差別と区別の違いは英語で考えた方が早い//人種住み分けは差別じゃない?
やあやあサイ象です。
「差別」と「区別」はどう区別しますか?
これも昔からよく問題になる問題ですね。
おっと、ごめんなさい。
ダジャレが目的ではありません;^^💦
これからまじめに検討しますので、
よろしくお付き合いくださいね。
差別じゃない、区別です
2015年2月11日(建国記念の日ですね)に着火した”問題”にこんなのがありました。
作家の曽野綾子さん(当時83歳。2003年
文化功労者)が同日の産経新聞朝刊の
コラムで、南アフリカの人種問題に言及して
こう発言されたことが物議をかもしました。
居住区だけは、白人、アジア人、
黒人というふうに分けて住む方がいい
南アフリカ駐日大使や「アフリカ日本
協議会」から抗議を受け、国際的にも
報道されて、新聞・雑誌で議論を呼んだ
のですが、それらへの曽野さんの反論・
弁明にも「差別じゃない、区別です」
というのが出てきたんですね。
2月17日のラジオ番組『荻上チキSession-22」
(TBS系)で荻上さんの問いに対して
そう繰り返されたというのです。
👉詳細はこちらをご参照ください。
荻上チキによる曽野綾子氏へのインタビュー書き起こし
要は、強制ではなく自主的に「分けて住む」
ことをいっているんだから「差別」には
当たらない、とおっしゃりたいようなん
ですが、そんな論理、国際的には通用
しないよ(=`(∞)´=)、と指摘する論者が
多かったようです。
英語との対応を考えざるをえない
いやいや、どっちが正しい、とかの議論をしようというのではありません。
考えたいのは言葉の問題で、ここでは
「区別」と「差別」の(微妙な)違いを
明らかにしたいと思うんです。
「差別じゃない、区別です」と両者の”区別”
(違い)を主張しても、それが”国際的に”
通用しないことはどうも明らかのようで、
そういったことへの敏感さの平均的レベルが
どうも日本人は(先進国中、格段に)低い
のではないかとも思われます。
このことには、社会的、歴史的、文化的……
いろんな要因がからむんでしょうが、
ここで考えたいのはその一つ、
言語的要因です。
そもそもの日本語としては「差別」は
「しゃべつ」と読む仏教語だったという
経緯もあり、「区別」と「差別」の2語が
併存するようになってからも、まあ、
両者は類義語で、互いの違いが問題にされる
場面があったとは想像できませんね。
(すくなくとも明治まで)
それがなぜこんなヤカマシイ問題に
なってきたかといえば、ひとえに、
明治以降の日本語が英語をはじめとする
ヨーロッパ系言語との対応を求められる形で
形成されてきたことによっています。
「区別」された人たちが不利益を被るなら…
そこで、英語をよく読まれる方には釈迦に説法になって恐縮なのですが、
「区別」に当たる英語の”distinction”
(動詞は”distinguish”)と
「差別」に当たる”discrimination”
(動詞は”discriminate”)の用法・語感の
違いに慣れている人なら、「区別」と
「差別」の違いで躓くこともあまり
ないんじゃないですかね。
つまり、”distinction”は”distinguish
between A and B”というふうに
比較の対象を並べる形で使われる
のが普通。
これに対し、”discrimination”の方は並べる
のではなく、たいてい”discriminate
against C”という形で「何かを差別する」
その対象をはっきりさせる言い方で
出てくるわけですね。
で、その「何か」(目的語、対象)になった
側は多かれ少なかれ不利益を被る
ことが想定されているわけで、そうで
なければ”discrimination”(差別)
とはいわないわけです。
日本語の「差別」も、昔はどうだったに
せよ、今はこの”discrimination”の
用法・語感に付き合わざるをえない
ということなんです。
これで行くと、曾野さんが「差別じゃない
、区別です」と主張されたような場合も、
非強制的であれ、住み分けが推奨される
ことで不利益を被る人がいる場合(抗議した
人たちはそれが実情だと主張しています)、
「区別」された人たちにとって、それが
「差別」として働くことは明白。
「差別じゃない」と叫んでも、
認められないわけですよね。
「人種差別」の定義
ちなみに日本ももちろん加入している「人種差別撤廃条約」では、「人種差別」
(racial discrimination)をこう定義して
います。
人種、皮膚の色、世系(descent)又は
民族的若しくは種族的出身に基づく
あらゆる区別、排除、制限
又は優先であって、政治的、経済的、
社会的、文化的その他のあらゆる
公的生活の分野における平等の
立場での人権及び基本的自由を
認識し、享有し又は行使することを
妨げ又は害する目的又は
ものをいう。
(1条1項)
人種や皮膚の色などに基づく「あらゆる
区別」が「差別」として働くと
みなしているわけですから、曾野さんの
主張もそういった「 」ものとして
この条約に違反する…
そう見なされざるをえないんじゃ
ないでしょうか。
というようなわけで、人種によって住む
場所を「区別」した方がいいというような
意見は、もちろん心に思うのは自由ですが、
それを口に出すことには条約違反のリスクも
伴うことをしっかり意識しておいた方が
身のため、ということになります。
👉人種差別は人類が昔から
抱える大きな問題。
いちはやくそこにふれた
傑作にシェイクスピアの
『オセロ』や『テンペスト』が
ありますね。
詳しくはこちらをご参照ください。
・シェイクスピア オセロのあらすじ ☯漱石講義のコメントつきで
・シェイクスピアのオセロを講義:漱石の名言「白砂糖の悪人」?
・テンペスト(シェイクスピア)のあらすじ💘魔法と赦しのロマンス
また「人種」問題に限定しなければ
「差別」は日本文学でも追及されて
きた主題です。
島崎藤村の『破戒』がその
先駆でしたね。
詳しくはこちら。
・島崎藤村 破戒のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で解説
・島崎藤村 破戒の内容を押さえて感想文へ:ラストへの疑問から
👉日本語の難しさとそれへの
対策をめぐっては、以下の
ような記事も書いています。
ぜひご参照ください。
・「すべからく」の意味は?安倍首相らの誤用を呉智英氏らに聞く
・ビッチとは?日本語と英語でこんなに違う!その意味と侮蔑のニュアンス
・「お~になる」敬語は二重化注意:太宰・志賀も”お殺せに”バトル
・“させていただく”が間違い敬語になる場合:恩ない人への恩表現
・散見される?散見する? 正しい意味・使い方を鴎外・太宰に聞く
・起承転結の意味は?柔軟にとらえ小論文・レポートに応用しよう
ともかく「差別」は奥の深い問題で、
気をつけないととんでもないことに
なりかねません。
しっかり気を付けましょう。
それでは、また~~(^O^)/。
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