ごんぎつね指導案 ワークシート例⦅なぜ切ないのか⦆悲劇の成り立ちを分析
サクラさん
ある女子小学生の書いた
「ごんぎつね」の感想文
が話題になってます。
ラストでごんが射殺
されるのは
➊悪いことをした以上、
報いを受けるのは当然
➋こそこそ罪滅ぼしする
のはやり方が汚いから
やはり撃たれてよい…
という論旨とか。
「ごんぎつね」の感想文
が話題になってます。
ラストでごんが射殺
されるのは
➊悪いことをした以上、
報いを受けるのは当然
➋こそこそ罪滅ぼしする
のはやり方が汚いから
やはり撃たれてよい…
という論旨とか。
ハンサム 教授
一つの反応としてアリ
だと思いますが、気に
なるのは、その子が
そもそも作品を鑑賞
しきれているのか…
だと思いますが、気に
なるのは、その子が
そもそも作品を鑑賞
しきれているのか…
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サクラさん
そこは授業での先生の
教え方に大きく左右
されてしまう難しい
問題ですよね。
教え方に大きく左右
されてしまう難しい
問題ですよね。
ハンサム 教授
児童一人ひとりは
読む力ばかりでなく、
性格的な”共感力”にも
個性差がありますから、
「ごんぎつね」のラスト
が”切ない”とか感じ
ない子がいてもいい。
読む力ばかりでなく、
性格的な”共感力”にも
個性差がありますから、
「ごんぎつね」のラスト
が”切ない”とか感じ
ない子がいてもいい。
サクラさん
でもそう突き放して
しまうと授業にならない
ではないですか(😹)
「ごんぎつね」のよさを
どんな子にもわかって
もらうような授業方法は
ないものでしょうか。
しまうと授業にならない
ではないですか(😹)
「ごんぎつね」のよさを
どんな子にもわかって
もらうような授業方法は
ないものでしょうか。
ハンサム 教授
実は私も大学でこの作品
を講義したことがあるん
ですが、その時に使った
ワークシートをやらして
みましょうか。
これなら”共感力”の弱い
子も理屈で理解できる。
を講義したことがあるん
ですが、その時に使った
ワークシートをやらして
みましょうか。
これなら”共感力”の弱い
子も理屈で理解できる。
サクラさん
え~(🙀) でも大学用の
なんて小学生には
無理では?
なんて小学生には
無理では?
ハンサム 教授
いやいや、言葉遣い
などを変えてわかり
やすいものに改造すれば
きっと使えます。
いっしょに作って
みませんか;^^💦
などを変えてわかり
やすいものに改造すれば
きっと使えます。
いっしょに作って
みませんか;^^💦
というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ第53回は小・中学校の
国語教科書の定番でもある新美南吉の
名作童話『ごんぎつね』(1935。👇)
について、教員の側に立って「指導案」を
考案してみたいと思います。
まだそのストーリーもよく知らない
という人は、こちらの動画で
ご確認ください。
(朗読されるのはダイジェスト版で、
全文ではないことに注意)
ワークシート例⦅悲劇の成り立ち⦆
お待たせしました。それではさっそく、ハンサム教授発案、
サクラさん改造によるワークシート例
(または板書例)をお目にかけましょう。
つまりごんと兵十のそれぞれには
まず【思い】(感情・目的)があり、
これに基づいて何かをします。
これが【すること】(行為)ですが、
それをした結果から【知ったこと】
(認識)が発生します。
これを図示すると、
【思い】
↓
【すること】
↓
【知ったこと】
↓
【すること】
↓
【知ったこと】
とこんな感じで、新しい【知ったこと】が
また次の【思い】を生み、それがやはり
次の【すること】の原因になってゆく…
という形(パターン)で物語は
進んで行きます。
そして、知っていれば避けられたことを
「知らなかった」ために起こってしまう
「悲しい」出来事が、ごんの死であり、
その「切なさ」は「知る/知らない」を
岐路として発生している…
そのあたりの文学的な勘所をわかって
もらうためのワークシートがこれ…
