自分」
の少年時代がよみがえる。

ある日、文鳥の籠を縁側に出して
いたら猫の襲撃を受けたらしく、
その後、弱った文鳥はついに死ぬ。

「自分」は下女に死骸を放り投げて
「餌をやらないから、とうとう死んで
しまった」と怒鳴りつける。

子供たちが文鳥の墓を作る。

ん? この話のどこが面白いの?

いやいやもちろん、面白いと思う
ところがまければ感想文も書けない
わけですが…;^^💦

ま、たとえば死んでしまった原因とか、
文鳥の背後に昔の恋人がチラつくとか、
微妙な心理の動きが、非常に美しい
文章で書き継がれていくわけで、
そのあたりに芸術的な面白味を感じる
ことが出来るのでは?

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2000字の例文

では感想文に取り組みましょう。

まずは一つのお手本というか例として
2000字(原稿用紙5枚)程度という想定で
サクラさんが試作し、ハンサム教授が
添削したものをお目にかけます。

これ、実のところ、感想文というよりは
大学生などの書く「読書レポート」に
近いもので、高校生諸君などは高度に
感じるかもしれませんが、難解という
わけではありません。

ひとつ挑戦する気持ちで読んで
みてください。

 夏目漱石の『文鳥』は、「三重吉」
とか「筆子」とか、作者周辺の人物が
実名で登場する身辺雑記的な文章で、
読み進めながら、はたしてこれが
「小説」と呼べるのか疑問に
感じていた。

が、読み終えた時には、もし「小説」の
定義が「散文の芸術作品」であるの
なら、これは立派に小説になっている
という思いを強くした。

つまり『文鳥』は、いい加減に書き
流されているようでいて、実は練りに
錬られた芸術だとわかったのだ。

そこでこの感想文では、特にどのような
ところでこれが芸術たりえているのか、
気づいたことを述べていきたい。

    
 まず押さえたいのは、ラストで文鳥に
死なれてしまった「自分」の怒りが
凄まじいもので、理不尽とも思える
点だ。

外出から戻って文鳥の死に気づくと、
下女を呼びつけ、死骸を握っていきなり
彼女の目の前に放り出し、睨みつける。

  


「餌をやらないから、とうとう死んで
しまった」ときめつけ、「どこへでも
勝手に持って行けと怒鳴りつけ」る
のだ。

しかしながら、文鳥が半日「餌」を
もらえないだけで死ぬとは考えられず、
実際の死因は、前の日に「自分」が
書斎で仕事をする間、籠を縁側に
置いていたために猫の襲撃を受けた
こと(たとえばその際の負傷の悪化)
としか考えられない。

つまり文鳥の死に責任があるのは、
下女ではなく「自分」自身なのである。

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 にもかかわらず、十六歳(数え年)に
しかならない若い下女を一方的に怒鳴り
つけるとういうのは、八つ当たりとも
見えるが、いずれにせよ、有徳の士の
することではないだろう。

だから、文学を道徳的に読む傾向の強い
人であれば、そのような不徳の「自分」
が結局、罰せられることもない物語を
不当に感じてしまい、この作品をあまり
いいとは思わないはずである。

だとすれば、その意味での不道徳さにも
かかわらず、『文鳥』が漱石の短編小説
の中で最も高い人気を保持してきた
のは、どのような理由によるの
だろうか。

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 様々な要因があるのだろうが、私が
主因として挙げたいのは、この作品の
随所に実現された芸術的な美が、
「自分」の下女いじめのような小さな
悪を帳消しにして余りある大きさを
もってしまった、ということである。

具体的には、まずこの部分だ。

文鳥を飼い始めて二、三日後の朝、
籠を箱から出して明るみに出して
やると、文鳥は…

いきなり眼(め)をしばたたいて、
心持首をすくめて、自分の
顔を見た。

 昔し美しい女を知っていた。

この女が机にもたれて何か考えて
いる所を、後ろから、そっと行って、
紫の帯上(おびあげ)の房になった
先を、長く垂らして、首筋の細い
あたりを、上から撫で廻したら、
女はものう気に後ろを向いた。

