川端康成 古都のあらすじと感想//京都”観光小説”の哀切さ
やあやあサイ象です。
「感想文の書き方」シリーズも
はや第94回にして、
「あらすじ」暴露サービス
第60弾となります。
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今回は日本初のノーベル賞作家、
川端康成晩年の長編小説
『古都』(1961-62)で参りましょう。
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さて、一口に「あらすじ」を、といっても、
話の骨子だけでいいという場合から、
読書感想文を書くんだから
分析・解説つきの詳しいものがほしい、
という場合まで、千差万別でしょう。
そこで出血大サービス((((((ノ゚🐽゚)ノ
「ごく簡単なあらすじ」と
「やや詳しいあらすじ」の
2ヴァージョンを用意しましたよ~~(^^)у
ごく簡単なあらすじ(要約)
まずはぎゅっと要約した「ごく簡単なあらすじ」。
京都の呉服問屋、佐田太吉郎の娘、
千重子は、両親の実の子ではない
と聞かされていた。
太吉郎の図案による千重子の帯を
西陣織の若手の実力者、大友秀男が
織ることになる。
5月、北山杉を見に行った千重子は、
自分に瓜二つの娘を見かけ、7月の
祇園祭りの夜、その娘、苗子に再会し、
二人は互いが双子の姉妹であると知る。
秀男は、その苗子をはじめ千重子と
取り違え、後には別人と知るが、
好意を寄せ、やがて結婚を申し込む。
それは自分に「千重子さんの幻」を
見ているだけの「身がわり結婚」だし、
結婚によりつながりができれば
妙な目で見られると、苗子は千重子に
悩みを打ち明ける。
一晩だけ泊まりに来た苗子は、千重子と
並んで床に就き、「あたしの親が
赤ちゃんを、捨てたのは、お嬢さんの
方どしたえ」などと長く抱えてきた
自責の念を語る。
翌朝「これがあたしの一生のしあわせ
どしたやろ」と永別を告げる。
千重子は、両親の実の子ではない
と聞かされていた。
太吉郎の図案による千重子の帯を
西陣織の若手の実力者、大友秀男が
織ることになる。
5月、北山杉を見に行った千重子は、
自分に瓜二つの娘を見かけ、7月の
祇園祭りの夜、その娘、苗子に再会し、
二人は互いが双子の姉妹であると知る。
秀男は、その苗子をはじめ千重子と
取り違え、後には別人と知るが、
好意を寄せ、やがて結婚を申し込む。
それは自分に「千重子さんの幻」を
見ているだけの「身がわり結婚」だし、
結婚によりつながりができれば
妙な目で見られると、苗子は千重子に
悩みを打ち明ける。
一晩だけ泊まりに来た苗子は、千重子と
並んで床に就き、「あたしの親が
赤ちゃんを、捨てたのは、お嬢さんの
方どしたえ」などと長く抱えてきた
自責の念を語る。
翌朝「これがあたしの一生のしあわせ
どしたやろ」と永別を告げる。
どうでしょう?
え? なんだかよくわからん?
いったい何が言いたいのか?
ハハハ、まあそうでしょうね。
ですので、もっと詳しく知りたい場合は
2016年公開の映画『古都』(Yuki Saito
監督、松雪泰子・橋本愛・成海璃子主演)
をご覧になるのも一法です。
その予告編。👇
でもこれ、原作をだいぶいじって
二世代にわたるドラマにして
いますので、要注意。
より原作に忠実な映画化としては
市川崑監督の1980年作品(山口百恵・
三浦友和主演)の方がお勧めです。
👇
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が、もちろんこれにしても全編
原作通りというわけには
とても行きません。
そこでで、やはり以下の「やや詳しい
「あらすじ」を読んでいただくほかない
ということになるんですね;^^💦
やや詳しいあらすじ
では、開幕です。小説は「春の花」に始まって「冬の花」に
終わる全9章で、
春:春の花、尼寺と格子、きものの町
夏:北山杉、祇園祭
秋:秋の色、松のみどり、秋深い姉妹
冬:冬の花
と四季をめぐる終わるという心憎い構成。
この春夏秋冬がだいたい「起承転結」にも
相当するように思われますので、
以下の「やや詳しいあらすじ」は
「春・夏・秋・冬」の4部構成で参ります。
「 」内と「”」印の囲みは
原文の引用です。
わかりにくいかもしれない部分などには
👉印で注釈を入れていますが、
うるさいと思う人は飛ばしてくださいね。
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👘【春】
京都中京(なかぎょう)の由緒ある呉服問屋当主、佐田太吉郎の
美しい娘、千重子。
両親の愛をうけて何不自由なく20歳まで
育ったが、実の子ではないということを
中学生の頃に聞かされていた。
「夜桜の祇園」だか「鴨の川原
(かわら)」だかで見つけ、あまり
可愛いので、さらってしまい、車で
いっさんに逃げてきたのだと。
幼ななじみの水木真一に誘われて
平安神宮に花見に行って話すうち、
「あたしは捨子どしたんえ」と
このことを告げ、大学進学をあきらめた
のもそうだし、将来の結婚もすべて
「親に絶対服従」のつもりだ、
という考えを伝える。
この真一はやはり由緒ある呉服問屋の
次男で、十年前に祇園祭りの
「お稚児さん」に選ばれたほどの
家柄と美貌の持ち主。
👉祇園祭りの「お稚児さん」が
京都でもつ文化的・社会的
意味については、こちらの
記事をご参照ください。
・京都祇園祭の”生き神様” 歴代のお稚児さんはどこの坊ちゃま?
