そこのみにて光輝く⦅ネタバレ📢⦆原作小説(佐藤泰志)のあらすじ


サクラさん
映画『そこのみにて光輝く』、よかったですよ~(😻)。

ハンサム 教授
それはやはり原作の力が大きいんじゃないかな。

    

芥川賞4回のほか、いくつもの新人文学賞の候補に
上がりながら受賞できなかった佐藤泰志さんは、
この『そこのみにて光輝く』で三島賞を逃した
翌年、41歳で自らの命を絶ちました((((((ノ゚⊿゚)ノ

サクラさん
え~、文学賞って怖いですね…(叫び

ハンサム 教授
う~ん、受賞していれば…

とつい思ってしまいますが、でも芥川賞を
何度も逃しながら、ビッグになった作家も
いますよね。

サクラさん
太宰治とか、村上春樹とか……

ハンサム 教授
ええ、佐藤さんも大作家の片鱗が
あったのにと惜しまれます。

ともかく『そこのみにて光輝く』の
素晴らしさを見ていきましょう。


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というわけで、おなじみ「あらすじ」
暴露サービス第138弾。

“感想文の書き方”シリーズとしては
いよいよ大台に迫る第197回。

今回は佐藤泰志の小説『そこのみにて
光輝く』(1989)で参ります。



綾野剛・池脇千鶴・菅田将暉という
豪華キャスト、呉美保監督による2014年の
映画化作品はモントリオール世界映画祭
最優秀監督賞を獲得する快挙となりました。

その予告編がこちらの動画。
    👇


同じく佐藤泰志原作の『海炭市叙景』
(2010年、熊切和嘉監督)、『オーバー・
フェンス』(2016年、山下敦弘監督)とで
「函館3部作」と呼ばれることもあります。

さて『そこのみにて光輝く』のあらすじ。
まずはごく簡単な方から。


👉 ごく簡単なあらすじ(要約)

ぎゅっと要約してしまうと
こんな感じになります。

造船会社を辞めて無職の達夫は、
パチンコ屋で知り合った拓児に
家まで連れていかれる。

部落に一軒だけ残されたそのバラックで、
チャーハンを作ってくれた姉の千夏は、
離婚して身体を売る商売をしているらしい。

千夏との愛を急速に進展させた達夫は、
最近「ヨリを戻したがっている」
という千夏の暴力的な前夫、中島と
「話をつける」べく出向き、殴る蹴るの
暴行を受けるが、抵抗しない。

  

水商売をやめた千夏と水産加工場に
就職した達夫は結婚して、今や
3歳になる娘、ナオと3人暮らし。

拓児の紹介で知り合った鉱山会社の
若い取締役、松本は達夫を見込み、
一緒に鉱山で働かないかと誘う。

実は鉱山へ行きたいのは拓児の方で、
達夫自身は、内心では惹かれながら
行かないと言い続けていた。

が、墓参りし、亡父と対面するうち
「飛び越えろ」という声が聞こえた
気がし、行く決心をする。

会社を辞めた達夫は、千夏とナオには
母親も一緒に住むアパートを用意し、
出発の準備。


拓児は街で、ナオについて誰の子かわからぬ
などと言った男を刺してしまい、逃亡。

心当たりを捜して見つけた達夫に、
拓児は母親のことを「頼みたい」と告げ、
交番へ歩きだす。

え? これじゃ話がよく見えないし、
映画との違いもよくわからん?

それはそうかもしれません。

なので、結末まできっちり知りたいという
場合は、やはり下記の「かなり詳しい
あらすじ」の方を読んでいただく必要が
あるんですね;^^💦


👉 かなり詳しいあらすじ

では始めましょう。

こちらは完全ネタバレありになりますので、
結末まで知りたくない人は読まないで
くださいね;^^💦


原作は「第一部 そこのみにて光輝く」と
「第二部 滴る陽のしずくにも」の
二部からなっていますが、これらを
それぞれ「前半/後半」に分けた4部構成で
行ってみたいと思います。

ひっかかるかもしれない部分には
【CHECK!】印で注釈を入れています。

うっとうしいと思う人は飛ばしてください。

なお「 」内及び「”」印のグレーの
囲みは原文(上記文庫本)からの引用です。

第一部 そこのみにて光輝く
【前半】

11年間勤めた造船会社を春に辞めて無職の
佐藤達夫(29歳)は、パチンコ屋で
「タバコの火を」と話しかけてきた大城拓児
(28歳)に百円ライターをそのまま与える。

お礼に昼飯をおごると言う達夫に連れて
行かれた家は「犬の皮を剥ぎ、物を盗み」…
「世の中の最低の人間」の集落だと
子供の頃から聞いていた地域にあった。


かつてバラック群だったこの地域も
再開発が進み、住民の大半は新設された
高層の公営住宅に移住したが、拓児の
一家はそれを拒否し続けている。

「あれを見ると胸がむかつく」と拓児。
「でも、俺は犬じゃない。俺の家族もよ」

  

