サクラさん
あと少しだけ長生きす
れば日本人初のノーベル
文学賞が確実だったと
いわれ、今も国際的評価
抜群の谷崎潤一郎。

でもその作品は国語教科
書に載ってません…(🐱)

ハンサム 教授
載せたくても載せ
られないのでは;^^💦

サクラさん
実は最高傑作ともいわ
れる『春琴抄』に挑戦
してみたんですが、
「。」も「、」もなく
タラタラと切れ目なく
流れていく文章に閉口
しました。

これじゃあ学校で教え
られませんよね(😿)

ハンサム 教授
『卍』はそれを大阪弁で
やってますしね;^^💦

ただ普通に平易な日本語
で書いた小説もあるわけ
なんですが…

サクラさん
なぜそういうのを載せ
ないんでしょう❓

ハンサム 教授
う~ん…それらもまた
好色な”毒”が盛られて
いて子供向けでないと
いう問題が…;^^💦

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サクラさん
ほほ~ これはますます
読まずにいられ
ませんね(😻)


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というわけで本日は、豪華絢爛にして
淫靡な世界を追求した耽美派の文豪、
谷崎潤一郎のおすすめの本の紹介です。

上でふれている『春琴抄』や『卍』は、
谷崎は初めてという人がいきなり入り込もう
とすれば、その読みにくさや”毒”に
跳ね返されてしまうかもしれない
一級の芸術品。

そこで、そういう歯ごたえのあるぶん
味も濃い難物は「➋上級編」として後半の
お楽しみにとっておき、前半の「➊入門編」
には比較的入り込みやすい秀作を
置くことにします。

さらに後尾の【付録】として、これは谷崎作品
ではありませんが、谷崎とその周辺を描いた
桐野夏生さんのノンフィクション・ノベル
『デンジャラス』というオマケつきです。

それぞれ簡単な⦅あらすじ⦆と、背景や
ポイントを解説した⦅読みどころ⦆
解説していきますので、自分に合いそうな
作品を見つけて入っていってもらえれば
と思います。

内容はザっと以下のとおり。

📚 もくじ

➊入門編:読みやすくも恐ろしい世界
  1. 『痴人の愛』

  2. 『鍵』

  3. 『細雪』

  4. 『幇間』

➋上級編:入り込めば絢爛豪華・淫靡な世界
  1. 『春琴抄』

  2. 『卍』

  3. 『刺青』

  4. 『少年』

  5. 『瘋癲老人日記』

【付録】谷崎の描かれた小説

  『デンジャラス』(桐野夏生)

まとめ


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➊入門編:読みやすくも恐ろしい世界

まずは文章の読みづらさは少なく、
誰でも入ってはいける長・短編4作。

ただ、入り込めばやがて谷崎世界なら
ではの恐怖、または”いやらしさ”に
襲われる可能性は大ありですので、
そういうものを受け付けない方は
ご遠慮ください。

〔(  )内は発表年。以下同様〕
  1. 『痴人の愛』(大正13/1924)
  2. 『鍵』(昭和31/1956)
  3. 『細雪』(昭和18-23/1943-8)
  4. 『幇間』(明治44/1911)

1.『痴人の愛』

⦅あらすじ⦆
28歳独身のサラリーマン、譲治が
浅草のカフェで給仕をしていた
15歳の美少女、ナオミを引き取って
理想の妻に育て上げようとする。

ナオミの希望どおりに英語と歌を
一流教師のもとで習わせ、16歳に
なると入籍して夫婦になる。
  
    

ますます美しくなったナオミは、
今度は社交ダンスを習い始め、
ダンスを通して慶応の学生や
外国人など他の男たちとの関係を
作っていく。

譲治もダンスに加わるようになり、
ナオミのひどい不貞を知って激怒。

ついには家から追い出したものの、
やがて彼女が恋しくてたまらなく
なり、そこを見透かしたナオミは
また彼のもとへ現れ、結局、相手の
言いなりになる形で夫婦を続ける。

