サクラさん
川上未映子さんの
『ヘヴン』にはショック
を受けすぎていて、読書
感想文を書こうにも何を
書いたらいいのやら
混乱状態です(🙀)

ハンサム 教授
う~む。それら多数の
ショックを一つに絞って
いく必要があるかな。


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サクラさん
イジメられてるコジマが
自分が不潔にしている
ことにも、イジメを
受け入れることにも
意味があると言いだして
深みを見せていく
意外な展開。



でも、その一方でイジメ
側の百瀬が説く、一切は
無意味なんだから何を
やったっていいんだと
いう哲学も不気味で
ゾッとしました。

ハンサム 教授
なるほど。でも、その
二つの考えは「意味」が
あるないかという
ところで表裏一体と
見ることもできる。

サクラさん
「ある」といえばある
「ない」といえばない

「意味」は結局、人が
つけるものだから❔

ハンサム 教授
そういう読み方で統一的
な解釈を打ち出すことも
できるし、それがむずか
しそうなら、どちらか
一方で意見を書けば
いいんじゃないかな?

サクラさん
なるほど。いっちょ
やってみましょう(😹)


というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ第316回”はいま日本で最も注目
される作家、川上未映子さんが芸術選奨
文部科学大臣賞・紫式部文学賞の両賞を
かっさらった超・問題作『ヘヴン』
(2009)に挑戦です(((((ノ゚🐽゚)ノ
   👇 

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実はまだ読んでいないとか、細かい
内容を思いだせないという人は、
こちらの動画であらすじというか
概要を把握してもらえればと思います。 👇


👉ただしこの動画は一つの解釈を
まとめたものにすぎませんので、
全面的に受け入れる必要は
ありません。

たとえば百瀬という人物を「傍観者」と
規定していますが、下記の感想文では
作者の川上さん自身がそう呼んでいる
とおり(後述)、「加害者」の一人と
解釈しています。


さて、そのような次第で、
本日の内容はザッと以下のとおり。

 
  
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読書感想文の例文(2000字以内)

それではそろそろ取りかかりましょうか。

今回は字数制限2000字(原稿用紙5枚)
以内という制限枠内でサクラさんが書き、
ハンサム教授の添削指導で完成させた
という設定の、やや高度な読書感想文を
お目にかけます。

感想文というよりは批評文と呼ぶべき
かもしれず、大学・大学院の読書レポート
としても十分に通用する内容と
思われます。

まずはじっくりとご熟読ください。

 川上未映子さんの『ヘヴン』は
中学校でのイジメを扱った小説と
いうことで、どうせ「イジメは
こんなに卑劣で人を傷つける、
よくないことだからやめましょう」
というような結論の待ち受ける
教訓的なお話なのだろうと心の
どこかで高をくくって読み始めた
のだが、この期待は見事に
裏切られた。

そこに広がって来たのは、これまで
私が文学作品のうちに見いだした
ことのない、まったく思いもかけ
ない世界で、イジメを否定しない
どころか、その肯定・促進にさえ
つながってしまいかねない思想・
哲学が危ないと思えるほど自由に
展開されていたのだ。

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 持ち前の斜視のせいでイジメを
受けている主人公の「僕」を含め、
登場人物の一人一人がそれなりの
哲学というか、生き方の原則のような
ものをもって生きているのだが、
そのなかで、強烈な往復ビンタの
ように私を打った人物が二人ある。

一人はイジメる側のナンバー2の
ような位置にある秀才の百瀬であり、
もう一人は「僕」と同じくイジメを
受けていた女子のコジマで、彼女は
「僕」に「ヘヴン」を見せるという
約束を、死をもって果たすことに
なる悲劇的な人物だ。

   Artistic-Women-s

 まず百瀬の哲学をまとめておこう。

病院で偶然に「僕」と出くわし、
一対一で話すことになるのだが、
イジメは無意味だし、そんなことを
する権利は誰にもないと抗議する
「僕」に対して、百瀬は、人は
何かを「権利があるから」するの
ではなく「したいからする」のだし、
「無意味」だからこそしてもいい
のではないかと言う。

やめてほしいと「君が感じるのは、
もちろん百パーセント、君の勝手
だけど、まわりがそれにたいしてどう
応えるかも百パーセントまわりの
勝手だ」し、そもそも君の斜視は
イジメの「決定的要因じゃない」
とも言いだして「僕」を混乱させる。

