宮沢賢治 やまなし:クラムボンの意味は?詳しいあらすじから謎解きへ

宮沢賢治 やまなし:クラムボンの意味は?詳しいあらすじから謎解きへ

サクラさん
宮沢賢治の『やまなし』
って何が言いたいのか
さっぱりわからない
ので困っています(😿)

ハンサム 教授
たとえばどこが
わからない?


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サクラさん
いきなりクラムボン
笑ったり、殺されたり
というカニの子たちが
話すんですが、第一に
そのクラムボンって
何なんですか?❔❓❔

ハンサム 教授
いや、私にもわかり
ません;^^💦

サクラさん
そのあと魚がカワセミに
食べられて、それから
やまなしが落ちてきて
お酒になるのを待つ
ように父親に言われる
んですが、この話の
流れが、なんでそう
なるのか❓❔❓…




ハンサム 教授
童話としては全然
わかりにくい展開
ですよね。

サクラさん
なのにこんなに読まれて
教科書にまでのってる
というのは、ひとえに
宮沢賢治というビッグ・
ネームにひっかきまわ
されてるということ
なんでしょうか?

ハンサム 教授
いやいや、そう決め
つける前に、もう一度
じっくり読み直して
面白味を発見して
いきましょう。


というわけで、ついに100回を突破し第113回
となります「感想文の書き方」シリーズ
(あらすじ暴露サービスとしては第68弾)。

今回は、小学校の国語にのっていて実は
先生方もどう教えていいか困っているという
噂がもっぱらの宮沢賢治作品『やまなし』
(1923)で行ってみましょ~((((((ノ゚🐽゚)ノ
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賢治の生前に発表された数少ない童話の
一つで、『岩手毎日新聞』(1933年廃刊)
に掲載されたもの。

“だらけのこの童話を解明していくには
やはり、まずはストーリー(あらすじ)を
押さえておくことが前提になりますね。

というわけで、本日の内容は
ザッと以下のとおり。



🍐やや詳しいあらすじ

さっそく参りましょう。

「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻灯
です」という前置きのあと、「5月」と
「12月」の物語があって、「私の幻灯は
これでおしまいであります」と締めくくる
という構成になっています。

「  」内は原文の引用です。


🍐 【五月】

二疋(ひき)の蟹(かに)の子供らが
青じろい水の底で話しています。

クラムボンはわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」

「それならなぜクラムボンは
わらったの。」
「知らない。」

「クラムボンは死んだよ。」
「それならなぜ殺された。」
「わからない。」

  カニBeach-Crab-s

こんなふうに言葉を交わす間、
「天井」つまり水面では
「つぶつぶ暗い泡」が流れたり、
蟹たちの吐く泡が上っていったり、
魚(うお)が行き来したりします。

「お魚はなぜああ行ったり来たり
するの。」
何か悪いことをしてるんだよ。
とってるんだよ。」

「お魚は……」と弟の蟹がたずねようと
した瞬間、天井に白い泡がたって、
青光りする鉄砲玉のようなものが
飛び込んできて、魚が上のほうへ
上ったようでした。

    カワセミsacred-kingfisher-815021_640

兄弟の蟹がふるえていると、
お父さん蟹が来て、それは「かわせみ」で、
「おれたちはかまわない」から
安心しろと言います。

「お魚はどこへ行ったの。」
「魚はこわいところへ行った。」(叫び)

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🍐 【十二月】

蟹の兄弟も大きくなり、
川底の風景も変わりました。

兄弟が泡の吐きっこをして
「やっぱり僕の泡は大きいね。」
「大きかないや、おんなじだい。」
と言い争っています。

弟がお父さん蟹にきくと、
「それはにいさんの方だろう。」
というので泣きそうになります。

その瞬間、「黒い丸い大きなもの」が
ドブンと落ちてきて、また上って
いきました。

  


「かわせみだ。」と首をすくめると、
お父さんは「あれはやまなしだ」
と教え、それが流れるのに
ついて行こうと誘います。

「そこらの月あかりの水の中は、
やまなしのいい匂いで
いっぱいでした。」

「おいしそうだね、お父さん」
「待て待て。もう二日ばかり待つとね、
こいつは下へ沈んで来る、それから
ひとりでにおいしいお酒ができるから」

三疋の蟹は穴に帰って行きます。

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🍐 謎だらけの童話?

