ベニスに死すは気持ち悪い?映画と小説の違いへの注目で感想文が書ける!

ベニスに死すは気持ち悪い?映画と小説の違いへの注目で感想文が書ける!

サクラさん
コロナ・パンデミック
時代の読書感想文として
感染症に関係する作品
で書こうかと思うん
ですが、カミュの
『ペスト』は長くて
むずかしそうですし(😿)

ハンサム 教授
それならトーマス・
マンの『ヴェニスに
死す』なんかどう?


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サクラさん
あ、それ、映画を観た人
が「気持ち悪い、気持ち
悪い」(🤢)と騒いでた、
その原作ですね。

ハンサム 教授
ペストもコレラも新型
コロナも、感染症の実態
は「気持ち悪い」もの
ですよ。




サクラさん
いえ、そういう「気持ち
悪さ」ではなく、LGBTQ
的な意味で、五十男が
14歳の美少年に恋々と
してしまうという…
タブーの世界への抵抗
というか嫌悪感という
か…(🤮)

ハンサム 教授
何歳だろうが同性だ
ろうが、真剣に恋する
人を差別しちゃいけ
ませんよ。

サクラさん
ですよね~(😹)

実は私、大のBLファン
なので、意外に「気持ち
よく」読めるかもしれ
ませんね。


というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ第315回”はドイツの文豪、
トーマス・マンの名作『ヴェニスに死す』
(1912)に挑戦です(((((ノ゚🐽゚)ノ
   👇 

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その映画化として、こちらも今なお人気の
高い名作が巨匠ルキノ・ヴィスコンティ
監督の『ヴェニスに死す』(Death in
Venice
, 1971。ダーク・ボガード主演)。


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この映画、ストーリーの基本は原作を
忠実になぞっていますので「映画だけ
見て原作小説の感想文を書く」なんて
いうズルもできないことはありません。

ただ、主人公の小説家が作曲家(グスタフ
・マーラーを思わせる)に変えられるなど
細部では違いも少なくないので、へたを
すると「こいつ、読んでないな」とバレて
しまう危険もありますね;^^💦

ともかくまだ読んでも観てもいない
(または忘れた)という人は、まずは
こちらの映画予告編をご覧ください。   👇


というような次第で、本日の内容は
ザッと以下のとおり。



読書感想文の例文(2000字以内)

それではそろそろ取りかかりましょうか。

今回は字数制限2000字(原稿用紙5枚)
以内という制限枠内でサクラさんが書き、
ハンサム教授の添削指導で完成させた
という設定の、やや高度な読書感想文を
お目にかけます。

感想文というよりは批評文と呼ぶべき
かもしれず、大学・大学院の読書レポート
としても十分に通用する内容と
思われます。

まずはじっくりとご熟読ください。

 映画『ヴェニスに死す』を観て
ぞくぞくするような感動を覚えた
したものの、いったい何に感動した
のか自分でもわからないモヤモヤが
残ったので、トーマス・マンの原作も
読んでみることにした。

岩波文庫の高橋義孝訳で読み、その
日本語の堅苦しさにはいささか閉口
したが、これを選んだこと自体は
正解だったと思う。

というのは、マンのもう一つの名作
『トニオ・クレーゲル』とセットに
なっていて、両方を読むことが
できたからだ。

はじめは『トニオ・クレーゲル』を
読む気はなかったのだが、『ヴェニス
に死す』を通読してやはりモヤモヤが
残ったので、『トニオ・クレーゲル』
も読んでみる気になったのだ。

  

 読んでみての発見は、『ヴェニス
に死す』の主人公グスタフ・アシェン
バハはトニオ・クレーゲルの後身の
ような人物で、『ヴェニスに死す』
の謎を解く鍵を『トニオ・クレーゲル』
から拾い上げることもできるという
ことだった。

