サクラさん
漱石の小説でいちばん
むずかしいともいわれる
『虞美人草』に挑戦して
るんですが、やっぱり
文章が難解でなかなか
前へ進みません(😿)

ハンサム 教授
東京帝大から朝日新聞に
転職して最初の大仕事
ってんで、漱石先生
少々張り切りすぎ
ましたかね。

俳句を重ねるような、
凝りに凝った文章です
から、当時の新聞読者と
同じく1日1回分のスロー
ペースで読めば?;^^💦

サクラさん
実際、そんな感じで
読んでますが、ヒロイン
の藤尾って才色兼備で
誇り高く、とっても
素敵(😹)

 
 新聞連載中のカット 



ハンサム 教授
新聞連載が始まって
まもなく弟子の小宮豊隆
がその種の讃辞を漱石に
書き送りましたが、先生
からは「あんな女をいい
と思っちゃいけない」
という苦い返事。

「あいつを殺すのが一篇
の主意だ」という予言
どおり、漱石はラストで
彼女を殺します。

サクラさん
ギョエ~(叫び)

ってことは悪女として
造型されている?

ハンサム 教授
そのはずなんですが、
連載開始当初はそうとは
知らないファンの間で、
美女・藤尾は人気沸騰。

便乗して”虞美人草浴衣
(ゆかた)”を発売した
百貨店もありました。

サクラさん
ますます素敵(😻)

これは頑張って読まずに
いられません。


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というわけで、おなじみ””あらすじ暴露”
サービスの第188弾(感想文の書き方
シリーズ第270回)となる今回は
夏目漱石の問題作長編『虞美人草』
(1907)に挑戦です((((((ノ゚⊿゚)ノ
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『虞美人草』は明治40(1907)年に東京・
大阪の両『朝日新聞』に連載されました。

当時は『東京朝日』『大阪朝日』が別会社
だったこともあり、漱石は主要登場人物を
京都に遊ばせるなど関西に大いに気を使い、
また同年開催中だった東京勧業博覧会も
物語に取り入れるなど読者サービスに
徹してもいました。

  
  虞美人草ブームに便乗した三越百貨店の
  ポスター(橋口五葉画。部分)
 


で、そのストーリーですが、漱石の
サービス精神は構成・筋立ての複雑さにも
及んでいます。

この複雑さに文章の読みにくさも手伝ってか、
ネット上で「あらすじ」を書いた記事は
残念ながら不正確なものばかりなんですね。
(Wikipediaも例外ではありません)

この意味で、あくまで正確(原文に忠実)
さに徹した当方の記事、希少価値の大なる
ものと言って間違いありません(^^)у

ごく簡単なあらすじ(要約)

ただその正確・詳細なあらすじをいきなり
展開しても、読みにくいと敬遠されて
しまうかもしれませんので、それは
後回しとして、まずは”ごく簡単”な
要約ヴァージョンの方から。

甲野家と宗近家とは親戚で、
それぞれの一人息子、欽吾と
一(はじめ)は、ともに帝国大学を
出た親友同士。

甲野の実父母は遺産を残して死去
しており、今は継母とその娘、
藤尾と暮らす。


藤尾は才色兼備の驕慢な女で、
亡父には宗近に嫁がせたい意向が
あったようだが、当人は、兄の友人で
個人授業をしてくれている文学者、
小野清三との結婚を考えている。

小野もその気だが、彼には京都で
育った時代の恩人、井上孤堂の娘、
小夜子との間に、曖昧ながら婚約に
近い合意があった。
👉このやや複雑な人間関係を
図示するとこんな感じになります。


その井上父娘が東京へ移住して来、
世話をする小野は、折しも開催中の
東京勧業博覧会で小夜子と一緒の
ところを目撃され、藤尾の嫉妬と
怒りを買う。

外交官試験に合格した宗近は、
晴れて藤尾への求婚を打診するが、
甲野らから藤尾の実状を聞かされ
涙で断念。


小野は友人の浅井を通して井上に
小夜子との破断を正式に申し入れる
ものの、孤堂の激怒を買う。

浅井から話を聞いた宗近は、ただちに
小野に会って翻意を説得するとともに、
自分の父を派遣して孤堂に詫びを入れ、
小夜子を甲野邸に直行させる。


小野との約束をすっぽかされて怒る
藤尾が帰宅すると、そこには一堂が
会しており、小夜子と結婚するという
小野の意志を告げられた藤尾は
その場に倒れ、そのまま死亡。

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ん? なんだかよくわからん?