はい、これで終わりです。

ん? やっぱりなんかよくわからん?

うーむ。それではよりヴィジュアル
(視覚的)に、こちらのCG作品の
映像で理解してもらいましょうか。



後半が「十一月」とされたので、
驚いたかもしれませんね。

原文は「十二月」なんですが、
これが「十一月」の誤植だとする説も
あって、この作品はそれに
したがったものと思われます。

やまなしが落ちてくる季節としては
たしかに十一月の方が適当とも
思われますが、はて……??

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このことを含め、作者の賢治が何も
コメントしないまま世を去ってしまった
こともあって、作品はいまだに多くの謎を
残しているんですね。

以下では、それらの謎を4つに絞って
考察し、それなりの根拠をお見せしながら
解説を試みていきたいと思います。

  

🍐 クラムボンの正体・意味は?

まず疑問として浮かぶのは…
  1. クラムボンの正体は?

  2. が「悪いこと」をしている
    とされるのはなぜ?

  3. やまなしが「お酒」になるまで
    待たれるのはなぜ?
    (蟹、しかも子どもには、
    ナマのまま食べた方が
    おいしいのでは?)

といったところではないでしょうか。

このほかにも謎と思えるコトがあれば、
それでもいいんですが、ともかく
感想文のなどを書く場合にはこれら謎の
どれにするかを決め、一つだけについて
深掘りしてみることをおすすめします。

授業で先生やクラスメートの言っていた
ことを思い出し、調べられることは調べ、
自分なりに考え抜くことで、なんらかの
「解答」を出していくようにすれば
いいんですよ。

では、上記3点について一つずつ
考察し、解説を加えていきましょう。

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🍐 かんじんなことは「わからない」

まず「クラムボン」ですが、これも
賢治自身のコメントがなく、
さっぱりわかりません。

「アメンボ」のこととする説があり、
これは十字屋版『宮沢賢治全集』(1939~)
の注釈以来踏襲されたもので、今も
見かけることがありますが、研究者の
間ではあまり支持されていません。


その後続々と出てきた説として、
プランクトンや川えびなどの「小生物」
説、「蟹の吐く泡」説、「光」説…。

蟹の英語”crab”に”bomb”(爆弾)を
加えた造語と見る説。

また物語に蟹の母親が登場しないこと
から、「クラムボン」は母親だ
(「殺された」からもういない)
とする説(福島章)もあります。

     


さらには「蟹語」だからわからない
という開き直った説も出され、
もう完全に諸説紛々の状況です。


私としても、これはわからないし、
わからないままでいいと思うのです。

というか、その「わからない」という
ことにむしろ積極的な意味を込めたい
とも思っているんです。

つまり、蟹の兄弟が何ものかを指して
この語を発していることは明瞭ですが、
そうでありながら、読者にはその何か
(指示対象)がいっこうに見えてこない……

そこにこそ賢治のねらいがあった、
と考えるべきではないか……と。

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どういうねらい?

そこをぜひよく考えて、自分なりの
解答を出してもらえたらと思うのですが、
私個人としてここで思い出すのは、
サン=テグジュペリの『星の王子さま』に
出てくるキツネがあかすこの「秘密」です。

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心で見なくっちゃ、ものごとは
よく見えないってことさ。

かんじんなことは、
目に見えないんだよ。

👉この「秘密」について詳しく知りたい
人はこちらを参照してくださいね。

星の王子様のあらすじ☆キツネの秘密とは?

星の王子様で読書感想文☆世界に一つだけの花?

   petit prince, conte, personnage, rve, univers, livre


「クラムボン」についてそれ以上は
想像にお任せすることにして、
次の謎に移りましょう。

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🍐 魚は悪いことをしている?

前半「五月」での兄弟の会話で、魚は
「なぜああ行ったり来たり」するのか
という弟の問いに、兄は「何か悪いこと
してるんだよ。とってるんだよ。」
と答えますね。

「とってる」といっても、自分の食べる
ものを捕ろうとしているわけで、
「盗む」という意味ではないと
思われるのですが、それでも兄は明確に
悪いこと」と規定しています。