というわけです。
「❔」は本文に明確に書かれていないこと
ですから、児童各自に想像してもらっても
いいですし、これら以外にも「❔」の項目を
作って、自分で読み直して書き込ませる
ようにしてもいいのではないでしょうか。
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あらすじ+α(プラス・アルファ)
なんだかよくわからない?あるいはそもそも「ごんぎつね」本文を
熟読していないのでピンと来ないという
人もおられるかもしれません。
そこでやはり「あらすじ」を書いておく
必要があるのかなと思いますが、
ここではただの「あらすじ」ではあまり
意味がないので、「あらすじ+α(プラス
・アルファ)」で参ります。
すなわち上記の意味での【思い】
【すること】【知ったこと】を
いちいちマークしていく(このマークが
「α」の意味)という親切この上ない
「あらすじ」です。
【思い➊】【すること➋】などの数字が
上記のワークシート例のもとの
異なっている場合がありますが、
気にする必要はありません。
つまり➊➋などの数が、「あらすじ」
では上記ワークシートより多くなっている
としたら、それは「あらすじ」の方がより
詳しい読み込みをしているということ。
一致させる必要があれば適宜行ってください。
原作の「一」~「六」を私なりの解釈で
「起承転結」の4部構成に編成し直して
記述していきます。
(「 」内は、原文どおりの引用)
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🦊【起】(一)
まだお城に「とのさま」がいた時代のこと。
山の洞穴に一人で住む子狐のごんは、
よく村へ出てきて、いたずらをしていた。
ある秋の雨あがりの日、村にでてきた
ごんは、小川の堤で兵十が
「はりきり」という網で魚を
捕っているのを見つける。
ウナギやキスを「びく」に入れた兵十が
何をさがしにか、川上の方へかけて
いくのを見ると、ごんは、「ちょいと、
いたずらがしたくなったのです」
【ごんの思い➊】。
ごんは
【ごんのすること➊】。
しまいにウナギがすべるので口に
くわえようとしたが、そのウナギが
首へまきつく。
「うわアぬすと狐め」と兵十が
向うからどなり、ごんはウナギを
首に巻いたまま走って逃げきる。
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🦊【承】(二、三)
十日ほどたって、村へ下りてきたごんは、兵十の家の前の葬式らしい
集まりに気づく。
午後 村の墓地へ行って隠れていると、
入って来た葬列のなかに、位牌を
ささげる兵十もいて、死んだのが
「兵十のおっ母(かあ)」だと知る
【ごんの知ったこと➊】。
その晩、ごんは穴の中で考える。
「兵十がウナギをとったのはおっ母が
食べたいと言ったからで、そのウナギを
わしがいたずらでとって来てしまった。
そのままおっ母は、ああ、うなぎが
食べたい、うなぎが食べたいと
おもいながら死んだんだろう。
ちょッ、あんないたずらをしなけりゃ
よかった【ごんの思い➋】。
井戸のところで麦をといでいる兵十を
見て、「おれと同じ一人ぼっちの
兵十か」とごんは思う。
イワシ売りが来て弥助の家の中へ
入ったので、ごんはそのすきに、
かごの中から五、六ぴきの 、逃げ去る
【ごんのすること➋】。
つぎの日、山で拾った栗をどっさり
かかえて、兵十の家へ行って裏口から
のぞくと、顔に傷のある兵十が
こうつぶやく。
「だれかがイワシをほうりこんで
いったおかげでおれは盗人(ぬすびと)と
思われて、イワシ売りにひどい目に
あわされた」【兵十の知ったこと➊】
「これはしまった」とごんは思う
【ごんの知ったこと➋⇒思い➌】。
つぎの日からも毎日、
【ごんのすること➌】。
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🦊【転】(四、五)
月のいい晩、ごんはたまたま兵十と加助(かすけ)の会話を耳にする。
母の死後、栗や松茸を毎日くれる人が
いると兵十が話し、いっしょに念仏を
上げながら考えた加助は、それはきっと
