すべからくの意味・使い方?安倍晋三首相ほか錚々たる知識人も誤用

 


やあやあサイ象です。

レポートや論文などの文章で、
あるいは討論の場で一席ぶつようなとき、
「すべからく」って書いた(言った)
ことあります?

大いに結構!
ただし意味を間違えていなければ、です(;^_^A

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つまりこの「すべからく」を「すべて」という
のと同じ意味
で(ただそれをなんだか
高級めかしたいような場合に)使う人が
多いのですが、これは正しい
日本語とはいえません。


ですので、まことに失礼ながら、万一あなたが
今、ギエ~、そうだったのか~~(((゜д゜;)))

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と汗ばんでいたりするのでしたら、今度
から気をつけましょうね~(@^(∞)^@)ノ
というのが今日のお話です。




Ψ 正しい意味は?

さて、「すべからく」は辞書にもあるとおり
「当然そうすべきこととして…」といった
程度の意味の副詞でして、その正しい用法
としては、これを受ける述語として
「…すべきである」かそれに似た意味の
ものが来なければならない、ということに
なっているのです。


でも、そうだとすると、「すべきこと
として……すべきである」という重言
(同じ意味を二度言うこと)を犯した
ようで、それこそ日本語としておかしいん
じゃないの? と思われるかもしれません。

うーむ、たしかにおかしいですね…(・∀・)。

なぜこんなヘンテコな日本語が「正しい」
ということにされちゃったんでしょう?


その起源は、漢文訓読に苦闘してきた
日本人の工夫にあるんですね。

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つまり「すべからく」は漢字では「須く」と
書きますが、この字は、漢文訓読の場合に
再読文字とされる字の1つで
「すべからく……すべし」というふうに、
上へ戻ってもう一度読むようにと
教えられるものです。


中国語と日本語で文法構造がまったく
違うために、こんなややこしいことを
しなければならず、そのややこしい
「重言」的な語法が「正しい日本語」に
組み込まれてしまった次第ですね。



Ψ 正しい使い方は?

もちろん現代では、格式張った文語的表現と
見なされるので、使わなければそれでなんの
問題もないんですが、ちと格好をつけて
やろうという色気を出したばかりに
かえって墓穴を掘る……という人が
結構多いわけなんですね。


そこで、正しい使い方を例文で考えてみましょう。

・学生はすべからく勉学に励む。
というのは日本語として誤りで、

・学生はすべからく勉学に
励むべきである
ならよろしい、ということになります。

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そして「すべからく」を受ける述語は、
「励むべきである」のように助動詞の
「べし」を含むのが最も正しいわけですが、
でも、「べし」が絶対必要だと
固執する論者はまれですね。

一般的には、意味的に近いものが来れば
よい、だから「励め」という命令でも
OKとされているようです。

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Ψ 大衆受けには誤用が得策かも>

ギエ~、知らなかった~~(((゜д゜;)))……?

いえいえ、そんんなにショックを受ける
必要はないんですよ。

なにしろ「すべからく」を「すべて」と同じ
意味で使う人には、安倍晋三首相から
芥川賞作家にいたるソーソーたるインテリが
含まれているんですから(叫び)。

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してみると、ひょっとしたら、
総理大臣になろうとか思ってる人なら、
こういう誤用はむしろ積極的にやった方が
(大衆受けして)成功しやすい、
ということなのかもしれませんね、へへ(ニコニコ)


でも、もちろん入試の小論文などで
用いてはいけません(-_-メ

採点者は”大衆”ではありませんから。


ともかく大事なのは、「すべからく」と
「すべて」とで音が似てしまったのは
偶然にすぎず、その意味・用法は
まったく違う
ということ。

このことをやや学問的に解析すると、
下の囲みのようになります。

そんなややこしいことはいらん、
という人は飛ばしてくださいね。

「すべからく」を解剖すると

純粋に漢文訓読のために作られた
この人工的な日本語を分解すると、
こうなります。


(サ変動詞終止形)



べから
(助動詞「べし」の未然形)




(ク語法)




最後の「(ク語法)」というのは「~
こと」という意味の名詞を作る語法。

「いわく」とか「思惑」(「惑」は
当て字)とかも同類で、助動詞はなく
「動詞の未然形」に「く」(ク語法)
がついた形ですね。



Ψ 安倍首相答弁の「すべからく」

さて、お待たせしました。
安倍晋三首相の登場です。

「イスラム国」日本人人質事件に関する
質疑を受けての答弁に出てきた
「すべからく」です。

すべからく国民の命、安全を守る
ことは政府の責任であり、
その最高責任者は私です。 
 (2015年2月2日参院予算委員会)

・日本人の命、すべからく、国の
最高責任者である私にあります。
 (2015年2月4日衆院予算委員会)


へ? 「すべからく」って「すべて」の
意味なんですか、総理(゜д゜;)? 