まあ、それはそうでしょう。

上の「人物相関図」には出ているのに
言及されていない人物もいますし、
ここでは書き切れない細かい”筋”も
あって、これらの人々と複雑に
絡み合っていますからね。

というわけで、ここはやはり「かなり
詳しい」ヴァージョンのあらすじを
読んでいただくほかないわけです;^^💦

かなり詳しいあらすじ

それでは参りましょうか。

原作は新聞連載で「一の一」に始まって
「十九の三」で終わるという全19章構成
ですが、この「あらすじ」では、わかり
やすさのため、各章を「起承転結」の
4部に割り振って記述していきますね。


「”」印の囲みと「 」内とは原文
(仮名遣いは変えています)からの
引用で、漱石の名言として知られる
ものをいくつか含んでいます。

また👉印の注釈で色々と補足的に
解説していますが、お急ぎの方は
飛ばされてかまいません。

🌹【起】(一~七)

春の京都を漫遊旅行中の「四角い男」
宗近さん(一〔はじめ〕、28)と「細い
体躯(からだ)」の甲野さん(欽吾、27)。

比叡山の上まで登って、琵琶湖を
見下ろした二人、それまであちこちに
飛んできた会話が哲学味を帯びる。

「只(ただ)死と云う事が真(まこと)だよ」、
これに突き当たった時に「ああそうかと
思い当るんだね」と甲野さん。

「誰が」と聞かれて
「小刀細工の好きな人間がさ」
👉これで「一」を終わるのですが、
甲野さんのこの発言は、小説の
結末を早くも予告するもの。

もちろん新聞連載中にそこまで
気づいた読者はいなかった
でしょうけど。 

ともかくこの小説は大変凝った作りに
なっていて、「一」「三」「五」の
奇数章で京都旅行中の甲野さんと
宗近さんの動きと会話をこのように
追い、「二」「四」「六」の偶数章では
東京の甲野家での藤尾と小野さん
の交流の模様を中継していきます。

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京都の甲野・宗近コンビが三度もの
偶然により接触するのが井上孤堂・
小夜子の父娘で、この2つのグループが、
これまた偶然、同じ汽車に乗って東京へ
向かう経緯を語るのが「七」。

「八」以降は東京を舞台に、この
3グループの過去・現在・未来が
入り乱れる人間ドラマが展開する
ことになりますので、その直前の
「七」までをここでは【起】の
部分と見なします。


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甲野邸では「紫色の着物を着た」藤尾
(欽吾の腹違いの妹、24)が、博士論文
準備中の文学者、小野さん(清三、27)
から英語の個人指導を受けている。

シェイクスピアの戯曲を読めば「紫色の
クレオパトラが眼の前に鮮やかに映って
来ます」などと小野さんが言い、
「なぜ紫なんです」と突っ込む藤尾は
「こんな色ですか」と長い袖を相手の
「鼻の先に翻(ひるがえ)す」。


「大暴雨(おおあらし)の恋。九寸五分
(くすんごぶ。女性用の懐剣)の恋です」
と小野さんが続けると
「九寸五分の恋が紫なんですか」
「恋を斬ると紫色の血が出ると
いうのですか」
と藤尾は「話の腰を折り」続ける。

      

ともかくこれは、エジプトからローマに
戻ったアントニーがオクテヴィア
(オクテヴィアス・シーザーの姉)と
結婚したという知らせを受けた時の
クレオパトラの心理を自分なりに
解釈したもの…
と小野さんは説明し、「紫が埃及
(エジプト)の日で焦げると、冷たい
短刀が光ります」と言う。
👉会話を通して二人の性格や
関係性(すでに恋愛的であることや
力関係、相性など…)を読者に伝えて
いく部分。

クレオパトラとの重ね合わせは、
藤尾の「嫉妬⇨怒り⇨死」という
今後の展開を暗示する、ひそかな
伏線とも理解されます。

このクレオパトラという人物、および
藤尾も読んでいるシェイクスピアの
戯曲『アントニーとクレオパトラ』を
めぐっては、こちらで詳しく情報提供
していますので、ぜひご参照ください。

クレオパトラの鼻がカエサルらを骨抜きに?シェイクスピアはどう描いた?

