インセプションは意味不明？難解な階層を考察してネタバレ【あらすじ】

さてさて、おなじみ”あらすじ暴露”
サービスも今回でなんと第202弾！

感想文の書き方シリーズ総計では
第285回となります。

今回はいよいよクリストファー・ノーラン
監督の大ヒットSF映画『インセプション』
(2010,Inception)に挑戦((((((ﾉﾟ🐽ﾟ)ﾉ
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第1ラウンドとしてあらすじを簡単に紹介
した上で、第２ラウンドの「やや詳しい
あらすじ」で、例のコマの問題や夢の
4つの階層(その最上階が「虚無／リンボ」)
の謎を解き明かしていきたいと思います。

というわけで、内容は以下の通り。


さて、内容に入っていく前に映画の
予告編を、どうぞ参考までに。👇　　　　　

もちろん予告編だけではストーリー
展開は全然わかりませんよね。

というわけで「あらすじ」の出番
ですが、まずは「ネタバレなし」の
「簡単なあらすじ」から。

簡単なあらすじ
(ネタバレなし)

ん？　結局どうなるのかって？

それを言うとすれば、結局エンディング
まで話を進めて、謎を残すラストシーン
についても、なんらかの解釈を示して
いくことになってしまうでしょうね;^^💦

ですので、続けて以下を読まれる方は
「ネタバレあり」とご承知ください。

主な登場人物(一覧)

かなり詳しいあらすじ
(完全ネタバレ)

お待たせしました、いよいよ
「詳しいあらすじ」に入ります！

……とは言いましたものの、その
ストーリーはあまりにも錯綜し、
とても一筋縄ではいかないシロモノ。

いつものような明快な「起承転結」の
4分法では、チンプンカンプン、
「意味わからん」のままに終わって
恐れが大きいのですね。

　 　

そもそもクリストファー・ノーラン
監督が着想源として言及している
J・L・ボルヘスの小説「円環の廃墟」に
照らすなら、荘子の「胡蝶の夢」よろしく
作品全編が誰かの見た夢であって、
その意味では「現実」はカケラもない…
という解釈も可能なのでは？…

いや、これはどうも迷宮に入ってしまう
ようなアポリア(難問)であるらしいので、
回答は(仮に可能なら)後ほどという
ことにさせてください。


つづめていうと、登場人物たちのみる
夢にも「夢のまた夢」、さらには
そのまた夢…という階層があり、
それらの境界線を集団で、あるいは
個別に越えて、行ったり戻ったりもする
という、なんともややこしい世界。

日本で地上波放送された際には、
今どの夢の階層にいるのかがいちいち
テロップ表示されていたほどです。

ごく簡単な図解を試みるなら、
ザッと下図のような入れ子構造に
なっているのですね。



















おわかりですか？

なんだかよくわからん？

まあ、それはそうでしょうけど、
あとはもう物語の内部に入って
行くしかありません。

起承転結でなく、上の表に示した
段階にしたがった章分けにより、
かなり詳しく展開を追っていきます
ので、心してお読みください。

ところどころ👉印の注釈を入れて
いますが、不要と思われる場合は
飛ばしてください。

では参りましょう。

【現実】❔
｟導入部｠&｟ラスト｠

「全編が夢だ」という解釈をとりあえず
取りのけておくと、映画の初めの部分
(導入部)のほとんどと、結末部分(ラスト)
とはやはり【現実】を表現したもの
ということになります。

つまり何階層もの【夢】の世界での
劇的展開を前後の【現実】が枠として
囲むという”額縁物語”の形をとって
いるのですね。


そこでまず｟導入部｠。

ある大企業の依頼でサイトーの脳から
情報を抜き取ろうとして失敗し、
依頼主から消される危機に陥った
コブは、逆にサイトーから
“インセプション”の依頼を受ける。
👉冒頭には恐ろしく老化してもはや渡辺謙とは
見分けのつきにくいサイトーも現れますが、
これは時間速度の異なる夢の階層を
【虚無の世界】にまで進んでしまっために
『浦島太郎』状態になってしまったサイトー。

