ニーチェ先生の感想…「神は死んだ」と接客する店員はコンビニの超人か

ニーチェ先生の感想…「神は死んだ」と接客する店員はコンビニの超人か

サクラさん
『ニーチェ先生』と
いえば2013年の雑誌連載
開始以来、累計250万部を
売り上げてているという
異色の人気マンガで
2016年にはドラマにも
なりました。

人気の秘密はどこに❔

ハンサム 教授
主人公、仁井智慧(にい
・ともはる)君のキャラ
が大きいのでは?


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サクラさん
智慧は”ちえ”とも読めて
続けて読むと”ニーチェ”
なんですが、名前だけで
なく、言動がなんとなく
ニーチェっぽいので
“ニーチェ先生”という
ことになったらしいん
ですね(😹)

ハンサム 教授
顔は似てません
けどね;^^💦





サクラさん
ええ。でもコンビニ店員
でありながら客に対して
傲慢というか、「お客様
は神様だろが~」なんて
キレられても、平然と
神は死んだ」と宣告
するんです。

ハンサム 教授
なるほど。それは
ニーチェの言葉には違い
ないんですが、「お客様
は神様」という場合の
「神」とニーチェが
死んだと言ってる「神」
とは全然別物じゃ
ないかな;^^💦

サクラさん
ふ~む。それではご本尊
のニーチェのいう「神」
とはどういう存在で、
それが死んだとは
どういう事態だったん
でしょうか❔

ハンサム 教授
それを言い出すと話が
長くなりそうですが、
我慢して聞けます?

サクラさん
神に誓って(😸💦)


というわけで本日の素材は、なんと
『ニーチェ先生〜コンビニに、
さとり世代の新人が舞い降りた〜』
((((((ノ🤡)ノ

『月刊コミックジーン』連載(2013年
9月号~2019年1月)後、2019年1月から
COMIC BRIDGE onlineに移籍し連載中で、
累計発行部数250万部を突破している
人気マンガです!
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2016年にはドラマCDとなって、
配信・テレビ放映も実現しました。

そのワン・シーンをどうぞ。👇



もちろんマンガである以上、荒唐無稽な
おふざけがメインであるには違いない
のですが、仮にも「ニーチェ先生」と
名乗る以上、それなりの説明責任は
あるはずだろう…

との観点から、ご本尊フリードリッヒ・
ニーチェの原典をきっちり押さえながら
大真面目にメスを入れていこうという
恐るべき愚行が今回の試み;^^💦

内容はザッと以下のとおり。


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覗き見、『ニーチェ先生』

まだ読んだことも見たこともない
という読者さんのために少しだけ
覗き見というかつまみ食いを
してもらいましょう。

原作『ニーチェ先生』第1巻の冒頭
早々に出てきて、読者に一撃を
くらわすのがこの場面です。

「ああん!? ふざけんなよ! 
お客様は神様だろうが!」
神は死んだ

      


場所は深夜のコンビニ。

凶暴な客にひるむことなく
神は死んだ」とのたまったのは、
新入りバイトの大学生、仁井智慧くん。

この名ゼリフから「ニーチェ先生」と
呼ばれることになるわけですが、
このほかにも、いろいろと異様な言動を
繰り出すので、クスリと笑えます。

あくまでも”クスリと”であって
“ゲラゲラ”ではありません、
念のため;^^💦

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もともと実在の人物をモデルにツイッター
発信を続けていたところ、評判を呼んで、
ついにマンガになったのだそうですから、
これはネット社会の落とし子という
新しい生い立ちのマンガ。

この意味でまことに現代的、新感覚の
ポップ・アートではあり、捧腹絶倒の
爆笑のようなものは多くないとしても、
読者の意表を突いてニンマリさせる
新奇な趣向が大いにウケたものと
見られます。

