細雪(谷崎潤一郎) 妙子サッパリ雪子ねちねち【あらすじを簡単に&詳しく】

細雪(谷崎潤一郎) 妙子サッパリ雪子ねちねち【あらすじを簡単に&詳しく】

やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも
早いもので今回で第149回となり…

「あらすじ」暴露サービスとしても
いよいよ大台に迫る第97弾。

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今回はかの文豪、谷崎潤一郎最大の
長編『細雪(ささめゆき)』(1943-
48)に挑戦です((((((ノ゚🐽゚)ノ
  

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英訳題をThe Makioka Sistersといい、
要するに蒔岡家四姉妹の物語なんですね。

映画化も何度か試みられていますが、
最も華麗な仕上がりなのが岸惠子、
佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子を
四姉妹に、二人の婿には伊丹十三、
石坂浩二という超豪華キャストの
市川崑監督作品(1983)。
  

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でもこれ、吉永さんと石坂さんの間に
💕…みたいな感情を入れ込むなど
原作をだいぶいじってますので要注意。

原作は四姉妹中、下の二人すなわち
雪子と妙子の縁談や恋愛を中心に物語が
進行しますが、二人の性格が対照的で、
簡単にいうと、雪子がねちねちとして
ハッキリしないのに対して、妙子は
サッパリとして行動も奔放。

妙子が当時の”新しい女”を代表している
とすれば、雪子は昔の日本、とりわけ
関西によくいたのでなはいかと思われる
良くも悪くも”古い女”のタイプを
担わされているように読めます。

そのあたりはもちろん読んでもらわ
ないとわかりませんので、さっそく
入っていきましょう。

まずは要約的に「ごく簡単なあらすじ」
から。


ごく簡単なあらすじ(要約)

大阪の斜陽商家、蒔岡家の
美人四姉妹。

船場の本家を継いだ長女鶴子夫妻と
芦屋に分家した次女幸子夫妻、
美貌ながら縁遠い三女雪子と奔放で
恋多き四女妙子が織りなすドラマ。


森田姉妹:右から松子、ひとり置いて信子、重子
(『細雪』の幸子、妙子、雪子のモデル)



3年ほどの間に、何度も見合い
しながら不調に終わり、最後には
華族の中年男に嫁ぐ雪子と、
数度の恋愛の末、下層の男と結婚
する妙子を軸に物語が進む。

え? これじゃ全然わからん?

ハハハ、それはそうでしょうね。
なにしろ現物は900ページの
大長編なんですから…;^^💦


というわけで、もっとしっかりとこの
物語の世界に入って人物の性格や心理を
理解したいという人には、以下の
「やや詳しいあらすじ」を読んでもらう
ことがどうしても必要になります。

やや詳しいあらすじ

それでは参りましょう。

原作は文庫本で900ページ以上になる
大長編で「上巻」「中巻」「下巻」の
三部構成です。

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👘【上巻】

蒔岡家はかつて栄華を誇った大阪の
商家で、現在は財産を減らし、
船場の店も人手に渡っている。

両親死後、大阪の本家を継いだ長女の
鶴子と、阪神間の閑静な住宅地、
芦屋に分家した次女の幸子(さちこ)は
二人とも婿養子を取って蒔岡の名を
継いでいる。

本家は銀行勤めの夫、辰雄と6人の
子供の一家で、分家は夫の貞之助と
幼い娘の悦子の3人家族。

30歳になる三女雪子と20代半ばの四女
妙子は未婚で、本家と分家を行き来
してきたが、堅実一方の辰雄と反りが
合わず、芦屋の家で過ごす時間が
多くなっている。

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倚松庵(『細雪』執筆の家。神戸市)


四姉妹でいちばんの美人ともいわれ、
学校の成績も優秀だった雪子は、
何度も見合いをしながら縁遠い。

その一因として、数年前、当時20歳の
妙子が起こした駆け落ち事件で、
間違って雪子の名が新聞に出てしまう
という不運もあった。

妙子の相手は同じ船場の旧家、奥畑家の
三男、啓坊で、雪子が片付かないうちに
結婚は無理と見ての軽挙だった。

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辰雄が記事の撤回を申し入れたものの、
新聞は撤回ではなく訂正の記事を載せ、
雪子に換えて妙子の名を出したので、
蒔岡家は恥の上塗りをした恰好。