千重子がくれたパウル・クレエの画集に
触発されて新奇な帯の図案を作画した
太吉郎は、これを旧知の西陣織職人、
大友宗助に見せに行く。
宗助は、今や自分をしのぐ技量と
世間で認められている息子の秀男を
呼んで、これを見せるが、無愛想な
秀男は見入って黙り込む。
「千重子さんの帯でっしゃろ」
「そうや」
「あかんのか」
「あかんとはいうとりません」
「その眼がいうとる」
「そうどすか」
「なんやて……」
というような会話の流れで、
太吉郎は秀男を殴ってしまう。
秀男はただちに手をついて謝り、
「この帯はわたしに織らせて
ほしいのどす」と頼む。
が、やがて太吉郎が心をしずめると、
「あったかい心の調和がない。
なんかしらん、荒れて病的や」
と彼の図案を批評する。
👘【夏】
5月のある日、千重子は、北山丸太の加工の仕事をしている友達の真砂子と
北山杉を見に行く。
村娘の中に千重子に瓜二つの娘を
真砂子が見つけ、千重子に指し示す。
7月の祇園祭りの夜、千重子は
その娘が八坂神社の御旅所で熱心に
七度まいりをしているのを目にする。
千重子が話しかけると食い入るように
見つめ「あんた、姉さんや、神さまの
お引き合せどす」と涙を流す。
苗子と名のった北山杉の村娘は、
千重子が生き別れた双子の姉妹であると
確信しつつも、「身分ちがい」を
感じたか、会うなら村へ来てほしい
と言い残して去る。
その足で四条大橋を渡りかけた苗子は
「お嬢さん、千重子さん」と西陣織屋の
大友秀男に声をかけられる。
太吉郎の図案の帯を徹夜で織って
すでに届けていた秀男は、苗子に
「どうどした」と尋ね、また今度は
「わたしの考案で」千重子さんの帯を
織らしてほしいとも押す。
が、苗子は「へえ」とあいまいに
答えるばかりで、「さいなら」。
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👘【秋】
しばらくして、新しい帯の図案を2つ持ってきた秀男に千重子は、あなたが
四条大橋で約束した相手は自分では
ないと告げ、その娘、苗子のために
「杉と赤松の山」の帯を織って
ほしいと依頼する。
立秋のころ、千重子は北山に苗子を
訪ね、親しく話すうち夕立にあう。
自分のからだで包むようにして
雨を防いでくれた苗子の
「親しいあたたかさ」がしみる。
秀男に依頼した帯のことを話すと
苗子は「身がわりに、ものをもらう
なんて、そんなんいやどす」と
いったんは拒否するが、「わたしの
きょうだいやいうて」お願いした
のだから、という千重子の説得を
やがて受け入れる。
北山杉の村にその帯を届けた秀男に、
苗子は、おととい千重子の店から
着物や草履一式を送ってくれたが、
「身がわり」はもういやだという。
それでも見せられた帯に目を輝かせ、
10月の時代祭りに着てきてほしい
という秀男の熱心な誘いに応じる。
そのころ、経営の傾く太吉郎の店に、
真一の兄で押しの強い大学院生の
水木竜助が手伝いに来て、
番頭の裏帳簿を正すなどしていた。
竜助の千重子への執心を知る父親は、
彼を佐田家の婿養子にどうかと
もちかけ、太吉郎もこれを喜ぶ。
👘【冬】
話があるとの電話をもらい、北山に苗子を訪ねた千重子は、秀男が苗子に
結婚を申し込んだと知らされる。
「身がわり結婚どすわ。〔中略〕
あたしに、千重子さんの幻を
見といやすのどっしゃろ」
それに仕事で付き合いのある
秀男の妻となれば、「まわりから
妙な目で見られ」て千重子に迷惑が
かかる、と苗子。
千重子がその憂いを払い、父が苗子を
二人目の子として迎えてもよいと
言っていると告げると、苗子は泣く。
「心の底にしみて、おおきに」
一晩だけでも泊まりに来てほしい
という千重子の願いを聞き入れ、
ある夜、苗子が来訪する。
父母とも顔を合わせてから、
姉妹二人で床に就き、話す。
「あたしの親が赤ちゃんを、捨てたの
は、お嬢さんの方どしたえ」と
苗子は早世した両親にもふれる。
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「ふた親とも、その罰を
受けたんかしら、
思いますけど……。
うちも、赤んぼどしたけど、
かにしとくれやす」
「それが、苗子さんに、なん
の責任や罪がおすの?」
「そんなことやおへんけど、
〔中略〕苗子は、お嬢さんの、
おしあわせにちょっとでも
さわりとうないのどす。
〔中略〕
いっそ消えてしまいとおす」
抱きすくめた苗子は、翌朝早く、
「これがあたしの一生のしあわせ
どしたやろ」と別れを告げる。
「また、来とくれやすな」という千重子
のことばに、首を振って去る。
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哀切な”観光小説”
どうでしょう。ググッと来たでしょうか?
