ドンファンの意味はスペインの色男!喜劇 "ドンジュアン"のあらすじは? | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

ドンファンの意味はスペインの色男!喜劇 “ドンジュアン”のあらすじは?

サクラさん
“紀州のドンファン”
ですっかり有名になり
ましたが、そもそも
“ドンファン”って何
なんですか?

ハンサム 教授
もともと人名で、千人
以上の女性を相手にした
といわれるスペインの
伝説的モテモテ男;^^💦



Don Juanをフランス語
読みするとドン・ジュ
アンで、イタリアでは
これがドン・ジョヴァン
ニになります。


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サクラさん
オヨヨ(🐱) それじゃ
ジュアンもジョヴァンニ
も同じ人なんですか?

ハンサム 教授
ええ。宝塚ミュージカル
『ドン・ジュアン』も
モーツァルトの歌劇
『ドン・ジョヴァンニ』
も主人公のモデルは
同じ。

最後に神罰が下るのも
ほぼ同じですが、ただ
どういう態度で罰を
受け入れるかの違いに、
作者の思い入れの差が
出ますよね。

サクラさん
なるほど…。それで
教授ご推奨の
ドン・ファンは?

ハンサム 教授
モリエールの喜劇
『ドン・ジュアン』の
主人公。

神をも恐れぬ生き様の、
潔いばかりの徹底ぶり
には男の私も惚れて…

いやいや、真似をしちゃ
いけませんけどね;^^💦

サクラさん
あ~ そういう男なら
私も惚れてみたい(😻)

…でも危ないかな(😹)


というわけで、おなじみ”あらすじ”暴露
サービスの第168弾(“感想文の書き方”
シリーズ第235回)は17世紀フランスの
傑作喜劇、モリエールの『ドン・ジュアン 
もしくは石像の宴(うたげ)』(1665)に
挑戦で~す((((((ノ゚🐽゚)ノ
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イギリスの前衛劇団、Theatre Lab
Companyによる2018年公演の模様が
こちらの動画でご覧になれます。



どんな喜劇?

さて、この『ドン・ジュアン』、喜劇とは
いっても、そんじょそこらのドタバタ
(スラプスティック)喜劇とは違います。

その笑いは人間洞察に裏打ちされたもので、
作者のモリエールはフランス古典主義文学の
三大作家の一人とされる文豪。

しかも残りの二人(コルネイユとラシーヌ)は
悲劇作家ですから、喜劇の世界では
飛びぬけた存在と言えます。

  
  モリエール

そんなモリエールの代表作ですから、
『ドン・ジュアン』の笑いは、その場で
笑って終わりのギャグばかりではないし、
皮相な社会風刺にとどまるものでも
ありません。

宗教(キリスト教)的な縛りの強かった
当時の道徳や社会常識の根底部分まで
降りていって、それを根本からひっくり
返すような、皮肉で、陰惨ともいえる
危ない笑い…。

その危なさに作者モリエールの哲学が
響いていることも、読むうちに自然に
感受されてきます。

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モーツァルトの歌劇(ロレンツォ・ダ・
ポンテ脚本)もこのモリエール作品を
下敷きにしていることは、主人公の
以前の恋人の名前が似ていることなど
から明白です。
(エルヴィールとエルヴィラ)

そのそのほかの登場人物やストーリーに
違いはありますが、ラストで神罰を
受ける形でジョヴァンニが地獄落ち
するエンディングは同じ。



宝塚のミュージカルもそこは同じはず
ですが、ともかくこれらは歌で押していく
劇ですので、立ち止まって登場人物の
セリフの内容について考えるような
ヒマはあまりないでしょう。

その意味で、モリエールの戯曲そのものを
読んでいくことは、また違った面白さを
もたらしてくれるはずで、大笑いしながら、
自らの人生を根本から考え直させられる…
というようなこともありえます!

そのためには全文をお読みいただくのが
いちばんですが、それがむずかしければ、
ともかく「あらすじ」だけでも押さえて
もらわなければなりません。

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かなり詳しいあらすじ

というわけで、これから5幕の喜劇
『ドン・ジュアン』のあらすじをかなり
詳しく辿って参りましょう!