          


それからどうしたかという藤尾の問いに
答えるうち、話はクレオパトラの年齢に
及んで、では「清姫が蛇になったのは
何歳(いくつ)でせう」、さらに
「安珍は」と流れる。
👉清姫は美形の修行僧、安珍を
追いかけて蛇に変身した伝説の女性。

詳しくはこちらで。

道成寺 安珍清姫物語のあらすじ 映画(市川雷蔵/若尾文子)も必見!

      


さらに「あなたは御何歳(いくつ)」と問うて
欽吾と同年と聞いた藤尾は、それにしては
「丸でお坊ちゃんの様ですよ」
「可愛らしいんですよ」とも。

女の二十四は男の三十にあたる。
〔中略〕
一人と一人と戦う時、
勝つものは必ず女である。

男は必ず負ける。

👉こういうジェンダー(男女)観は、
漱石文学に繰り返し変奏される
いわば”永遠のテーマ”とも
いえそうです;^^💦

より突っ込んだ検討をこちらの
記事などで試みていますので、
ぜひご参照ください。

夏目漱石名言集『こころ』etc.に滲む独特の恋愛観とは?

三四郎(夏目漱石)で読書感想文【1200字例文つき】美禰子って何?

               


宗近・甲野の逗留する旅館では
隣家からよく琴の音が響く。

それを弾いていた女性の姿を二階の
縁側から見かけたという宗近さんに
「別嬪(べっぴん)かね」と甲野さん。

「藤尾さんよりわるいが糸公より
好(い)い様だ」と宗近さん。
👉「糸公」は妹の糸子(22)のこと。

宗近家と甲野家は親しく行き来する親戚。

外交官としての赴任先で病死した
甲野の父は、かつて宗近さんを
可愛がり、家宝の金時計も与える
という口約束があったとのこと。

これを自分のものであるかのように
小野さんの目の前にちらつかせて
いるのが異母妹の藤尾…という構図。

藤尾はこの金時計とセットで自分の
ものになると思ってきたらしい
宗近さんにとっては危機的な状況。


小野さんにとって井上孤堂先生は、
孤児同然だった自分を学問の道へ
歩ませてくれた恩人で、その娘、
小夜子とは(曖昧ながら)将来を
約したも同然の関係。

その井上父娘が、20年住み暮らした
京都を離れて東京へ戻ると手紙で
知らせてくる。

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保津川下りを終えた宗近さんらは
例の「琴を弾いた女」とその父親が
嵐山の茶屋で休んでいるのを見かける。


甲野邸を訪問した宗近糸子が
藤尾と会話。

凡ての会話は戦争である。

女の会話は尤も戦争である。


そこへ小野さんも加わり、宗近さん
からの便りのことなど話す。


京都発の夜行列車に乗り合わせた
井上父娘と甲野・宗近コンビ。

「知らぬ四人は、四様の世界を
食い違わせながら暗い夜の中に
入」り、夜が明けて東京・新橋へ。

停車場を出る時、宗近さんは
小野さんの駆けるのを見かける。

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🌹【承】(八~十)

甲野邸で母親と話す藤尾は、宗近へ
嫁ぐ気などないから、例の金時計は
「小野さんに上げても好(い)い
でせうね」と母に念を押す。


小野さんが用意した住宅に
住み始めた井上父娘。

会わなかった5年の間にあまりに変貌した
小野さんに「そっと嘆息(ためいき)を
吐」く「過去の女」小夜子。

    

見ようによっては「滅多に見られない」
美女だが、小野さんの眼にはそれが映らず
「只面白味のない詩趣に乏しい女」
としか見えない。


藤尾の母が宗近の父親を訪ね、藤尾に
嫁ぐ気がないことを伝えようとする
らしいのだが、作者から「謎の女」と
あだ名されるだけあって、「謎」を
かけるような話し方ばかりするので、
明確に伝わらない。
👉「凡ての会話は戦争」で
「女の会話は尤も戦争である」
という哲学を象徴する究極的な
登場人物がこの人。

京都人ではないながら、まさに
「京の茶漬け」的に洗練された
会話術の体得者といえます。

落語にもなっている「京の茶漬け」
をめぐっては、こちらをご参照ください。

京都のお茶漬けは「帰れ」の意味?桂米朝師匠の落語に学ぼう

              0f97733484de9b44f3eff19948dc941d_s



🌹【転】(十一~十四)

