夏目漱石 門で批評的な感想文を【800字の例文つき】愛か宗教か… | 笑いと文学的感性で起死回生を!@サイ象

夏目漱石 門で批評的な感想文を【800字の例文つき】愛か宗教か…

サクラさん
読書感想文を書こうと
思って夏目漱石の『門』
を読んだんですが、
なんだかとりとめが
ないというか、焦点が
絞れないというか(😿)

ハンサム 教授
主題が分裂している
ことは、昔から批評
されてきた通りです。

どれか一つの問題を切り
取って感想を書けばいい
んじゃないかな。


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サクラさん
私はやはり二人の愛が
気になるんですが、
「安井」と聞いただけで
怯えた宗助が、御米に
打ち明けないまま一人で
宗教に入ろうとする…

二人の心の結びつきは
実はあまり強くないの
では❓…とも思えます。

ハンサム 教授
不倫を乗り越えるような
大恋愛で結ばれた夫婦は
実際には通常より多くの
問題を抱えこむので、
夫婦円満とは行かない
場合も多い。



『門』はその種の不都合
をこそ描くべきなのに、
それをやっていないから
「嘘の小説」だというの
が谷崎潤一郎の批評。

サクラさん
ふ~む…深いですね。

参考にさせて
いただきます(😼)


というわけで、”感想文の書き方”
シリーズもはや第48回。

今回は国民的作家、夏目漱石の
『門』(1910)で参ります。


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これは漱石作品のなかでも”いぶし銀”と
いいますか、かなり渋めで、派手な展開の
少ない小説ですので、若い人にはやや
取っつきにくい部類に入るかもしれません。
👉もちろん全文を読んでいることが
前提ですが、それを省略したいという
人はせめてこちらの記事で「あらすじ」
を頭に入れておきましょう;^^💦

夏目漱石 門のあらすじを簡単に【&詳しく】円覚寺参禅とその結末…

    
    『門』スペイン語版表紙


感想文の例(800字)

はい、ストーリーがしっかり理解でき
ましたら、さっそく感想文に
取り組みましょう。

まずはサクラさんが書いてハンサム教授が
添削した字数制限800字(400字詰め
原稿用紙2枚)の感想文をお目にかけます
ので、お目通しください。

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 『門』を読みながら、私はたびたび
同じ夏目漱石の『こころ』を思い出した。

『こころ』は深刻な三角関係に勝利する
形で結婚した男(先生)が、十年以上も
してから、その三角関係に敗れて自殺
した親友(K)のことを強く思い、後を
追うようにして自分も自殺してしまう
という小説だが、その構造は『門』も
同じではないかと思えたのだ。


 『門』の宗助は、学生時代に親友の
安井から奪う形で御米と結婚したが、
こちらも十年ばかりしてから、突然
その安井と顔を合わせる可能性が
発生して心を乱す。

   

一度はこのことを御米に告げて
「共に苦しみを分って貰おう」かとも
思うものの、結局いう気になれず、
宗助は一人で抱え込んだまま「宗教」に
入ることでなんとか救われようとする。

『こころ』の先生の場合もこれに
よく似ていて、若い学生の「私」に
宛てた長い遺書で、妻も大いに関与して
いるKの自殺の経緯を語りながら、
その内容を妻には告げるなと命じる。

すなわち、熱愛している(はずの)妻を
疎外したまま一人で何とかしようと
するところが、『門』もまったく
同じだと思ったのである。

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 「要するに、彼は門の下に立ち竦
(すく)んで、日の暮れるのを待つべき
不幸な人であった」とされる宗助は、
愛妻をもちながら「不幸」な孤独を
生きているという点で、『こころ』の
先生に酷似している。

先生の妻が、一人で苦しまないで
打ち明けてほしいと何度も訴えたのと
同じようにして、御米も子供ができ
ないことの苦悩を打ち明けて心を
通わせようとしていたのだが、宗助は
結局これに応じることなく、孤独の
方を選んだようにも見える。

「本当に有難いわね。漸くの事春に
なって」という御米に「うん、然し
又じき冬になるよ」と宗助が応じる
ラストには、二人のこの一方通行的な
関係が象徴されているようで、二人の
今後の愛自体も危ういことが暗示
されているように私には思える。
           (768字)

どうです?

うまくまとまっているでしょう。

これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、適宜、自分らしい
ものに文章を変えて使ってもらうのは
かまいませんよ~;^^💦

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宗助の吐いた「ただ一句」とは?

