芥川龍之介 河童で感想文:生まれたくないという名言からニーチェへ

 


やあやあサイ象です。

「感想文の書き方」シリーズもはや4回目、
今回は芥川龍之介の『河童』(1927)で
行ってみましょう。

Sponsored Links



Ψ 感想なんて書いてちゃダメ!

まずはじめに、当ブログ「感想文の書き方」
シリーズ秘伝のサイ象流・感想文の書き方
《虎の巻》
を広げさせてもらいますね。

  • 学校で評価される感想文は作品を
    読んでの素直な「感想」など
    ではなく、それを機に
    自分の生活を反省する
    作文である。
  • これを書くには、まず、たとえば
    登場人物が何らかの行動を
    とったとき、
    「自分にはこんなことはできない」
    のではないかとか、あるいは
    性格的に「自分にはこんな
    ところはないか」と反省する。
  • 自分にはこんなところはないか……  疑問009093   

  • その上で、「これからは自分も
    こうしよう」という類の
    前向きな結論
    を決め、
    決めてから書き始める。
(これは「Yahoo!知恵袋」での
「ikemen_busaiku」さんの
回答に触発され、構成して
いったものです。)

なんでそうなるかって?

「ikemen_busaiku」さんは
こう答えています。

少なくとも学校の求める読書感想文
とはこういうものだからです。
それは、コンクールで賞を取って
いる作品を眺めてみれば
わかります。
ほとんどこんな作品
ばかりですから。


身もふたもない話ではありますが、     
へへ(^_^;) 、結局そうなんですよね。

日本の「国語」は「道徳」を
兼ねちゃってますからね。

だから、すくなくともコンクールで
賞でも狙おうかという人は、
読みながら心に浮かぶ「感想」は
ひとまず横へ置いて、
「自分の生活を反省する」方向へと
頭をねじ向ける必要があるわけです。



Ψ 感想文に感想を書いてはいけない

さて、『河童』です。
  


どうでしょうか……この《虎の巻》>の方法で、
行けるでしょうか。

うーん、むずかしそうですね。

ちょっと発想を変えてみましょう。

主人公が突然、ポコンと穴に落ちて、
気づいたらそこは「河童の国」だった……

というのは、『不思議の国のアリス』
なんかに似ていますよね。

Alice-in-Wonderland-Cheshire-Cat-s

でも『アリス』とは違って、『河童』の
この設定は人間社会にアイロニカル
(皮肉)な批評を加えることが目的の
ようですから、「自分ならどうか」と
反省」するも「前向きになる」も
あったもんじゃないですよね。


では、どうするか。

一つは、昔ながらに、といいますか、
国文学においてかつて主流であった
(あるいは今も?)、作者の伝記的
事実を調査し、それと結びつけた
「感想」を書く、というもの。

龍之介はかわいそうな生い立ちで、
『河童』の時もすでに自殺の
数か月前だった。

このような設定や文章に彼の苦悩が
よく表われていますねえ……

といったふうで……実際ネット上に
公開されているある高校の読書感想文の
『河童』での受賞作はその手のものです。
 
これで行けそうな人は、 カッパ 004420
やってみたらよいでしょう。

でも、そういった心情的(感情移入的)
な書き方は苦手……という人もいる
でしょうから、ここではそういう人の
ために、別の方法を提案したいと
思うんです。


 

Ψ 出生を拒否する胎児

たとえば太宰治の『人間失格』などを
読んだことのある人なら、

生まれて、すみません。

という太宰文学のキーワードが、
芥川の『河童』からも浮かんで
来るんじゃないでしょうか。

『人間失格』についてはこちらの
記事を参照してください。

太宰治 人間失格のあらすじ:生田斗真主演映画の原作をネタバレありで
太宰治 人間失格で感想文:「恥の多い生涯」という名言から


河童の国に紛れ込んだ主人公が医者の
チャックと話していて、人間界の
「産児制限」のことにふれると、
「両親の都合ばかり考えているのは
可笑しい」と笑われてしまいます。

     河童846223d120766a4aca01d1377954c31b

その後、漁師のバッグの妻のお産に
立ち会うのですが、なんと、産気づいた
河童の妻の生殖器に口をつけて、
バッグは大声で
「お前はこの世界へ生まれてくるか
どうか、よく考えた上で返事をしろ」

と尋ねます。

すると腹のなかの胎児が

「僕は生れたくはありません。
第一僕のお父さんの遺伝は
精神病だけでも大へんです。

その上僕は河童的存在を悪いと
信じていますから」

と「多少気兼ねでもして」いるのか、
小声で返事するんですね。

こういったアイロニカルなエピソードが
『河童』には詰め込まれていますから、
そのうちの一つを採りあげて「感想」を
書いていったらどうでしょう。

上の「出生拒否」の話なら、うまく
ひねれば「自分にはこんなところは
ないか」と反省し
……という模範的
「感想文」の型にはめていくことも、
できてしまうんではないですか?



Ψ 僕は生れたくはなかった……?

つまり、あなたは「僕は生れたくは
なかったのに」
なんて考えたことは、
今まで一度もありませんか?

