村上春樹 鏡の感想文を簡単に(or漱石・オルフェに飛んで高度に)

 


やあやあサイ象です。

「”高等”感想文の書き方」シリーズも
はや第19回を数えます。

Sponsored Links


今回は村上春樹の初期の短編、
高校現代文の教科書にも採用
されている『鏡』で参りま~す。
(1983。『カンガルー日和』⇩ 所収)




Ψ 感想文《虎の巻》

さて、第1回の
「夏目漱石『こころ』:”感想は書かない”感想文
《虎の巻》」


以来お目にかけてきた「サイ象流・感想文の書き方《虎の巻》」を
今回も一応、広げておきますが、
もういい、わかった、という人は
スルーしてくださいね。

  • 学校で評価される感想文は作品を
    読んでの素直な「感想」など
    ではなく、それを機に「自分の
    生活を反省する
    」作文である。
  • これを書くには、まず、たとえば
    登場人物が何らかの行動をとった
    とき、「自分にはこんなことは
    できない」
    のではないかとか、
    あるいは性格的に「自分にはこんな
    ところはないか」と反省する。
  • 自分にはこんなところはないか……疑問009093
  • その上で、「これからは自分もこう
    しよう」という類の前向きな結論

    決め、決めてから書き始める。


Ψ 「枠」を与えて考えてみる

というわけで、読みながら心に浮かぶ
「感想」はひとまず横へ置いて、
「自分の生活を反省する」方向へと頭を
ねじ向ける必要がある、というふうに
毎回説いてきた次第です。

でも、この『鏡』の場合、
この原則をそのまま当てはめるのは
ちと苦しそうですね(;^_^A


そこで今回は別のところにもヒントを
探ってみましょう。

『Yahoo!知恵袋』の質問者「renta7777」
さんが要求された「『鏡』の読書感想文」
は下記のような形式だったそうです。

  1. 主人公の特徴
  2. 主人公の役割
  3. 自分の体験談
  4. これを読んで自分がどう変わったか
    (自己内容)気持ちなど

※3、4はあなたの視点からでいいです

1500字~2100字で書いて下さい

なるほど、こういうふうに
「枠」を与えてもらうと助かりますね。

でも、こういう「枠」などはなく、
自由に書けといわれている場合も、
この1~4を考えみたらいいと思うんですよ。

6ddf675745f8d25cc68e98d5cdb745e2_s

そうやって思い浮かぶ内容は、サイ象流・
感想文の書き方《虎の巻》
の方法で出てくる
こととも重なってくるはずですし、
ともかく感想文はぐっと書きやすく
なるに違いありません(ニコニコ

そこで、今回は当記事でも、この1~4の
「枠」を拝借して考えていきたい
と思う次第です。


おっと、その前に、実はちゃんと読んで
ないんでストーリーがはっきりしないんだ
という人はこちらで確認して
おいてくださいね。

「村上春樹 鏡のあらすじ:簡単と詳しくの2段階で解説」



Ψ 主人公の特徴/役割

「1、主人公の特徴/2、主人公の役割」
というふうに「特徴」「役割」とに分けて
要求された意図は、たぶん先生が授業中に
説明されたんでしょうが、私は聞いて
いないので、よくわかりません。

ただ1、2のどちらかに必ず入れることが
期待されているデータとして、作品冒頭で
主人公が前置きする、下記のことがらを
考えたほうがいいでしょうね。

いわゆる超常現象の経験談は
(A) 幽霊を見る(生の世界と死の世界が
クロスする)経験

110218

(B) 予知夢や虫の知らせ(三次元的な
常識を超えた現象や能力)の経験の2つに
分類できるが、自分はどちらの
経験もない。

こう明確に述べた上で、自分の「心の底
から怖いと思った」経験を語るわけです
から、自分の経験は(A)にも(B)にも
属さない特殊なものと考えている
ということがわかりますね。

このことは主人公の「特徴」の一つとも
考えられますし、また「役割」という
言葉を≪登場人物が作品全体に対して果たす
役割
≫といった意味にとってよければ、
このようにして、(A)にも(B)にも属さない
第三の超常現象経験を物語に導入する
ことが、登場人物としての彼の
「役割」だともいえます。

Sponsored Links


なので、この点を「特徴」か「役割」の
どちらかに入れることは絶対、期待されて
いると思いますのでやったほうがいい
と思います。

あとは、この人の「性格」とか
「仕事ぶり」とかでなんとか
埋めていきましょう。

本文をしっかり読めばわかりますからね。



Ψ 自分の体験談/どう変わったか

「3、自分の体験談」と
「4、これを読んで自分がどう変わったか」
は、書ける人はどんどん書けるでしょう
けど、「体験」が全然ない人や、
読んでも全然「変わらなかった」人は
困ってしまいますよね┐( ̄ヘ ̄)┌

Missing-You-s

でも、そこをなんとかしなきゃいけない。

「体験はないし、読んでも何も変わら
なかった」なんて書いて出しても、いい
評価がもらえるわけありませんからね。


ですからこれも、なんとか作品のほうから
ひねり出すことを考えましょう。

たとえば主人公はその後、家に鏡を一枚も
置かなくなった、というのが作品の
オチになっていますよね。

003276

そこから見ると「鏡への恐怖」ということが
作品の主要テーマの一つなのでしょうから、
たとえば、4への回答として、
「鏡というものが怖くなった」とか
「自分の中にもう一人の自分がいるような
気がして不安になった」とか、
(別にそう思っていなくても)
書いてみたらどうでしょう。

私が教師なら評価しますけど…。



Ψ 鏡のトンネルを行くオルフェ

なら、4はいいとしても、3が困るよ、
「自分の体験談」なんて、ほんとにないもん…
ですか?

