神様(&神様2011)のあらすじと感想:くまをどう解釈する?

 


やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズもはや第21回。

今回は川上弘美さんの短編で、
高校現代文の教科書に採用されている
『神様』(1998)で参ります。
   


また川上さんが2011年に加筆して
発表された「神様2011」もベースは
同じですので、下記に述べるのと
ほぼ同じことがいえるはずです。

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👉 感想文《虎の巻》

さて、シリーズ第1回以来ほぼ一貫して
開陳してきましたサイ象流・感想文の書き方
《虎の巻》
を今回もひろげておきますと…

  • 学校で評価される感想文は作品を
    読んでの素直な「感想」など
    ではなく、それを機に
    自分の生活を反省する
    作文である。
  • これを書くには、まず、たとえば
    登場人物が何らかの行動を
    とったとき、
    「自分にはこんなことはできない」
    のではないかとか、あるいは
    性格的に「自分にはこんな
    ところはないか」と反省する。
  •     自分にはこんなところはないか……  疑問009093   

  • その上で、「これからは自分も
    こうしよう」という類の
    前向きな結論
    を決め、
    決めてから書き始める。
(これは「Yahoo!知恵袋」での
「ikemen_busaiku」さんの
回答に触発され、構成して
いったものです。)

つまり学校の求める読書感想文とは
こういうもの
だからで、だから、
すくなくとも高い評価がほしい人は、
心に浮かぶ「感想」よりむしろ、まずは
「自分の生活を反省する」方向へと
頭をねじ向ける必要がある、
ということですね。


でも、この原則、『神様』の場合、
はたしてどうなんでしょう、
これで押し通せるものか…。

むずかしいですね、ハイ;^^💦



👉 「あ、これは夢だ」

主要登場人物といえば語り手の「わたし」か、
その「わたし」と一日つきあう「くま」
ということになりますが、彼らの行動の
いちいちについて、「自分には…、
自分なら」
反省的に考えることは、
非常にやりにくい、というか、やっても
意味ないような気がしませんか?

「くまにさそわれて、散歩に出る」という
冒頭の1行から、読者はそのことを
突きつけられるかもしれません。


この「くま」って、ある人間が
そう呼ばれているのかな?

つまり比喩なのかなと思っても、
どうやらそうでなく、ほんとの熊で(叫び)、
しかも人間のように話し、特定の人間の
ような個性をもっているということが、
読み進むうちに次第に明らかに
なってみきますよね。

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となると…これは一種の≪夢語り≫

日本文学史的にいえば、夏目漱石の
『夢十夜』以来、何人かの作家によって
受け継がれてきた流れなんですね。

この点はこちらをご参照ください。
漱石の夢十夜で感想文?第一夜のあらすじと考え方から
漱石 夢十夜のあらすじと解釈:第三夜で感想文ならどう書く?


『100万回生きたねこ』(1977)で有名な
絵本作家の佐野洋子さんも「一行目を
読んで『あ、これは夢だ』と思った」
そうですし(上記文庫本の「解説」)、
また川上さん自身、内田百閒(ひゃっけん)
のファンであることを隠していませんが、
この百閒という人が漱石の弟子の一人で、
それもまさに『夢十夜』の世界を受け継ぎ、
発展させた作家と見られているんですね。

そこでこの『神様』も、『夢十夜』を
料理したのと同じ方法でさばいていけば
いいんじゃないか、とも思えます。



👉 催眠術をかけられた状態

そこで、『夢十夜』の場合と同様、思い出して
ほしいのですが、≪夢を見ている≫さなか、
自由に頭を働かせて「自分には…、
自分なら…」
とか反省的に考える
ことなどまずできませんね。

犬と本Animal-Dog-s

それは言い換えると、意識に「自由」が
きかなくなっているということで、
いわゆる「催眠術」をかけられた
状態に似てるんですね。

ですから、「わたし」は「くまにさそわれ」
れば「散歩に出」ますし、別れ際に
「抱擁を交わしていただけますか」
と言われればためらいもなく
「承知」します。

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『神様』のこういう進展に「初めの一行から
笑ってしま」い、「面白くて面白くて
やめられなかった」という佐野洋子さんは、
この作品を意義をこのようにまとめています。

