パノラマ島奇談[奇譚]で感想文◎◎乱歩の夢見たテーマパーク

 


やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも
このほどついに100回を突破し、今回で
第103回となります((((((ノ゚⊿゚)ノ。

とり上げるのは、江戸川乱歩の最高傑作!
……との評価もある『パノラマ島奇談』
(1926-27。「奇譚/綺譚」の表記もあり)。
  


さて、そもそも学校の宿題として
出ている「読書感想文」を
江戸川乱歩の小説で書こうというのは、
少々苦しいというか……まあ
学校側はあまり期待していないでしょうね。

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なぜって、それは…
読めば分かりますよね;^_^A)、
この『パノラマ島奇談』にしてももちろん……

え? 実はまだ読んでいない?

読まないで感想文を書こうというのは
なかなかいい度胸ですが、
まあそれも結構、こちらの「あらすじ」だけでも
しっかり読んでくださいね~(*~▽~)ノ。

パノラマ島奇談[奇譚]乱歩最高作(?)あらすじをネタバレ御免で


👉 「犯罪者型」探偵小説の白眉

さあ、どうでしょう。

何を書きましょうか。


ところで、全文を読に通した人のなかには
中途でやや退屈した、という感想を
もつ人もあるでしょうね。

特に上記「あらすじ」記事の
【転】でパノラマ島の夢幻的な世界の描写が
えんねんと続くあたりは、
雑誌連載中も退屈がる読者が多く、
不評を買ったということです。


つまり、『パノラマ島奇談』の次に
書かれた中編小説、『陰獣』(1928)の冒頭で
乱歩みずから語っているとおり、

探偵小説家が     どくろ skull-766899_640 
―犯人の残虐な心理を追求する「犯罪者型」と
理知的な探偵の経路を追う「探偵型」とに
分けられるとすると、『パノラマ島奇談』は
あきらかに「犯罪者型」の作品なんですね。

この二分法は、『パノラマ島奇談』の次に
書かれた中編小説、『陰獣』(1928)の冒頭で語られるものです。
詳しくは、こちらをご参照ください。

江戸川乱歩 陰獣のあらすじ:ネタバレ御免で結末まで


だから、「探偵型」を期待して読む人が
「犯罪者」の夢を追求したパノラマ島の
描写の連続にうんざりしてしまうのは
まず、やむをえないところでしょう。

でも逆にいうと、乱歩の真価は
「犯罪者型」の作品にあると思っている
ファンにはたまらない!

『パノラマ島奇談』こそ
乱歩のなかの乱歩、乱歩最高傑作だ!
との評価も出てくるわけなんですね。


大詩人、萩原朔太郎が大いに賞賛した
こともよく知られていますが、
朔太郎の評価ももちろん、夢を語った
部分に向けられていたのです。

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👉 客を取らないテーマパーク

さて、その乱歩が着々と地歩を固めてきた
エンターテインメント小説の枠内で
自分の夢を存分に語ろうとしたのが
この小説だとしますと、そこに
彼が設定した壮大な仕掛けがこの
「パノラマ島」だったわけです。

お読みの方はおわかりのように、
「私のパノラマ国」と主人公が呼ぶ
この人工楽園、要するに
ディズニーランドみたいな世界で、
いわば”客を取らないテーマパーク”ですね。

まあ、実際、もうけを度外視して
こんなテーマパークを自由に建設できたら
どんなに楽しいことでしょう。

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だから、感想文としては、
そういった「夢」の楽しさについて
書くというのも、一つの手かもしれません。

「ぼくだったら、こんな世界を
建設してみたいと思います」……みたいな。


それはともかく、この作品について
書くならば、まず、乱歩が自分の夢を
語ろうとしてもちこんだ「パノラマ」という
仕掛けについて、知っておきましょう。

というのも、当時の読者がこの言葉で
イメージするものは、現代の私たちの
連想とはずいぶん違っていたはずなんです。



👉 パノラマとは?

主人公の人見廣介と彼にそっくりの
菰田源三郎……したがって乱歩自身の
少年期――明治後期――に流行した見世物に
「パノラマ館」というものがあり、
この世代の人にとっては
「パノラマ」といえばまずこれなんですね。

映画もまだない時代、
大いに大衆の心をとらえた娯楽で、
萩原朔太郎も大いに熱中したそうですが、
その「パノラマ」について、
菰田源三郎に成り変わった人見廣介は、
まだ自分の正体を知らない菰田夫人、
千代子にこう説明します。

見物はまず、細いまっ暗な通路を
通らねばならない。

そしてそれを出はなれてパッと
視界がひらけると、
そこに一つの世界があるのだ。

いままで見物たちが生活していたのとは
まったく別な、一つの完全な世界が、
目もはるかに打ち続いているのだ。

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なんという驚くべき欺瞞であっただろう。
〔中略〕
広々とした満州の平野が、はるか
地平線の彼方までも打ち続いて
いるではないか。

そして、そこには見るも恐ろしい
血みどろの戦いが行われているのだ。(一九)



その仕掛けはといえば、
直径数十メートルの円形の建物の内壁に
継ぎ目なく遠近法で描かれた絵が
360度をぐるりと配置され、
これを見物人が中心から見まわす(((゜д゜;)))
というわけですね。