現実世界の10時間が夢の第1階層では1週間、
第2階層では6ヶ月、第3階層では10年近くと
なるとされていることの反映で、この部分は
もちろん【現実】ではありません。

現実には死んでいるはずのモルが出てくる
部分も同様ですが、【夢】が入り込んで
錯綜しつつも【現実】ベースで進んでいく
のがこの｟導入部｠。

なお『浦島太郎』物語の不可解さを
めぐっては、こちらもご参照ください。

・浦島太郎に玉手箱をなぜ渡す？”開けるな”の意味はパンドラの箱だから？

　　　　　

そのミッションはフィッシャー社の
跡取り息子ロバートに「会社解体」の
意志を植え付けること。

サイトー自身も加え、夢を共有する
6人組を結成したコブは、社長の葬儀に
向かうロバートと同じ飛行機に搭乗。

ロバートに一服盛って眠らせた後、
コブたち6人は夢を共有する電子
装置のケーブルに繋がれた状態で
眠りに入る。

　


ここから｟共有された夢｠の中での
激動のドラマが長く展開したあと、
｟ラスト｠部分の現実に入ります。


胸の負傷の跡形もないサイトーを
含め、6人が機内で目覚める。

インセプションの成功を理解した
サイトーは、ただちにどこかへ電話。

約束通り、コブの過去の犯罪歴は
消去され、空港では税関を通過し、
義父に迎えられ、自宅へ帰還。

愛児との再会もはたしてから、例の
コマを所持していることに気づき、
テーブルの上で回してみる。

コマは勢いよく回り続ける。



👉現実のように見えるこのラストシーンも
実は夢…
という解釈も可能ですが、その根拠の
一つとして、コブを出迎える義父の
マイルズ教授(マイケル・ケイン)は
パリ在住のはずで、渡米したという情報は
与えられていないということがあります。

演技中、夢か現実かをはっきりさせたかった
ケインに、ノーラン監督は「ここは現実」
云々の明確な説明を与えていたとのこと
ですが、さてこの場面ではどういう指示を
受けていたのでしょうか？

このことを含め、『インセプション』の
着想や制作をめぐっては、こちらの記事も
ご参照ください。

・インセプション(映画)はパプリカのパクリ？着想源には全く別の小説が？

　 　
　 　 引用元：Facebook

【夢：第一階層】ロサンゼルス銃撃戦

ドリーマー：ユスフ
共有メンバー：コブ、アーサー、
アリアドネ、イームス、ユスフ、
サイトー、ロバート
目的：ロバートの潜在意識内での父の
遺言への意識を強め、父子関係を
再考させる。
👉コブの開発した電子装置により一人の
“ドリーマー”のみる夢をメンバーで共有
することで目的を達成しようとします。

【第二階層】以下も同様に表示していきます。


雨の降るロサンゼルスの路上を
ドリーマーであるユセフの運転する
6人乗りバンに武装集団が襲いかかり、
黒い列車が路面を暴走する。

雨はシャンパンを飲みすぎたユスフの
尿意によるものだが、列車の暴走は
設計者アリアドネの想定外の事態。

武装集団の攻撃は、ターゲットの
ロバートの脳に”エクストラクト”防止の
処置が施されていたことによると
推定される。

　 　

銃撃でサイトーは心臓近くを撃たれ、
瀕死の状態となる。


ついに捕縛・監禁されたロバートは
突き放すような亡父の遺言に失望。


通常は夢の中で死ぬと目覚めるのだが、
6人には強い鎮静剤が使用されている
ため、死ねば「虚無の世界」に転落して
二度と戻れない危険がある。

そこでメンバーは瀕死のサイトーを
連れて「第二階層」に入っていく。


イームズは老社長の片腕ピーターに
なりすまし、ロバートに「父親からの
別の遺言状がある」と告げる。

　 　