この年(明治40)の3月から上野公園で
開催されている東京勧業博覧会の見物に
連れ立って繰り出した甲野兄妹、
宗近兄妹の四人連れ。

ちょうど井上父娘も小野さんに導かれて
見物に来ており、池端に仮設された
休憩所で、宗近らに目撃される。

  
  東京勧業博覧会のポスター 



「どうだい、別嬪だろう」と宗近が言い、
無邪気な糸子が「うつくしい方ね」と
受けるが、藤尾は眼を上げぬまま
「ええ」とそっけなく言い放つ。

女は肯定の辞に、否定の
調子を寓する霊腕を有している。



井上父娘を援助することを義務と心得る
小野さんだが、「何事も金がなくては
出来」ず、「金は藤尾と結婚せねば
出来ぬ」。

だから早く事を決めようという
「論理を発明した」。

        

翌日、小野さんが四五日ぶりに藤尾に
会いに行こうととしているところへ
小夜子が来て、買い物にいっしょに
行ってもらうようにと父から
言われたので…
と遠慮がちに言う。

小野さんは、今は急用のため行けないので、
品物を言ってもらえれば自分が買ってきて
届けると言う。


前日、小夜子を伴う小野さんを目撃して
「無念と嫉妬を交ぜ合わせた怒り」の
まっただ中にある藤尾にとって…

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愛の対象は玩具(おもちゃ)である。

神聖なる玩具である。
〔中略〕
藤尾は男を弄(もてあそ)ぶ。

一豪も男から弄ばるる事を許さぬ。

藤尾は愛の女王である。


「我(が)の女」藤尾が小野さんを選ぶのは
彼が「わんと云え」と言えばわんという、
「満腔の誠を捧げてわが玩具となるを
栄誉と思う」男だからであり、
宗近さんを敬遠するのは、そうは
いかない男だと知っているからだ。

   
            

逆に小野がこちらを「玩具」にしたのなら
ただでは置かぬ。

我(が)は愛を八つ裂きにする。
〔中略〕
我が立てば、虚栄の市に
わが命さえ屠(ほふ)る。

逆(さか)しまに天国を辞して
奈落の暗きに落つるセータン
(サタン〔魔王〕)の耳を斬る
地獄の風は我(プライド)!
我(プライド)! と叫ぶ。



小野さんは甲野邸へ来てまず顔を
合わせた欽吾から、前日、藤尾らと
博覧会に行ったという話を聞く。

藤尾に会うと、その様子から小夜子と
いるところを見られたものと察し、
あれは「只の女」だと言い切ろうか
とも思うが、それは「自分も好かぬ
嘘となる」と迷う。

嘘は河豚汁である。

その場限りで祟(たたり)がなければ
これほど旨(うま)いものはない。

然し中毒(あたっ)たが最後
苦しい血も吐かねばならぬ。

👉「嘘は河豚汁」とはまた巧妙な
比喩で、今や『虞美人草』に出て来る
名言で最もよく言及されるものと
なっているようですが、ともかく
これを控えた小野さんは「苦しい血」を
吐かずにすみ、それを吐くのはむしろ
藤尾…という皮肉な展開ともなります。

そう考えた小野さんは自分から
博覧会に言及し、井上父娘のことも
「世話になったもの」で…と話す。


家を出た甲野さんは宗近さんを訪ねるが、
不在なので、糸子と話す。

「私ももっと利口に〔中略〕藤尾さんの
ようになりたいと思うんですけれども」
などと言う糸子に対し、甲野さんいわく
「藤尾が一人出ると昨夜(ゆうべ)の
様な女を五人殺します」

  


「紙屑籠」と「洋燈(らんぷ)の台」を
買い入れて井上宅へ向かう小野さんが
街頭で宗近さんに出会う。

紙屑籠を持とうと申し出た宗近さんは、
よもやま話をしながら歩き、小夜子と
自分たちとの「よっぽど深い因縁」の
ことも話して別れる。


井上宅に到着して孤堂先生に品物を
届けて話すうち、小夜子との結婚を
早く決めてほしいという心情を
伝えられる。

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🌹【結】(十五~十九)

