夏目漱石 恋愛名言集『こころ』ほかの名作から”吾輩”猫が解説


吾輩は猫である。
名前はまだない。
どこで生まれたか……いや、挨拶は
もう抜きにさせてもらおう。

          猫男kadnip_medium

その吾輩が本日は、猫の分際でヒト様の
恋愛に口を出させていただくことにした。

いや、ふつう人間には見えない部分が
猫だからこそ見える、という場合もある。

シッシッと追い払ったり
されん方がよかろう。

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女は全然不必要なもの?

さて、これから「漱石の名言」を並べて
行こうと思うんであるが、その夏目漱石
先生が吾輩をダシに書き上げた例の
『吾輩は猫である』(1905-06)に、
熊本の悪口を言い合う場面があることを
以前の記事で紹介した。

すなわち熊本女性はみな顔が「黒い」という
話が出て、吾輩の主人である苦沙弥
(くしゃみ)先生が、むしろその方がいい、
「なまじ白いと鏡を見るたんびに己惚
(おのぼれ)が出ていけない」
と指摘する場面である。

詳細はこちらを参照されたい。

熊本に美人が多いのはなぜ?『吾輩』猫が人類学的に解明!

         

先生、さらに「女と云うものは始末に
おえない物件だからなあ」と嘆息
するんであるが、それに続く一言を
【漱石の名言:その1】とさせて
もらおうと思う。

とも角も女は全然不必要なものだ。
      ……【名言その1】
     (『吾輩は猫である』十一)

     IMG_20141209_0008
     (白滝幾之助画/『明治大正昭和 日本のポスター』[京都書院]より)

オオーッと、そうカッカしたもうな。

そう書いてあるんだから致し方あるまい。

それに苦沙弥先生は小説内の
一登場人物にすぎん。


が、そうはいいながら、である。

苦沙弥先生は漱石先生その人をモデルとして
いることは発表当時から誰の目にも明らか
だったんであるから、これはやはり、
聞き捨てならぬ問題発言ではござるな。


意外でした?

いや、漱石という人は実際、そういう……
はっきりいえば「女嫌い」の傾向の
ある男だったんである。


女の方が万事上手だあね

まあ、そのことは、以前の記事(👇)、

漱石『草枕』の意味を解く旅:『吾輩』猫、熊本の小天温泉へ

     

でふれた『草枕』(1906)の那美さんの
扱い方にもにじんでおるし、朝日新聞入社
後の第一作『虞美人草』(1907)なぞ、
ヒロインの藤尾は最後に(作者によって)
死刑に処されるわけで、「女嫌い」
むき出しの作品とも読める。


その次に来る『三四郎』(1908)で、
ウブな三四郎を翻弄する形になる美禰子も、
結末は作者に罰せられ(死刑にはなら
ないが)反省めいた言葉を言わされる。

その前半で友人の与次郎が三四郎にいう
言葉を【漱石の名言:その2】とさせてもらおう。

廿(はたち)前後の同じ年の男女を
二人並べて見ろ。

女の方が万事上手(うわて)だあね。

男は馬鹿にされる許(ばかり)だ。

       ……【名言その2】
      (『三四郎』十二)

         

「万事上手」に出て男を「馬鹿に」し
悩ませる女。

漱石先生の小説にはその後もこのタイプの
女性が現れつづけるんだが、先生がこれを
一方的に嫌い、断罪したかというと、
そんなことは決してない。

コンチクショウ、と歯ぎしりしながら、
やっぱり愛さずにいられない。

その機微が見えてくるから
漱石の小説は面白いんである。

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美禰子の後継者のように見えるヒロインの
うち、こうした「キライ、スキ」の両義性が
あまりにも凝縮され、その果てに爆発を
起こしてしまう人物が『彼岸過迄』(1912)
の千代子ではないかしらん。

彼女を愛しかつ嫌う青年、須永の言葉を
【漱石の名言:その3】とさせてもらおう。

彼女は僕の知っている人間の
うちで、最も恐れない一人である。

だから恐れる僕を軽蔑するのである。

        ……【名言その3】
  (『彼岸過迄』「須永の話」十二)

そしてその千代子が最後に須永に向けて
爆発させる言葉、

「貴方(あなた)は卑怯です、
徳義的に卑怯です」
「男は卑怯だから、そう云う
下らない挨拶が出来るんです」

       (「須永の話」三十五)
というあたりのド迫力にはクラクラして
くるほどで、「これは名言だ!」と膝を
打ちたくなるほどであるが、前後の脈絡
なしに出されても読者にはピンと来ない
だろうから、「名言」にリスト・アップ
することは難しい。

