なぜクリスマスにはプレゼントする?起源は誰から誰にどんな意味で?
一晩で世界中を回って
すべての子供の枕元に
プレゼントを置いて
行くそうですが、なぜ
毎年そんな大変なこと
をされるんでしょうか。
いい子だから…;^^💦
なんで;^^💦、実際は
悪い子もいますよね。
「よい子へのご褒美」
ということならわかり
ますが、どんなひどい
ことをした悪い子にも
あげるんなら、その
“贈る意味”は一体
何なのか…
と訊きたいんです。
ご指摘のとおり、クリス
マスプレゼントは今や
意味を失っていますね。
でもそれが明確に意味
づけられていた時代も
あったんです。
出て来るサンタ的人物、
三太九郎の贈り物には
はっきりした意味が
ありました。
ぜひそのお話を
聞かせてください。
というわけで本日は、現代では見失われ
がちな「クリスマスプレゼントの本来の
意味」を追い求めながら、あわせて
サンタクロースの意味、その日本出現の
時期・経緯などについて探求して参ります。
内容はザッと以下の通り。
1. 侍サンタ登場、三太九郎万歳!!
後でふれるように日本ではキリスト教は禁教でしたから、クリスマスももちろん
一般には知られていませんでした。
これが知られ始めるのは、明治維新後、
外国人によって各地でクリスマス・
パーティーが催されてから。
日本人自身の手による最初のものは、
明治7年、東京築地にあった「第一長老教会」
での催しで、ここで日本人は有史以来
はじめてサンタクロースに出会ったのです!
このサンタさんが「裃をつけ、大小を差し」た
「サムライ風の身拵へ厳しき」人で、まさに
“侍サンタ”だったのですね。
👉詳しくは横田順彌著『明治不可思議堂』を
ご参照下さい。
(👇)
少し下って明治31年(1898)になりますと、
『さんたくろう』という小説も刊行
されています。
これがなかなか面白いので、以下に
ストーリーを紹介しておきましょう。
『さんたくろう』挿絵
キリスト教徒の農家の少年、峰一と父とが
雪の中で倒れていた旅人、五平を助けます。
その後、父が病気になって家は収入が
なくなり、クリスマス・イブに峰一に
贈り物をすることもできません。
そこへ山のような贈り物を届けるのが、
あの五平。
峰一が目覚めると、枕元にはこんな手紙が。
よく神様の教へを守り、
阿父(おとう)さんを助けて
旅人の生命を助けた、誠に
感心な子でありますから、
此の贈り物を上げます。
北国の老爺
(ほくこくのおやぢ)
三太九郎(さんたくろう)
峰一殿
ラストはみんなで
「クリスマス万歳!日曜学校万歳!」
「三太九郎万歳!三太九郎万歳!!!」
と三唱して結びとなります。
どうやら教会の日曜学校の教材として
書かれたもののようですが、いかにも
日本人に受け入れられやすいスト-リーに
なっていますよね。
ここで民話の「傘地蔵」を思い出した
人もいるのではないでしょうか。
「三太九郎」もまさに傘地蔵タイプの
怪人といえそうで、その物語をなぞる
ように、よいことをした子に贈り物を
届けるののですね。
そう、彼のプレゼントは「よいことを
してくれたお礼」という明確な意味づけの
あるものであったわけです。
2.クリスマスプレゼントの本来の意味
でもここで、あれ? って思いません?そもそもクリスマスプレゼントって、
善いことをしたご褒美としてもらう
もの…だったんでしょうか。
そこが微妙ですね。
そもそもの起源を言えば、クリスマス
プレゼントの本来の意味は「キリストへの
プレゼント」ということで、キリスト(救世主)を
探し求めていた占星術師らがその誕生を祝して
贈ったという故事(マタイによる福音書
2章11節)に基づいています。
これがベースなんですが、その後これに
聖ニコラオス(サンタクロースの原形)が
困っている人々に贈り物を配ったという伝説が
くっついてきて、クリスマス・プレゼントの
「意味」は何が何だかよくわからないことに
なってしまっているんですね。
👉聖ニコラオスの伝説をめぐっては、
こちらの記事をご参照ください。
・クリスマスプレゼントは靴下にって、なぜ?サンタの答えは?
👉またクリスマスにかぎらず、
プレゼントのいろんな品物が意味する
ところについては、こちらを
ご参照ください。
・プレゼントの意味一覧!女性から男性へ…でアブナイことは?