⦅読みどころ⦆
まだ年端もいかぬ娘を支配下に置き、
自分好みの完璧な女性に仕立て上げ
ようとする男の欲望が”ピグマリオン
・コンプレックス”。

その物語化として『源氏物語』「若紫の段」
や映画『マイ・フェア・レデイ』があった
のですが、この”ピグマリオン”物語に
ポッカリとあいた穴から落ちてマゾヒズム
の泥沼を泳ぐことになった、痛ましくも
幸福な男を描き切った傑作が『痴人の愛』。
👉より詳しい情報はこちらで。

谷崎潤一郎 痴人の愛のあらすじ⦅ナオミと譲治のM的結末⦆


また”ピグマリオン・コンプレックス”に
ついての詳細はこちらで。

マイフェアレディ(映画)のあらすじ//辛口の原作はマザコン物語?

            


2.『鍵』

⦅あらすじ⦆
初老の大学教授が、45歳の妻(郁子)への
性的奉仕を目的として、嫉妬による
興奮を得ようとし、その経緯を日記に
書いていく。

娘の敏子との縁談を自ら持ちかけた
弟子の木村を、妻に故意に接近させ
ようとし、酔い潰れて浴室で全裸で
倒れた郁子を木村に運ばせたり、
昏睡する郁子の裸体を撮影し、
その現像を木村にさせたり…

    
    英訳本の表紙 

実は郁子も日記をつけており、それを
盗み見ている教授は、郁子に自分の
日記を読ませたくなり、日記を隠して
いる引き出しの鍵をわざと落とす。

が、郁子は夫の日記を盗み読む気はない、
また自分は夫の期待通りに興奮を与え
ようと嫌々ながら木村と接しているのだ、
自分も日記を書いていることを夫は知ら
ないはずだ…などとあえて日記に書く。

こういうゲーム的な夫婦関係のストレス
と不摂生な生活がたたって、教授は
健康を害し、ついに病死する。

郁子の日記によれば、彼女は日記を
読まれていることを承知で嘘を書き、
また夫の病気を悪化させる食餌をわざと
与えて夫を死に追い込み、木村との
関係にはむしろ自発的にのめり込んで
いたのだった(叫び)。

⦅読みどころ⦆
枯れかけた欲望を嫉妬によって奮い立た
せるべく、妻に日記を盗み見させる
ことで望みをかなえようとする男。

夫の望みをかなえる貞淑な妻を演じ
ながら実は積極的に不倫の悦楽に
もだえる妻。

夫婦間の虚々実々、命さえ危険にさらし、
それゆえにこそ高揚もする性愛の世界を
高度に複雑なプロットで描く芸術品。
👉より詳しい情報はこちらで。

鍵(谷崎潤一郎)のあらすじ 原作小説が映画の何倍も凄いワケ


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3.『細雪』

⦅あらすじ⦆
大阪の斜陽商家、蒔岡(まきおか)家の
美人四姉妹。

船場の本家を継いだ長女鶴子夫妻と
芦屋に分家した次女幸子夫妻、
美貌ながら縁遠い三女雪子と奔放で
恋多き四女妙子が織りなすドラマ。
  
  

3年ほどの間に、何度も見合い
しながら不調に終わり、最後には
華族の中年男に嫁ぐ雪子と、
数度の恋愛の末、下層の男と結婚
する妙子を両輪として物語が進む。

⦅読みどころ⦆
大阪の商家の四人姉妹とその周辺の人々
それぞれの個性が絡み合って流れてゆく
総計1000ページに及ぶ大長編。

映画などでは最高の美人女優(吉永小百合
など)が当てられ、美化されがちな三女
雪子ですが、読んでみると非常にねちっこく
サッパリしない、悪い意味で「女らしい」
と言いたくなるタイプ。

そういう”いやらしく”も魅力的なヒロインを
描き上げたところなど、さすがの手腕ですが、
彼女がそこへ追いやった一因として想定される
のが「新しい女」たる四女妙子の、雪子とは
正反対の奔放・闊達な生き様でした。
👉より詳しい情報はこちらで。

谷崎潤一郎 細雪のあらすじ 映画とは違う原作の芸術性は?