以下では、この謎解きについて
書いてみたい。

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 ミュンヘンに居住する50歳で独身の
有名作家アシェンバハ(妻とは死別)
は、ふと「旅への誘い」を感じ、
一人でヴェニス(ヴェネチア)に
保養に出かける。

その高級ホテルで遭遇した、14歳
ぐらいの少年(ポーランド貴族の子)
の「すばらしい美しさにアシェンバハ
は唖然とし」てしまう。

この後、アシェンバハの視線はこの
少年にくぎ付けとなり、それに
気づいた少年の方でも好意的な
(とアシェンバハには見える)視線を
返すようになるが、会話は一切ない。




やがて体調の異変や、ヴェニスの街が
消毒されていることなどから
アシェンバハが人々に尋ねまわると、
ホテルなど観光業者はひた隠しにして
きたものの、今やヴェニスには
コレラが蔓延しているとわかる。

少年の母親に初めて口をきいて即刻の
退去を強く勧めるが、自分は退去する
気配もなく、彼らがいるかぎり
そこにとどまろうとする。

最後は、少年に接近しようと床屋で
思い切り若作りの整髪と美容をして
もらうものの、その時にはもう
少年一家は帰途についており、
コレラの病状が進んでいた
アシェンバハは、砂浜のビーチ
パラソルの下で孤独に死んでいく。

    


 このラストシーンでの若作りした
アシェンバハについては、映画でも
「気持ち悪い」という感想が多い
ようだが、それは原作も同様である。

少年への愛を貫いたともいえる点では
美しい悲劇でもあるはずのこのような
ストーリー展開が、なぜ「気持ち
悪い」喜劇にもなってしまうのか。

 この謎を解明する上で重要と
思われるのは、第一にヴェニスへ
旅立つ前のアシェンバハが「威厳」を
重んじる文学者であり、「そもそも
彼の人生行路は懐疑と反語の側から
くるすべての抑制を乗り越えて、
意識的に昂然として威厳への道を
辿ることであった」などとされて
いることである。

 第二としては、これは映画でも
ほぼ忠実に表現されていたことだが、
ラストでのアシェンバハの「若作り」
が、前半で見かけて彼自身がひどく
軽蔑していたある老人のやっていた
ことをそっくりそのまま再現する
形になっているという事実が
挙げられるだろう。
👉この「若作りの老人」の映画での再現は
こちらの予告編の開始後2分15秒あたりで
ご覧になれます。



つまりラストでのアシェンバハには
もはや「威厳」のかけらもなく、
かつて侮蔑していた愚かしい行為を
自ら実行してしまうという形で、
むしろ「威厳」の反対側──すなわち
「懐疑と反語」の側──へ渡って
しまっているのだ。

この愚かしさは、しかしまた、
愚かしいと知りながら「抑制」する
ことのできないほどの強い愛の
あかしと見ることもできるはずで、
その愛の絶対的な力を前にしては、
「気持ち悪い」と見られることも、
自分が死ぬことももはや何の問題でも
ないようなのである。

成功した芸術家であるアシェンバハは
自分の内側では、この愛に殉じて
死んでいく自分自身を最高に美しい
悲劇として享楽しつつあったよう
にも見える。

だが、それは外側から見ればたんに
「気持ち悪い」ストーカー老人に
すぎず、滑稽きわまりない死にざま
にちがいないのだ。

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 この矛盾というか「反語」(アイロ
ニー)にこそトーマス・マン文学の
キモがあるように思えるのだが、
私にその思いを強めさせたのは、
『トニオ・クレーゲル』の結びに
置かれた手紙で、作家になったトニオが
見ていると書く「幻のような世界」の
描写である。

そこでは「入り乱れた影と人間の姿」
が「とらえられ解放されることを私に
要求して」いるとトニオは書く。

悲劇的な、また、滑稽な、
またその両方を一緒にした
ような影のもろもろの姿が。

──そして私はそういう姿に
深い愛情をいだいているのです。

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アシェンバハはそのような「影」
の一つとしてトーマス・マンに
よって「とらえられ解放され」
た人物なのだと思う。   (1899字)


どうです?