あるならば、この胎児の考えに
思いをめぐらしてみましょう。

フーセンガム073821

『河童』では、このあとすぐ胎内に
ある液体が注入されることで母親の
腹は「水素瓦斯(ガス)を抜いた風船の
ようにへたへたと縮んでしまい
」ます。

胎児はここで消滅したのでしょうね。


生まれてからの不幸・不運を生まれる
前の胎児が見越すなんてもちろん
現実にはありえないことで、これは、
実際に生きてみてはじめて
考えられることですよね。

つまり、生まれてはみたけれど、不幸と
不運にまみれ、それこそ「生まれて、
すみません
」というしかない、あるいは
言いたい、という地点まで生きた
人間からしかこんな発想は
出てこないはずなんです。

Sponsored Links



Ψ ニーチェ先生に聞こう

さてここで、この異様なエピソードを
創作した芥川龍之介という個人に
立ち戻ってみましょう。

数か月後の自殺は「水素瓦斯(ガス)を
抜いた風船のようにへたへたと縮んで
しま
」うことの現実化であった
ようにも見えますね。

balloons-s

え? 「僕も生まれたくなかった。
今からでも芥川よろしく水素瓦斯(ガス)を
抜いた風船のようにへたへたと縮んで
しま
」いたいなんて、そんなイタい
感想文を書こうっていうんですかい?

ぼ、ぼっちゃん、それはいけません!

か、感想文てものは、前にも言いました
とおり、「これからは自分も
こうしよう」と前向きになる
ような
ところへ自分をもって行かなくちゃ
いけません。

だって、どうすりゃいいんだよ、
爺(じい)!? 僕は本気でそう
思ってるんだから、仕方ないじゃんか!

Rabbits-Tortoises-s

いえ、ぼっちゃん、いけません。

ここはなんとか……そうですねえ…
私の師匠のニーチェ先生にでも
お伺いを立ててみるしか
ありませんかね。

もちろんマンガの『ニーチェ先生』では
なく、ご本尊、フリードリヒの方ですよ。

なんのことかわからない人は
こちらを参照。

マンガ・ドラマCD『ニーチェ先生』をもしニーチェが読んだら
ニーチェ:人生の名言「復讐と恋愛にかけては女は男より野蛮」

                   ニーチェ ダウンロード

芥川もけっこう読んで、パクったり
してたようですしね。

事物における必然的なものを
美と見ることを、学ぼうと思う、
──こうして私は、事物を美しく
する者たちの一人になるであろう。
運命愛、──これが今よりの
私の愛であれかし!
(『悦ばしき知識』信太正三訳、276節)


人間の偉大さを言い表す私の
決まった言い方は運命愛である。

すなわち、何事も現にあるのとは
別様であってほしいとは
決して思わぬこと。

未来に向かっても、過去に
向かっても、そして永劫にわたって
絶対にそう欲しないこと。

必然をたんに耐え忍ぶ
だけではないのだ。

いわんやそれを隠ぺいする
ことではさらさらない。

────あらゆる理想主義は、
必然から逃げている
嘘いつわりにほかならぬ────、
そうではなく、必然を愛すること…… 
(『この人を見よ』西尾幹二訳、
「なぜ私はかくも怜悧なのか」
10節)

                 月と犬silhouette-313661_640


Ψ 偶然を必然と見なす?

「ぼっちゃん」に生まれるか、極貧で
DVを受けながら育つかはすべて偶然
成り行きで、本人に責任のないことです。

人生の幸・不幸はこのような偶然に翻弄
されながら形成されてゆく
ほかないものです。

ただ、そのような不幸を根本的に
克服するすべがあるとしたら、
すべての偶然必然と見なして
受け入れる以外にないのではないか。

この意味での必然愛せ、とニーチェ先生は
おっしゃっているのだと思います。

Find-Your-Mother-s

どうです? とっても「前向き」でしょう?

芥川がニーチェをどれほど読みこんで
いたかはわかりませんが、この「運命愛」の
思想に完全に共鳴するところには
至っていなかったんでしょうね……

自殺しちゃうということは。


それにしても、  stone-figure-174980_150
偶然を必然と見なすなんて、そんな器用な
こと、どうしたらできるんでしょう?

これはまた別の、大きな哲学問題に
なりそうで、それについて語る余裕は
今はありません。

あなたもニーチェの本をじきじきに
手に取って、にっちぇ、にっちぇと
スルメを噛みしめるように、読んで
みてはどうでしょう。

(少し前にバカ売れした『ニーチェの言葉』
はトンデモ本に近いですが、それでも、
読まないよりはいいかもしれません)


Ψ まとめ

さて、「感想文」に戻りましょう。

上に見た、偶然必然と見るたぐいの
ニーチェ的転換がもし芥川にできて
いたなら、『河童』の「出生拒否」の
エピソードも、その作者の自殺も、
あるいはなかったのかもしれない……

たとえばそんなふうに話をもって
いければ、「前向き」な決意表明で結ぶ
模範的感想文ができて、ハイ、
いっちょ上がり!

蝶 水滴

え? それもむずかしい?

もちろん以上の記述は、私の勝手な
思い付きであり、「感想文」の
ヒントにすぎません。

これをとっかかりに、自分なりの
工夫で、なんとかでっち上げて
みてもらえればと思います。


え? 書けそうなことは浮かんできたけど、
でも具体的に、どう進めて
いいかわからない( ̄ヘ ̄)?

それでは芥川のほかの作品も
参照して考えてみましょう。

芥川のほかの作品について「感想文」
を考えた記事をご参照ください。
芥川龍之介 鼻で感想文:教訓は?ペロー童話に照らして解説
芥川 羅生門の主張・テーマは?感想文の書き方を解説
芥川龍之介 蜘蛛の糸で感想文:「一本の葱」か「因果の小車」か


またそのほか芥川関連の本を探す
場合はこちらが便利です。

◆芥川龍之介の本:ラインナップ◆

また当ブログでは、芥川ばかりでなく、
日本と世界の種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/

Sponsored Links

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