さて、上記の感想文例は、主人公夫妻の
愛の問題に焦点を絞り、漱石の別作品
『こころ』との比較を試みたもの
でしたが、もちろんテーマは愛の
問題でなくてかまわないわけです。

冒頭の問答でも話題になっていた
とおり、『門』は悪く言えば、主題の
分裂してしまった失敗作でもあります。


「愛」の世界と分裂してしまった
もう一方の端にあるのが「宗教」。

こちらの主題に突っ込んでいく
というのも、高度な批評的感想文を
書くための有効な手段でしょう。

  
   
   円覚寺 道場への門(観光客は入れません) 
             

上記の「あらすじ」記事の方に記述して
いますが、鎌倉円覚寺に参禅した宗助は
老師から「父母未生以前本来の面目」
という公案をもらい、これを考えるように
言われるが、考えてもいっこうにらちが
あきません。         
      
数日後には、なんとか回答を用意して
老師の室に入り、「ただ一句」を
吐いたものの、「もっと、ぎろりとした
所を持って来なければ駄目だ」と
たちまち退けられるのです。

この「ただ一句」について
考えてみてはどうでしょうか。

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それがどういう言葉であったかは、
作品中には書かれていないのですが、
漱石自身の書いた別の文章のうちに、
それらしきものがあるんです。

すなわち漱石自身、28歳のころ、やはり
円覚寺に参禅した経験があるのですが、
その際、漱石自身も宗助と同じく
「父母未生以前本来の面目」という
公案をもらいました。

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     鎌倉の路傍に……    


そして同じように見解(けんげ。回答)を
提示してやはり同じように「その位な事は
少し学問をしたものなら誰でも云える」
「もっと、ぎろりとした所を持って来い」
と退けられたんですね。

その回答の内容ですが、実はを漱石は
これを、30代の英国留学期以来書きためた
『ノート』のある箇所に書き残して
いるのです。

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物を離れて心なく心を離れて物なし
他に云ふべきことあるを見ず。

(『漱石全集』第21巻(1997),46ページ)

なるほど、哲学的には正しいかもですね。

「父母未生以前」(自分の両親が生まれる
前)には「心」(主観)はないんだから、
「本来の面目」(自分のもともとの顔)
という「物」(客観)もありようがない
(認知が成立しない)と。

まことにごもっともです。

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でも「禅学」的にはダメなんですね、
これでは……( ̄∀ ̄)。

その経緯を『門』という小説に
書き著わしたことをどう見るか。

「合理的に思考する者はついに
宗教の門に入っていけない」という
ことなのか、それとも……

そのあたりについて、自分の考えを
述べていけば、これまた高度に
批評的な感想文が書けるはずですよ。
👉禅の公案というものについては
こちらもご参照ください。

夏目漱石 夢十夜 第六夜のあらすじと解説:運慶が生きている?

三島由紀夫 金閣寺の詳細なあらすじ:難解な柏木も読み解く

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金閣寺(三島由紀夫)で感想文【2000字の例文】猫を斬る意味は?


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書けますか、感想文?

どうでしょう。

書けそうでしょうか、読書感想文。

上の「哲学/禅学」的問題に絡んで
自分なりの思考法で突っ込むのもアリ
ですし、要するに書けそうなトピックを
見つければいいんですが、そのためには
やっぱり作品全文を読む、あるいはせめて
「やや詳しいあらすじ」の方を見てもらう
必要があるでしょうね。


また『門』は、これに先行する、『三四郞』
(1908)、『それから』(1909)とで三部作を
なすということになっていますが、この三作の
連続性という視点から読むと、どうなのか。
👉そのあたりを考えたい人は
ぜひこちらの記事も参照してください。

夏目漱石 三四郎のあらすじ:「簡単/詳しい」の2段階で解説

漱石 三四郎で感想文:美禰子の愛は?”無意識の偽善者”とは?

      

漱石 三四郎:白い雲を見る二人の小津安二郎的ショット

漱石 それからのあらすじ:簡単/詳しくの2段階で解説


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え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?

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う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を知るには
実際に出品され大臣賞などを受賞している
感想文をじっくり読んで分析してみるのが
いちばんの早道。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

    

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

 

そちらで解説している「書き方」を踏まえて
当ブログでは多くの感想文例を試作・提供
してきましたが、このほどそれらの成果を
書籍(新書)の形にまとめることができました
ので、ぜひこちらも手に取ってご覧ください。
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こちらでどうぞで。

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👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

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