上記引用文に続く部分で廣介は 074266 これを発明したフランス人の話をしますが、
実際の発明者はイギリスのレスターだそうで、
日本では明治23年、上野にできた
「パノラマ館」が第一号。

明治27年、日清戦争のパノラマが
当たって大ブームとなったのですが、
映画(活動写真)げ出てくれば、
もちろん太刀打ちできませんよね。

明治40年代には衰退しました。


👉 登場人物の心理に入り込む

そういった歴史を調べて
レポート的な感想文を仕上げても
いいんじゃないかと思いますが、
でも、学校で評価される感想文は、
そういうものではないでしょうね。

やはり登場人物の心理に入り込んで、
「自分なら、どうするだろう」と
考え、自己反省につなげてゆくような
文章がのぞましいわけです。

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たとえば主人公の人見廣介に
入り込んでみます。

彼はけっきょく悪事をはたらいて
自滅するけれども、根っからの悪人
というわけではない。

どの時点でどう考え直せば
悪に陥らずにすんだのか……

なんて考えてみれば、とても真面目な
感想文になって学校的評価も
得られるかもしれません。


👉 ”再現”した夫を受け入れる若妻

あるいは、死んだ夫の”再現”として
この廣介を受け入れていく
千代子の心理に入り込むことが
できれば、その方がもっと
面白いかもしれません。

強い疑惑と熱い思慕を同時に抱いている
廣介に手を引かれて、この
「パノラマ国」を案内されていくうち、
千代子は、「悪魔の世界にはいった
ような異様な感じ」に目まいを覚えます。

「私なんだか恐ろしいのです」
「来てはならないところへきたような、
見てはならないものを見ているような
気持ちなのですわ」

といった言葉ににじむ
不安と抵抗の意識もやがて消え、
千代子は知らぬ間に裸体となって、
「なんでもあなたのおっしゃる
通りにします」と服従します。

そしてついに首を絞められても 彫像 andromeda-279797_640 「いつしか苦痛を忘れ、
うっとりとした快感、名状できない
有頂天におちいっていくのでした」
(二一~二二)

千代子のこの複雑な心理と葛藤、
徐々に推移していくその変化が
何によってもたらされているのか、
そこに「パノラマ国」の仕掛けが
どうかかわるのか……


ところで、千代子の心理のこの推移は、
催眠術をかけられた人が自由を失い、
催眠術師の暗示のとおりに動くように
なってしまう……という現象に
たいへんよく似ていますね。

そしてこの心的現象は、実際、
シェイクスピアから漱石をへて
安部公房、川上弘美などの現代作家へも
流れ込んでいる大きな文学的主題の
一つでもあるのです。


このことに関連する記事を
いくつか書いていますので、
参照してもらえるとありがたいです。

シェイクスピアのオセロを講義:漱石の名言「白砂糖の悪人」?
夏目漱石 夢十夜の第一夜をこう解釈笘關€ 美しい短篇で感想文を!
安部公房 鞄をどう解釈 ? 主題は? 問題を見つけて感想文へ
川上弘美 神様(+神様2011)で感想文?くまの解釈はコレで

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この観点からすると、
これら”純文学”作家の列に乱歩を
加えてもいいんじゃないかと思えます。

『パノラマ島奇談』も特にそのあたりを
読み込んで内容をしっかり押さえた上で、
「自分なら…」を考えていくことが
できれば、それはもう最高級の
感想文になるはずですよ。


ただ、エロチックな部分への言及が
学校では嫌われる……

その可能性はもちろん大ですので、
そこは十分注意しましょうね;^_^A)。



👉 まとめ

どうでしょう、なんとか書けそうですか?

この「パノラマ国」のような
人工楽園はその後の乱歩作品にも
多少のヴァリエーションとともに
再現していきます。

たとえば『影男』の地底王国がそうですし、
『孤島の鬼』の島はその悪魔的な
変形ですね。

これらと比較対照するのも
面白い方法かもしれません。

当ブログでは、上の二作を含め、
次のような乱歩作品も扱っていますので、
参考にしてもらえたらと思います。

江戸川乱歩 人間椅子のあらすじ(ネタバレあり)とその解釈
人間椅子(江戸川乱歩)で感想文◎椅子になったストーカー…
芋虫(江戸川乱歩)のあらすじ:伏字だらけの問題作!内容は?
屋根裏の散歩者(江戸川乱歩)のあらすじ:ネタバレ御免で探索
江戸川乱歩 孤島の鬼のあらすじ:ネタバレ御免で結末まで
黒蜥蜴(江戸川乱歩)のあらすじ:三島由紀夫戯曲の映画も鑑賞
影男(江戸川乱歩)のあらすじ:ネタバレ御免で結末まで
江戸川乱歩 怪人二十面相☆少年探偵団結成までのあらすじ


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こちらから探してみてください。


笨ェ江戸川乱歩の本:ラインナップ笨ェ


「探偵型」と「犯罪者型」と
両方面の才能を併せ持ち、自在に使い分けた
偉大なエンターテイナー、乱歩。

書けるネタはいくらでもあるはずですよ。

また当ブログでは、 魚 mosaic-200864_640 乱歩以外にも多くの作家・作品をとりあげて、
「あらすじ」や「感想文の書き方」の
記事を量産しています。

こちらのリストをどうぞご覧ください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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