4.『幇間』

⦅あらすじ⦆
幇間(太鼓持ち)の三平は、子供時代は
神童といわれたほどで、長じては
いっぱしの相場師になっていたが、
幇間のまねごとをやりだすと楽しくて
たまらず、そちらに入れあげるあまり
店はつぶれ、ついに本職の幇間に
なった男。

    

座敷で榊原の旦那(元は対等の友人)に
催眠術をかけられると、暗示される
通りに何でもやってみせるので
バカ受けし、それを見た芸者の梅吉が
二人きりの部屋へ彼を呼んで自分にも
かけさせてほしいという。

あれは「お前さんに惚れた弱みの
狂言ですよ」と打ち明けたかったが
「馬鹿にされたいと云う欲望の方が
先へ立って」言われるままになり、
梅吉も脱ぎ自分も裸になり…

翌朝、梅吉に起こされると「三平を
欺(だま)すように、わざと」男女の
コトがあったような散らかりよう。

話を聞いた榊原が「お前もなかなか
色男だな」と冷やかすと、えへへと
卑しく笑い、扇子でぽんと額を打つ。

⦅読みどころ⦆
谷崎終生のテーマとなるマゾヒズムの
一形態が、落語のような軽妙な語り口で
語り下ろされた初期短篇の傑作。

三平の場合は肉体より、精神的に
「馬鹿にされる」形での虐待が
病みつきになっています。

とはいえ、その虐待も実はいくぶんか
ゲーム的(虚構的)なもので、その
ゲーム性をどこまで意識しているのが
一つのカギになりますが、これを当時
流行の「催眠術」に絡めるあたりには
社会風刺もきいています。

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➋上級編:入り込めば絢爛豪華・淫靡な世界

格調の高すぎる(?)文章のせいで入り込む
のに難儀するかもしれませんが、入って
しまえば、その絢爛豪華にして淫靡な
世界に陶然となって、読んでよかった
と思わずにいられない…

という谷崎文学の醍醐味を味わわせて
くれる芸術品の代表作がこの5点。
  1. 『春琴抄』(昭和8/1933)
  2. 『卍』(昭和2/1927)
  3. 『刺青』(明治43/1910)
  4. 『少年』(明治44/1911)
  5. 『瘋癲老人日記』(昭和37/1962)

1.『春琴抄』

⦅あらすじ⦆
大阪の富裕な薬種商の娘、春琴は早く
から音曲の技量と美貌でぬきん
でていたが、9歳で失明する。

その後に丁稚として来た4歳年長の佐助が
「曳き手」として彼女に仕え、やがては
音曲の弟子となり、事実上の夫となる。

   

春琴の驕慢な仕打ちを佐助はむしろ
喜ぶようでさえあったが、20歳で
師匠として独立した春琴はやがて
門弟の恨みを買ったか、顔に熱湯を
浴びせられる。

治療中の春琴が、包帯が取れて佐助に
顔を見られることを恐れていると
察した佐助は、自ら両目を針で突いて
失明し、この行為に感動した春琴は
初めて喜びの言葉を彼に伝える。

⦅読みどころ⦆
至純・至高の恋愛ドラマとして何度も
映画化されてきた傑作ですが、さて原作を
読もうとすれば、句読点(、。)をほとんど
使用しない特異な文体に圧倒される
かもしれません。

句読点などもともと日本語にはなかった
のだからと言わんばかり、平安朝に紛れ
込んだかと思わせる流麗・優雅な文章で、
愛のため(?)わが目を突いて失明する
男の物語が語られます。

多くの読者が実話のように受け取って
しまいますが、それこそは「ほんとう
らしく見せる」ことに最も苦心した
と語る文豪の思う壺だったのです。
👉より詳しい情報はこちらで。