その時女の眉は心持ち八の字に
寄っていた。

それで眼尻と口元には笑いが
萌(きざ)していた。

同時に恰好の好(よ)い頸(くび)を
肩まですくめていた。

文鳥が自分を見た時、自分は不図
この女の事を思い出した。

  
   帯上(帯揚げ)を締める


つまり文鳥と顔を見合わすことで、
昔親しかった女性を連想したわけで、
これ以降、「自分」はこの連想から
逃れられず、文鳥とこの女性とは
切っても切れない一体の存在に
なってしまうのである。

そのことが、この女性がこのいたずらの
ニ、三日後には結婚をきめたことと、
文鳥が籠に囚われれた存在であるという
境遇の類似もほのめかしながら、
こののち随所に重ねられていく。

しかもその描き方が淡々として
さりげないために、せっかちな
読者なら気づかないで読み飛ばして
しまうかもしれず、だからラストで
怒る「自分」を許しがたく感じる
かもしれない。

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 私自身はといえば、おそらく「自分」
が恋していたこのの女性と文鳥とを
オーヴァーラップさせる文章のあまりの
美しさによって、「自分」の小悪など
洗い流されてしまった、というのが
実感だ。

そしてこれこそが芸術の力だと思う
のだが、あくまで道徳的な筋を通そう
とする読者なら、このように「美」に
よって「悪」を免罪するかのような
私の読みを非難するかもしれない。

これに対しては、晩年の講演「模倣と
独立」で漱石自身が「元来こういう
考えをもっている」として述べた
特異な思想をもって答えたい。

「泥棒」なり「人殺し」なりの罪を
犯した者も…

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自分の心の経路を有りの儘(まま)に
現わすことが出来たならば、
そうしてそのままを人に
インプレッスすることが
出来たならば、すべての
罪悪と云うものはないと思う。

すべて成立しないと思う。

  


それをそう思わせる最適の器が
「有りの儘を有りの儘に書いた
小説」であり、それを書き得た
人は、どんな極悪を行ったにせよ
「描いた功徳に依(よ)って正に
成仏する」というのだ。


『文鳥』の「自分」=漱石は
まさにこれをなしえている。

下女いじめという「自分」の悪も
私はとがめる気にならないが、
それもこの「功徳」によるのだろう。
           (1984字)


どうです?

なかなかよく書けているでしょう。

いやいや、上出来だからって
これをそのまま丸コピ(全文まるごと
コピペ)するのはNGですよ。

それは剽窃(つまりパクリ)で立派な犯罪
ですから、使うなら部分的にアイディア
だけ盗んで、あくまで自分の文章で書く
ようにしてくださいね。

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「描いた功徳」で罪が消える?

ところで、上記感想文の後半に持ち
込まれた漱石の特異な「考え」に
ついてはどう思われました?

共感する人は自分の感想文やレポートに
取り込んでいいと思いますが、もちろん
不賛成なら使うべきではありません。


まあ、当然のことながら賛否の
分かれるところでしょうね。

でもこれ、私見では漱石文学全体に
しみわたっている重要な思想の
一つだろうと思うんですね。

   
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早い話が代表作と見られている
長編小説『こころ』(1914)。

その後ろ半分をなす「先生の遺書」は
それ自体、悪を犯してしまった(と思う)
人が「有りの儘を有りの儘に書いた小説」
にほかならず、書いた「先生」は「描いた
功徳に依(よ)って正に成仏する」ことが
作者によって祈願されているように
感じられます。


このような「犯してしまった悪」をどう
すれば「成仏」(成仏は本来「死ぬ」こと
ではなく「救われる」こと)できるか
というのが、漱石のその他の長編小説でも
また『文鳥』の翌年に書き継がれた短編
『夢十夜』などでも重要なテーマに
なっているように思うのです。
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と思います。

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まとめ

さあ、これだけの情報があればもう
バッチリですよね、読書感想文。


ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?

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う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を知るには
実際に出品され大臣賞などを受賞している
感想文をじっくり読んで分析してみるのが
いちばんの早道。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

    

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

 

そちらで解説している「書き方」を踏まえて
当ブログでは多くの感想文例を試作し提供
してきましたが、このほどそれらの成果を
書籍(新書)の形にまとめることができました
ので、ぜひこちらも手に取ってご覧ください。
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👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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