        汗082576
        恐れる男……  

ともかくこのあたりの経緯は、
恐れる男と恐れない女」というふうに
総括されてきた、漱石文学のキモの
一つなんである。

      Photo-Manipulation-s
       恐れない女……  



女は夫のために邪になる

このキモの女性側の血脈は、那美さんから
藤尾、美禰子、千代子へとリレーされ、
『行人』(1913)の直を経て『こころ』
(1914)の「御嬢さん」(前半では
「奥さん」)に流れ込むことになる。

『行人』の直の夫が一郎だが、妻の「霊
(スピリット)」がつかめないと苦しむ
この一郎が吐く言葉を【漱石の名言:
その4】としておこう。

何(ど)んな人の所へ行こうと、
嫁に行けば、女は夫のために
邪(よこしま)になるのだ。

〔中略〕
幸福は嫁に行って天真を
損われた女からは要求できる
ものじゃないよ」

        ……【名言その4】
        (『行人』五十一)

           


恐れる男と恐れない女」の関係の難しさは
「結婚」という階段を上がることで、
さらに複雑怪奇の度を加えてゆくんである。

であるから、やはり妻としっくり行って
いない『こころ』の「先生」が前半で
若い「私」に向けていう次のような
言葉も、一見、男女関係の話ではない
ように見えて、実はその含みもある
ことがやがて見えてくる。

これを【漱石の名言:その5】としたい。

かつてはその人の膝の前に
跪(ひざま)づいたという記憶が、
今度はその人の頭の上に足を
載せさせようとするのです。

私は未来の侮辱を受けないために、
今の尊敬を斥けたいと思うのです。
 
        ……【名言その5】
      (『こころ』上 十四)

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『こころ』の「下」をよく読めばわかる
とおり、「私」(すなわち前半での
「先生」)は御嬢さんに「殆ど信仰に近い
愛」をもって(下 十四)跪きながら、
同時にその不自然な笑い方などを
「私の嫌(きらい)な所」として明確に
意識してもおった(下 三十四)。

その後、三角関係にあった友人のKが
自殺してしまうという「悲劇」を経て
二人は結婚するんであるが、この結婚が
あまり成功していないことは「上」に
くどいほど描かれておる。

今や妻の「頭の上に足を載せ」たい
のではないかしらん。



女性の影響は莫大

なに? だんだん気が滅入ってきた、
漱石はそれほど男女関係に絶望
していたのか……ですと?

いや、そうとも言い切れん。

この、どちらとも片の付かん
「両義性」こそが漱石の真骨頂だと
むしろそう言った方がよいかもしれぬ。

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そこで【名言その1】に戻るんだが、
苦沙弥先生は「女は全然不必要なものだ」と
まで放言しながら、現実には結婚して、
妻や娘とまずまず調和して暮らしておる。

だからこの「不必要」発言も、半分
「本気」だとしても、残る半分は確実に
「嘘」なんである。

そのことは、苦沙弥先生と一心同体とも
いえる猫の「吾輩」が、実は「異性の
朋友」がけっこう好きで、「気分が勝(すぐ)
れん時」などに雌猫を訪問して「色々な
話をする」と述べる部分などからも
浮かび上がる。

これに続く「吾輩」の語りを【名言その6】
として、メデタシメデタシで
結ばせてもらおう。

すると、いつの間にか心が晴々して
今迄の心配も苦労も何もかも忘れて
生れ変つた様な心持ちになる。

女性の影響といふものは
実に莫大なものだ。

        ……【名言その6】
     (『吾輩は猫である』二)

   Good-Friend-s

まことにその通り!

吾輩もいいことを書いていたものだ。

百年ぶりに思い出して、大いに意を強くした。

願わくは、女性諸君にとってもわれわれ
男子がそのような、よき存在で
ありますように( ̄∀ ̄)/

漱石先生の世界にさらに入って
いこうとされる読者には、こちらの
記事のご参照もお願いしておく。

夏目漱石 吾輩は猫であるのあらすじ:簡単/詳しくの2段階で

夏目漱石 坊っちゃんのあらすじ&簡単なポイント解説

夏目漱石 三四郎のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説

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