君との出会いによって自分らに
「たまたま」そういう「欲求」が
発生することでそうなっている、
この「たまたま」こそ「この世界の
仕組みだから」仕方ない。

自分が思うことと世界の
あいだにはそもそも関係が
ないんだよ。

それぞれの価値観のなかに
お互いで引きずりこみあって、
それぞれが完結してるだけ
なんだよ。

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そう考える百瀬が時に「おそろしい
と思う」のはたまたま出てくる
「欲求」つまりは「生きてること」
そのもの。

「生きてる自分からは誰も自分を
守ってくれないからね」と笑うの
だが、彼は結局、この意味で自分を
守れず自滅する(最後の事件のあと
彼らがどうなるかは説明されて
いないが、警察沙汰にはなる
はずだ)。

 百瀬のこの哲学を論駁することは
残念ながら私にはできないのだが、
これをあくまで否定しようとして、
自分の「価値観のなかに」相手を
「引きずりこむ」形での「完結」を
最後まで、死を賭してまで追い求めた
のがコジマだったといえるのでは
ないかと思う。


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 コジマは同じクラスの女子の間で
イジメの標的になっている生徒で、
髪や制服や上履きが目立つほど
薄汚いことがイジメの誘因に
なっていた。

「僕」はそのコジマから付け文の
ようなことをされ、初めはイジメ
グループのいたずらだろうと警戒
するのだが、何度目かに嘘とは
思えなくなって待ち合わせ場所へ
行ってみると、まったく独特の
「世界」(百瀬の言う意味での)を
築いている人だとわかる。

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彼女はその見かけからは信じられない
ような豪邸に住んでいるのだが、
それは再婚した母の夫、つまり継父の
経済力によるもので、コジマ自身は
小学四年の時の離婚で離れ離れに
なった実父の貧しさに固着していた。

「わたしがこんなに汚くしてるのは、
お父さんを忘れないようにっていう
だけのこと」で、それには「ちゃんと
した意味があるのよ」とコジマは
「僕」に教えるのだ。


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 そしてその後、「僕」がひどい
暴力を受けて病院へ行きながら、
なおも自転車に接触して転んだだけ
だと言い続けていた時にコジマに
会い、抵抗や復讐をしない理由を
問われて「僕が、弱いからだと思う」
と答えると、彼女は即座に否定する。

君もわたしも、実は弱いからされる
ままになっているのではなくて、
「自分たちの目のまえでいったい
なにが起こってるのか、それを
きちんと理解して、わたしたちは
それを受け入れてる」のだという。

そういう「ちゃんと意味のあることを
している」、「それは意味のある
弱さ」で「むしろ強さがないと
できないことなんだよ」と。

そしてイジメている連中もいつかは
それを「わかるようになる」はずだと、
結局は「僕」に見せられなかった
「ヘヴン」という絵が存在するのと
同じことのようにそれを確信している
らしいのだ。




 百瀬を含む男女のイジメ仲間が
二人への最後の凄惨な仕打ちの後、
はたしてコジマの予言どおりに
そのことを理解するかどうかは
かなり怪しいと思うけれど、一切は
「無意味」だからなんでもできる
という百瀬の哲学が、「弱さにも
意味がある」というコジマの価値観の
方へと「引きずりこまれる」ことを
たぶん作者は願っていると思うし、
私もそうであってほしい。 (1998字)

どうです?

なかなかよく書けていると
思いませんでした?


これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、ところどころ
つまみ食いして、自分らしい文章に
変えて使ってもらうのはかまい
ませんよ~;^^💦

もっと短い字数で書く場合は、
自分の場合は必要なさそうだと思える
部分を切り捨ててスリム化してください。

逆にもっと字数がほしい場合は、自分が
思ったことや思いだした経験などを
どんどん入れて膨らましていけば
いいわけです。

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コジマはキリストで百瀬はニーチェか

さて、ここからは、上記の例文では
物足りない、もう少し深く考えて
みたい、あるいは少し角度を変えた
感想文やレポートを考えたいという
人のための追加情報です。

まず、言ってみれば「強い弱さ」──
「強さがないとできないこと」ところの
「意味のある弱さ」──を追求し、
ついには「ヘヴン」(天国)に吸い
込まれるように消えていくコジマに
イエス・キリストの面影を見た読者も
おられるのではないでしょうか。