夢が発生する場所にスタスタ平気で
行って、いつまでも遊んだり、
さっさと帰って来たりする
川上さんは、ペンで、私達に
自分の見ない夢を見せてくれて、
私は実に得した気分になる。
   (文庫本「解説」)


川上さんには『龍宮』という作品集もありますね…浦島と乙姫4

あなたの読書感想文もこの線で、乗りに
乗れて「面白かった」とか、「得した
気分になった」とかで行きましょうか。

これで押し切れそうなら、それでよいの
ですが、それではなんだか物足りない
という人もいるんじゃないかな?



👉 くまは怖くないのか

そういう人に試みてほしい方向は、
この小説の「面白く、楽しい」けれども、
どこか薄気味悪い、底の方に感知される
空恐ろしさ…
といった部分をなんとか
言葉にして、それについて思うことを書く、
という線です。


そもそも冒頭から2段落目で「くまは、
雄の成熟したくまで、だからとても大きい」
とされていて、「わたし」が女性だと
は明記されていませんが、「雄の成熟した」
とわざわざ言われるところを見ると、
「わたし」がこの「くま」に「性」を
意識していることははじめから明らかに
されているわけですね。

怖くないんでしょうか?

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怖さもある(と、私は思います)。

底のほうで恐れているにもかかわらず、
そういう場所に「スタスタ平気で行って」、
すべて「くま」の言うなりに行動して
しまう「わたし」は催眠術にかけられた人が
催眠術師の暗示のとおりに動いて
しまう
:*:・( ̄∀ ̄)・:*:のと本質的に同じ
なんじゃないでしょうか。

これすなわち『夢十夜』で漱石が≪夢≫に
託して描こうとした、人間の行動と心理の
微妙で危うい関係であり、内田百閒が
受け継いで発展させた世界だと思うんです。



👉 くまの孤独について

感想文を「わたし」の側から書くとすれば、
ざっと以上のような着眼点があろうかと
思います。

では、これを「くま」の側から書くと
したら、どうでしょうか。


じつは作者の川上さん自身、そちら、
つまり「くま」の視点を強く
意識されているようなんです。


ご存知の方も多いでしょうが、川上さんは
2011年になって、同年の大震災に触発
されてこの『神様』の2011年ヴァージョン、
『神様2011』を発表されました。
 


これが「震災後文学」として大いに
耳目を集め、国際的なシンポジウム
なども開催されました。


特にあなたが男子である場合、女性である
(らしい)「わたし」より「雄の成熟した
くま」の視点に立ったほうが考えやすい
ということもあるでしょう。

いちいちの行動において、「くま」は
いったい何を考えているんだろう。

彼が「孤独」だとしたら、いちいちの
考えは「孤独」とどう関係するのか…。

Missing-You-s

そういったことを考えながら、
じっくりと読み直せば、よい感想文が
書けるのではないですか?


またキーワードを「孤独」に
限定する必要もありません。

本文に出てくる言葉にかぎっても
「配慮」「昔気質」「大時代」「理屈」
などがあり、そのほか、以下のような
特徴がみられます。

・名前がない
・「わたし」に気を使う
・(子どもの暴行にも)怒らない
・体は(思ったより)冷たい
・「故郷の習慣」「熊の神様」を尊ぶ

Houses-Dog-s

これらのうち、どれか一つに首を突っ込んで、
自分にひきつけて考えてみましょう。

この≪夢≫では、なぜ「くま」が
そういうふうなのか。

デッチあげでも、いいと思うんですよ。
あなたの奔放な想像力を先生
が評価されないともかぎりません(ニコニコ

要は自分にしか書けないものを書くことです。


≪夢語り≫ばかりでなく、リアルな
場面で漱石が展開した恋愛観・
男女観をめぐっては、こちらを。
漱石の名言でたどる恋愛💔『吾輩』猫が読み直す『こころ』」

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👉 まとめ

さて、いろいろと情報提供してきました。

これでもう書けますよね、感想文。

え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の種々の
文学作品について「あらすじ」や
「感想文」関連のお助け記事を
量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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