事件後、妙子は人形作りに打ち込んで
上達し、今や作品が百貨店で売られ、
個展を開くほど。

幸子に頼んで仕事部屋を探し、
そこで長時間を過ごす妙子。




雪子に瀬越という男との縁談が来て、
一家は乗り気になったものの、やがて
瀬越の母親が精神病を患っている
ことが判明し、断る。

数か月後、幸子の女学校での同窓、
陣場夫人から持ちかけられた縁談の
相手は野村という中年のやもめで、
調査のため1縲鰀2か月の猶予を求めた。


一方、辰雄は勤務先の銀行の支店長
として一家で東京へ引越すことになり、
雪子と妙子も一緒に行くことになる。

妙子は人形作りの仕事のために
芦屋に留まることを許されたが、
雪子は同行。

   
  『細雪』インドネシア語版広告より


東京で元気のない雪子を案じた鶴子は
しばらく大阪に帰らせようと提案。

幸子が雪子を呼び寄せる口実を考えて
いるところに、野村のことを催促する
手紙が届き、乗り気ではないものの、
雪子を戻す口実として見合いに同意。


幸子の流産のため1週間延期してから
雪子と幸子夫妻は野村に会うが、
あまりに老けて見えることに驚く。

夕食後、一行は野村の家に招かれ、
そこで野村は亡くなった妻子の
仏壇を雪子に見せる。


雪子が結婚できないと言うので、
蒔岡家は断りを入れ、雪子は
東京へ戻る。

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👘【中巻】

妙子は人形作りに飽き、洋裁と
山村舞に精を出すようになる。

啓坊が芦屋の家に来て、妙子の
洋裁と洋行の希望について、
やめさせてほしいと依頼する。


舞のお浚い会が芦屋の家で行われ、
妙子も出演するが、以前、妙子の
人形の写真を撮っていた板倉という
若い写真師が来て、撮影している。

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1か月後、関西地方は大水害に襲われ、
洋裁学院にいて、あわや死ぬかという
ところの妙子を、板倉が救出。

そこから妙子と板倉の仲が進展し、
幸子は板倉の出身階層を理由に
反対するが、妙子は動じない。


啓坊から幸子へ「妙子と板倉の恋愛を
注意する」手紙が届いたり、大阪三越の
舞の会で啓坊が板倉のカメラを
はたき落としたりする。


洋裁の師匠と共にフランスに行って
勉強をしたいと思う妙子は、
幸子に本家への口添えを頼む。

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師匠の洋行が取りやめになると、
妙子は洋服店を開くことを決心し、
本家に資金援助を依頼しようと上京した
ものの、板倉の病気ですぐに大阪へ戻る。

板倉は乳嘴突起炎という難病で、手術の
合併症からくる壊疽のため死去。

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👘【下巻】

6月、大垣にいる辰雄の長姉から来た
縁談の相手は名古屋の名家、沢崎。

幸子、雪子、妙子と悦子は
蛍狩りがてら大垣おもむき、
そこで雪子は見合いする。


幸子は沢崎によい印象を持たず、
結局沢崎の方から断ってくる。

蒔岡家が縁談を断られたのは
これが初めて。


妙子が奥畑と縒りを戻したと聞いた
幸子夫妻が鶴子にこれを報告すると、
鶴子は妙子に東京に来るよう申し渡す。

これを拒否した妙子は絶縁される。

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新しい縁談の相手、橋寺は魅力的な
中年だったが、再婚の決心が
ついていないようだった。

貞之助は雪子を連れて橋寺に会い、
話を纏めようと奔走するが、雪子の
引っ込み思案のために橋寺は
縁談を打ち切ってしまう。

その後、幸子は妙子が奥畑の家で
重病だとの知らせを受ける。

     


赤痢と診断された妙子の病状は次第に
悪化し、姉たちはよい治療を受けさせ
たい一方で、妙子が奥畑の家にいる
ことを知られたくないために悩む。

結局妙子は一家の友人の病院に
移されてゆるやかに回復。

一方で幸子は絶縁後の妙子が奥畑に
頼って暮らしていたらしいこと、
また三好というバーテンとも関係が
あるらしいことを知る。

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今や妙子は奥畑と結婚するしかない
という考えに傾くが、やがて奥畑が
家族から満州行きを勧められ
ているとわかる。