人の名前で混乱するといけませんので、
新しく出てくる人物を幕ごとに冒頭の
登場人物にまとめて紹介しています。

また👉印の部分では、モーツァルト
歌劇との違いやセリフの内容について
かなり立ちいって注釈しています。

劇のあらすじだけわかればいいという
場合は、飛ばしてください。


文中の「 」内および「”」”印のグレーの
囲みは上記文庫本(鈴木力衛訳)からの引用。

では参りましょう。


💘 【第一幕】

登場人物

  • ドン・ジュアン・テノリオ:主人公
  • エルヴィール:ドン・ジュアンの妻
    (修道院から連れ出して
    結婚したばかり)
  • スガナレル:ドン・ジュアンの従僕
  • ギュスマン:エルヴィールのお供

シチリア島の宮殿の庭。

ドン・ジュアン・テノリオの後を追ってきた
新妻エルヴィールのお供、ギュスマンに
ジュアンの従僕スガナレルが応答。

おれの主人は…

世にも稀なる大悪党、気違いの
犬畜生、悪魔、トルコ人、異端者、
天国も地獄もお化けもおおかみ
信じないようなおかたなんだ、
けだもの同然にこの世を渡る
エピクロスの豚、放蕩無頼の
殿さまさ。
〔中略〕
色恋のためとあったら、
うちのだんなはなにをしでかすか
知れたもんじゃない。
〔中略〕
犬だろうが、猫だろうが、
嫁にもらいかねないんだぜ。

結婚なんて、だんなにしてみりゃ、
ただの空手形さ。

別嬪をつかまえるおきまりのわなさ。

👉太字は原文(上記訳書)で傍点の
ふられた箇所。

「トルコ人」や「豚」への偏見・差別意識が
むき出しですが、そこは17世紀のこととて
ご容赦ください。

  


その主人にスガナレルは「けしからん
こと」ですと意見するが、ジュアンは
これに反論して自身の哲学を開陳する。

美しい女はみんなおれたちを
とりこにする権利があるんだ。
〔中略〕
ひとりの女に惚れたからといって、
なにもほかの女に冷たくする
義理合いはないではないか。
〔中略〕
恋心のきざし始めというものは、
えも言われぬ魅力があるものだし、
総じて恋愛の楽しみは、移り変わる
なかにあるとも言える。
〔中略〕
ともかくさ、美しい女が
抗(さか)らうのをなびかせる、
こんな気持ちのいいことはない。

その点、おれは征服者の野心を
持っている、絶えず勝利から
勝利へと突き進み、希望に限りを
つけることができないのだ。
〔中略〕
おれの恋の征服をひろげるには、
アレクサンダー大王と同様、
別の世界があってほしいと
願わずにいられない。

👉「ひとりの女」に固着しきれず、次々に
別の女性のとりこになる

この傾向について、まったく
心当たりがないという男性は
少ないはずで、むしろそれをどう
抑えるかに生き様がかかってくる…
というのが、まずは一般的な男の
人生図ではないでしょうか。

この一般性に反逆して、これをむしろ
徹底的に解放してやろうという危ない
賭けに生きているのがドン・ジュアン
だともいえます。



彼はこれをアレクサンダー大王ばりの
「征服者の野心」に重ね合わせていますが、
この発想はまさに”男性原理”そのもの。

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つまり女性には最も理解しにくい
ところなのかもしれませんが、
このような部分での男女の違いには
生得的な(遺伝子情報としてインプット
されている)要因も絡んでいます。

そのメカニズムを明快に解き明した
進化心理学の名著として、この本を
挙げておきます。
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追ってきた妻エルヴィールに対しても
「あなたから逃げ出したい」から旅に出た
ことを事実と認め、かつて修道院にいた
連れ出したことで神罰を受けそうだから
「お帰しする」のだとうそぶく。

「他人(ひと)を辱(はずか)しめた報い」
には神罰がくだるもの…
とエルヴィールは訴える。

それも怖くないというのなら「せめて
傷ついた女の執念を恐れるがいい」と。


💘 【第二幕】

登場人物

  • ピエロ:若い農夫
  • シャルロット:美しい田舎娘
           (ピエロと婚約中)
  • マチュリーヌ:美しい田舎娘

海岸に近い田舎。

農夫のピエロが婚約者シャルロットに、
海岸で身なりのいい男2人を救助したと
自慢気に話している。

そこへその2人すなわちドン・ジュアンと
スガナレルが登場。

シャルロットはジュアンの「おっ死(ち)ん
じまったら、それこそもってえねえ」
男ぶりに惹きつけられる(😻)


ジュアンがスガナレルに語るには、
新たに惚れた女を追っての船旅が突風で
転覆して「水の泡」になったけれども、
その落胆も「さっき別れた百姓娘」の
「魅力を思えば消し飛んでしまう」(😻)