そしてカワセミに捕られた結果
行くのは「こわいところ」とされています。

地獄でしょうか。



生きるために小動物を捕食しようとしていて
より大きな鳥に捕食されただけなのに、
なぜ「こわいところ」へ行かされなければ
ならないのでしょうか。

これも謎といえば謎ですが、賢治の
愛読者であれば、解答を用意することは
そうむずかしくないでしょう。


たとえば『銀河鉄道の夜』の終わり近く、
主人公のジョバンニはこう思いますね。

僕はもう、あのさそりのように
ほんとうにみんなの幸いの
ためならば僕のからだなんか、
百ぺん灼(や)いても
かまわない。

   

そして、ジョバンニのこの考えは、
あの有名な詩「雨ニモマケズ」で
言い表されたところでもあり、

世界がぜんたい幸福にならない
うちは個人の幸福はあり得ない。
   (農民芸術概論綱要 序論)

と考える賢治自身の思想の最も根本的な
部分の表現と見てよさそうなんですね。


となると、われわれ俗人から見て
そんなに悪くないあの「お魚」さんも
賢治のこの理想を基準とするかぎり、
不徳のゆえをもって地獄行き……

ということになっても,それほど
不思議ではありませんね。
👉宮沢賢治のこのような思想・信条を
めぐっては、こちらでも情報提供して
いますので、ぜひご参照ください。

銀河鉄道の夜にタイタニックが出て来る?詳しいあらすじで確認しよう

   

👉上記の「銀河鉄道の夜にタイタニックが
出て来る?」の記事でもふれている
ことですが、巨大客船タイタニック号の
遭難事件が『銀河鉄道の夜』にとり入れ
られていることについては、こちらで
詳しく情報提供しています。

ぜひご参照ください。

タイタニック(映画)4つの”なぜ”⦅ローズはフロイトを読む悪い娘?⦆

     


🍐 やまなしがお酒になることの意味は?

さて3つめの謎は、蟹にとっては
新鮮なうちに食べてしまった方が
よかろうと思える「やまなし」について、
父蟹が「お酒」になるのを待てと言う、
と命じることです。

オヤジがよほど酒好きで、子どもたちも
早く酒飲みにしたいと思ってるん
でしょうか。

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いえいえ、賢治先生の書かれる童話です。

そのような快楽的な展開はよもや
想定されておりますまい。

では何?

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この謎も、賢治の高邁な理想が見えてきた
今では、もはやそれほどむずかしい
ものではないんではないでしょうか。

私の見るところ、この「やまなし」は、
自己保存本能に突き動かされるままに
小動物を捕食する「魚」や「かわせみ」
とはまったく異なった次元――すなわち
『銀河鉄道の夜』の「さそり」や
ジョバンニの次元――に生きています。

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つまり「みんなの幸いのためならば
僕のからだなんか、百ぺん灼いても
かまわない」と思うような生き物
として登場しているんです。

すくなくとも父蟹はそのように
理解しているがゆえに、その意志を
尊重すべく、熟成・発酵を「待て」と
子蟹たちに命じたのです。


もちろんこれは私個人の解釈に
すぎませんが……。

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🍐 まとめ

『やまなし』の謎について、私なりの解答を
提示してきましたが、どんなものでしょう。

もちろん絶対的正解というようなものは
ありませんので、各自が感想文などを
書かれる場合の参考にしてくだされば
よいのです。
👉『やまなし』で読書感想文を書こう
という場合は、こちらに例文も用意して
いますので、ぜひ参考にしてください。

やまなし(宮沢賢治)で感想文【800字の例文】作者の伝えたいことは?

  


宮沢賢治のほかの作品と比べてみる
というのも、感想文やレポートを書く上では
良い方法です。
👉ほかにこんな記事も書いていますので、
参考にしてもらえたらと思います。

よだかの星で読書感想文どう書く?【高校生用800字の例文つき】

    


宮沢賢治の”悲恋”童話作品:土神と狐~あらすじと感想文~

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     雨傘82182-stock-photo-frau-einsamkeit-ferne-strasse-herbst-regen

宮沢賢治 注文の多い料理店のあらすじ:短くまとめると…

そのほか賢治作品をいろいろ見てみたい
場合は、こちらから探してみてください。

 宮沢賢治の本:ラインナップ
 

ん? 感想文やレポート着想はなんとなく
浮かんできたけど、その書き方というか、
要領がわからない?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。
👉当ブログでは、賢治以外にも
多くの作家・作品をとりあげて、
「あらすじ」や「感想文の書き方」の
記事を量産しています

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょう。

僕のからだなんか、百ぺん
灼かれようと…(iДi/~~


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