藤尾の母はまず藤尾と、それから
欽吾と二人で話してから、三人での
話し合いの時間を持ち、以下の2点で
合意形成した形となる。

❶藤尾の結婚相手は宗近でなく小野
とし、例の金時計も小野に渡す
❷欽吾は家産をすべて藤尾に譲る
👉合意形成とはいっても、藤尾の
母は単刀直入にものを言わないので
「謎の女」と呼ばれるほどですし、
欽吾は欽吾でまたはっきりしない
男で「ハムレット」の異名を取る
(十七)くらいですから、どうも
スパッと明快に決まったという
感じはありません。

何を考えているのかわからない
ハムレットの人物像については
こちらで情報提供しています。

シェイクスピア ハムレットのあらすじ 簡単/詳しくの2段階で

ハムレットで感想文【800字の例文】”だろうか,たしなよ”で書くと…

              


宗近さんは前年に不合格だった
外交官試験に合格し、藤尾を嫁に
もらいたいとの意志を家族に伝える。

「外交官の女房にゃ、ああ云うん
でないと不可(いけ)ないです」


糸子に対しては、甲野さんは遺産を
放棄して家を出るそうだが、
「御嫁に行く」気があるかと尋ね、
糸子は涙で同意を示す。

宗近さんは甲野さんを訪ね、藤尾への
求婚意志を告げるが、「藤尾には
君の様な人格は解らない」と説得され、
涙で断念。


小野さんは友人の浅井に頼んで、
小夜子との破断を孤堂先生に伝えて
もらうが、先生は「人の娘は玩具
(おもちゃ)じゃないぜ」と怒る。

退散した浅井が宗近家へ行くと、
一時間後にはそこから車(人力車)が
相次いで出ていく。

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宗近さんを乗せた車は小野さんの下宿へ
直行し、二人は腹を割って話す。

「人間は年に一度位真面目になら
なくっちゃならない場合がある」、
「真面目」とは「上皮許(うわかわばかり)
で生き」るのでなく「人間全体が活動する」
ことだと宗近さんは懇々と説く。

説き伏せられた小野さんは小夜子との
結婚を決め、孤堂先生に謝罪しに行く
と言うが、宗近さんはそれは自分の父が
代行しているからOKだと告げる。


小野さんは実は三時に大森で藤尾と待ち
合わせていたが、それをすっぽかせば
飛んで帰るだろうから、甲野邸で彼女を
迎えて自分の意志を表明することに決める。

井上宅に駆けつけた宗近老人は事情を
話して一応の理解を得、涙の小夜子は
車に乗せられて甲野邸へ。


その小夜子と小野さん、宗近兄妹、
甲野さんとその継母が居合わせる甲野邸に
「クレオパトラの怒を乗せて韋駄天の如く」
駆けてきた車が到着。

    

宗近さんが藤尾に「これが小野さんの
妻君だ」と小夜子を紹介。

これを追認した小野さんが、これまでの
「軽薄」な自分を改めて「真面目な人間に
なります」と謝ると、藤尾の表情が変わる。

仮面(めん)の形は急に崩れる。
「ホホホホ」
歇私的里(ヒステリ)性の笑は
窓外の雨を衝(つ)いて
高く迸(ほとばし)った。


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藤尾は例の金時計を取り出し、
「じゃ、これはあなたに不用なん
ですね。よう御座んす。――宗近さん、
あなたに上げましょう」とそれを
宗近さんの掌に落とす。

宗近さんはこれを「やっと云う掛声と
共に」暖炉の角に投げつけ、砕く。

呆然と立つ藤尾の顔がこわばり、
手足が硬くなって石像のように
床に倒れる。


藤尾の葬儀があり、その母に甲野さんは
「〇〇が不可(いけ)ないです」と何か条
かの説教をし、一連の経緯を総括する
「哲学」を日記にしたためる。
👉藤尾の死因は明記されて
いませんが、おそらく心因性の
ショック死といったところでしょう。

「藤尾は毒をあおって自死した」
などと書いた「あらすじ」もあり
ますが(Wikipediaなど)、服毒した
形跡はどこにもありませんので、
これは完全な間違い。

これはおそらく結びの章(十九)にある
「我の女は虚栄の毒を仰いで斃(たお)
れた」という比喩表現を誤読したもの
でしょうが、この誤読を含めて藤尾に
クレオパトラのイメージが重ねられて
きたことも影響しているのでしょう。

