悪人(小説)のあらすじ:吉田修一の傑作長編を地図つきで


やあやあサイ象です。

おなじみ「あらすじ」暴露サービスも
とうに大台を超えて今回でなんと
121弾((((((ノ゚⊿゚)ノ

「感想文の書き方」シリーズ全体では
180回となる今回は
ついにこの話題作に挑戦!

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2006-07年『朝日新聞』に連載され、07年に
刊行されるや毎日出版文化賞・大佛次郎賞を
受賞し、2010年には英訳Villainも刊行
されるなど、賞賛を浴び続ける吉田修一さんの
長編『悪人』です((((((ノ゚⊿゚)ノ
   👇
       



2010年には妻夫木聡・深津絵里主演で
撮られた映画(李相日監督)も評価が高く、
モントリオール世界映画祭ワールド・
コンベンション部門で深津絵里さんが
最優秀女優賞を受賞されました。

また『朝日新聞』連載中の挿絵を編集した
た束芋さんの絵本『悪人』も不思議な
魅力を放っています。
 👇



まずは「ごく簡単なあらすじ」から。


👉 ごく簡単なあらすじ(要約)

ぎゅっと要約してしまうと
こんな感じになります。

三瀬峠で発生した若い
保険外交員女性の殺害事件。

行方をくらました大学生、
増尾圭吾が容疑者と目されたが、
拘束されてからの供述などから、
真犯人として土木作業員の
清水祐一が浮上。

      

祐一は事件後に知り合った
馬込光代を連れて何日間かの
逃避行を試みるが、やがて
逮捕される。

え? これじゃ全然わからん?

まあそうでしょうね;^^💦

それでは、映画予告編の動画を
ご覧いただきましょうか。👇



ん? これでもわからん?

それでは、やはり下記の「かなり
詳しいあらすじ」を読んでいただく
しかないんですね。

どちらもちゃんと読むのはしんどい…
という方のために「あらすじ」を暴露
しちゃおうというわけですが、もちろん
ネタバレありになりますので、結末を
知りたくない人は絶対に読まない
よにしてくださいね;^^💦


👉 かなり詳しいあらすじ

この作品、視点人物が一人ではなく
次々に切り替わって進んでいく
ところも現代的で華麗なんですが、
「◇」という記号がその切り替わりを
示す働きをしていますので、下記の
「あらすじ」でも踏襲します。
(全部を拾うことはできていませんが)

「”」印のグレーの囲みと
「…」内は原作からの引用です。

では始めましょう。

【第一章 彼女は誰に会いたかったか?】

高速道路の開通以来さびれ、幽霊が出る
ともいわれる三瀬峠で、福岡市在住の
保険外交員の石橋佳乃(よしの/22歳)の
絞殺死体が発見され、容疑者として、
2002年1月6日、長崎市在住の
土木作業員が逮捕された。

     ◇
久留米で理容店を営む佳乃の両親、
石橋佳男・里子夫妻は前年12月9日に
会社の借り上げアパートに住む佳乃と
電話で話していた。

     ◇
佳乃はこれから友達と食事に行くと言って
電話を切り、同僚の安達眞子(まこ)と
谷元沙里(さり)とで鉄板餃子を食べながら、
以前3人で天神のバーで接触した金持ちの
大学生、増尾圭吾(けいご/22歳)を
話題にする。

佳乃はその後、増尾とデートしていて、
今夜もこれから会うのだと言って2人と
別れたが、実はそれは嘘。

彼女が会う約束をしていたのは、
出会い系サイトで知り合った土木作業員、
髪を金色に染めた清水祐一(27歳)だった。

福岡県福岡市博多区 東公園

👉東公園近辺地図(左上の「+/-」で縮尺を調節できます)