神さまが「あわれ」に思って、
「めぐんで下さるんだ」、だから
神さまにお礼を言うがいいとすすめる。
兵十も「うん」と納得する
【兵十の知ったこと➋】。
「こいつはつまらないな」とごん【ごんの
知ったこと➌】。
「おれにはお礼をいわないで、
神さまにお礼をいうんじゃア、
おれは、引き合わないなあ」
【ごんの思い➍】。
🦊【結】(六)
そのあくる日もごんは、 、裏口からこっそり中へはいる【ごんのすること➍】。
気づいた兵十は「こないだうなぎを
ぬすみやがったあのごん狐めが、
またいたずらをしに来たな」と思う
【兵十の知ったこと➌⇒思い➎】。
納屋(なや)にかけてある火縄銃
(ひなわじゅう)をとり、戸口を
出ようとするごんを、ドンと撃つ
【兵十のすること➎】。
ごんはばたりとたおれ、かけよって
来た兵十は、土間(どま)に栗が
かためておいてあるのを見て言う。
「ごん、お前(まい)だったのか。
いつも栗をくれたのは」
【兵十の知ったこと➍】
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ごんは、ぐったりと目を
兵十は火縄銃をばたりと、
つぶったまま、うなずきました
【ごんの思い➏】。
とり落しました
【兵十の思い➋】。
青い煙が、まだ筒口(つつぐち)
から細く出ていました。
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悲劇的リズムの考え方
さて、どう思われましたか?上記のワークシート例とその考え方に基づく
「あらすじ+α」を状況に応じて適宜、改変
してければ、あなた以外の先生にはできない、
素晴らしい「ごんぎつね」の授業を作り
あげることができるのではないでしょうか。
また感想文やレポートを書こうとしている
場合も同様に考えていけるはずですよね。
ところで多少の種明かししておきますと、
このパターン、実はアメリカの演劇学者
フランシス・ファーガソンがギリシア悲劇の
傑作『オイディプス王』(ソポクレス作)
から抽出してみせた《悲劇的リズム》を
応用・変形したもの。
そして実はこの悲劇観をファーガソンは
ケネス・バークという哲学者に学んでおり、
バークはまたアリストテレスに学んだ
人として知られています。
ギリシア悲劇によく出るデルポイの神殿
そこで一応、古代ギリシアにまで遡って
おきますと、アリストテレスによれば
「悲劇」とは「憐れみと怖れを通じ、
そうした感情からのカタルシス(浄化)
をなし遂げる」タイプの劇です。
そしてそれを構成する要件のうち次の
二つのものが、最良の悲劇においては
同時に起こるというのです。
- ペリペテイア(逆転):正反対の
方向へ行為の成り行きが変転すること - アナグノリシス(再認):認知して
いない状態から〔あらためて知り直す
仕方で〕認知へと変転すること
シーンを振り返ってみましょう。
ごんと兵十の両方に、運命の逆転と
相手に対する再認とが同時に起こって
いることがわかるのではないでしょうか。
多くの読者に「憐れみと怖れ」を与える
のは、この同時性が見事に仕組まれて
いるからなのです。
以上、アリストテレスの用語は
『詩学』(三浦洋訳👇)からの引用でした。
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逆転と再認という用語がむずかしすぎる
なら、たとえばこんな風に言い換えても
いいかもしれません。
相手に「よかれ」と思う【思い】から
出る【すること】は、たしかに
相手について【知ったこと】に
基づいているけれども、知った内容が
間違っているせいで裏目に出る
(かえって相手の不利益を生む)という
不幸な結果(逆転)が再認される。
出る【すること】は、たしかに
相手について【知ったこと】に
基づいているけれども、知った内容が
間違っているせいで裏目に出る
(かえって相手の不利益を生む)という
不幸な結果(逆転)が再認される。
👉これに似た悲劇性をもつ童話、
浜田広介の『泣いた赤鬼』には、
こちらの記事でふれていますので、
ご参照ください。
・節分の鬼は怖い?それとも可哀想?豆まきは続けるべき?