と絡みたくなりますが、実はこれには
総理擁護論もあって、いや、総理は
「当然……」という副詞的な意味で使って
いらっしゃる、「当然、政府の責任だ」
「責任は当然、私にある」とおっしゃって
いる、だから問題ないのだ( ̄ヘ ̄)、
というんですね。


ガーン(((゜д゜;)))、そうだったのか……
それは失礼をばいたしました!

Skulls-s

でもね。

さかのぼって、2013年11月25日の
参院決算委員会ではこんな答弁も
なさってるんですよ、総理。

・この法律(特定秘密保護法)だけ
ではなくて
すべからく法案に
ついてはしっかり熟議をしていく、
そして慎重に審議をしていく、
それは当然の私たち、私ども
国会議員としてはそれは義務
なんだろうと、このように
思うわけでございまして……

(以上、引用はいずれも
毎日新聞〔2015年03月02日〕から)

「だけではなくて」に続いて出てくることや、
「当然」の語はまた別に言われていること
からして、この「すべからく」は「すべて」
の意味で言われているとしか受け取りようが
ないんじゃないでしょうか?



Ψ 有名作家・学者の「すべからく」

でも総理、そんなに気を落とされる
ことはありません。

記事の冒頭でふれました芥川賞作家
(唐十郎さん)を含むすくなからぬ
有名作家・学者の文章にこの誤用は
頻出しているのですから。


たとえば水村美苗さんの『日本語が亡びる
とき』は、かなり話題を呼び、2009年の
小林秀雄賞をゲットした本ですが、
こんな文章を含んでいます。

カンボジアのクメール・ルージュに
いたっては読書人をすべからく
虐殺した。


読書人虐殺は「当然すべきこと」
だったんでしょうか(iДi)??

日本語、亡びないといいですね……。

どくろFall-Of-Man-s

辛口の評論家、呉智英さんにいわせますと、
こういう怪しい日本語を、したり顔で
使用している人というのは、

叡知の道を歩むことなく、
そのくせ、裏口からでも叡知の
王国に入りたいという姑息な
上昇志向だけは人一倍強い
〔中略〕気取った表現で
四流五流をたぶらかしたい
という二流三流

なんだそうです。
(『インテリ大戦争』1982)
   


この見解の当否はともかく、世の中に
そう見る人がいることはたしかですから、
誤用しないよう気をつけなければ
なりませんね。



Ψ 「すべからく」は予告語

でも、この「すべからく」の誤用、
文章の流れでついやってしまいそうで、
その意味でコワイのですね。

やらずにすますには、どこに気を
つければいいんでしょうか。


中国文学者の高島俊男さんは、これを
予告語として意識することに
注意を促しています。

日本語では述語が文末に来るため、最後まで
聞かないと肯定か否定かもわからない
という場合が結構ありますね。

Artistic-Book-s

この難点を補う必要から発達しているのが
予告語すなわち終わり方を予告する言葉です。

「決して」「断じて」「多分」「まるで」
「必ずや」などがそれで、「すべからく」も
「……すべし」「……せねばならぬ」などの
結語を予告する語として「確たる
地位を得た」語である、と
(『お言葉ですが…(2)』2001)。
  


「すべからく虐殺した」の文では予告して
おきながら「結語」を出さない格好に
なりますので、聞く(読む)側は
ずっこける、わけですね。


なるほど、よくわかりました。

「すべからく」は「……すべし」などの
結語を期待させる予告語であって、
「すべて」とは意味も由来もまったく
別の言葉である。

これを肝に銘じて、日本語は母語だから
平気とあなどることなく、すべからく
よく学ぶべし~(@^(∞)^@)ノ


日本語の難しさとそれへの対
策をめぐっては、以下のような記事も
書いていますのでご参照ください。
違和感がある…という言い方への違和感:嫌味になる場合とは?
博士の読み方は?はかせ?はくし?…枕草子、漱石に聞く
「お~になる」敬語は二重化注意:太宰・志賀も”お殺せに”バトル
“させていただく”が間違い敬語になる場合:恩ない人への恩表現
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