     ◇
東公園の横に車を停めて待つ祐一は、
以前ラブホテルで「三千円ならいいよ」
と言われて撮った佳乃の裸の写真を
携帯で見直していた。

約束の10時を50分も過ぎてから現れた
佳乃に、祐一はクラクションを鳴らす。

その後の経緯はここでは
描かれずスッ飛ばされて
先へ進みます。

サスペンス(宙づり)
ドラマの心憎い
進行ぶりですね。

     ◇
翌日午前、佳乃の上司、寺内五郎は
警察署で死体の身元確認を求められ、
佳乃に間違いないと証言する。

     ◇
若い刑事から事情聴取を受けた眞子は、
佳乃が出会い系サイトで知り合った
男と付き合っているとは告げたものの、
祐一とのことは話さなかった。

初めて会ってコトに及び、「なんか
すごいうまい」から会うのだという
話を佳乃から聞いていたのだが、
それを話せば自分も同類の女だと
思われそうで嫌だったから。


【第二章 彼は誰に会いたかったか?】

祐一はキャバレーで働いていた依子が
同僚との間に作った子だったが、
保育園に入るころ、父親が出奔。

依子は祐一を連れて実家へ戻ったが、
すぐまた男を作り、祐一は母の房枝に
押しつける形で飛び出し、今は雲仙の
旅館で仲居をしているらしい。

     ◇
祐一を雇用しているのは房枝の甥で、
清水家に気を配ってきた解体業者の
矢島憲夫だが、彼はこの日(事件の
翌日)、車に乗せている祐一の様子が
おかしく顔も「真っ青」なのに気づく。

     

     ◇
その夕方、定期的に病院通いする祖父の
勝治を車で運んだ祐一は、病院で働く
金子美保と偶然に再会するが、
話そうとはせず立ち去る。

美保は2年前まで風俗店で働いていて、
なじみになった祐一が、いっしょになる
ことを本気で考え、アパートを借りる
ところまで行ったので、怖くなって
店をやめ行方をくらましたのだった。

     ◇
事件から三日後。

警察は事件の重要参考人として、
1週間ほど行方のわからなくなっている
「ボーイフレンド」、22歳の大学生を
捜索中であるとメディアは一斉に報じる。

     ◇
事情聴取を受けた進学塾講師、林完治は
2か月前に携帯サイトで知り合った佳乃と
関係して金を払ったことを供述。

刑事たちは、同様に関係を持った
何人かとすでに面会したという。

     ◇
佳乃の携帯の履歴に祐一の番号があった
とのことで、刑事が来て事情聴取され、
房枝は不安になるが、刑事が去ってから
「犯人はもうわかっとる」と駐在が
言うので安心し、帰宅した祐一にも
そう告げる。

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【第三章 彼女は誰に出会ったか?】

事件から9日後の土曜日、双子の妹と
佐賀のアパートで暮らす紳士服量販店
勤務の馬込光代(29歳)は、出会い系
サイトでのメル友である祐一に、
ひさしぶりにメールする。

灯台や海のことでメールでの会話が
盛り上がり、二人で「奇麗な灯台」を
見に行こうということになる。

     ◇
名古屋市内のサウナに潜伏中の増尾圭吾は
親友の鶴田公紀に公衆電話から通話を
入れ、話しながら事件の夜を回想する。

飲んでムシャクシャしながら2時間も
アウディを走らせていた増尾は、尿意を
催して東公園に停めて公衆便所で用を
足したが、この時、男と言い合って
ますますムカついた。



歩道に出たとき、金髪男の車から響いた
クラクションに驚いて立ち止まった女が
いたが、この女が自分に気づくと
「増尾くん!」と近寄って来た。


以前、天神のバーで会った佳乃だと
わかったが、「よかと?」と金髪男の車に
首をしゃくると、佳乃は車に駆け寄って
男に何やら告げてすぐ戻ってきた。

「送ろうか?」に喜んで乗って来た
佳乃に「その夜、感じていた苛立ちを、
この女にならぶつけられそうな気がした」
増尾は「ちょっとドライブせん?」
「三瀬峠のほうに肝試しに行こうか?」
と車を出した。

ルームミラーには金髪男の車が…。

話の流れはここで切られ、
視点は増尾から光代に
切り替わります。

例によって見事な
サスペンス手法ですが、
それが視点人物の
切り替えと重ねられて
いるところも華麗!

     ◇
佐賀駅で待ち合わせた祐一は、
光代を車に乗せて走り出すとやがて
「ホテルに行かん?」と言い、
笑って肩を叩く光代の手をつかむ。

「こんなにまっすぐに自分を欲する」
男に十年ぶりに接した嬉しさに、光代は
提案を受け入れ、二人は丸一日以上の
幸福な時間を共有する。

     ◇
サウナを出て名古屋駅まで来た増尾は
人込みの中で、回想を続ける。

車に乗せた佳乃が一人で興じて笑うのに
苛立って「ニンニク臭うない?」と
冷たく言ったが、佳乃はそれでもガムを
噛みながらしゃべり続けた。

福岡県福岡市早良区 三瀬峠

👉三瀬峠近辺地図(左上の「+/-」で縮尺を調節できます)