要するに、その「意味」は混乱して
見えにくくなっていて、逆にそのゆえにこそ
どんな「意味」でもつけられてしまうという
便利な状況にある。
上記の『さんたくろう』で「笠地蔵」を思わせる
「善行報償」的な意味が付けられたのも
こういう状況あればこそだと言えます。
3.明治の英語教科書に登場するサンタ
さて、それでは、とあなたは突っ込むかもしれませんね。
『さんたくろう』に見られるクリスマス
プレゼントの「善行報償」的な意味は、
日本で独自に発生したもので、欧米には
まったくないのか? と。
なかなかするどい突っ込みですね。
はい、ないとは言い切れない
でしょうね。
いろんな例を挙げることができると
思いますが、たとえば明治・大正期、
日本全国の中学校で広く用いられていた
英語教科書、National Readers 2 の
“Lesson 48 : A CHRISTMAS STORY”には、
まさにこの「善行報償」的な意味が
語られているのです。
National Readers 2 表紙
クリスマス・イブ、ある家のママが
小さなミリーとメイの姉妹を寝かしつけ
ながら、こう語りかけます。
小さい子がぐっすり眠ると、
サンタさんが煙突から大きな袋を
もって入ってくるのよ。
サンタさんは、たくさんの子どもを
見てきてるから、子どもの閉じた目が
開いてたときに優しかったか、
その口から悪い言葉が出なかったか、
ちゃんとわかるの。
今夜ミリーを見てこう言うでしょう。
『この子の手は今休んでるが、
メイのおもちゃを片付けてあげたし……』
〔そのほかこの日「ミリーの手」が
した良いことを列挙し、つづいて
妹のメイを見て言う〕
『この子の口はキスでいっぱいで、
手もじきにおもちゃの片付け方を
覚えるだろう』
最後にサンタさんはママの
ところへ来て、
『この子たちが優しい良い子で
ないとママの顔は幸せそうで
なくなるだろう。
靴下におもちゃを入れ、椅子の上に
絵本を二冊置いとかにゃならんな』
Lesson 48 “A CHRISTMAS STORY”
煙突を下りてきたサンタ(右頁挿絵の左上部分の拡大図)
それからママは靴下を吊るし、
二人の子が寝つくまで見守ります。
“In the morning the story
came out true.”
(朝、お話は現実になっていた)
というのが最終行。
どうです、なかなか心温まる
読み物ではないですか?
👉ちなみにこのNational Readers 2、
少年時代は英語嫌いだったという夏目漱石も
家で兄に「ナシヨナルの二位(ぐらゐ)」まで
仕込まれたと回想している(漱石の談話
「落第」)、まさにその教科書。
こちらの記事もご参照を。
・クリスマスツリーの木はもともと何?漱石も読んだ英語教科書に学ぶ
・サンタへの手紙を正調の英語詩で!漱石も読んだ教科書から
また漱石と英語に関しては
こちらの記事なども。
・夏目漱石「月が綺麗ですね」の出典は?I love youはこう訳せ?
4.日本で最初のクリスマスは?
さて、サンタがいることを条件としないならば、日本のクリスマスはもちろん
明治以前にさかのぼるわけです。
記録に残っている日本で最初のクリスマス
(キリスト生誕祭のミサ)は、1552年
(天文21年)のこと。
かのフランシスコ・ザビエルが来日して
3年目のことでした(それ以前もやって
いたでしょうが、記録にありません)。
もちろん本気でキリスト教を信じた人たちに
よって行われたのでしょうから、現代日本での
ようなお祭り騒ぎとはずいぶん違うもの
だったでしょう。
でもその後、豊臣秀吉による「バテレン
追放令」(1587)、ついで徳川幕府の
「キリスト教禁止令」(1612)によって
キリスト教は長く”日陰者”の地位に
置かれることになります。
いわゆる「隠れキリシタン」ですが、
この人たちは、取り締まりを警戒して、
クリスマス・イヴを「ご産待ち」、
クリスマスを「御誕生」「霜月お祝い」
などと役人にわからぬように呼び変えて
冬至直前の日曜日に祝っていたとのこと。
御神体を祭壇に祀りお供えをし、
オラショ(お祈り)を唱えたあと、
みんなで会食をしたと記録にあります。
👉この「隠れキリシタン」の
人々とポルトガル人宣教師を
描いた小説に遠藤周作の
小説『沈黙』がありますね。
こちらをご参照ください。
・沈黙(遠藤周作)のあらすじ:ハリウッド近作映画 原作の世界
まとめ
さて、いかがでしょうか。サンタクロースが初めて日本に現れた
明治時代、どのような姿で、どのように
振舞っていたのか…
といったことの探求を通して現代では
見失われている「クリスマスプレゼント
の本来の意味」を見直すべく、色々と
情報提供して参りました。
お役に立つものがあったなら、あるいは
すこしでもお楽しお見いただけたなら
幸いです。
👉クリスマスをめぐっては
これらの記事でも情報提供しています。
ぜひご参照ください。
・サンタはいる?いない?漱石少年も学んだ英語教科書に答え
・クリぼっちの意味とメリット🎄むしろ楽しむ6つの過ごし方
それではみなさん、
メリー・クリスマス~Y(^^)Y
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