ご苦労様は目上に言えないという嘘!平成元年には陛下に言っていた | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

ご苦労様は目上に言えないという嘘!平成元年には陛下に言っていた

なんだか面倒くさい話ですよね。

ご苦労様」は目下の人に言う言葉で、
目上には「お疲れ様」だ!

いや、目上にも「お疲れ様」はNGだ!

などなど、いろんな説が飛び交ってます。

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ついにタモリさんまで出て来て、
お疲れ様」は「元来、目上の者が目下の
者にいう言葉」、だから子役が「お疲れ様
と言うのをやめさせろと民放連に
申し入れるよう言ったとか…。


なんかややこしいですね。

今日はそのへんを整理して、
頭をスッキリさせておきましょう。


目上の人に「ご苦労様」は失礼?

まず基本を押さえましょう。

挨拶として声をかける場合、「ご苦労様
です」と「お疲れ様です」とで、意味の
違いはほとんどありませんよね。

でも用法には微妙な違いがあって、
一般に目上の人に向かって「ご苦労様
です」と言うのは失礼だから避ける
べきだといわれているんですね。

ビジネスマナーの本やサイトでは、
たいていこんな使い分けをするように
解説されています。

ご苦労様:目上の人から目下の
人に対して使う

お疲れ様:同等の関係、場合に
よっては目上の人に対して使う

   

だから上司など目上の人に不快感を
与えたくなければ、「ご苦労様です」
と言うのは避ける方がいいというのは
もちろんなんですが、それが近ごろでは
お疲れ様」もいかん… 
というタモリさんのような気むずかしい
方も目立つようになってきた
というわけですね。

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タモリさんの「お疲れ様」批判

タモリさんの発言は、テレビのスタジオか
どこかで子役たちがやたらと大人に
お疲れ様」と挨拶することへの
不快感を表明したものでした。

これに「我が意を得たり」と声を上げたのが
中高年世代……と書くは『週刊ポスト』。

「先に帰る若手社員に『お疲れ様
です』といわれるとカチンとくる。

そこは『お先に失礼します』
だろう!」(50代男性)

「後輩に上から目線でいわれて
いるようで、嫌だ」(40代男性)

       (2015年8月14日号)

え( ;°Д°)? ……と驚きました?

でも、そういうことなんです。

そう感じる中高年が少なくないことは
事実なので、若い人は気をつけるに
越したことはありません。

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  「寅さん、お疲れ様!」「なんだと?」…


それにしても、めんどくさい
話ではありますね。

一体なぜ、「目上の人」たちは
そんなふうに感じてしまうのでしょう。


日本語教育研究者で山形大学准教授の
園田博文氏はこうおっしゃってます。

ご苦労様です』『お疲れ様です』
というのは、本来、人をねぎらう言葉。

目上の人が使うのが伝統的で、
目下の人が目上の人に使うのは
失礼にあたります。
   (『週刊ポスト』同号)

    


つまり「ご苦労様」は「目上から目下へ」
という方向性をもつ言葉だけれども、
「お疲れ様」はそうではないから
逆方向もOK……と思ってるとしたら、
それが間違いというか時代遅れ。

今じゃどちも同じで、「目下の人」が
それらを言うのは「失礼」にあたると
園田先生はおっしゃるんですね。

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そんな「伝統」いつできたの?

でも、なんか割り切れない思いが
残りませんか?

これらの言葉について園田先生は「本来
人をねぎらう言葉」だから「目上の人が使う
のが伝統的」だと教示され、タモリさんも
お疲れ様」は「元来、目上の者が目下の
者にいう言葉」だとのたまっています。

でも、その「本来」とか「元来」とかって
いうことの根拠は何なんですかね?

それが「伝統的」だというなら、そんな
伝統、いつできちゃったんですか?


それとも「目下」の者にはそもそも
「ねぎらう」権利がないとでも?