旧道に入り三瀬峠の頂上あたりで
急停止した増尾は「降りてくれんや。
なんかあんたのこと乗せとったら
イライラする」とドアを開けた。

「分かったけん」という声が挑戦的
だったので、ブツブツ言いながら
降りる佳乃の背中を蹴りつけると、
転げ落ちた女の頭がガードレールに
打ち付けられた。
         
     ◇
佐賀から帰宅した祐一の携帯に
電話が入り、その話しぶりの幸せそう
なことに房枝は驚く。

この20年「こんなに堂々と幸せそうに
する祐一を、房枝はただの一度も
見たことがなかった」。



【第四章 彼は誰に出会ったか?】

祐一と光代は電話で長時間話して、
互いに会いたい気持ちを募らせ、
数日後にはまたホテルで絆を強めあう。

     ◇
光代を送って長崎へ帰る途中、祐一は
車のラジオで、増尾が名古屋で
拘束されたとのニュースを聞く。

佳乃の首に残った手の跡の大きさ
などからも、増尾が真犯人でない
ことは明らからしい。

やがて房枝からの電話で、警察が
祐一を探していると知る。

     ◇
祐一の灯台へのこだわりにふれて
憲夫はこう語る。

母親は幼い祐一をフェリー乗り場に
置いて行ってしまったが、その時、
「あの灯台ば見ときなさい」、切符を
買ってすぐ戻ってくるけんと
言い聞かせた。

      

俺は許せんが、それでも祐一は
「腹立たん」と言い、たまに車で
雲仙の母親に会いに行っている…。

     ◇ 
光代のアパートに引き返した祐一は、
光代を車に乗せて走る。

乱暴なキスを続ける祐一に
光代は優しく語り掛ける。

「なんのあったとか知らんけど、
安心してよかとよ。
私、ずっと祐一のそばにおるけん」
「話してくれるまで、私、待つけん」

「今日はどっかに泊まって、明日、
仕事さぼって二人でドライブせん?」
と提案し、翌日、呼子(よぶこ)の
イカ料理の店に入る。

唐津市呼子 呼子漁港

👉呼子漁港近辺地図(左上の「+/-」で縮尺を調節できます)

     ◇
「……俺、……人、殺してしもた」

「あの晩、あの女、別の男とも同じ
場所で会う約束しとって〔中略〕
……俺、バカにされたようで悔しくて、
その車、追いかけて……」


佳乃が乗り込んだ車は、自分には
手の出しようもないアウディA6。

「怒りでからだが膨張するよう」で
衝突も恐れず車を出す。

やがて冷静さを取り戻しても尾行を
続けたが、それは「一言謝って
ほしかった」から。



峠の路上に佳乃が倒れているのに
驚き、助け起こそうとすると、
「もしかしてつけて来たわけ?」
「見とったわけ? もう信じられん!」
「ここまで拉致られて、レイプされ
そうになった」と警察に言ってやると
佳乃はまくしたてる。