ともかく一つでもいいので、物語の
流れを変えるポイントになっている、
いずれかの【思い】【すること】
または【知ったこと】に目をつけ、
それについて自分なりの分析を
やってみてはどうでしょう。
もし自分がごん(または兵十)だったら、
どうしただろう…とか。
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ごん、最期の情念…
ところで、逆転と再認が同時発生した結びの部分には「ごんは、ぐったりと
目をつぶったまま、うなずきました」
とありますが、実はこれ、作者新美南吉の
草稿(愛知県半田市の新美南吉記念館に保存)
ではそうなっていないんですね。
つまり掲載誌『赤い鳥』の編集長だった
鈴木三重吉によって(どの程度の合意が
あったかわかりませんが)修正された
ものらしいんです。
論より証拠、その草稿の写真を
ご覧ください。
ちょうどページの変わり目あたりですが、
「権狐(ごんぎつね)は、ぐったり
なつたまゝ、うれしくなりました」
と読めますね。
つまりこの「うれしさ」がごんの
最期の【思い】。
逆転と再認の悲劇性を高める上では
草稿のままの方がよかったような気も
しますが、そこまでは出さず、暗示に
とどめる方が奥ゆかしい…
というのがおそらく三重吉の判断
だったのでしょう。
👉「暗示」ということの重要性こそは
三重吉が師匠の夏目漱石から学んだ
最大のものの一つでした。
詳しくはこちらをどうぞ。
・文鳥(夏目漱石)で読書感想文を【あらすじ&2000字の例文つき】
・夏目漱石「月が綺麗ですね」の出典は?I love youはこう訳せ?
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まとめ
悲劇的な童話の傑作『ごんぎつね』なら、授業指導案、そして感想文やレポートの
ネタはいっぱい詰まっていること、
おわかりいただけたでしょうか。
そうそう、言い忘れてましたが、
執筆時の南吉は弱冠、17歳。
このことを含め、上に提供しました
諸々の情報をヒントに自分なりの文章を
生み出してもらえたらと念じています。
👉ほかの童話と比較してみるのも
面白いと思います。
参考までにこちらもどうぞ。
・宮沢賢治の”悲恋”童話作品:土神と狐~あらすじと感想文~
・やまなし(宮沢賢治)のあらすじ◎クラムボン・魚・酒の意味は?
・星の王子様で読書感想文☆世界に一つだけの花?
・童話 人魚姫(アンデルセン)のあらすじ💛本当は怖い恋物語
・シンデレラのガラスの靴:小ささの意味は?原作は中国起源?
・赤い靴(アンデルセン童話)原作のあらすじ:怖いのはどこ?
ん? 読書感想文に書けそうなテーマは
浮かんできたけど、でもやっぱり自信が…
だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?
う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦
そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。
各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。
だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。
さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を知るには
実際に出品され大臣賞などを受賞している
感想文をじっくり読んで分析してみるのが
いちばんの早道。
こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。
・読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から
・セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ
・アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ
そちらで解説している「書き方」を踏まえて
当ブログでは多くの感想文例を試作・提供
してきましたが、このほどそれらの成果を
書籍(新書)の形にまとめることができました
ので、ぜひこちらも手に取ってご覧ください。
👇
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買う前にその「予告編」が見たいという人は
こちらでどうぞで。
・読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!
👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。
気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。
・「あらすじ」記事一覧
・≪感想文の書き方≫具体例一覧
ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/
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こんなコメントが来ています