谷崎潤一郎 春琴抄のあらすじ 簡単/詳しくの2段階で


2.『卍』

⦅あらすじ⦆
富裕な商家から弁護士の柿内に嫁いだ
園子は、日本画学校で共に学ぶやはり
富裕な家の美しい娘、徳光光子に
心惹かれる。

彼女との間に同性愛の噂を立てられ、
その時は事実無根だったものの、
やがて噂が事実と化してしまい、
これが夫に知られて夫婦仲が悪化。

光子の妊娠が判明し、婚約者だという
綿貫が園子の前に現れて説得し、彼と
光子との関係を重んじて自分は手を
引くという誓約書に署名させられる。

その誓約書が新聞社の手に渡り、
園子と光子との仲は世間周知に。

  

一緒に逃げた二人は、徳光家の
別荘で手を握り合って服毒。

半日ほどして意識が戻ると柿内が
来ていて、さかんに謝る一方で、
実は光子に初めて「ほんまの男性」
を教えたのは自分だと告白。

夫婦はともに泣いて、光子に言われる
まま「殺される覚悟で」服毒し、
衰弱していく。

太陽のように輝いていた光子もやがて
荒(すさ)み、結局は「三人で死のう」と
改めて服毒するが、園子のみ生き残り、
今も光子が恋しくてたまらない。

⦅読みどころ⦆
『春琴抄』同様、本を開くと字がびっしりで
空白がほとんどなく、そのすべては主要
登場人物の一人である園子が作家に向けて
大阪弁の女言葉でウネウネと語っていく
複雑な愛の物語。

関西弁の苦手な人は敬遠したくなるかも
しれませんが、いったんこの虚々実々の
世界――異性愛・同性愛に性的不能や
被虐趣味などがそれこそ「卍」型に
入り乱れる――に引きずり込まれれば、
陶酔のうちに読み進め、終わるのが
惜しくさえ思われてくることでしょう。
👉より詳しい情報はこちらで。

卍(小説)のネタバレ 谷崎潤一郎が大阪弁で描くややこしい愛の世界


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3.『刺青』

⦅あらすじ⦆
若い刺青師、清吉の「宿願」は美女の
肌に「己の魂を彫り込む事」。

心にかなう女を捜し続けて4年目、
駕籠(かご)をはみ出した白い素足を
見て、これだ!と思うも、駕籠は
消え去る。

翌年の春、家に使いに来た16,7歳の
美しい娘の素足を見て、あの駕籠の
女だと悟る。

清吉は娘に、男の惨状を喜ぶ女を
描いた二つの絵を見せ、「お前の心が
映って居る」などと言い、娘自身も
そこに「真の『己』」を見いだす。

  

一昼夜をかけて娘の背中一杯に巨大な
女郎蜘蛛(🕷)を彫った清吉の心は
「刺青の中へ己の魂をうち込ん」で
もはや「空虚(うつろ)」。

男は「みんなお前の肥料(こやし)に
なるのだ」などとつぶやく。

意識の戻った娘は、湯殿での仕上げの
痛みにも耐え抜き、私はもう「臆病な
心」を捨てた、あなたは「真先に私の
肥料になったんだ」と瞳を輝かす。

「帰る前にもう一偏」との願いをいれ、
女が肌を脱ぐと、朝日が射して
「女の背(せなか)は燦爛(さんらん)
とした」。

⦅読みどころ⦆
何年も待ち焦がれた完璧なモデルが
現れるや、その体に精魂を打ち込んで、
自ら「肥料になった」ことを喜ぶ刺青師と、
彼を「肥料にして」輝く女郎蜘蛛の
ような美女。

マゾヒズム的な芸術家魂を華麗な筆致に
宿らせ、これまで「誰一人手を下す事の
出来なかった芸術の一方面を開拓した」
と永井荷風に激賞された処女作。
👉より詳しい情報はこちらで。