いや、そんな薄情な世界ではなかった
はずでしょう、日本の伝統文化は…。

    


さて、ここからは私(サイ象)の仮説です。

この種の言説で「本来」とか「元来」とか
「伝統的」だとか、断定的に言いたがる
人がよくいますが、それって、ほんとに
根拠のある話なんでしょうか。

明確な根拠が示されていないかぎり、
私は眉に唾をつけます。


たいていは漠然と抱いているイメージ
よりかかって言ってるだけなんですよ。

ご苦労様」の方にしたって、目下の人が
目上の人に言うのは失礼だというイメージ
今はあるとしても、それは実はそんなに
古いものではなく、およそ「伝統的」と
いえるようなシロモノではない
はずなんです。

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時代劇などのイメージが大きい

要するにテレビの時代劇などで、殿様とか、
目上の人が家来などに「ご苦労であった」
などとよく言うと思いますが、その種の
セリフが、多くの日本人の頭にイメージ
として残ってるんです。

で、実際、昔の殿様がそういう言葉づかいを
したかははなはだ疑問で、時代劇でも
たとえば溝口健二や黒澤明の映画など多少
本格的なものなら、殿様は「大儀であった」
とは言っても「ご苦労であった」とは
言ってないですよね。

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つまり殿様の言う「ご苦労であった」
云々は、「大儀…」では古すぎて
一般大衆に分からないという親切心から
言い換えられた現代語訳なんで、
そもそも「伝統的」とは言いにくい。

だからそれを目下から目上へ言うのを
失礼に感じるとしても、その感覚は
ちっとも「伝統的」じゃない。

むしろ新しい語感なんです。

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え? 信じられない?

ここできわめて興味深い事実を報告して
くれているのが、『教えてgoo』サイトの
「目上の方に『お疲れさまでした・
ご苦労様でした』は失礼ですか?」という
質問へのgootarohさんの回答です。


天皇陛下に「ご苦労様」と言っていい?

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昭和天皇の「大喪の礼」の日(1989年
2月24日)、前夜の午後8時から葬列を
待っていた74歳の男性は「『心から
ご苦労様でした』といって見送らして
もらいました」と話したことが
記事となっています
(同日付け朝日新聞夕刊)。

(引用元:教えてgoo

「陛下に対して『ご苦労様』とはなんたる
無礼か!!!!ヾ(。`Д´。)ノ」と平成の天皇
崇拝者には怒鳴られるでしょうか?;^^💦

でも、今からたかだか30年、「平成」が
始まったころの語感としては、陛下に
向けて発しても全然問題なかった…
ということがハッキリと分かりますね。




この見事な回答をもう少し紹介させて
もらいますと、そもそも「お疲れ様」を
「ご苦労様」の上に置くような現今の風潮に
違和感があるというのが、この回答者、
gootarohさんのご意見。

その趣旨をまとめると、こんな感じです。

ご苦労様」とは本来、その「お役目」
に対するねぎらいの言葉だから、
身体的な疲労をねぎらう
お疲れ様」よりむしろ上位に
置かれるのが自然。

だから、帰宅した際の夫も妻から
「ご苦労様」と言われれば、一家の
ための「お役目」を果たして
くれたことへの感謝と敬意が
伝わって嬉しいが、これが
お疲れ様」だと値打ちが下がる
ような気がする。

   


同様に定年退職者の送別会などでも
「長い間ご苦労様でした」と言うのは
とてもよいのであって、これが
「長い間お疲れ様でした」だと、
主役が下っ端のように聞こえてしまう。

うーん、なるほど。

「お疲れ様」と「ご苦労様」はもともとの
意味内容が違うので、価値的にどちらが
上でどちらが下と単純に言うことは
できない、ということですね。

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まとめ

やっぱり日本語ってなかなかムヅカシイ。

「お疲れ様」は主に身体的な疲労に関して、
「ご苦労様」はお役目の遂行に関連して、
それぞれ相手をねぎらう美しい日本語に
違いありません。

    橋口五葉 tumblr_lpq0jpKN081qaz1ado1_1280

目下から目上へ言ってはいけない、
という文法は本来ないはずなんですが、
平成時代の新しい語感として形成
されてしまっているようです。

ですから、もちろん場合によるわけですが、
気軽な挨拶として目上の人に「ご苦労様」を
言うのはやはり禁物。


「お疲れ様」も、言うなら、その場の状況や
自分の立場をよく考えてからにした方が
賢明……ということになりそうですね。

やれやれ、お疲れ様なことではありますが…

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👉日本語の微妙な部分をめぐっては、
こんな記事も書いていますので、
是非ご参照ください。

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