漱石『こころ』のお嬢さん問題と河合奈保子「けんかをやめて」

 


やあやあサイ象です。

夏目漱石『こころ』(1914)を読んで
感想文とかレポートとか書こうとしている人、
あるいはこれから読もうかという人に、
話題や論点の提供をしていこうと思います。

Sponsored Links



Ψ ”感想は書かない”感想文

つまり当シリーズの恒例として、
サイ象流・感想文の書き方《虎の巻》」をひろげて、
まずは主要等人物(「私」〔前半での「先生」〕や「K」や「御嬢さん」)に
なってみる、そして
その行動性格について、自分なら……と考え
その考えを「前向き」の決意表明に結び付けていく
という《虎の巻》の手順を伝授したのですが、
なってみよう」といわれても、
そんなことは不可能だ、
とそこでキレてしまった読者もいたかな…と。

その第1回記事はこれです。
夏目漱石『こころ』:”感想は書かない”感想文《虎の巻》

White-Hair-s

で、今回は、その「なってみる」ための、
より具体的な秘伝、裏ワザにまで
入り込もうというわけなんです。


でも、「なってみる」といっても、
物語上の人物に自分が完全に一致する
なんてことはもちろん不可能ですよね。

要は、その人物の行動性格のなんらかの部分に目をつけて、その部分だけ
なってみよう」ということなんですが、
ではどういう部分に突っ込むのか、
その具体的な実践例をこれからお話します。



Ψ 美しい恋愛の裏に恐ろしい悲劇が

さて、漱石の『こころ』といっても、
高校の教科書に採録されているのは
たいてい「下」だけですね。

以前の記事でもふれていますとおり、
感想文を書こうというからには、
もちろん全体を読んだほうがよろしいわけです。
↓↓↓↓


え? そんな時間はない?

しょうがないなあ。
全体のストーリーが頭に入っていないと
お話にならないので、そういう人は
こちらを見て、とにかく「あらすじ」だけは
押さえましょう。

夏目漱石『こころ』の簡単な(&詳しい)あらすじ~感想文の前に


さて、「上」が始まって(新聞連載の)
第十二回には早くも「先生〔下での「私」〕は
美しい恋愛の裏に恐ろしい悲劇を持っていた」(叫び
と告げられます。

そうしてその悲劇のどんなに先生に取って見惨(みじめ)なものであるかは
相手の奥さんに丸で知れていなかった。
奥さんは今でもそれを知らずにいる。
先生はそれを奥さんに隠して死んだ。
先生は奥さんの幸福を破壊する前に、
まず自分の生命を破壊してしまった。         (上 十二)

                                
という次第で、「下」はその「悲劇」について先生自身が
語りつくした手記、というのが
この小説の体裁になっているんですね。

なぜわざわざこの部分を持ち出したか
というと、「下」の物語が「悲劇」として
提示されていること、そしてその「悲劇」性について
奥さん〔下での「御嬢さん」〕は当時も
現在も無理解のままであること。

この2点をまず、押さえておきたいからです。

041022

ではその「悲劇」はなぜ起こったか。

運命的「必然」として、どうあがいても
避けられない成り行きであったか。

それとも、ある時点で登場人物の誰かが
ああでなくこうしていれば、容易に
避けられたのに…と思える、
「偶然」的要因の大きい展開か。

そのあたりを考えながら読み直してみましょう。

そうすれば、自分なら……と考える場合の
いろいろなポイントが見えてくるはずなんです。



Ψ 美しい恋愛の裏に恐ろしい悲劇が

まず、「悲劇」の発端がどこにあったかを考えてみましょうか。

「そういう性格に生まれたから」
というところにまで遡るとお話にならないので、
どこかにポイントを設定しましょう。

考えられるポイントとしては、たとえば
「私」が奥さん〔「御嬢さん」の母〕の
「不賛成」を押し切ってKを同じ家に
下宿させた時点(下 二十三)があるでしょう。

奥さんの「不賛成」もたいへん意味深な伏線だった
ということになりますが、ともかくここから、
予期しなかった「三角関係」
(無意識に望んでいたという解釈もありますが)
が醸成されてしまいます。

087894

そして、この「三角関係」に「私」が
勝利してゆく過程でKが自殺してしまう
という経緯が「悲劇」と呼ばれているわけですね。

下の「二十四」からKの自殺が描かれる
「五十」まではその文章のほとんどがこの
「三角関係」の記述に費やされている
といっても過言でないほどです。

Sponsored Links


じっくり読みなおしてみると、
浮かんでくる「?」はまず、これでしょう。

 御嬢さんはKのことをどう思っていたのか。
 (「私」より)好きだったのか。 
どういうつもりで接していたのか。
袴055018

たとえばこれを「問題」として設定して、
その「回答」を探っていく、という形でも
感想文はじゅうぶん書けそうに思えますが、
さて、どうでしょう?