「……俺は何もしとらん」

「誰があんたのことなんか信じるとよ!」
「人殺し! 助けて! 人殺し!」

祐一は目を閉じていた。

佳乃の喉を必死に押さえつけていた。

恐ろしくて仕方なかった。

佳乃の嘘を誰にも聞かせる
わけにはいかなかった。

早く嘘を殺さないと、真実の
ほうが殺されそうで怖かった

     ◇
「ごめん」と光代に謝った祐一は、
「これから、警察に行くけん」

「一人で行くの、怖かったとやろ?
私が一緒に行ってやるけん」と光代。


唐津警察署に向かう車中で
「私、待つよ。何年でも」と言う
光代に、祐一は肩を震わせて
「俺、怖か。死刑かもしれん」

「もし光代に会うとらんなら、
こんなに怖くはなかった」


警察署の前まで来てから突然、
「私、イヤ!」と光代が叫ぶ。
「ここで祐一と別れたら、私には
もう何もないたい……。」

光代は祐一の肩に叫んだ。

逃げ切れるわけがないのに、
「逃げて! もう一人にせんで!」

幸せになれるわけがないのに、
「一緒におって! 私だけ置いて
いかんで!」と叫んでいた。




【最終章 私が出会った悪人】

佐賀・長崎県境近辺のラブホテルを
何日も転々とした二人は、やがて
あるホテルを出ぎわに車のナンバーを
じっと見ていた清掃の女性に声を
掛けられた。

無視して去った二人は有田で車を捨て、
「灯台に行こうよ」と光代が提案し、
使われていない灯台に入り込み、
身を落ち着ける。

     ◇
「一つだけはっきりさせとっていい?」
と光代が言う。

祐一が、私を連れて逃げとるんじゃ
ないんやけんね。

私が、祐一に頼んで一緒に逃げて
もろうとるんやけんね。

誰に訊かれてもそう言うとよ

     ◇
食料の補給にコンビニへ行った光代は、
「馬込さんじゃ…」と警官に声を
かけられると、足が動かず、派出所へ。

が、警官が電話をしている間に
「お手洗い……」と許可を得てトイレに
行き、窓から逃げ出して灯台へ戻る。


警官が灯台にやってくると、祐一は
「俺は……、あんたが思うとるような、
男じゃない」と光代の体に
馬乗りになり、首に手をかけた。



     ◇
逮捕後、祐一は「女性を追いつめ」て
「追いつめた女性が、苦しむところを
見ることで、性的に興奮しとった
んです」と供述する。

馬込さんが俺をかばうようなことを
言うのも「彼女の恐怖心が、俺から
解放されてもすぐにはとけん」
せいだ、と。

石橋さんを殺したのは、自分の言葉が
誰にも信じてもらえんような気がした
からだが、今は違う。

俺の言葉を信じてくれる人はおる。

だから言える、自分が殺人犯だって。

        
     ◇
光代は言う。

あの人から殺害の話を聞いたとき
私、許したんですよね。
〔中略〕
あの人が佳乃さんの人生を暴力で
断ち切ったことを、許して
しもうたんですよ。

私には一生をかけて、佳乃さんに
謝り続ける義務があると思います。
〔中略〕
きっと私だけが、一人で
舞い上がっとったんです。
〔中略〕
あの人は悪人やったんですよね?

その悪人を私が勝手に好きに
なってしもうただけなんです。

ねぇ? そうなんですよね?


👉 絡み合う副筋

さあ、いかがでしょうか。

かなり丁寧にストーリーを
たどったつもりですが、まだまだ
不十分であることは自覚しています。

というのも、辿れたのは実はいわば
「主筋」のみで、実際の作品はこれに
いくつかの「副筋」が絡み合うことで、
社会派的にして思想的な掘り下げも深い
渾然一体たる傑作を現出している
からなんですね。


上記「あらすじ」で十分ふれられ
なかった副筋には、たとえば
こんなのがあります。

  1. 佳乃の父、石橋佳男の
    怒り・幻覚・増尾襲撃

  2. 親友増尾の人間性に
    失望した鶴田の裏切り
  3.   
  4. 悪質業者に脅された
    房枝の恐怖克服の過程
       

これら多くの登場人物がそれぞれの
性格でそれぞれの人生を生きていく、
それらの行動との総合的な関係性において
主人公二人の運命が綯い合わされていく…
これぞまさに長編小説の醍醐味という
ものでしょう。

多数のエピソードの集合体のような
作品ですので、読書感想文を書こう
という場合も、必ずしも主筋でなく、
副筋のどこかからテーマを見つける
こともできそうですね。
 
     

とはいえ最も強いインパクトを残すのは
やはり祐一と光代の二人だろうと
思うんですが、このペアの原形を
文学史上に探ってみるというのも
面白い手ではないでしょうか。

作者の吉田修一さん自身が意識されたか
どうかはわかりませんが、私個人が
強く感じるのはドストエフスキー
『罪と罰』のラスコーリニコフと
ソーニャのペアですね。

特にラスコーリニコフを愛しぬくことで
人間性を取り戻させるソーニャに
光代の人間像が重なって見えます。

『罪と罰』については
こちらをご参照ください。

ドストエフスキー 罪と罰のあらすじ:簡単版と【詳細版 前編】
ドストエフスキー 罪と罰のあらすじ【詳細版 後編】と感想文

          


👉 まとめ

ん? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。


「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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3 Responses to “悪人(小説)のあらすじ:吉田修一の傑作長編を地図つきで”

  1. 13 より:

    この記事の下から数えて5番目のイラストの右の人物は
    実在のどなたかの画像のトレースですか?

  2. 13 より:

    警官が灯台にやってくると、…

    という文の
    下の画像の右の人物は
    実在の人物の画像の加工でしょうか?

  3. サイ象 より:

    13さん

    ご質問、ありがとうございます。

    2度とも同じ画像に言及されているのだと思いますが、この画像は無料画像を提供しているあるサイトからいただいたもので、どのようにして作成されたものかはわかりません;^^

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