なかなかよく書けていると
思いませんでした?


これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、ところどころ
つまみ食いして、自分らしい文章に
変えて使ってもらうのはかまい
ませんよ~;^^💦

もっと短い字数で書く場合は、
自分の場合は必要なさそうだと思える
部分を切り捨ててスリム化してください。

逆にもっと字数がほしい場合は、自分が
思ったことや思いだした経験などを
どんどん入れて膨らましていけば
いいわけです。

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映画と小説:6つの違い

さて、この例文をヒントまたは参考に
あなたももうスイスイ書けますよね、
『ヴェニスに死す』の読書感想文
または読書レポート。

ただ小説の感想文を映画だけ観て書こう
とする安直な人もいるかもしれません
ので、そういう人の失敗防止の意味も
兼ねて、ここで念のため、映画と小説
とで違っている主な部分について、
5つばかりポイントを挙げておきたい
と思います。

  1. 映画はすでにヴェニスへの旅路にある
    主人公を映し出すところから始まるが、
    小説ではミュンヘンにいるアシェンバハが
    旅に出ることにするまでの心理などが
    17ページにわたって記述される。

  2. 映画でのアシェンバハはかつて
    幼い娘に死なれ、その後妻とも別れた
    ように回想されるが、小説では妻が
    若くして死に、残された娘は今は
    人妻となっている。

  3.     

  4. ヴェニスで出会う美少年の名は
    映画では「タジオ」だが、小説の
    アシェンバハは「タドゥツィオ」と
    聞き取り、そう呼んでいる。

  5. 美少年一家の国籍は映画では不明で、
    流暢なフランス語で話し合っていること
    からフランスと推定されるが、小説の
    アシェンバハはわずかに聞き取れた
    ポーランド語からポーランドの貴族と
    推定している(確認はしていない)。

  6. 映画ではタジオがピアノで弾く
    「エリーゼのために」に聞き入る
    ところからアシェンバハが美しい娼婦を
    訪ねる回想場面が入るが、原作には
    美少年の演奏も娼婦との絡みもない。

  7. 映画でのアシェンバハはマーラーを
    思わせる作曲家(実際、マンの創作
    動機にはマーラーの死があったと
    いわれる)で、シェーンベルクを
    思わせる友人の作曲家との論争が
    何度か回想されるが、小説にこれらの
    場面はなく、旅行前の部分に作家間の
    立場をめぐる論争的な記述(ここで
    「威厳」にも言及)がある。

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ほかのテーマへのヒント

さあ、これでもうOK👌

ぬかりなく書けますよね、
『ヴェニスに死す』の感想文。

ん? 上記例文はやっぱり「気持ち
悪い」から別のテーマで書きたい?

ハイハイ、結構ですよ;^^💦

たとえばヴェニスという都市に焦点を絞る。

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   現在のヴェニス(ヴェネチア)  


この街、多くの観光客を引き寄せてきた
魅惑の都市であるのと同時に『ヴェニスに
死す』もその一例となったとおり、人を
破滅に導く恐怖を秘めた”魔都”でも
あります。

古くはシェイクスピアがあの有名な
喜劇『ヴェニスの商人』ばかりでなく
傑作悲劇『オセロ』でもその”魔都”ぶりを
描いています(行ったことはなかった
ようですが)。
👉『ヴェニスの商人』や『オセロ』をめぐっては
こちらで詳しく情報提供しています。

ぜひご参照ください。

ヴェニスの商人のあらすじを簡単に!傑作喜劇も見方によっては悲劇?

      


オセロ(シェイクスピア)のあらすじを簡単に/&詳しく漱石コメントつきで

  


いや、都市そのものより、やはり今
追求したいのは感染症の恐怖、また
それに対する人々の戦いだ?