Ψ 二人の心 もて遊んで

さて、「御嬢さんはKのことをどう思い、
どういうつもりで接していたのか」という
この問題への回答として読めるものの一つに、
河合奈保子さんのヒット曲『けんかをやめて』
(竹内まりや作詞・作曲、1982)
というのがあるんですね。

まずは、とっぷりとご鑑賞ください
(歌い手は残念ながら河合さんでは
ありませんが、たいへんお上手です)
↓↓↓↓



「ちがうタイプの人を好きになってしまう
揺れる乙女心」が発動してしまったのだけれど、
「どちらとも少し距離を置いて
うまくやってゆける自信があった」
とほざいてますね。

うーむ( ̄ヘ ̄)、御嬢さんもそうだったかもしれない。


「思わせぶりな態度」で「二人の心 もて遊んで
ちょっぴり楽しんでた」、
だから「ごめんなさいね」「けんかをやめて」
というのですが…

04101c51455c163fc4763d0f07395f10_s

うーむ(*_*)、御嬢さんもそうだったとしたら、
「ごめんなさいね」じゃすまないですね。

Kは自殺し、夫となった人も
その連鎖で自殺することになるわけですから(ドクロ)。


となると、問題になってくるのは
「思わせぶりな態度」で「二人の心
もて遊んで」楽しむ、という部分が
御嬢さんにもあったのかどうか、
というところでしょう。



Ψ 御嬢さんの笑い

それを考える手がかりは本文中にたくさん
埋まっているはずですが、ここでは、
その一つ、御嬢さんの「笑い」(#⌒∇⌒#)に
光を当ててみましょう。

ある日、大学から帰宅した「私」がいつもの通り、
Kの部屋を通り抜けようとすると、そこに
御嬢さんがいて、「お帰り」と挨拶しますが、
それが「少し硬い」「どこかで自然を踏み
外しているような調子」に聞こえます。

奥さんがいないのを不審に思い、
「急用でも出来たのか」と尋ねると…

御嬢さんはただ笑っているのです。
私はこんな時に笑う女が嫌(きらい)でした。
若い女に共通な点だと云えばそれ迄かも知れませんが、
御嬢さんも下らない事に能(よ)く笑いたがる女でした。 (下 八十)

       audrey original      
                                  
その日の夕飯の席で奥さんが出かけた
理由を説明し、なるほどと「私」が納得すると、
「御嬢さんは私の顔を見て又笑い出し」、
「奥さんに叱られてすぐ已(や)めま」す。


一週間ばかりすると、また「私」は
御嬢さんがKの部屋で話すところを
通り抜けるのですが、「その時御嬢さんは
私の顔を見るや否や笑い出し」、夕飯時には
「私を変な人だ」と口にして奥さんに
睨まれます(-_-メ

054177

これに続く部分では
Kが御嬢さんをどう見ているかを知ろうとして
「私」がいろいろと探りを入れてゆきます。

今から回顧すると、私のKに対する嫉妬は、
その時にもう充分萌していたのです。   (下 八十一)

                                

御嬢さんにその意図があったかどうかは
微妙なところですが、「私のKに対する
嫉妬」の発生が「御嬢さんの笑い」に
誘発されたこと、すくなくとも
「下」における先生の昔語りが
そのような認識に基づいていることは
否定のしようがありませんね。



Ψ さあ、書いていこう

そうだとしたら、この経緯について
自分はどう思うのか、
「私」、K、御嬢さんのどれでもよいので、まずは「なってみて」、
その行動性格について、「自分なら……」どうか、
ああいう時ならこうする、ああする(あるいは、しない)を
考えていったらいいんですよ。

そうして考えたことを
筋道立てて書き表すことができれば、
“高等”感想文の一丁上がり!

コンクールなら賞も転がり込まずには
いませんよ。
(前もって)おめでとう!!(^^)у

Breaking-Bad-s         

うーん、でも、なんだかなあ…
どうもうまく書けそうにない、
恋愛の経験にも乏しいし……

ですか?

それなら一つ、作者漱石がどんな人だったか、
どんなことを考えながら小説を書いてたか、
ほかの作品や評論なんかも読んで、
いっちょ勉強してみるのが一番でしょうね。

え? めんどくさい?
もう時間がない?

犬と本Animal-Dog-s

しようがない、
そういう人はこちらをご覧ください! ↓↓↓↓
漱石の名言でたどる恋愛笙。『吾輩』猫が読み直す『こころ』etc.

恋愛や男女関係について漱石の
考えていたことが手っ取り早く
わかってしまいますよ(ニコニコ)

漱石の他の作品に関心のある人は、
こちらもご覧ください。

「漱石の「月が綺麗ですね」の出典を求め、「朝顔に」の俳句へ」
「漱石『三四郎』:白い雲を見る二人の小津安二郎的ショット”」
「夏目漱石『坊ちゃん』に”日本”を読む『菊と刀』:感想文はコレ」
「漱石『草枕』の意味を解く旅:”吾輩”猫、熊本の小天温泉へ」
「漱石『夢十夜』は読者を≪夢=催眠≫に引き込む:感想文(18)」

そのほか漱石の作品を早く安く
手に入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

夏目漱石の本:Amazonラインナップ
    ƒvƒŠƒ“ƒg

………………………………………….

Sponsored Links

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