浦島太郎 玉手箱の意味は?パンドラの箱を重ねた太宰治

 


やあやあサイ象です。

「浦島物語」の謎を追った前回の記事の
末尾で、乙姫が浦島に「あけるな」と
言って渡す「玉手箱」がギリシャ神話の
「パンドラの箱」に似ている、
という話をしました。

あけてビックリ、太郎はたちまち
100歳だか300歳だか(諸説あり)の
オジイサンになってしまう
という「厄災」に見舞われる…

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というのが乙姫の差し出した「玉手箱」
ですが、やはりあけてビックリ、
あらゆる「厄災」が飛び出て人類に
与えられるというのが「パンドラの箱」
ですから、たしかに似てますよね。

で、前回はこの問題を次回のお楽しみと
しましたので、今回はそのオトシマエ
ということになります。


前回の記事はこちら。

浦島太郎は意味不明?善行も”禁断の玉手箱”で罰せられ…

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👉「パンドラの箱」とは?

まず「パンドラの箱」のストーリーを
押さえておきましょう。

正確な原話はさておいて、一般に
知られているのはこんなお話でしょう。

人間に火をもたらしたプロメテウスへの
怒りが収まらないゼウスは、職人の神
へパイストスに命じて、この世で最高の
美女パンドラを作らせ、これを
プロメテウスの弟、エピメテウス
のところへ行かせる。

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エピメテウスはパンドラの美しさに
心を奪われ、妻にする。

『日本書紀』で「浦島子」が亀姫を
「感(たけ)りて婦(め)に」した
のとソックリですね。
(上記の別記事参照)

また『日本書紀』で浦島が
行ったとされている「蓬莱」の
国とそこで出会った仙人を
めぐってはこちらもご参照
ください。

七福神の名前の覚え方:新作決定版!🐢なんで浦島太郎が…?

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エピメテウスの家には、プロメテウスが
残していった黄金の箱(原話では甕)が
あり、それには、病気、盗み、ねたみ、
憎しみ、悪だくみなど、この世の
あらゆる厄災が人間の世界に行かない
ように、閉じ込めてあった。

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パンドラはこの美しい箱を見るなり、
素晴らしい宝物が入っていると思い、
開けてほしいと頼むが、エピメテウスは
「この箱だけは決して開けるな」という
兄の言いつけを守り、拒む。

それでもパンドラが「あけなければ、
わたしは死ぬ」と言い出したため、
エピメテウスは開けてしまう。

そのとたん、箱の中からあらゆる厄災が
飛び出て、人間の世界に飛散する。

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エピメテウスが慌ててふたを閉めると、
中から「私も外へ出してください…」と
弱々しい声がするので「お前は、誰?」
と尋ねると、「私は希望です」との答え。

こうして人間たちは、どんな厄災に
見舞われてもなお希望
もつようになった。

この「希望」の原語は「エルピス」で、
「予兆」「期待」などの意味もあるため
「希望」の訳が適切かどうかは異論も
あるそうです。

英語では古来”hope”と訳してきたことも
あって、上記のような救いのある
エンディング(不幸中の幸い)の
ストーリーが定着した模様。


👉 玉手箱に封入された「時間」

さて、「浦島物語」に戻りましょう。

前回の記事(上記)でもふれていますが、
「玉手箱の謎」の考え方として広く
流布しているのはこんなところでしょう。

「蓬莱(とこよのくに)」または竜宮で
の亀姫または乙姫との悦楽の日々は、
3日だったり3年だったり、話により
いろいろだが、ともかくその間、
現世(郷里)ではその何百倍もの
時間が流れていた。

Edmund Dulac, Urashima Taro(1916)
浦島と乙姫2
乙姫が「玉手箱」に封入したのは、
本来なら浦島が経験すべきであった
その「時間」であり、姫は彼から
奪ってしまった「時間」を
そのような形でお返しした。

「玉手箱」をあけて煙を浴びた浦島が
たちまち100歳だか300歳だかの
老人と化すのは、本来の(現世の)
「時間」を取戻してしまったから…

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これで一応、筋は通りますね。

でも、それなら、乙姫はなんのつもりで
そういうことをしたのでしょうか。


つまりこの「時間」が浦島にとって
大きな厄災であると知っていたならば、
この贈り物には悪意があったと
いうことになるでしょう。

「規則上渡さないわけにいかないので
渡したものの、厄災を受けてほしく
なかったので『あけるな』と言った」
というのでしょうか。

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その場合は、愛があるなら規則がなんだ!
といいたくもなりますよね。

やはり乙姫は、自分を捨てる浦島への憎しみ
から(浦島は郷里の両親のもとへ帰りたいと
言うので、乙姫の感情に「嫁姑問題」を
読む解釈もあります)これ以上ない厄災を
彼に食らわせようとしたのでしょうか。



👉 太宰治の「玉手箱」解釈

さて、ここで紹介したいのが、
太宰治の再話短編集『お伽草紙』
(1945)に収められた「浦島さん」。



この本についてはこちらで
より詳しく紹介しています。
太宰治おすすめ作品「カチカチ山」💛名言《惚れたが悪いか》

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この太宰版「浦島さん」こそは、
「浦島物語」に「パンドラの箱」を
持ち込むことで「玉手箱」から
新しい意味を引き出すことに成功した、
きわめてユニークな傑作なのです。


箱(太宰作品では「貝殻」)の底に、
パンドラの箱にあった「希望」とやらが
残っていたところで、「浦島さんは既に
三百歳である。三百歳のお爺さんに
『希望』を与えたって、それは悪ふざけに
似ている」と太宰は言い放ちます。

「何とかして、この不可解のお土産に、
貴い意義を発見したい」と長いあいだ
思案し、ようやく少しわかってきた…

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「つまり、私たちは浦島の三百歳が、
浦島にとって不幸であった
という先入観に
依って誤られて来たのである」というのです。

気の毒だ、馬鹿だ、などという
のは、私たち俗人の勝手な
盲断に過ぎない。

三百歳になったのは、浦島にとって、
決して不幸ではなかったのだ

(下線部は原文では傍点の振られた箇所)

カニBeach-Crab-s

浦島は、立ち昇る煙それ自体で
救われているのである。
貝殻(箱)の底には、何も残って
いなくたっていい。
そんなものは問題ではないのだ。
曰く 

年月は、人間の救いである。
忘却は、人間の救いである。


竜宮の高貴なもてなしも、この
素晴らしいお土産に依って、
まさに最高潮に達した観がある。

思い出は、遠くへだたるほど
美しいというではないか。
しかも、その三百年の招来をさえ
浦島自身の気分にゆだねた。
ここに到っても、浦島は、乙姫から
無限の許可を得ていたのである。

       


👉 ありがとう、乙姫

どうでしょう。
素晴らしい解釈ではありませんか。

乙姫は決して浦島を憎んで
あの玉手箱を渡したのではないのです。

あけたくなければそれでよし、
あければまたよし。

あけることは一切の「忘却」を意味し、
すなわち「人間の救いである」から。

月と鳥Bird-s

この部分を読むと、ほんとに救われた
気分になります。

ありがとう、太宰。
ありがとう、乙姫…:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

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こちらのの記事もご覧くださいね。

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これでもう書けますよね、
感想文でもレポートでも。

え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めていいか
わからない( ̄ヘ ̄)?

そういう人は、「感想文の書き方
《虎の巻》」を開陳している記事の
どれかを見てくださいね。

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文学作品について「あらすじ」や
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