谷崎潤一郎 刺青のあらすじと考察//若尾文子主演映画も鑑賞


4.『少年』

⦅あらすじ⦆
下町に住む小学生の「私」は裕福な
同級生信一と親しくなり、その
豪邸を訪れるようになる。

これに学校で幅を利かせる仙吉を
加えた三人は、信一の異母兄弟の姉、
光子をいじめる遊びで愉悦を感じる。

    

ある夜「私」と仙吉が光子のピアノの
音がする洋館へ忍び込むと、そこで
強く出た光子に這いつくばらされ、
燭台にされる。

以降、光子は「此の国の 女王」となり
三人を奴隷のように扱った。

⦅読みどころ⦆
少年愛、今風にいえば”BL”(Boy’s Love。
腐女子の好きな…)の世界に”サディズム
/マゾヒズム”、さらには谷崎定番の
フット・フェティシズム(足フェチ)
もありの大サービス;^^💦

4人の子供の性の目覚め、その衝動の
絡み合うドラマの紅一点、虐待される・
側から支配・君臨する側へと逆転して
女王となる娘が光子。

『卍』で4人の男女の中心となって
「太陽」のごとく輝くヒロインと
同じ名前だったのですね。
👉より詳しい情報はこちらで。

谷崎潤一郎 少年のあらすじと感想 その妖しいSM/BL的世界


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5.『瘋癲老人日記』

⦅あらすじ⦆
77歳の老人・卯木督助の日記(カタカナ
+漢字のみで記述)が心筋梗塞により
中絶するまで続けられ、そのあとに
関与した看護婦・医師・娘の手記が
置かれる。

日記は「予」(督助)が「婆サント颯子ト
同伴シテ」歌舞伎を観劇するところに
始まり、主としてこの颯子(さつこ。
息子の妻)への性的な執着を中心に
つづられていく。

    
    フランス語訳の表紙 
 
夫のいとこの春久と遊蕩する奔放な
颯子の悪女的な部分にますます魅了
されたた予は、とりわけ彼女の足で
踏まれて痛みを感じたいという
フット・フェティシズム+マゾヒズム
の特殊な性欲にとりつかれる。

颯子には足元を見られ翻弄されながら、
高価な贈り物の代償として彼女の美脚に
頬ずりし、ついにはその足の裏の型を
取って仏足石を作るが、ついに
脳血管が痙攣して…(叫び)

⦅読みどころ⦆
『鍵』に続き、性に執着する老人の心理を
赤裸々に描き出し、諸外国で映画化される
など国際的な注目を集めた衝撃作。

『鍵』のような複雑な構造はない代わりに
カタカナ日記という特異な文体が、
死をつねに意識しながら、それゆえに
こそ燃え上がろうとする残り火のような
生命の哀しさと滑稽さをともどもに
浮かび上がらせています。

のちに渡辺清治(妻松子の連れ子)の妻、
千萬子との往復書簡が公開され、彼女が
颯子のモデルであることが確定。
(次章『デンジャラス』の項参照)

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【付録】谷崎の描かれた小説

こちらは谷崎が書いた小説ではなく、
彼が書かれたノンフィクション
・ノベル。

思えば二人目の妻・千代の妹、せい子
(映画女優・葉山三千子)をモデルとした
初期の『痴人の愛』などもそうでしたが、
『刺青』の彫師さながら、これぞという
女性をそばに置いて「肥料(こやし)にし」、
むさぼりつくすのが谷崎流の芸術。

むさぼられた三人目の妻・松子とその妹・
重子、さらには孫のような年齢の千萬子
(上記『瘋癲老人日記』の項参照)らと
文豪との絡みが赤裸々に描かれます。

『デンジャラス』(桐野夏生/2017)


⦅あらすじ⦆
戦後、「文豪」と呼ばれるようになった
「兄さん」(谷崎)は理想としてきた
「家族王国」――男たちは排除し、
妻・松子とその妹の「私」(『細雪』の
雪子のモデルとされる重子)ら女ばかり
をそばに置く――を完成させつつある。