はい、その方面での素材としては
冒頭でふれたアルベール・カミュの
『ペスト』がありますし、近年の
アメリカ映画にも『コンテイジョン』
(2011)という秀作があります。

それらを覗いて見るのも感想文・
レポートの高度化に役立つことでしょう。
👉カミュの『ペスト』や映画『コンテイジョン』
をめぐってはこちらで詳しく情報提供しています。

ぜひご参照を。

ペスト(カミュ 小説)のあらすじ⦅2020コロナ禍の予言がここに?⦆

   

コンテイジョンの結末は?コロナ禍を予告した2011年映画のネタバレ

      


ん? そういったことよりも、自分は
『ヴェニスに死す』に含まれていた
BL的ないしLGBTQ的側面に大いに気を
引かれたから、その方面で感想を
書いてみたい?

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なるほど。それもアリでしょう。

トーマス・マン文学の愛好者だったと
いわれる三島由紀夫をはじめ、同性愛に
深入りしていたとみられる文豪は世界に
少なくありません。

そのどれかの作品を絡めていくというのも
一法でしょう。
👉たとえば映画が大ヒットしたマヌエル・
プイグの『蜘蛛女のキス』、日本では三島由紀夫の
告白文学『仮面の告白』のほか、江戸川乱歩の
『孤島の鬼』、さらには夏目漱石の『こころ』
など、”BL”(ボーイズラブ)的に読み込める
小説は日本にも少なくありません。

詳しくはこちらで。

蜘蛛女のキス…の意味は?映画のあらすじ【ネタバレ】&小説との違い

  


三島由紀夫 仮面の告白のあらすじ⦅BL/LGBTQ文学の先駆作!⦆

    sebastin 3b8c6a8c-s
    グイド・レーニ画「聖セバスチャンの殉教」(部分)


江戸川乱歩 孤島の鬼はBLの世界)))ネタバレありで結末まで

  

こころの先生とKとはBL?腐女子による漱石新解釈で名言も見直すと…

      


まとめ

さあ、これだけ情報があれば、もう
大丈夫ですよね、読書感想文。

ん? 書けそうなテーマは浮かんで
きたけど、でもやっぱり自信が…

だってもともと感想文の類が苦手で、
いくら頑張って書いても評価された
ためしがないし(😿)…
具体的に何をどう書けばいいのか
全然わからない( ̄ヘ ̄)…?

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う~む。そういう人は発想を転換して
みるといいかもしれない;^^💦

そもそも日本全国で盛んに奨励されている
読書感想文の発祥の源は「コンクール」。

    

各学校の先生方の評価基準もおのずと
「コンクール」での審査に準拠する
形になっているのです。


だから、読書感想文の上手な人は
そのへんのことが(なんとなくでも)
わかっている人。

さて、あなたはどうなのかな?
👉「コンクール」での審査の基準を
知るには、実際に出品され大臣賞などを
受賞している感想文をじっくり読んで
分析してみるのがいちばんです。

こちらでやっていますので、
ぜひご覧ください。

読書感想文の書き方【入賞の秘訣4+1】文科大臣賞作などの分析から

セロ弾きのゴーシュで読書感想文!コンクール優秀賞作(小2)に学ぶ

  

アルジャーノンに花束を の感想文例!市長賞受賞作【2000字】に学ぶ

 

そちらで解説している「書き方」を踏まえて
当ブログでは多くの感想文例を試作し
提供してきましたが、このほどそれらの
成果を書籍(新書)の形にまとめることが
できましたので、ぜひこちらも手に取って
ご覧ください。
  👇

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買う前にその「予告編」が見たい
という人は、こちらでどうぞで。

読書感想文 書き方の本はこれだ!サイ象流≪虎の巻≫ついに刊行!!!

    

👉上記の本『読書感想文 虎の巻』は
当ブログで提供し続けてきた「あらすじ」
や「感想文」関連のお助け記事の
ほんの一部でして、載せきれていない
記事もまだまだ沢山あります。

気になる作品がありましたら、
こちらのリストから探して
みてください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/



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