その娘(マチュリーヌ)の獲得に向けて
「手筈は万端ととのっている」…

と言い終わらぬうちに、シャルロットが
ジュアンの目に入り
「ああ! なんて美しい姿だ!」(😻)

  shakespeare-women-of-will

さっそく言い寄り、婚約者があると聞いても
「あなたみたいな人が、ただの土百姓の
女房になる」なんていけませんと、
強引に結婚を申し込む。

シャルロットもその気になり、
ピエロは激怒。


そこへマチュリーヌが現れて
シャルロットと対面。

板挟みになったジュアンは両方に順次、
都合のいい嘘をささやいて、3人での
珍問答を続ける。
👉モーツァルトの歌劇ではこの
シャルロットに当たる娘が
ツェルリーナで、マチュリーヌは
出て来ません。

その代わりというか…
もう一人の恋人としてドンナ・アンナという
美女が冒頭からのお出ましで、忍び込みを
見とがめられて逃げ出したジョヴァンニが
追ってきた騎士長を殺してしまうのが
物語の発端になっています。

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「騎馬の者12名」がジュアンを探している
との急報が届き、ジュアンは2人の
百姓娘とはいったん別れる。

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💘 【第三幕】

登場人物

  • ドン・カルロス:エルヴィールの長兄
  • ドン・アロンス:エルヴィールの次兄
  • 石像:かつてドン・ジュアンが
       殺害した騎士の霊が宿る

追っ手をくらますため田舎風に装った
ドン・ジュアンと、医者のなりをした
スガナレルが森の中を歩く。

自分は医術など信じない、神も悪魔も…
と続けるジュアンは、自分が信じるのは
「二に二を足せば四になる、四に四を
足せば八になる、これさ」とうそぶく。


道に迷ったので貧者に声をかけて
教えてもらうと、「施し物」を
求められる。

自分は明け暮れ神に祈っているが、
それでも食うや食わずだと言うので、
ジュアンは「神様を呪(のろ)ってみな」、
そうすれば金貨を1枚やると言い放つ。

「飢え死にした方がまし」と拒否する
貧者にジュアンは「人類愛のためだ」と
金貨を与える。


一人の男が三人がかりで襲われるのを
目にしたジュアンは「あんな卑劣な
真似」は見過ごせないと助太刀に入り、
三人を追い払う。

 

助けられて恩に着る男はエルヴィールの
兄ドン・カルロスで、妹の仇を討つため
ドン・ジュアンを探しているのだと言う。

これにジュアンは、その男は自分の親友で、
間違いなく連れて来て償わせるから、
これ以上探すなと頼む。


が、そこへジュアンの顔を知る弟の
ドン・アロンスが来て、正体が露見。

騎士としての恩義を重んじるカルロスは
いきり立つ弟をなだめ、ジュアンには
妹との約束を守るように告げて立ち去る。


木々の間に素晴らしい建物が見えたので
スガナレルに尋ねると、あれは
「だんなさまのお手にかかった騎士が
建てさせた墓でございます」。

入ってみると墓が開き、ローマ皇帝の
服を着た立派な石像が現れる。

晩飯に招待してみろとジュアンが命じ、
スガナレルがそうしてみると、
石像がうなずく(叫び)。

👉ここで石像になっている騎士こそ、
モーツァルトの歌劇ではドンナ・アンナの
父親であり、ジョヴァンニはラストで
この石像に腕をつかまれて地獄へ
連れ込まれるという風に話が
作られています。

モリエールの原作も「もしくは石像の宴
(うたげ)」という副題ですから、
この石像も重要な登場人物の一人。

オヤジは怖いぞ~(叫び
という教訓でしょうか;^^💦



💘 【第四幕】

登場人物

  • ディマンシュ氏:富裕な商人
  • ドン・ルイ・テノリオ:ジュアンの父

自邸に戻ったドン・ジュアン。

商人のディマンシュ氏が訪問するが、
ジュアンは彼が用件(借金の返済か)を
切り出せないよう巧みに言葉をかけ続け、
ディマンシュはついに諦めて退去。


次に父のドン・ルイ・テノリオが来て、
お前の「乱行」による「恥辱」にはもう
「愛想がつきた」から、神罰がくだる前に
「わしの手で、おまえを懲(こ)らし」て
やると宣言して去る。

 

さらにヴェールをかぶったエルヴィールが
訪問し、今や「すべてから解脱した愛」から
言うが、神罰を避けるため「すみやかに
悔い改めをなさいませ」と忠告して辞去。

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💘 【第五幕】

町の入り口近い田舎道で、ジュアンは
父ドン・ルイに向かい、「迷いの道から
はっきり目がさめました」と改心を誓う。

主人の改心を喜んだスガナレルに
「間抜けめ!」とジュアンは諭す。

これも「ぬかりない策略」だ…と。

どこが悪いんだ?