家に着くと老母が迎え、やがて離婚した
姉の千夏も黒のスリップ姿で出て来て、
二人にチャーハンを作ってくれる。


大城家を出て歩き、海で泳ぎたく
なったところへ、千夏が追いかけてきて
歩きながら話す。

「あたしも行こうかしら」と千夏が言い、
無人の浜で二人は泳ぐ。

このあたりまでの会話から、大城家の老父は
寝たきりの痴呆状態で性欲だけがますます
盛んになってること、また実質上一家を養う
千夏の収入源は身体を売る方面だと
わかってくる。


妹からの手紙に見合いの話と両親の墓の
相談を読んだ達夫は、見合いは断り、
墓は退職金の1/3をあてると返事を書く。


翌日の午前中、大城家に顔を出すと
姉弟ともいて、泳ぎに誘うと千夏は
すぐに支度して出てくる。

砂浜に寝ころんだ達夫が腕を取ると、
千夏は顔を胸に押しつけ「あの家を
出たい」とささやく。

「そのためなら、何をしてもいい」と。

        

拓児の服役歴について尋ねると、飲み屋で
知らない男に「サムライ部落の子は犬殺しだ」
と言われて頭にきて刺したが、殺し切れ
なかったのだという。

「あの子には無理よ。
あたしならひと突きで殺したわ」

「サムライ部落」は北海道の
人でないとよくわからないと
思いますが、本文中なんの
注釈もありません。

詳細はこちらでどうぞ。

札幌文化系コラム


【後半】
二日後に海辺で性関係をもった二人は、
「前の男との間に子供はいるか」
「あんたさ、あたしをお嫁さんにして
くれるっていうの」などと話し合う。

前夫、中島は高山植物を盗んで売る
商売を拓児に教えた兄貴分で、最近
「縒(よ)りを戻したがっている」
という。


中島と「話をつける」というと千夏も
拓児も驚くが、本気の達夫は祭りの日、
中島と拓児が植物を売っている
屋台に出向く。

   

「おまえ、千夏の何だ」
「あんたは」
に始まって口論となり、殴る蹴るの
暴行を受けるが、達夫は抵抗しない。


よく我慢したな、「見直したよ」と
ほめる拓児と街で飲んだあと、
大城家へ行き、千夏の介抱を受ける。

そのまま泊めてもらうが、夜中、母親が
千夏を起こして「頼むから」と老父の
性の処理を「哀願」しているのに気づく。

「すまない、すまない、死ぬまでだから」
「仕方がないわよ」

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第二部 滴る陽のしずくにも
【前半】

千夏に水商売をやめさせた達夫は彼女と
結婚し、今や3歳になる娘、ナオの父。

千夏の父が死んだが、母はその後も
市が用意する住宅に入ろうとせず、
バラックに住み続け、拓児はそこから
東京に出稼ぎに行く生活。


達夫はひどく不便な所にあるアパートから
水産加工場に勤めているため、車がほしい
と思っていたところへ、出稼ぎから帰って
来た拓児が5万円で中古車を譲るという
少し年長の男、松本を紹介する。

   

松本のサングラスの奥の右目は潰れていたが、
それは鉱山での発破事故のためだといい、
彼は亡父が採掘権を持っていた鉱山で
水晶などを掘る会社の取締役。

原作では中島の暴力を受けてから
3年以上を経ているわけですが、
映画ではそう長い時間の経過はなく、
二人は結婚もしないまま、
鉱山行きの話が出ます。

この松本(映画では火野正平さん
なので、かなり年配)が前半から
出てきて「鉱山へ戻れ」と達夫に
働きかけるんですね。

つまり達夫はもともと造船会社でなく
鉱山で働いており、そこでの事故で
若い同僚を死なせたショックから
立ち直れないでいる男…という設定。

映画ではその「立ち直れなさ」が
前半でかなり執拗に描かれるため、
原作の達夫とは別のキャラクターに
なったともいえますね。

5万円の約束だった金も4万しか取らない
松本は3人で飲んでの別れ際、出し抜けに
「本当は、あんたは満たされていないだろう」
と達夫に言う。

その後も親交するようになった松本は、
大胆かつ慎重な達夫の性格を鉱山向きと
見込んだか、一緒にやらないかと
誘うようになる。

 

実は拓児の方が鉱山へ行きたがっていいて、
「金山だって掘りあてられるかも知れない」
とすっかりその気になっていた。

性格的に不向きなことは達夫にもわかり、
松本から頼まれても行かせないようにと
千夏からも釘を刺されいたが、それでも
達夫は「一度でいい」から働かせてやって
くれと松本に頼み込む。

松本は笑って、「一度だけだ」と承諾。

あんたは? に達夫は「望み薄だな」


【後半】
両親の墓は妹の望み通り退職金で作ったが、
そこに遺骨を納める時に帰省してきた妹は、
かたくなに千夏を拒んでいるふうで、
「もっとふさわしい女性がいるはずだ」
とその後も何度も手紙をよこした。

「おまえたちの体面のために誰も生きる
ことはできない」「おまえにふさわしい
ものが、俺にもふさわしいとはいえまい」
と書き送ると「兄さんの好きにして下さい」
とだけ書いたハガキが届いた。