アリアドネは自分の設計とコブの
古い記憶が混合していることに気づき、
ミッションの継続の危うさについて
コブに問いかける。

が、再び武装集団の襲来を受け、
メンバーはロバートを連れて
また車に乗り込む。

運転するユセフ以外の者は眠りに
入って「第二階層」へ。

【夢：第二階層】Mr.チャールズ作戦

ドリーマー：アーサー
共有メンバー：コブ、アーサー、
アリアドネ、イームス、サイトー、
ロバート
目的：ロバートに「本当に自分が
やりたいこと」を考え直させる。


ターゲットに「これは夢だ」とあえて
教えて混乱させつつ、夢の「第三階層」
へと連行する「Mr.チャールズ」作戦が
実行される。

コブはロバートに、あなたを”エクスト
ラクター”(抜き取り屋)から守るためと
説明して「第三階層」へ誘導。

【夢：第三階層】亡妻モルの出現

ドリーマー：イームズ
共有メンバー：コブ、アリアドネ、
イームス、サイトー、ロバート
目的：ロバートと父親を和解させる
ことで、自分自身がやりたいことを
突き進む意志を植え付ける。


ロバートが父の偽の遺言を聞く手筈の
山中の病院の付近の雪原で、スキーや
スノーモービルを駆使しての戦闘が
展開される。

院内に突如出現したモルがロバートを
射殺し、ロバートは「虚無の世界」に
落ち込んでしまう。
👉日本語版で「虚無の世界」とされて
いるものの原語は”limbo”(リンボ)。

詳しくは後段「リンボ(煉獄)とは何か」
をご参照ください。


そこでアリアドネはコブに、二人で
「虚無の世界」へさらに潜入して
時間を稼ぐことを提案。

そこには昔コブたちが造った街が
あり、一部は廃墟化している。

コブらが入った建物にはモルがいて、
コブはアリアドネに、生前のモルに
インセプションを試みたことを告げる。


ポスターも豪華・多彩


つねに夢の世界にいて現実の存在を
信じなくなっていたモルに対しての、
「これは現実ではない、現実に戻る
(夢から覚める)には死ぬ必要がある」
という思考の”植え込み”だ。

が、現実に戻ったモルにもなお
インセプションの影響が残り、
「これは現実ではない」との思い込み
から、飛び降り自殺してしまったのだ。

　

【虚無の世界】リンボ：忘却の淵

ドリーマー：コブ
共有メンバー：コブ、アリアドネ、
ロバート


ここに落ちてしまうと、現実に引き
戻されても心だけは虚無(リンボ)の
中に置き去りにされてしまうという。

虚無に落ちたロバートを見つけた
アリアドネは、彼を生き返らせる
ために高層ビルから突き落とす。

　 　

この衝撃でロバートは第三階層に戻って
父の死に際に会い、「私のまねではなく、
自分の道を行け」という虚偽の遺言を
聞き、生きる希望を得る。

アリアドネは、キックのタイミングに
合わせビルから飛び降りる。

コブはサイトーを待ちうけるため、
虚無の世界に残り、二人は再会するが、
サイトーの肉体は極度に老化している。

コブはサイトーに「若い姿でまた
会おう」と言う。

リンボ(煉獄)とは何か

もともとキリスト教で「地獄と天国の
中間にあって、キリスト降誕以前の
善人や洗礼を受けなかった幼児の霊魂が
住む場所」を指す言葉。

比喩的に「忘却のかなた(淵)」のような
意味にも用いられるので、ここに持って
こられたわけですが、何もないわけでは
ない（少なくとも何かが見えている）以上、
「虚無」と呼ぶのは苦しいですよね。