仁井智慧にとっての「神」

さてこの仁井智慧くん、休憩室で同僚から
「一番腹が立つお客様ってどんな方ですか」
と問われて、表情を変えることなく

「来店する……お客様ですかね」

と答え、休憩室を静まり返らせます(ノ゚ο゚)ノ

     Black-Lip-s

来店しない人を「お客様」と呼ぶことは、
コンビニの現場ではまずないでしょうから、
この発言は「お客様すべてに腹が立つ」
と言ったのと同じですよね。

とすると、それは「接客業の根底を
揺るがす」ものでしょうから、
作者の「松駒」さんの危惧も
もっともです。

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こんな仁井くんですが、なんと「仏教学部」
の学生であることが開巻早々に知らされます。

ひょっとしてお寺の息子かな…と思った
読者もいるかもしれませんが、読み進むと、
これがなんと「両親が敬虔なキリスト
教徒で…」と仁井くん自ら告げるのです。

「クリスマスが嫌いなの?」という同僚の
問いに答えたもので、十年前、教会主催の
クリスマス・パーティに突然駆り出されて、

500人の目の前で謎のダンスを
踊らされた日以来神は死んだ
思っていますし、クリスマスは
邪教の奇祭として扱っています

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とのこと。

なるほど。それならば、たしかに
接近してきますね。

敬虔な牧師の家庭に育ちながら、
キリスト教に懐疑の眼を向け、仏教も
深く学びながら、独自の思考を深めて
いった、あのフリードリヒ・ニーチェに。
    

「神の殺害者」(ニーチェ原典を読む)

そのニーチェが「神は死んだ」と初めて
書きつけた本は『ツァラトゥストラかく
語れり』の一つ前の著作『喜ばしき知恵』
(「愉しい学問」などとも訳される。
1882年初版)の第125節「狂乱の男」に
おいてでした。

かなり長いので全文を引用することは
控えますが、そこでは、昼日中に提灯を
掲げて広場に駆け入り、「神はどこだ!」
と叫ぶの男のエピソードが語られます。

居合わせたのはもはや神を信じない人々
だったため、男のふるまいは物笑いの
種になってしまいますが、男は彼らを
見つめてこう叫びます。

「はっきり言ってやろう。
われわれが神を殺したのだ
──諸君と私が!
われわれ全員が神の殺害者なのだ!
〔中略〕
神は死んだ
二度と甦ることはない!
われわれが神を殺(あや)めたのだ!
あらゆる殺害者のなかでも
最たる殺害者たるわれわれに、
心休まる時があろうか?
〔中略〕
われわれがやり遂げたことの
偉大さは、われわれにとって
立派すぎるのではないか?
それに見合った分際になるには
われわれみずからが神になる
ほかはないのではないか?


この「われわれみずからが神になる」云々
の発想がニーチェのいわゆる「超人」
(英訳の一つが”Superman”)の思想として、
次作『ツァラトゥストラ』で多角的に
物語化されていくものと解釈できます。

   

ただ、ここでは「超人」までは口にされず、
人々が押し黙るなか、男も提灯を放り出す
ことで、火が消えてしまいます。

「まだ来るべき時ではなかった」などと
捨てゼリフを吐きながら立ち去った男は、
この日、各地の教会に押し入って「神の
永遠なる鎮魂曲(レクイエム)」を歌っては
引きずり出され、尋問にはこう答えた
というのです。

「こんな教会など一体
何だというのか、──神の霊廟、
神の墳墓でないとしたら?


「神は死んだ」以上、教会は神の「霊廟」
または「墳墓」以上のものではなく、
キリスト(=神と一体)の生誕を祝う
クリスマスももはや、仁井くんの言葉を
借りれば「邪教の奇祭」以上のものでは
ありません。

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コンビニの超人❓仁井智慧

というようなわけで、既成の宗教も
接客業の基本原則も平然と無視し、
独自の境地に立っている稀有の店員、
仁井智慧くんは、「コンビニの超人」
の名に値するようにも見えます。

『ツァラトゥストラ』のニーチェがは
その「序説」でさっそく導入してくる
「超人」概念について、ちょっとだけ
見ておきましょう。

  


