夏目漱石 草枕のあらすじを簡単に【&詳しく/現地写真・絵画つきで】
やあやあサイ象です。
“感想文の書き方”シリーズもはや第47回、
あらすじ暴露サービスとしては第24弾。
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今回は国民的作家、夏目漱石の
『草枕』(1906)で参ります。
智(ち)に働けば
角(かど)が立つ。
情(じょう)に棹(さお)させば
流される。
意地を通(とお)せば
窮屈(きゅうくつ)だ。
とかくに人の世は住みにくい。Sponsored Links
冒頭のこの名言は聞いたことがある
けれども、全編を読み通したことは
ないし、またその気にもならない。
だって文章がムツカシそうで……
という人が多いのではないかと思います。
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ちなみに最新の英訳がこちら。
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まあ実際、漱石作品の中でも言葉遣いが
古臭いですし、芸術や文学にまつわる
議論もはさんでストーリーはウロウロと
まどろっこしく進むので、現代小説の
スピードになれた人が付き合いきれない
としても、無理からぬところ;^^💦
さて、一口に「あらすじ」を、といっても、
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文対策として詳しいものがほしい、
という場合まで、千差万別でしょう。
そこで出血大サービス((((((ノ゚🐽゚)ノ
「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у
ごく簡単なあらすじ(要約)
まずはぎゅっと要約した「ごく簡単なあらすじ」。
日露戦争中、30歳の画工(えかき)
である「余」が、那古井の志保田家に
逗留し、出戻りのお嬢さんという
奇矯な美女、那美と親しくなる。
那美は美人ながら
「何だか物足らない」
と余は思いつづける。
橋口五葉画「髪梳ける女」(1920)
五葉は漱石の多くの本を装丁しました
が、満州へ出征するいとこの久一を
停車場で見送る際、汽車が出て窓から
久一の顔が消え、続いて思いがけず
那美の元夫の「野武士」のような顔が
出た瞬間に、那美の顔に「憐れ」が
浮かび、「胸中の画面」は完成する。
である「余」が、那古井の志保田家に
逗留し、出戻りのお嬢さんという
奇矯な美女、那美と親しくなる。
那美は美人ながら
「何だか物足らない」
と余は思いつづける。
橋口五葉画「髪梳ける女」(1920)
五葉は漱石の多くの本を装丁しました
が、満州へ出征するいとこの久一を
停車場で見送る際、汽車が出て窓から
久一の顔が消え、続いて思いがけず
那美の元夫の「野武士」のような顔が
出た瞬間に、那美の顔に「憐れ」が
浮かび、「胸中の画面」は完成する。
どうでしょう?
え? なんだかよくわからん?
いったい何が言いたいのか???
というわけで、やはり「やや詳しい」
ヴァージョンの「あらすじ」を読んで
いただくほかない、ということになります。
熊本大学構内の「第五高等学校記念館」
さてこの『草枕』、第五高等学校
(現・熊本大学)の教授であった」漱石が
実際に宿泊した前田案山子(かがし)家
別邸での経験をもとに書かれたことは
よく知られています。
現在の前田家別邸周辺の地図を置きます
ので、参考にしてください。
熊本県玉名市天水 前田家別邸
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やや詳しいあらすじ
では始めましょう。原作は全13章構成ですが、わかりやすさの
ため、各章を私の判断で「起承転結」の
4部に割り振って記述していきますね。
「 」内は原文の引用です。
途中で挟む写真はすべて私の撮影による
もので、熊本・小天温泉に保存されている
前田家(『草枕』では志保田家)別邸と
その付近、およびロンドン、テート美術館
での取材の成果です。
♨【起】(一~二)
「とかくに人の世は住みにくい」と考える30歳の画工である「余」が、
人生と芸術をめぐって思考をめぐらし
ながら、「すこしの間でも非人情の
天地に逍遙したい」と山道を歩く。
漱石が実際に立ち寄った「峠の茶屋
熊本市「峠の茶屋公園」内に復元されたもの
一休みした茶屋で、一里ほど先の
那古井の志保田家に逗留するつもりだ
と話すと、婆さんは志保田の「嬢様」が
高島田を結い、馬で嫁入りした姿が
いまだにちらつくという。
余が花嫁の顔を思いつけないでいる
うち「ミレーのかいた、オフエリヤの
面影が忽然と出て来て、高島田の下へ
すぽりとはまつた。」
J.E.ミレー「オフィーリア」(ロンドン、テート美術館蔵)
二人の男に一度に惚れられて川へ身を
投げた、土地の伝説「長良の乙女」の
再来のようだ、と婆さん。
京都へ修行に出ていた頃に関わった男を
思いながら、親の意向で「城下で随一の
物持ち」の男に嫁がされ、その後、
日露戦争で旦那の勤める銀行がつぶれて
出戻っているのだという。
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♨【承】(三~七)
志保田に宿を取り寝ついたものの、夢に「長良の乙女」が現れ、現実にも
「女の影」が部屋を出入りしたらしい。
朝湯に入って出てくると、
「お早う」の挨拶で美人に迎えられる。
美貌に違いないが、「悟りと迷いが
一軒の家に喧嘩しながら同居して居る」
「心の統一」のない「不仕合せな女」
と思う。
前田家別邸の離れ部分
右上が漱石の寝泊まりした部屋
やがてその美しい「嬢様」すなわち
那美が、昼間にも「御茶を入れに」
来て、才気煥発に話す。
「長良の乙女」の話になると、自分なら
二人の男をともに「男妾にする許
(ばか)り」だという。
那美は「気狂(きちげえ)」だとみな
言っている、彼女に懸想した納所坊主に
抱きついて死なせたこともある、
と床屋の親方。
だから、からかったりすると
「大変な目に逢いますよ」
前田家別邸の浴場跡
余が一人で湯に入っているところへ、
「女の影」があらわれる()。
その裸体は西洋の裸体画のごとく露骨に
ではなく「一種の霊氛(れいふん)の
なかに髣髴(ほうふつ)として」
余を打つが、女は飛び上がって去り
「ホヽヽヽヽと鋭く笑う」声が残る。
松岡映丘画『湯煙(草枕)』(1928。部分)
♨【転】(八~十一)
志保田家を訪ねた観海寺住職の禅僧、大徹と、那美の従弟の久一とで雑談し、
久一が絵をたしなむこと、近く満州へ
出征することを知る。
部屋で英語の小説を読んでいるところへ
