やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズも
このほどついに100回を突破し、今回で
第104回となります((((((ノ゚⊿゚)ノ。

とり上げるのは、原民喜の
名作短編小説『夏の花』(1947)。




”原爆文学”としてあまりにも有名な作品
ですが、内容は被爆の経験をたんたんと
つづっていったもので、特に小説らしい
ストーリーがあるわけではありません。

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でも、だからといって内容を知らないで
感想文が書けるわけもありませんので、
一応のストーリーは、こちらで押さえて
おいてもらえればと思います。

夏の花(原民喜)のあらすじ シュールに描かれた被爆の朝

        



どう書く? 感想文

さて、どう書きましょうかね? 読書感想文。

「戦争は悲惨だ。あってはならない」
云々の趣旨でももちろん結構なんですが、
それではありきたりで、書く気がしない
という人もいるかもしれませんね。

そういう人は、それならどこに
突っ込んで行けばいいか。

     

一つの方法として(学校側には期待
されていない行き方かもしれませんが)
記述されていることの内容よりむしろ
文章そのものにこだわって、それをめぐる
「感想」を書いていくのも面白いんじゃ
ないでしょうか。

つまりこの散文が美しいとしたら、
その「美しさ」はなぜ、どこから
生み出され、構成されているのか、
といったことの考察ですね。


たとえば、上記記事「あらすじ」の【起】で、
被爆直後の現実について、作者は
「夢のなかの出来事に似ていた」
と書いていましたね。

あたりがおぼろに見えて来ると、
「今度は惨劇の舞台の中に立って
いるような気持ちであった」とか、
映画で見たことがある、とか。  

    

このような目で観察され記述された
光景は、読む側にもまた、一種
「夢のなか」のような感じ、あるいは
なんとなく”ひとごと”というか、もう
一人の冷めた自分が上から見守っている
ような感じを引き起こす……

と思いますが、どうでしょう?


ともかくこれは、シロウトには決して
書けない文章であって、おそらく
原民喜という作家が長年にわたって
磨き上げてきた技法の一つの結実だろう
と思うんです。

この技法がさらに徹底されてほとんど
”神の領域”ともいいたい冴えを見せて
いるのが、文字通りの遺書として
書かれた絶筆、『心願の国』(1951。
上記「新潮文庫」所収)でしょう。

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絶筆『心願の国』へ

だから、僕には僕の上にさりげなく
覆いかぶさる夜空の星々や、
僕とはなれて地上に立っている樹木の姿が、
だんだん僕の位置と接近して、
やがて僕と入替ってしまいそうなのだ。

とか、

一ふきの風でへし折られてしまう
細い神経のなかには、かえって、
みごとな宇宙が潜んでいそうにおもえる

といった、なんだか自己がすでに
自己でなくなっているとでもいうか、
”幽体離脱”さえ思わせる
フワフワした文章が重ねられていきます。

そして結びは、亡妻と重ね合わされた
「雲雀(ひばり)」を描くこんな文章です。

雲雀は高く高く一直線に全速力で
無限に高く高く進んでゆく。

そして今はもう昇ってゆくのでも 
墜ちてゆくのでもない。
ただ生命の燃焼がパッと光を放ち、

遂に生物の限界を脱して、
雲雀は一つの流星となっているのだ。

(あれは僕ではない。
だが、僕の心願の姿にちがいない。
一つの生涯がみごとに燃焼し、
すべての刹那が美しく充実していたなら……。)

      飛鳥 images

心洗われる文章とはこのことでしょう。

しかもそれは、たんに亡妻をいとおしむ
センチメンタルな記述ではなく、
一種のシュルレアリスム(超現実主義)の
みごとな結実となっています。



精密巧緻な新地獄

『夏の花』に戻りますと、
たとえば上記の、被爆直後の現実を
あたかも「夢のなかの出来事」で
あるかのように描く筆致は
シュルレアリスム的といえますし、
さらには【転】の部分に出る

アカクヤケタダレタ ニンゲンノ死体ノ
キミョウナリズム
スベテアッタコトカ
アリエタコトナノカ
パット剥(は)ギトッテシマッタ
アトノセカイ

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という詩など、まさに
シュルレアリスムそのものとさえ
いっていいんじゃないでしょうか。


そして、この奇妙な詩を出す
前置きの部分も特異です。

「赤むけの膨れ上がった屍体」の
重なりようについて、
「精密巧緻な方法で実現された新地獄」
だとか、「一種の妖しいリズムを
含んでいる」……
とかいった見方をしている
わけですが、こういう文章はシロウトが
思ったままを書くという類のものでは
ありませんね。
   
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その背後には何らかの「意匠」
(デザイン)があるはずで、その意匠を
「シュルレアリスム」と呼んでいい
と思うわけです。

いいと思う根拠は、原民喜自身が上に
続く文章で「超現実派」という言葉を
出していることです。

電線の乱れ落ちた線や、
おびただしい破片で、虚無の中に
痙攣的の図案が感じられる。

だが、さっと転覆してしまったらしい   
電車や、巨大な胴を投出して転倒して
いる馬を見ると、どうも超現実派
画の世界ではないかと思えるのである。


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シュルレアリスムって何?

では、その「シュルレアリスム」
(超現実派)とは何か?

本格的にやると長くなりますので、
ここではとりあえす、総帥アンドレ・
ブルトンが「超現実」について語った
文章を引いておきます。

私はと現実という、外見はいかにもあいいれない
二つの状態が、一種の絶対的現実、
いってよければ一種の超現実のなかへと、
いつか将来、解消されてゆくことを
信じている。

   
(『シュルレアリスム宣言』
Manifeste du Surrealisme, 1924。巌谷國士訳)
   👇


👉
さらに詳しくは、こちらの
記事をご覧ください。

シュールの意味と使い方:お笑いの世界から芸術的”超現実”へ

         



まとめ

さて、以上、主として原民喜の文章の
特異性について考える方向の感想文を
検討してきましたが、そのほかにも
色々と目の付けどころはあると思います。

ぜひしっかり読み込んで、自分ならではの
ポイントを見つけてもらえたらと思います。

👉当ブログではこのほかにも
「戦争文学」関連の記事を書いて
いますので、見てもらえると、
参考になるかもしれません。

黒い雨(井伏鱒二)のあらすじ:簡単/詳しくの2段階で

黒い雨(井伏鱒二)で読書感想文∥今村昌平映画も参考に

       106714

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江戸川乱歩 芋虫で感想文◎◎映画『キャタピラー』も鑑賞して
            


さあ、これでもうOKですね、感想文。

ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり感想文は
苦手で、具体的にどうやっていいのか
かわからない( ̄ヘ ̄)?

なるほど。

そういう人はまず、そもそも「感想文」
とはどういうもので、自分はなぜそれが
苦手(嫌い)なのかというところから
考え直してみてはどうでしょう。
👉こういった「感想文」問題で
悩んでいる人はまず、こちらをの
記事を読んでみてください。

きっと目からウロコですよ。

読書感想文 入賞のコツ4条⦅評価されるのは感想ではなく…何?⦆

      

👉また当ブログでは日本と世界の
種々の文学作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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