夏の花(原民喜)のあらすじ:精密巧緻な”新地獄”へようこそ

 


やあやあサイ象です。


「感想文の書き方」シリーズも
はや第88回にして
「あらすじ」暴露サービスとしては
第55弾となります。

採り上げるのは、原民喜の
名作短編小説『夏の花』(1947)。



いわゆる”原爆文学”の傑作として知られ、
高校の現代文教科書などにも
採用されている作品ですね。

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ただその内容は、被爆の経験を
むしろ客観的に、坦々と
つづっていったもので、
特に小説らしいストーリーが
あるわけではありません。

それがなぜ傑作として読みつがれるのか。

もちろん記録文学としての重要性が
第一なんでしょうが、そればかりでなく、
作者原民喜の文章の魅力という側面も
大きいはずなんです。

上記「新潮文庫」の「解説」で
あのノーベル賞作家、大江健三郎さんが
「現代日本文学の、もっとも美しい
散文家のひとり」と絶賛するくらいです。

その魅力は、もちろん   6ff92aba71da804ed34e9ef8fcd198a6_s
原文に接しないかぎり
伝わらないものですから、
以下の「やや詳しいあらすじ」も、
経緯の要約に徹するのでなく、
できるだけ原文からの引用を交えて
進めていきたいと思います。


Ψ やや詳しいあらすじ

それではさっそく参りましょう。

すでにふれたとおり、原作には
「起承転結」的なストーリーの起伏は
ないのですが、わかりやすさのため、
4部に分ければこうなるかな、とい
う程度の意味で「起・承・転・結」に
分けています。

特に「結」の話は「起・承・転」で
語られた経緯とは直接に関係して
いないので、奇妙とえいば奇妙ですが、
両者が遠くの方で重なり合う感じがあって、
面白い構成方法だという解説もできます。



【起】
妻と父母が眠る墓に、
いかにも夏の花らしい
黄色い可憐な花を手向けた「私」は、
その翌々日に、原子爆弾に襲われる。

   黄色い花 marigold-123301__180

8月6日朝のその瞬間、「私」は
厠にいたため一命を拾う。

頭上に一撃が加えられ、
目が見えなくなってしまったが、
その後は「それはひどく厭な
夢のなかの出来事に似ていた」。

あたりの様子が朧(おぼろ)
ながら目に見えだして来ると、
今度は惨劇の舞台の中に立って
いるような気持ちであった。

たしか、こういう光景は映画
などで見たことがある。

濛々(もうもう)と煙る砂塵の
むこうに青い空間が見え、
つづいてその空間の数が増えた。

壁の脱落した処(ところ)や
思いがけない方向から明かりが射して来る。


   シュール street-art-465306__180

妹が駆けつけて、目から血が出ている
から洗うようにといい、「私」が服を
着ようとしていると、「事務室のK」
が額から血を噴き出させ、「ああ、
やられた、助けてえ」と叫びながら
現れて、いっしょに逃げようと
急(せ)かす。


Kと川へ向かって歩くと、顔を
血だらけにした女、「家が焼ける」と
子供のように泣く老女、「魂の抜け
はてた顔」でうずくまる中年女など、
「奇怪な顔」に数かぎりなく出くわす。

ゾンビ zombies-skeletons-s

「遂に来たるべきものが、来た」という
むしろ「さばさばした気持で」
自分を顧みると…

今、ふと己(おのれ)が生きて
いることと、その意味が、
はっと私を弾(はじ)いた。

 このことを書きのこさねば
ならない、と、私は心に
呟(つぶや)いた。


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【承】
川岸で対岸の火事を見ながら、長兄と
妹、近所の知人数人と「てんでに
今朝の出来事を語り合う」。

ピカッと光ったものがあり、
マグネシュームを燃やすような
シューッという軽い音とともに
一瞬さっと足もとが回転し、
……それはまるで魔術のようで
あった、と妹は戦(おのの)き
ながら語るのであった。


筏を漕いで向こう岸へ渡り、負傷した
兵士を肩に寄りかからせながら歩く。

ふと、「死んだ方がましさ」と
吐き棄てるように呟いた。

私も暗然として肯き、
言葉は出なかった。

愚劣なものに対する、やりきれ
ない憤りが、この時我々を
無言で結びつけている
ようであった。


どくろFall-Of-Man-s

夜が明けると、兄妹らは東練兵所の
施療所へ歩いてゆき、そこで炎天下、
長い行列に加わる。

加療がすむと、石崖に薄い材木を
並べて屋根代わりとして、その下の
狭苦しい場所に6人が入りこんで、
24時間余を暮らす。



【転】
長兄が雇ってきた荷馬車で、八幡村
まで移動する途中、次兄は息子らしい
少年の死体を見つける。

「涙も乾きはてた遭遇」だ。


「赤むけの膨れ上がった屍体」の配置は
「精密巧緻な方法で実現された新地獄に
違いな」く、硬直した肢体は「一種の
妖しいリズムを含んでいる」。

このへんお印象は「どうも片仮名で
描きなぐるのが応(ふさ)わしい」と
こんな一節を書く。

アカクヤケタダレタ ニンゲン
ノ死体ノキミョウナリズム
スベテアッタコトカ  
アリエタコトナノカ
パット剥(は)ギトッテ
シマッタアトノセカイ


041425

八幡村に着いて四五日目に中学生の
甥が帰ったが、一週間ほどで頭髪が
すべて抜けて禿げになり、鼻血も
出し始める。
(こうなると助からないといわれる)

長兄の家の女中は、化膿した腕に
湧いた蛆(うじ)がいくら消毒しても
湧いてきて、1か月あまりして死ぬ。



【結】
「N」は、疎開工場へ行く途中の
トンネルの中であの衝撃を受けると、
すぐ引き返して妻の勤めている
女学校へ行く。

白骨の転がる教室や校長室を歩き、
妻を探すが、見つからない。

兵隊が「死の山」をなす西練兵場や  5f4a86934bd6c1c755f5558ef3ad2e05_s
方々の収容所で重傷者の顔を覗き回り、
三日三晩して、また女学校の
焼け跡を訪れる。



Ψ どう書く? 感想文

さあ、どんなものでしょう?

どう書きましょうかね? 読書感想文。

「戦争は悲惨だ。あってはならない」云々の
趣旨でももちろん結構なんですが、それでは
ありきたりでつまらん、書く気がしない
という人もいるかもしれませんね。


そういう人は、それならどこに
突っ込んで行けばいいか。

Skulls-s

その具体的な方法をこちらの記事で
提案していますので、ぜひどうぞ。

原民喜 夏の花で感想文:夢が交錯する”超現実派”の文体を解説

当ブログではこのほかにも「戦争文学」
関連の記事を書いていますので、
参考にしてもらえればと思います。

黒い雨(井伏鱒二)のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で
黒い雨(井伏鱒二)で読書感想文∥今村昌平映画も参考に
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芋虫(江戸川乱歩)のあらすじ:伏字だらけの問題作!内容は?
江戸川乱歩 芋虫で感想文◎◎映画『キャタピラー』も鑑賞して

また日本と世界の多くの作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産していますので、
それらも参考になると思いますよ。

お役に立ちそうなものをこちらの
リストから探してみてくださいね~(^^)у
「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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