十年間の山ごもりの後、地上へ降りて
きたツァラトゥストラは、まず森の
聖者と対話して驚きます。

この老いた聖者が「まだ何も聞いては
いない。神は死んだということを──」

森を出て町に入ると、群衆に向かい
わたしは諸君に超人を教える
「人間は克服されねばならない何かだ」
と説法を始めます。

人間にとって猿とは何か。
物笑いの種か、痛みを
感じるほどの恥辱である。
ならば超人にとって人間はまさに
こういうものであるはずだ。
物笑いの種か、痛みを感じる
ほどの恥辱でなければならない。

(引用元:👇)


つまりダーウィン的進化論に足を置き
ながら、「猿⇒人間⇒超人」という
流れでの「人間」の「克服」すなわち
「超人」の出現を説くのです。

コンビニという狭い世界の限界内に
おいてではありますが、この意味で
(あるいは、これに近い意味で)仁井智慧
くんは一個の「超人」たりえているよう
とも解釈できるとおもうのですが、
さて、いかに。
👉もちろん、これだけでニーチェの
「超人」思想について完全にわかった
つもりになってもらっては困ります。

『ツァラトゥストラ』や『喜ばしき知恵』
など主な著作の内容や、ニーチェの生涯を
めぐっては、こちらでも情報提供して
いますので、ぜひご参照ください。

ニーチェ ツァラトゥストラは読みやすい?訳本選びがカギに

“結婚生活は長い会話である”とニーチェが言ったって本当?出典は?

マゾの心理??? そのゲーム(契約)的構造を映画・文学から解き明かす

     
     (画像出典:Freud Quotes


河童(芥川龍之介)解説と感想文例(1200字) 暗い笑いの国へようこそ

『嫌われる勇気』のアドラー心理学:”源流”にニーチェ先生?”


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まとめ

さて、マンガ『ニーチェ先生』への感想を
大真面目にニーチェ原典と突き合わせ
ながら述べてきましたが、ここまで
お付き合いいただいたアナタの感想は
どんなものでしょうか。

コメント欄からのご意見ご感想をお待ち
しますが、ともかく【『ニーチェ先生』
とニーチェ】というテーマをめぐって
なら、もうあなたは情報十分。

誰に対して知ったかぶりをしても
大丈夫ですし(たぶん)、場合によっては
感想文なりレポートを書いてしまう
ことも、お茶の子さいさいでしょう。
👉ニーチェよりむしろコンビニの
店員さんたちの世界に興味を
引かれたという方にオススメ
なのが、村田沙耶香さんの
芥川賞受賞作『コンビニ人間』。

こちらで情報提供していますので
ぜひご参照ください。

コンビニ人間のあらすじを簡単に【&詳しく結末まで】主人公はサイコパス?
      
      ISG106114107_TP_V2


ともかく私たちもニーチェのように
よく考え、仁井智慧くんのようによく
働こうではありませんか;^^💦💦💦

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4 Responses to “ニーチェ先生の感想…「神は死んだ」と接客する店員はコンビニの超人か”

  1. […] ニーチェ先生 (ご本尊、フリードリヒの方ですよ。マンガの方は下記を参照 「マンガ『ニーチェ先生』をもしニーチェが読んだら」) は、こんな言い方で繰り返し浮上させています。 […]

  2. […] 生 (ご本尊、フリードリヒの方ですよ。マンガの方は下記を参照 「マンガ『ニーチェ先生』をもしニーチェが読んだら」) に重なるようだな、ということでした。 で、少し調べてみる […]

  3. […] やあやあサイ象です。 当ブログでは、いつぞやの記事 「マンガ『ニーチェ先生』をもしニーチェが読んだら」 以来、数回にわたって、 (マンガの”ヒーロー”仁井智慧くんで […]

  4. […] 『ニーチェ先生』をもしニーチェが読んだら | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象 より: 2014年11月29日 3:19 PM […]

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