幸子と雪子は、妙子が一緒に行く
べきだと説くが、妙子は同意せず、
泣きながら家を出て2日間帰らない。


奥畑は結局満州へは行かないことに
なり、雪子に新しい縁談が来る。

公家華族の御牧子爵の庶子で45歳、
米仏に留学経験があり、今は東京で
勤務しているという。

東京で御牧に会った雪子と幸子は、
その気さくな人柄に好感をもつ。
👉これは『細雪』という作品の外に出ての話に
なりますが、雪子が結局嫁ぐことになるこの
御牧のモデルになった男性が実際はどんな人物
だったか、二人の結婚生活はどうなったのか…

等々の興味深い後日談満載の問題小説が
桐野夏生さんの『デンジャラス』です!

その情報はこちらで。

デンジャラス(桐野夏生) のあらすじ 谷崎潤一郎を囲む女たちの執念

    
   『夢の浮橋』オランダ語版表紙
 


東京滞在中に妙子は、三好の子を
妊娠して4か月だと幸子に告げ、
幸子夫妻は妙子が有馬で秘密裏に
出産するよう手配する。

貞之助が奥畑に会って、妙子の行状に
ついて他言しないよう求めると、
奥畑はこれまで妙子に使った金銭の
補填を要求し、貞之助は2000円の
小切手を切る。


結局死産した妙子は三好と所帯を持つ。

御牧家からの求婚を雪子は受け入れ、
婚礼の日取りと場所、新居も決まる。

婚礼衣装が届いても楽しげでない雪子は
何日も下痢が続き、東京へ向かう
列車のなかでも止まらない。

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まとめ

さて、いかがですか。

一筋縄でいかない大長編ですが、
ストーリーの概略は大体つかんで
いただけたのではないでしょうか。


さすが大谷崎…そうですよね~。
👉ン? でもこれで感想文かレポートを
書かなきゃいけない?

それはまた大変な仕事になりますね。

そういう人のためのお助け記事を別に用意して
いますので、どうぞこちらをご覧ください。

谷崎潤一郎 細雪で感想文を 🚻”下痢の美女”か”新しい女”か

      


👉『細雪』以外の谷崎作品に関心をお持ちの
場合は、こちらの記事もぜひどうぞ。

谷崎潤一郎 春琴抄のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で

谷崎潤一郎 刺青のあらすじと考察:若尾文子主演映画も鑑賞
 
卍(小説)のネタバレ 谷崎潤一郎が大阪弁で描くややこしい愛の世界

     

鍵(谷崎潤一郎)のあらすじ 原作小説が映画の何倍も凄いワケ

谷崎潤一郎 少年のあらすじと感想 その妖しいSM/BL的世界


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という場合は、Amazonが便利です。
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👉当ブログでは、日本と世界の多様な文学や
映画の作品について「あらすじ」や「感想文」
関連のお助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/




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4 Responses to “細雪(谷崎潤一郎) 妙子サッパリ雪子ねちねち【あらすじを簡単に&詳しく】”

  1. 島次郎 より:

    「細雪」の4姉妹として載せてある写真ですが、右から二人目、4女の恵美子は松子の娘であって、末の妹ではありません。この時は4女の信子は姉妹から絶縁されていて、ここに居ないのです。

    あたかも4姉妹のように撮れているので誤解されていますが、三女の重子は1907年生まれ、信子は1910年生まれて、3つしか違いがないのです。4女は信子で名前も違います。

  2. サイ象 より:

    島次郎さん

    御指摘ありがとうございました。
    そういうことですと、たいてい「信子」と注釈されている
    右から3人目の女性は誰なのでしょうか。
    ご教示いただければ幸いです。

  3. より:

    受験のため文学史を勉強している者です。あなたが書いている記事は本の内容がわかりやすく、とても参考になります。本当に助かっています。ありがとうございます。

  4. サイ象 より:

    雀さん
    コメントありがとうございます。
    そういう言葉をいただけると、ほんとうに励みになります。
    これからもがんばりますので、雀さんも受験の方、ぜひベストをつくしてくださいね。

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