そうねえ、それなら「体験」の意味を
ぐっと広げて読書や映像鑑賞の「体験」を
書かせてもらってはどうでしょう。


たとえばギリシャ神話をベースにした
有名なフランス映画に、詩人ジャン・
コクトー脚本・監督による『オルフェ』
(1950)があります。



このなかで主人公は村上の『鏡』の主人公と
同じように、自分の鏡像と触れ合ううちに
鏡のなかへと入り込み、長いトンネルを
通って冥界のようなところへ進み行って
しまうのですね(ドクロ

こういう作品を「観る」ことも
ひとつの「体験」となりますから、
それを書いてもいいんじゃないでしょうか。

4fedbefa0fd3ae759889d74c5f8b63e5_s


Ψ 鏡のトンネルを抜けて漱石へ

またもちろんこの「体験」を文学に
求めてもいいわけです。

たとえば、夏目漱石。

「元来鏡というものは気味の悪いもの
である」と『吾輩は猫である』(九)の
猫も言っていますが、同時期の「薤露行」
(かいろこう。1905。『漾虚集』所収)で
この気味悪さが追求されています。

「ニ 鏡」という章で導入される
「シャロットの女」は、「有の儘(まま)
なる浮世を見ず、鏡に映る浮世のみを見る」
べく呪われた人で、彼女についての記述を
圧縮すると、こうなります。

塔に閉じこもって、
幾年月の久しき間、
夜ごと日ごとにはたを織って暮らす
この女が外の世界を見ることを
許されるのは、部屋にかけ
られた鏡を通してだけ。

もし窓から外を見れば、その瞬間、
彼女に「末期」が訪れるという
呪いがかけられているのだ(叫び

ある日、「北の方なる試合」に
向かう騎士ランスロットが
この地に現れ、馬上の騎士の目と
シャロットの女の目が
鏡の中で出会う。

一瞬で心を奪われた彼女は、
自分に末期が訪れるのを知りながら
「サー・ランスロット」と叫び、
たちまち駆けて蒼き顔を窓外に
突き出す。

しかし、この女のことなど知る
由もないランスロットは、
塔の下を駆け抜ける。

ぴちりと音がして晧晧たる鏡は
忽ち真二つに割れる。


         029514

ともかく「鏡」が漱石のお気に入り、
あるいはとても気になるものだったことは
たしかで、もともとの戸籍名は「きよ」
だった奥さんを結婚後は「鏡子」と
名乗らせたほどです。

漱石自身、男前だった(”あばた”を
差し引いて見れば、ですが)ので、
鏡に見入ることは好きだった
かもしれませんね。

097778

遺作『明暗』(1906)の主人公、津田には
自身のこの側面が託されている
かもしれません。

湯河原の旅館の洗面所で鏡に見入る場面が
ありますが(第175回)、そこで、顔に
自信をもつ”鏡好き”の「好男子」津田が
鏡を見て、ふといつもと違う感覚に
とらわれた場面です。

だから、何時(いつ)もと違った
不満足な印象が鏡の中に現れた
時に彼は少し驚ろいた。

是(これ)が自分だと認定する
前に、是は自分の幽霊だという
気が先ず彼の心を襲った。


あ、これはまさに村上春樹の『鏡』の
世界ではありませんか。

私たちはこうして、あたかもオルフェや
「シャロットの女」のごとく、鏡の
トンネルをくぐって、春樹の世界と漱石の
世界とを行き来したともいえるのでは
ありませんか?!

隠れ猫Kitten-s

だとしたらこれこそはまさに
文学のよろこびでしょう。

これらに似た読書や映像の
体験はありませんか?

ない?

なければ仕方がないので、
デッチあげましょう。

あなたの奔放な想像力を先生が
評価されないともかぎりません(ニコニコ

要は自分の「体験」に即して
自分にしか書けないものを書くことです。

村上春樹にかんしては、こちらの
記事も参考にしてください。

村上春樹 沈黙のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説
村上春樹 沈黙で感想文:”なりきって”考察する3つの方法
村上春樹「恋するザムザ」とロシア映画『変身』

そのほか村上春樹の本を早く安く手に
入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

♥村上春樹の本:ラインナップ♥


え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めて
いいかわからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

当ブログでは、日本と世界の
種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

Sponsored Links

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