街で松本と飲むと、また軽く鉱山への
勧誘を受け、彼の「単刀直入で、自信に満ち、
人の心に変化を与える力」を強く感じ、
なぜ離婚したのかを考えてしまう。

その帰り、墓地に寄り陸軍兵士として
帰還し行商人になった亡父を想起し、
「虜になっているくせに、ぐずぐず
認めたがらない」自分を省察する。

あんたの息子ときたら、
こんなことで迷っている。
〔中略〕
どこかから飛び越えろ、という
声が聞こえたような気がした。
〔中略〕
心は決まった。
俺は松本と共に山へ行く。
〔中略〕
すると、そうなることが
自然のように思えた。

        

松本から告げられた鉱山への出発日まで
2週間足らずしかなかった。

昇進の話を出して慰留する水産物加工会社を
きっぱり辞めた達夫は、千夏とナオには
母親も一緒に新しい住居に住まわせる
つもりで、出発の準備をする。

すべてを呑み込んだ千夏は「あんたは
生まれてはじめてこの土地を離れるのね」
とだけ言う。


市民プールで松本と落ち合った達夫は
彼と話していた20代後半らしい彼の元妻、
和江と知り合い、その翌日も彼女に
会うことを期待してプールへ行く。

「切実に、あの女が欲しいと思った」達夫は
幸運にも彼女に会い、「どこかへ行こう」
と誘い、車の中で行為に及ぶ。

  

この和江との交情も映画には
出てきませんね。

ラブシーン、ベッドシーンで
評判をとった映画ですから、
和江とのラブシーンも入れれば
よかったような気もしますが、
そうすると、千夏への裏切り
という要素も入ってきてドラマが
ややこしくなりますね。

このことを逆に言いますと、
原作の達夫は実際ややこしい
男で、千夏への愛ひとすじ
というわけではない…という
ことにもなります。

そのへんが、映画ではなかなか
描けない文学の深みなのでは?


そのころ拓児はパチンコ屋で、昔の千夏を
知る男から、ナオも誰の子かわからぬなどと
言われたのに逆上して、刺してしまう。

帰宅して千夏からそれを聞いた達夫は
夜明け前まで空しく連絡を待ってから、
拓児のいそうな小舟へ行ってみると、
そこに眠る拓児を発見。


目覚めた拓児は「お袋がひとりになる。
後を頼みたい」と達夫に言い、交番へ
歩きだす。


👉 短文を重ねる”異化”的な文体

さあ、いかがでした?

映画もいいけど、原作にはなんだか
もっとスゴいものが仕込まれている…
と感じ取ってもらえたでしょうか?


ン? 感じない?

うーん、それはやはり原文に当たって
みないとわからないところかも
しれませんね。

佐藤さんの文体はきわめて独特で新鮮。

読者の意識の流れをわざと分断・攪拌して
くるような、一種”異化”的な文章でして、
そこにこの作品の高度の芸術性があります。

論より証拠、冒頭の数行を読んで
いただきましょうか。

潮の匂いが鼻孔をついた。

背後の海鳴りが歪んで聞こえる。

鼓膜が馬鹿になっている。

陽光が頭上から射し、
それが拍車をかけている。

男の声も掠れて届く。

よく喋る男だ。

 パチンコ玉をな、と
男はいった。

「両耳に挟んでおけばいい」


不自然なほど短い文を畳みかける、
なんだかぶっきら棒なリズムで徐々に
「この男」と話している主人公兼語り手の
達夫に焦点が結ばれてきます。

その進行は、第一文から「潮の匂い」(嗅覚)
⇒「海鳴り」(聴覚)⇒「陽光」(視覚)と、
いわば周縁的な感覚から徐々に言語による
対人感覚へと意識が絞られていく過程を
映しだすものですね。

     
   
この書き出しの数行で主人公の意識・精神
状態がすでにある程度、読者に伝わる…

この文体は芸術として読み応えのある
ものですが、その反面、たとえば
「パチンコ屋で拓児と話し始めたところ」
という状況ははじめわからず、後になって
やっと読者に開示される形になります。


この書き方で行かれると、読者は現在の
状況がよくわからないという宙づり状態に
しばらく放置されることになり、それが
「読みさすさ」を阻害します。

だからこれについていけない読者もいる
でしょうが、それは作者の狙う”異化”的な
芸術の一環として鑑賞することが期待
されていると思うんですね。


👉 まとめ

ともかく高度に芸術的な純文学ですし、
「サムライ部落」などの社会問題も
織り込まれていますから、読書感想文や
レポートの素材としても好適でしょう。

その場合はもちろん本文全体をしっかり読む
必要があるでしょうけど、その場合も上の
「かなり詳しいあらすじ」とその中の
【CHECK!】の情報が大いに役立つはず。

ぜひ見返してくださいね。



冒頭でサクラさんがふれていた
芥川賞を避けて通った大作家、
太宰治や村上春樹については、
こちらの記事などをご参照
いただけると幸いです。

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ん? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/








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