村上春樹の名言💚恋するザムザとロシア映画『変身』から

 


さて今日の小咄(こばなし)は、
フランツ・カフカの小説『変身』から
瓢箪から駒のように出てきた2つの作品についてです。

村上春樹の「恋するザムザ」はご存じ、
あるいはすでにお読みの方も結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。
村上編訳の短編小説集『恋しくて』(2013)に収載されていますね。

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もう一つはワレーリイ・フォーキン監督のロシア映画『変身』(2002)で、
こちらはご覧になった方はあまりいないかな?

これがまたいいんですな。

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Ψ カフカの『変身』から出た2作品

でもまあ、どちらも本家カフカの『変身』を知らないと
面白みもイマイチかもしれませんので、一応紹介しますね。

主人公の会社員グレーゴル・ザムザは、ある朝目覚めると
自分が巨大な毒虫に変身していることに気づく。
そこから物語が展開するんですな。

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映画『変身』が意表を突くのは、
その巨大な毒虫人間の姿をした役者がそのまま演じる ところで、
この仕掛けが作品のキモというか、命といってもいいでしょうね。

生身でこれを演じるエヴゲーニイ・ミローノフは、
不自然な姿勢や手指の動きで、見事に毒虫を表現。
汗だくの大熱演に拍手!

この映画、もともと舞台での成功作の映画化なんだそうで、
さすがエイゼンシュテインの国、
映像的にも秀麗で、ともかく鑑賞に堪える芸術品に違いありません。

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Ψ 毒虫から人間へ

他方、村上の「恋するザムザ」も意表を突くのですが、
こちらは書き出しがいきなり、

目を覚ましたとき、自分がベッドの上で
グレゴール・ザムザに変身していることを彼は発見した。

というので、これはなんと、毒虫から人間へ、
という逆方向の変身を物語化してるんですね。

さらに面白いのは、ここで主人公は人間あるいはザムザに「戻った」のではなく、
まったく新たに人間に「なった」のであって、
だから、体の動かし方、食べ方、話し方、自分の名前など、
すべて新たに習得することで人間としての自分を作ってゆかなければならない、
という点です。


そのようなアイデンティティ獲得の道半ばに、若い女性が現れて、
かくしてタイトルどおり「恋するザムザ」ということになってゆくわけですね。

このへんもさすが村上春樹、
つい笑わされるユーモアと
どきっとするエロティシズムと
真摯な人間観察と
その他諸々に読者は出会うことになります。

 

Ψ 「せむし」のヒロイン

さて、この女性、とーぜん美女……と思いました?

思わなくても、なんとなくそう織り込んで読んじゃう人もいるでしょうが、
そんなこと書いてありません。

「背中が折れ曲がって、姿勢が深く前屈みになっている」、
つまり彼女自身の言葉によれば「せむし」で、
「身体をもぞもぞと大きくねじる」癖があり、
言葉遣い、態度、物腰も決して優美とはいえない女性なのです。

ザムザの「」を発動させたものは、
だから彼女の美貌や優雅さではありません。

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では何だったのかといえば、
主な動因は、「せむし」と呼ばれるこの姿勢や「もぞもぞ」とした動きが
彼のうちに残っていた毒虫であったころのネイチャー(nature。自然/本性)
を甦らせてしまったことにある……
というふうにしか(すくなくとも私には)読めないのですね。


そこが、とてもいいんです。
感動的です。

さて、私はけっきょく何が言いたかったのか……(^^;)
うーむ、しいてまとめますと、つまりそれは……
恋するもよし、仕事に精を出すもよし、
きっと結果はついてくる。
ザムザくんの場合のように、それが自分のネイチャー
の発揚であるかぎりは……。


そして、すぐれた芸術作品はしばしば私たちをそこへ、
自らのネイチャーへと立ち還らせてくれるのですね。
今日紹介した2作品はともに、
この意味でナチュラル(natural。自然/本性的)
な力を発揮して

人をカフカの原作へと導きもすることでしょう。

自分を型にはめるのが苦しかったら、やめてもいいんですよ。
自分のネイチャーに立ち還ってみませんか。
それでもなんとかやっていけるはずですよ、要領次第で・・・。


え? おまえのいってるネイチャー
っていうのがよくわからん?


これについてはまたおいおい話したいと思っているのですが、
とりあえず、別の記事
「サソリとカエル:悲痛な寓話」
「イタチ小僧に弟子入りした男」

などを参照していただけるとありがたいです。


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