島崎藤村 破戒の内容を押さえて感想文へ:ラストへの疑問から

 


やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも
ついに第130回に到達((((((ノ゚⊿゚)ノ

記念すべき今回は、これまで敬して
遠ざけてきた難物中の難物……
島崎藤村の歴史的名作にして問題作、
『破戒』(1906)についに挑戦です!

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なにしろあの夏目漱石も一読するや
「明治の小説として後世に伝ふべき
名篇也」(森田草平宛書簡)と絶賛。

かつ「辛抱して仕舞迄よませて後
感心させる作」(前田林外宛書簡)と
評した傑作中の傑作ですから、これは
もう「辛抱して」読み通してもらう
しかありません。👇




え? そんな時間はない?

時間はあるけどムツカシそうで、
とても読み通せそうにない…?

それでは、せめてこちらの記事で
「あらすじ」を仕入れておきましょう。


島崎藤村 破戒のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で解説



👉 自分なら…と考えてみる?

はじめに当「感想文の書き方」シリーズで
オススメしてきた秘伝、サイ象流・
感想文の書き方《虎の巻》
の風呂敷を今回も
一応ひろげておきましょう。

(もういい、わかったという方は
スルーしてくださいね。)

  • 学校で評価される感想文は作品を
    読んでの素直な「感想」など
    ではなく、それを機に
    自分の生活を反省する
    作文である。
  • これを書くには、まず、たとえば
    登場人物が何らかの行動を
    とったとき、
    「自分にはこんなことはできない」
    のではないかとか、あるいは
    性格的に「自分にはこんな
    ところはないか」と反省する。
  • 自分にはこんなところはないか……  疑問009093   

  • その上で、「これからは自分も
    こうしよう」という類の
    前向きな結論
    を決め、
    決めてから書き始める。
(「Yahoo!知恵袋」での「ikemen_busaiku」さんの
回答に触発され、構成していったもの)

おわかりですね。

つまり登場人物のうち最も重要なのは
もちろん主人公の瀬川丑松でしょうから、
自分がもしこの丑松だったら、あの場合、
どうしただろうか、と考えていくのが
まずは感想文の王道でしょうね。

必ずしも丑松でなくてもいいんですよ。

恋人の志保とか、友人の銀之助、
あるいは悪役の高柳になってみても
面白いんじゃないですか。



👉 父の「戒め」を「破る」主人公

とりあえず、丑松になった場合で
考えていきましょう。

読めばわかるとおり、彼は被差別部落の
出身者で、そのことを「隠せ」という
父の「戒め」を守って生きてきながら、
ついにはそれを「破る」、というのが
タイトルの「破戒」という言葉の意味
なんですね。


ですので、作品の主題に真っ向から挑む
王道中の王道は、この「破る」という
場面での丑松になった場合「自分なら…」
どうだろうか、と考えてみること…
ということになるでしょうね。

とすると、そこで一つのポイントになる
のが、自分自身に差別を受けた経験が
あるかないかということで、経験ある人は
自分の場合と丑松の場合とを比較して
いくことで、よいものが書ける可能性は
大きいんじゃないでしょうか。


でも、似たような経験の    河童846223d120766a4aca01d1377954c31b
まったくない人はどうすれば
いいんでしょうかね?


一つの方法としては、『破戒』について
書かれた解説や評論を読み、それへの
自分の反応を書いていく、
ということがあります。

いちばん手っ取り早いのが岩波文庫版
『破戒』の巻末に掲載されている
野間宏の評論「『破戒』について」。


ここでの野間さんの主張に対して
賛成・反対のどちらかの意見を
書いていけば、けっこう立派な
感想文になりそうですよ。

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👉 「破戒」できていないという批判

『破戒』の重要な登場人物の一人に、
丑松と同じく被差別部落出身者ながら
それを公表して本を書いている
猪子蓮太郎という人があります。

野間さんは、この蓮太郎のセリフを
批判的に読み込むんですね。

蓮太郎の長いセリフの中途に「いくら
われわれが無知な卑しい者だからと
言って…」という部分があるのですが、
これをとらえて、「蓮太郎さえが
部落民を卑しいものと認めている」
ことの証拠だというのです。


この読み方自体がおかしいと批判する
こともできると思いますが、それは
さておき、ともかく野間さんは蓮太郎の
この意識が作者藤村自身のものでも
あると見て、『破戒』の終わらせ方を
批判するのです。