「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」
と教え、逃れられたはずの十字架も
あえて背負い、「弱さ」に徹することで
最終的な勝利──大きな「意味」を
すべの弱者にもたらしたとされる
あの人です。

     


コジマの人物造型の背後に、もしこの人が
あるならば、そのような「意味」に対して
懐疑的で、各個人は「それぞれの価値観の
なかにお互いで引きずりこみあって、
それぞれが完結してるだけ」だと見る
百瀬には、”反キリスト”を自称した
フリードリッヒ・ニーチェが意識されて
いるのかもしれません。

つまり各人が違う「世界」に生きている
以上、ほんとうに通じ合う「意味」など
ないという遠近法主義(パースペクティ
ズム)に立ち、キリスト教を「奴隷道徳」
と見て徹底的に批判したあの男です。



百瀬はたまたま起こってしま、制御できない
「欲求」が「生きてる」ことそのものだ
みたいな言い方をしますが、このあたりに
「善悪の彼岸」「力[権力]への意志」
「生成の無垢」といった言葉で思考を進めた
“生の哲学者”ニーチェの匂いを嗅ぎつける
読者もいるかもしれません。

実際、百瀬の哲学の構成にニーチェが意識
されていることは、作者の川上さん自身も
『これがニーチェだ』という名著もある
哲学者、永井均さんとの対談のなかで
認めています。
(「生まれることは悪いことか? では
産むことは? 【特別対談】川上未映子
×永井均 反出生主義は可能か〜シオラン、
べネター、善百合子」👉Web 河出)

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ただこれをもって「百瀬=ニーチェ」と
してしまうとしたら、それももまた
いささか早計でしょうね。

物事に「意味」があるかないかという
ような問題では、ニーチェはむしろ
すべてのことに「意味〔とその力〕はある」
と言っているようにも解されるので、
この観点からすればむしろコジマにこそ
ニーチェの影を見ることも可能なのです。

しかもニーチェは人柄として、百瀬のように
付和雷同してイジメをするような人では
なかったはずで、またナチスが勝手に
でっちあげた「反ユダヤ主義者」でも
全然ありませんでした。

発狂直前(または直後か)には鞭打たれて
いる馬をかばって抱きしめたそうですが、
これは彼が深いところに持っていた
優しい心根を証明する事実でしょう。

ただその思想に優生学やイジメ肯定に
変形されやすい側面があったという
だけの話なのです。
👉ニーチェの哲学をめぐっては
こちらの記事でも情報提供しています。

ぜひご参照を。

“結婚生活は長い会話である”とニーチェが言ったって本当?出典は?

ニーチェ ツァラトゥストラは読みやすい?訳本選びがカギに

『ニーチェ先生』を読む//大真面目にニーチェ哲学に照らすと…

『ヘヴン』は、ニーチェかキリストかの
どちらかに肩入れして読者を導こうとする
ような作品では全然ありませんが、これに
近い対立軸が小説の構想に据えられている
ことは明らかに見て取れます。

その意味では、そのどちら側に立つか
自分のスタンスを決めることができる
人になら、感想文やレポートもぐっと
書きやすいものになるはずなのです。
👉イジメの心理学的な問題をめぐっては
こちらの記事もご参照ください。

いじめは楽しい…の心理を解析!中野信子流の脳科学はこう教える

ゴシップ好きの理由はずばりイジメ?潜在するねたみ・平等主義の心理

         


まとめ

さあ、これだけ情報があれば、もう
大丈夫ですよね、読書感想文。

ん? むしろ川上未映子という作家の
パワーに圧倒されたので、まずは彼女の
文学世界をもう少し探求してからに
したい?

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なるほど、それもよいでしょう。

川上さんの最新長編『夏物語』(2019)
は翌2020年には早くも20か国語以上の
翻訳が出ていて、日本ばかりでなく
アメリカなどでの受賞にも輝く
世界的なメガ・ヒット作です。

未読の人はぜひお読みください。
👉概要を知りたいという人には
こちらの記事がお役に立つはずです。

ぜひご参照ください。

夏物語(川上未映子)のあらすじ【ネタバレ】と感想⦅反出生主義とは?⦆

        


ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?

う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

                 

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

    

そちらで解説している「書き方」を
踏まえて、当ブログでは多くの感想文例を
試作し提供してきましたが、このほど
それらの成果を書籍(新書)の形にまとめる
ことができましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
  👇


買う前にその「予告編」が見たい
という人は、こちらでどうぞで。

読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!

            


👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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