俺みたいな人間はほかに
いくらもいるんだぜ。
〔中略〕
偽善は流行(はやり)の悪徳だし、
流行の悪徳ならなんでも美徳として
通用するんだ。
〔中略〕
人間のほかの悪徳なら、みんな
非難も攻撃もしたい放題、
だれだっておおっぴらに
やっつける権利があるんだ。

ところが偽善だけは特別扱いの
悪徳さ、自分の手で世間の口を
おさえつけ、罰を受けないで
おさまりかえっていられるのだ。

  

路上でドン・カルロスに出会い
「妹を貴殿の妻として公然と認め」る
よう迫られたジュアンは、彼女はすでに
遁世しており、それは「神さまがそう
お命じになる」からだと拒絶。

これに怒り、いずれ改めて「果たし合い」
だと宣告するカルロスに、「万事は
そのときの話だ」と受けて立つジュアン。


ヴェールをかぶった女の亡霊が現れて
「時」の神の姿となり、ジュアンが
斬りかかると飛び去る。

  <


心を入れかえては…と促すスガナレルに
「なにが起ころうと、おれが後悔する
ことなんかあるものか」とジュアン。


晩餐の約束をした例の「騎士の像」が
現れて「手をかしていただきたい」
と言うので応じると、石像いわく
「天の恵みを拒絶すれば、雷(いかづち)、
なんじの頭上に落ちん」

大きな閃光とともに雷がジュアンの
上に落ち、大地が避けて彼を呑み、
そこから大きな炎が噴き出す(叫び)。

  

スガナレルいわく
「あの人が死んでみなさんご満足」。

でも「かわいそうなはおれひとり」…
「おれの給料! おれの給料!
おれの給料!」

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恋多き生涯か、ただ一人の相手か

いかがでした?

たとえば第二幕の前半で、あまりにも早い
テンポで新しい恋をしてしまうあたりは、
さすがドンファン!と笑ってしまい
ますよね。

でもこういう傾向って、どの男にも
多少なりと自然の性(生まれつき)として
備わっているものですので、そのことを
ご存知なかった女性はこの際、知って
おかれて損はないと思いますよ。


つまり哺乳類のオスは一般的に、可能な
かぎり多くのメスに種をつけるよう遺伝子
情報としてプログラミングされている
もので、ヒトの場合も決して例外では
ないのです。
👉そんなこと納得がいかない、根拠を
示せとおっしゃるなら、第一幕の
二つ目の👉で紹介した本のほか、
当ブログのこれらの記事もご参照を。

ゴシップ好きな人の心理📢ねたみ/いじめ/平等主義…は人間の本質?

おしどり夫婦の(本当の)意味は?オシドリの愛は実は短い?

サイコパス(中野信子著) の内容 あの凄い人も実はそうだった!
   


ただ、誤解しないでくださいね。

そのように指摘したからといって、私は
次々に新しい恋を実践するドンファン=
ドン・ジュアン的な生き方を推奨して
いるわけではありません。
(天罰を食らうにきまっています;^^💦)


ドンファンとは真逆に、「生涯にただ一人の
女性を愛し抜く」という理想をまっとうする
人生も素晴らしいに違いありません。

ただ、もしあなた(女性)が現在そのような
男性に恵まれているのなら、その人が
どれほど自分の自然性を(あなたのために
頑張って)抑えつけているかということに
思いを致してみてもいいと思うんです。

これも一つの”思いやり”であり、それは
きっとこれからの夫婦(またはパートナー
シップ)円満にとって、プラスになる
はずですよ。
👉動物としてのヒトの自然性(ネイチャー)
があなどれないことについては、
こちらの記事などもご参照。

いじめは楽しい…の心理をまず認めよう//中野信子流脳科学の対策論 

サソリとカエルの話 その意味は?🐸自らの自然(ネイチャー)を知れ?
 
     



まとめ

さあ、どうでしょう。

“紀州のドンファン”からモリエールの名作
『ドン・ジュアン』の分析へと話が進み
ましたが、ともかくこれだけ情報があれば、
感想文やレポートもお茶の子さいさい…
ではないですか?


ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人はこちらをどうぞ。
👉当ブログでは日本と世界の多様な
文学や映画の作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

お役に立ちそうなものをこちらの
リストから探してみてくださいね~(^^)у

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょ~~(^O^)/

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