すなわち丑松が     115733
「生徒たちの前に土下座して自分の
出身を告白し、その後、新天地を
求めてテキサスに渡る」という結末。

〔このことは〕藤村が部落民の問題を
人間の問題として、十分考えつくす
ことができなかったことを
あらわにしているのである。
〔中略〕
破戒とは父のさずけた戒(いましめ)
の意味を根底からくつがえす心を
もって、自らその戒を破り去り、
父にそのような封建的な戒を
もたらせたもの、不合理な社会に
たいするたたかいを宣言すること
でなければならないのである。

テキサスへ新天地を求めるなどと
いうのは、逃げていくことを示す
ものにほかならない。

(引用は上記の岩波文庫版から)

👉 「丑松思想」を克服?

教育学者の灘本昌久京都大学教授によると、
野間さんのこの丑松否定論は、部落解放
運動の公式の考え方と合致していました。

つまり「丑松」は「部落民であることを
隠してコソコソ生活する」者の代名詞
として否定的に扱われ、1970年代の
『解放新聞』などでは「丑松思想を
克服しよう!」といったスローガンが
よく唱えられていたとのこと。


それで灘本先生自身もこの公式見解を
受け入れていたのですが、年を取って
読み直すと別の丑松像が見えてきた
というのです。

最後に丑松が詫びるのは「差別社会」に
ではなく、ついに自分の素性を打ち
明けられなかった蓮太郎や生徒たちに
であって、彼はこう言いたいのだ、と。

「自分は精一杯誠実に生き」、教育して
きたが、唯一不誠実であったのが
「穢多であることを隠して来たこと」。

それは「自らを貶めること」であったから、
「教育者として心から謝罪する」。

もし自分をやはり「不浄で交わることの
できない人間」と思い、追放するなら、
「甘んじて自分はそれに従おう」。
(引用元:瀬川丑松、テキサスへ行かず


この意味では      demon-201427_640
「隠せ」という父の戒めを積極的に
「破って」前へ進もうとしているわけ
ですから、それはそれで「不合理な
社会にたいするたたかい」の一環と
見ることもできる……

というふうにも書いて行けそう
ではないですか?


👉 大江磯吉はモデルではない

ともかく『破戒』が大変な力作・労作である
ことは間違いなく、藤村はこれを書くために
実際に被差別部落に張り込み、何年もかけて
取材したとのことです。

そのことから、丑松のモデルになった人物
としてよく挙げられるのが大江磯吉
(1868―1902)です。


大江は長野県の飯田学校上等科を抜群の
成績で卒業後、ただちに同校下等科の
助教に採用されながら、被差別部落の
者だとの中傷から1年で解雇されて
しまいます。

その後、各地で教師を務め、校長として
赴任した鳥取では、就任当初から身分を
公表したのですが、病魔に襲われ
34年の生涯を閉じました。

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飯田という舞台とか、経歴とか、たしかに
類似点が多いので、この人物と照らし
合わせるのも面白そうです。

ただ、藤村自身は「丑松という人物の
直接のモデルというものはなかった」
(「眼醒めたものの悲しみ」)と書いて
いますので、「丑松=大江」と短絡
しないよう注意しましょう。




👉 どう書く? 感想文

さあ、どうでしょう。

書けそうですか? 読書感想文。

ともかく、各種「差別」の問題は
現代でも完全に消えたわけでは
ありませんよね。

この問題に正面から立ち向かった
作品ですから、真面目に取り組めば
優良感想文になる可能性は高いですし、
そうならなくても、大いにやりがいの
ある仕事・勉強にはなるはずです。

たとえば日本人みんながなじんでいる
「鬼」という存在にも「差別」の問題は
絡んでいますので、そういった
少し離れたトピックと関連させて
書くのも一法ですね。

「鬼」の問題についてはこちらの
記事をご参照ください。

節分の鬼は怖い?それとも可哀想?豆まきは続けるべき??
節分は「鬼は~内」で行こう!豆まきの由来、歴史的な意味は?2
桃太郎は「悪くない鬼を退治した」から悪い?画像で子供に説く

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また上記別記事の「やや詳しいあらすじ」
でふれていますドストエフスキーの
『罪と罰』と引き合わせて、どこを
どう盗んでいるかを調べた上で、なぜ
この小説に学ぼうとしたかを考える……
というのも面白いんじゃないでしょうか。


ん? 書けそうなテーマは
浮かんできたけど、具体的に
どう進めていいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の
種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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