「煉獄」では日本人にピンとこない
というのはわかりますが、それなら
いっそ「三途の川」、あるいは「忘却の
世界」とかでもよかったのでは？

ともかく「煉獄」はダンテの『神曲』を
はじめ、多くの芸術作品に描かれてきた
テーマなので、欧米人にはなじみが
深いのですね。


(画像出典：Wikipedia)


これは『神曲』のダンテが煉獄を指し
示している図ですが、おそらく多くの
欧米人がイメージする「リンボ」は
こんな感じで、やはり階層的になって
いるところがミソなのかもしれません。

まとめ

さて、いかがでしょう。

ここ10年での世界最高傑作とさえ評価
される大ヒット映画『インセプション』。

たいていの映画なら観客が付いて来られ
ないのでは…と遠慮して控えるであろう
錯綜に次ぐ錯綜を、これでもかと
やってのけた、いわば芸術的エンター
テインメントの極致。

その評価を日本でも、また海外で
絶賛が圧倒的多数に上ります。
のその評価を
👉ただ、それがすべてでないことは
上記からもすでにお察しの通りです。

詳しい情報はこちらで。

・インセプション(映画)の評価は？海外でも絶賛？or意味不明？盗用？

　 　 　

否定的意見もあるにしろ、ともかく
歴史に名を刻む記念碑的映画と
なったには違いないでしょう。

『インセプション』が登場する2010年
以前にも、様々な方法で限界に挑む、
野心的な芸術映画は数多く制作されて
きています。

これを機にもそれらの作品にも視野を
拡げてみるのもよろしいんじゃない
でしょうか。
👉芸術的で野心的なすぐれた映画作品を
当ブログでは積極的に紹介しています。

以下にその例を並べますので、
興味を引くものがありましたら、
ぜひご参照くだささい。

・愛を読む人(泣ける映画と原作) ハンナはなぜ怒った？他５つの”なぜ”

　　　　


・シンドラーのリスト 赤い服の女の子の意味は？詳しいあらすじ(原作照合)



　　　　
・ダヴィンチコードのネタバレ【映画と小説の違いも押さえて徹底解説】

・コンテイジョン(映画)のあらすじ｟ネタバレなし｠&｟ありでオチまで｠

・ジョーカー(映画)のあらすじ｟ネタバレなし｠&｟あり｠で詳しく紹介

　　　　　

・時計じかけのオレンジ(小説)のあらすじ 原作は映画とどう違う？

・ヒッチコックの『鳥』を徹底解説！原作はもっと怖い？

・サイコのネタバレ！映画(ヒッチコック)と原作小説で犯人は大違い？
　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　


・シンドラーのリストのあらすじ｟ネタバレなし｠&｟あり｠で詳しく紹介

・薔薇の名前 映画のあらすじ(ネタバレ)//原作との違いはどこに？

・戦場のメリークリスマス｟映画＆原作｠のあらすじと主題//”影”って何？

　 　　 　 　 　　 　　 　 　


・私を離さないで 原作と映画の違いは？トミーの癇癪にも深い意味が…

・シャイニングのネタバレ 原作とキューブリック映画の違いは？

・ローズマリーの赤ちゃんのネタバレ 戦慄の結末は原作でしか読めない！

　　　　　　　　　　　　　


さて、これだけの情報があれば
もうバッチリですよね。

誰かさんにちょいと知ったかぶりを
してやろうかという場合も、
あるいは感想文やレポートを書こうか
という場合も…。


ん？　書けそうなことは浮かんで
きたけど、具体的にどう進めていいか
わからない(￣ヘ￣）？

そういう人は、ぜひこちらを
ご覧くださいね。👇
👉当ブログでは、日本と世界の多様な
文学や映画の作品について
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
こちらのリストからお探しください。

・「あらすじ」記事一覧

・≪感想文の書き方≫具体例一覧

・映画のまとめと解説：最新作から歴史的名作までネタバレありで


ともかく頑張ってやりぬきましょー~~(^O^)/