ただこちらの女王は毒蛇に自らを
噛ませるという、さらに壮絶な死を
遂げたとされているのですが。

   

ともかくこのクレオパトラが漱石の
念頭にあったことはたしかで、作中には
シェイクスピアの戯曲『アントニーと
クレオパトラ』のほか、それが依拠
しているプルタルコス(プルターク)
『英雄伝』も引用されています。

ところで『アントニーとクレオパトラ』は
名作『ジュリアス・シーザー』の続編
ですが、これに大きな感銘を受けた
漱石は「沙翁、神(しん)に入る」
とまで書き込んでいました。

そのあたりについて詳細はこちらで。

ジュリアスシーザー(シェイクスピア)のあらすじを簡単に【&詳しく】

            


藤尾は映画のヒロインにならない?

さあ、いかがでした?

【結】に入って、孤堂先生に怒られた
浅井君が宗近さんに報告してから全員集合
の大団円に向かう急展開は、劇(ドラマ)
として非常によくできていたと
思いませんか。

見事な作家的手腕を称賛していところ
ですが、ただその一方で、悪く言えば
出来すぎで「あざとい」と感じる人も
いるかもしれません。

文章の問題ばかりでなく、こういう
構成上の作為も、後年の漱石自身が
この作品を好まなくなった要因なの
かもしれませんね。

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ともかく「あいつを殺すのが一篇の主意だ」
という漱石の予告は、「うまく殺せなければ
助けてやる」と小宮には書いていたものの、
結局「助けてやる」ことはできず、
まことに劇的に実現してしまいました。

こうして結局は作者に殺される藤尾は
漱石のヒロインとしてはもちろん
不人気の部類となるでしょう。

ですから、1935年に溝口健二監督がメガホン
を取った映画化作品も、小夜子が主役の
物語に作り変えられていて、藤尾はほとんど
端役にされちゃっているんですね。

参考までにこちらの動画をどうぞ。
(非常に劣化していますが)




でも、時代は変わりました。

今もう一度映画化するなら、主役は
当然、藤尾でしょう。

傲慢なワガママ女と見られようと、
あくまで自分のやりたいようにやる
才色兼備の「我(が)の女」にして、
「我」は「プライド」とも言い換えられる
(【転】の部分参照)…。

この役をこなせるだけの驕慢な美貌を
おもちの女優さんといえば、現代なら
はたして誰の名が挙がるでしょうか?

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まとめ

さあ、これだけの情報があれば
読書感想文を書こうとしている人も、
もうバッチリですよね。


ともかく『虞美人草』は漱石が全力投球
した力作でしたが、その後は自分でも
あまり好まない作品になりました。

では漱石のその後の小説はどんな
風に変わっていったのか。

それを知るのに手っ取り早いのは
もちろん彼が翌年に書いた『三四郎』に
始まる二つの三部作(そのラストが
『こころ』)を読んでみることですよね。
👉漱石とその作品をめぐっては
かなり徹底的・多角的に情報収集
してきています。

どうぞご参照ください。

こころのあらすじを簡単に【下:先生の遺書だけやや詳しく】

夏目漱石 こころの感想文を簡単に【800字/400字例文つき】

それから(漱石)で感想文【読書レポート2000字の例】愛の言葉は…

漱石 三四郎で感想文:美禰子の愛は?”無意識の偽善者”とは?

              

夢十夜 第三夜の感想文で全体を代表させよう【1000字の例文つき】

文鳥(夏目漱石)で読書感想文/読書レポート【2000字の例文つき】

     


👉そのほか漱石の作品を早く安く
手に入れたい場合は、Amazonが便利です。
こちらから探してみてください。

夏目漱石の本:Amazonラインナップ
ƒvƒŠƒ“ƒg



さあ、もうこれでOKですよね、
感想文だろうがレポートだろうが。


ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?


う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

                 

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

    

そちらで解説している「書き方」を
踏まえて、当ブログでは多くの感想文例を
試作し提供してきましたが、このほど
それらの成果を書籍(新書)の形にまとめる
ことができましたので、ぜひこちらも
手に取ってご覧ください。
  👇


買う前にその「予告編」が見たい
という人は、こちらでどうぞで。

読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!

            


👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/



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