まあ、人により、大きく評価の
分かれそうな作品ではありますね。
「捨て子」意識というようなことに
覚えのある人には(川端自身がそれで
悩んだ人ですよね)たまらない哀切さで
胸に迫る作品になっていると思いますが、
そういったことと無縁な人には……
恋愛も薄味に終わるし、なんか
物足りないかも知れませんね。
ともかく「出生」や「境遇」の問題に
作者の狙いがあったことはたしか
でしょうが、もう一つの狙いとして
明白なのが、いわば”観光小説”として
仕上げるということ。
四季の移り変わりともに京都の名所や
四季のお祭り、それに芸妓さん、
舞妓さんまで次々に物語に組み入れていく
というサービスを律儀にこなしてますね。
ここもまた評価の分かれるところに
違いなく、観光に興味のない読者は
少々うんざりしてしまうかもしれ
ませんが、京都ファンにはたまら
ないんですよね、これが…。
👉ちなみに当ブログでは京都探訪シリーズ
として上に紹介したもののほかにも、
下記の記事を揃えてます。
たとえば上でふれた「祇園祭」「時代祭」
と並んで「京都三大祭り」と称される
のが「葵祭」でその花形が「斎王代」。
これもいろいろと面白いので、
こちらで詳細をご覧ください。
・歴代斎王代の横顔【第66代(2024年)と65代以前】京都葵祭の主役は彼女
・京都 葵祭で源氏物語の世界へ!2024年日程と只見の穴場は?
そほかにも、京都の情報は
いろいろ取り揃えています。
・京都のお茶漬けは「帰れ」の意味?桂米朝師匠の落語に学ぼう
・花燃ゆ 久坂玄瑞(東出昌大)が妻より愛した京都・島原の芸妓
・伏見稲荷は外国人だらけ◎ナルトが世界に広めた”お稲荷さん”
・京都・祇園で舞妓”体験”?紗月さん、章乃さんに会えるかも
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まとめ
さあ、どうでしょう。書けそうですか? 読書感想文。
👉川端康成作品では『伊豆の踊子』
『雪国』でも記事を書いて
いますので、参考にして
もらえればと思います。
・伊豆の踊子のあらすじ&感想文の書き方【1600字の例文つき】
・川端康成 雪国のあらすじと分析:岩下志麻主演映画も見て解説
・雪国(川端康成)で感想文? ⛄5つの疑問にお答えします
さあ、これだけの情報があればもう
バッチリですよね、感想文でも
レポートでも。
ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…
だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?
う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦
そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。
各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。
だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。
さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんの早道。
こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。
・読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から
・セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ
・アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ
そちらで解説している「書き方」を踏まえて
当ブログでは多くの感想文例を試作・提供
してきましたが、このほどそれらの成果を
書籍(新書)の形にまとめることができました
ので、ぜひこちらも手に取ってご覧ください。
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買う前にその「予告編」が見たいという人は
こちらでどうぞで。
・読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!
👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。
気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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