「御勉強ですか」と那美が来て
話し込む。
「何ならあなたに惚れ込んでもいい」
が、夫婦になる必要はないと言う
「余」に、「不人情な惚れ方」
ですねと那美。
「不人情」でなく「非人情」だ、小説も
「非人情で読む」のだと教えると、
「読んで下さい」とせがむので、
英語を和訳しながら読む。
漱石の寝泊まりした部屋の内部
「女の呼吸(いき)が余の髭にさわ」る
ほど接近するも、「非人情ですよ」
「無論」と互いに居住まいを正す。
やがて、近辺の「鏡が池」について
那美は「身を投げるに好(い)い所
です」、「私が身を投げて浮いている
所を……奇麗な画にかいて下さい」
などと言い出し、「驚いたでしょう」
と笑って去る(
「余」は鏡が池へ行き、ここに「美しい
女の浮いている所」をかくなら那美の
顔が一番似合うが、「しかし何だか
物足らない」と思う。
観海寺で大徹と話し、出戻ってからの
那美が禅門に入っていると知る。
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♨【結】(十二~十三)
海を見下ろす草原を歩いては寝そべり、漢詩を一篇仕上げたところへ、
野武士のような髭づらの男が現れ、
続いて那美が現れて男に財布を渡す。
二人が別れたあとで、那美は余に、
彼が元夫で、貧乏で日本にいられず
満州に行くから金をくれ、
と言って来たのだと説明する。
山腹の前田家本邸あたりから有明海を見下ろす
那美と「余」を含む数名で川舟に乗り、
久一を停車場まで見送る。
汽車が入ってきて、「それでは
御機嫌よう」と久一が言うと、
「死んで御出で」(
久一を乗せた汽車が動きだし、久一の
顔が去ると、もう一つ、あの野武士の
顔が出て、那美と顔を見合わせる。
茫然と見送る那美の顔に浮いている
「憐れ」を見て、「それだ!それだ!
それが出れば画になりますよ」
「余の胸中の画面」もこの瞬間に完成。
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現地見学もできますよ
さあ、どうでしょう。ストーリーはこれでほぼ押さえられたと
思うんですが、『草枕』という作品全体
の魅力が伝えられたわけではありません。
というのも、物語の流れよりむしろ、
随所に挟まれてゆく芸術論・文学論や
人生論、さらには漱石自作の俳句や漢詩の
方にこそ「西洋にはまだない俳句的小説だ」
と漱石自身が胸を張ったこの作品の命が
ある、とも見られるからです。
だからそこを見なければ『草枕』を
読んだことにはならない、と。
たしかにごもっともなのですが、
この記事ではそちらへ分け入る
余裕がありません。
👉是非にという方は、こちらの
別記事をご参照ください。
冒頭部分の現代語訳と解説も
こちらにありますよ。
・夏目漱石 草枕:冒頭の名言を意味付きで解説「智に働けば…」
そこでも紹介していますが、前田家別邸は
現在、誰でも見学可能です。
ただ残念なのは、那美さんが「身を投げるに
好い所」と称する「鏡が池」が、私有地の
ため立ち入り禁止になっていることですが、
でも前田家別邸すぐ近くにある、『草枕』
から名を取った温泉旅館で雰囲気は
じゅうぶん味わえます。
👉こちらでどうぞ。・「小天温泉 那古井館」
こちらで湯治しながら周辺を散策して
勉強されてもよろしいんじゃ
ないですか~( ̄∀ ̄)。
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まとめ
さあ、いかがでしょう。書けそうでしょうか、読書感想文。
『草枕』ばかりでなく、ほかの
漱石作品にも当たって、共通点や
違いについて考えるというのも
いい方法ですね。
人に差をつける高度な感想文に
なる可能性大ですよ。
👉『草枕』からさらに羽を伸ばして
漱石の文学を探索してみよう人は、
まずこれらの記事で、漱石の名言や
作品から、自分に合うものを
探してみてください。
・恋は罪悪で神聖?宇宙的の活力?男女は一つになるか…【漱石の恋愛名言12】
・夏目漱石は何から読む?小・中学生~シニア 人生経験により順番も違う
👉漱石入門のための参考図書としては
こちらが最新のおススメ。
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👉そのほか漱石の作品を早く安く
手に入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。
夏目漱石の本:ラインナップ
さあ、これだけの情報があればもう
バッチリですよね、読書感想文。
ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…
だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?
う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦
そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。
各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。
だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。
さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。
こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。
・読書感想文の書き方!小学生/中学生/高校生のコンクール入選作に学ぶ
・アルジャーノンに花束を 感想文!市長賞作【2000字】を例に学ぶ
そちらで解説している「書き方」を
踏まえて、当ブログでは多くの感想文例を
試作し提供してきましたが、このほど
それらの成果を書籍(新書)の形にまとめる
ことができましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
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・読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!
👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。
気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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