空襲のさなか、不仲になっていた夫、
田邊(華族出身)が一旗揚げて迎えに来た
時も、「うちは兄さんや姉ちゃんと
一緒に死にたい」と私は夫を見捨てた。

このことについて兄さんから「僕は嬉し
かった」「僕はあなたが好きです。
あなたのためには、すべてを擲(なげう)つ
覚悟があります」とまで言われて舞い
上がるものの、『細雪』の雪子のつもりで
言っている幻想的な言葉にすぎない
とも思える。

  
  左から二人目が重子、右端が松子  

やがてよりを戻した田邊も死に、42歳の
ころからはアルコールに依存。

「田邊」の家名を残すための養子として
松子姉の連れ子である清一と恵美子が
迎え入れられたが、今度はその清一の
嫁として来た21歳の千萬子に兄さんの
関心が向かう。

変幻自在の松子姉もさすがに変調を
来たし、千萬子夫妻と姑の私は兄さんに
家を買ってもらって、そこに同居。

新しい小説『鍵』の第一回を読んだ
松子が「あの人は千萬ちゃんに魂を
抜かれている」と言うので私も読んで
みると、そのヒロイン郁子は40代で
むしろ自分がモデルだとしか思えず
「内心、小躍り」する。

しかし5年後の『瘋癲老人日記』での
「新境地」を開かせたのが千萬子である
ことは明白で、兄さんは「巷の好奇心に
応えるかのように、ますます千萬子への
執心を隠さなく」なる。

松子の悲嘆を見かねた私は、兄さんを
ホテルに呼び出して談判。

「あなた様が仰るなら、千萬子にはもう
手紙は出しません」「あなた様こそが、
私の創作の源流でした」という言葉を
引き出す。

⦅読みどころ⦆
奴隷として膝まづくような手紙で口説き
落とした松子に妊娠中絶を強いた谷崎は、
究極の芸術至上主義者ともいうべきで、
実際の愛は二の次、そのマゾヒズムも
自ら論述したとおり演劇的要素の濃い
ものでした(「日本に於ける
クリップン事件」)。

日記や書簡など資料にもとづき、事実を
重んずる形を取ってはいますが、谷崎が
重子に「あなた様こそが…」と告白する
ラストなど、フィクションも多く織り
込まれていますので、眉に唾を;^^💦
👉より詳しい情報はこちらで。

デンジャラス(桐野夏生) のあらすじ 谷崎潤一郎を囲む女たちの執念




まとめ

さて、いかがでしょう。

日本が世界に誇る文豪、谷崎潤一郎の
世界、またその底知れぬ魅力の一端を
感じ取っていただけたでしょうか。

一つでも面白そう、自分に合いそうと
思われた作品があれば、さっそく
本を入手して読み始めてくださいね。

感想文やレポートの素材としても
どれも、もちろん文句なしですよ!
👉読書感想文対策など、谷崎関係の
記事はほかにも書いていますので
ぜひご参照ください。

春琴抄で感想文【1600字の例文つき】谷崎潤一郎の性癖と佐助犯人説

痴人の愛(谷崎潤一郎)で感想文…💜妖婦ナオミに抵抗できる?

谷崎潤一郎 細雪で感想文を ”下痢の美女”か”新しい女”か

        

「私」の読み方はわたし?わたくし?漱石『こころ』の「私」はどっち?

👉谷崎の特異な嗜好――
マゾヒズムやフット・フェティシズム
――に関心をお持ちの方はこちらも
ぜひどうぞ。

マゾヒストの心理を元祖マゾッホに問う 苦通がなぜ喜びに?

近松門左衛門 曽根崎心中のあらすじ 現代語訳でわかりやすく

                   

👉そのほか谷崎の本を早く安く
手に入れたいという場合は、
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こちらから探してみてください。


谷崎潤一郎の本:ラインナップ


👉また当ブログでは、谷崎以外にも
日本と世界の種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

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それではまたお目にかかりましょう(😸)

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