サクラさん
今度の読書感想文は
又吉直樹さんの芥川賞
受賞作『火花』で
行こうかな…と。

ハンサム 教授
楽しく書けそう
ですね;^^💦

サクラさん
ええ、それで…いきなり
ネタバレですみませんが、
ラストで先輩の神谷が
豊胸手術しちゃいます。

 

ここは笑っていいのか
深刻に悩むべきか…(😾)

ハンサム 教授
う~ん…そこは読者の
自由じゃないかな。

でも中盤での主人公(徳永)
との議論を踏まえれば、
神谷は思想的に一貫して
いるとも言えるのでは?

サクラさん
オヨヨ(🐱) そんな議論
ありましたっけ。

ハンサム 教授
これはもう一回読み
直してもらう必要が
ありそうですね;^^💦


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というわけで、おなじみ”感想文の書き方”
シリーズ第85回は又吉直樹さんの
芥川賞受賞作『火花』(2015)に挑戦です!
   👇 


2017年には菅田将暉・桐谷健太共演で
映画(板尾創路監督)にもなりました。
 👇 



👉まだ読んでなくてストーリーが
わからないという人はこちらで
仕入れておいてくださいね。

ピース又吉 火花のあらすじ:笑いながら泣く芸人哲学の世界

    火花 sparkler-677774__180


さて、これで話の流れはわかった
こととして、さっそく感想文に
取りかかりましょう。

今回は「字数制限2000字」(原稿用紙5枚)
の場合を想定し、サクラさんがハンサム
教授の添削を受けながら完成させた
読書感想文をまずお目にかけます。

なかなか高度な内容になりましたので、
大学生や会社員の「読書レポート」
としても十分に通用しそうですよ!

それでは、まずはじっくりと
お読みください。



読書感想文の例(1200字)


 『火花』はお笑い芸人の又吉直樹さんが
芥川賞を受賞したことで話題になった
小説で、職業としての”笑い”という
主題のほか、師弟関係やライバル関係が
変化していくという人生上の問題を
笑いながら考えさせる、すぐれ作品
だと思う。

「啐啄同機(そったくどうき)」という
四字熟語を授業で習ったばかりだが、
ほとんど瞬間的に成立してしまう
『火花』の師弟関係はまさにそれだ
と思った。

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だたこの師弟は年齢が四歳しか違わず、
師匠になった先輩も芸人として
売れているわけではなかったので、
二人の間には微妙なライバル関係も
発生せざるをえず、そこに”火花”が
散ることにもなるわけだ(“火花”は
ほかのライバルとの間にも散るが)。


 知り合ったばかりの神谷に誘われて
酒を飲むうちに、徳永は神谷の”笑い”に
対する真摯で先端的な姿勢打たれ、
「弟子にして下さい」という言葉が
「心の底から溢(あふ)れ出」る。

ここで「いいよ」と即答し、ただし
「俺の伝記」を書けと条件をつけた
神谷は傲然と輝くようであり、
「神谷」というネーミングも”神”を
意識したものに違いないと思った。


 さて、この師弟を襲う悲劇は、
徳永がやがて売れ始め、サッパリ
売れない神谷を完全に追い抜いて
しまうことである。

その過程での二人の心理的葛藤が、
徳永の視点から(神谷が何を考えて
いるかは十分には見えないまま)、
かなり深く掘り下げた哲学的な
議論や、笑いと涙の交錯する
ような抒情的な場面の連続の
うちに暗示されていく。

爆笑を誘う漫才のような会話に
哲学と抒情を交えていくこれらの
場面は非常に感動的で、芸術的に
高く評価されてよいものと思う。

      

 問題は結末だ。

まったく売れないことに悩んだ挙句か、
自分の体に豊胸手術をしてしまった
神谷に対し、あきれた徳永が教え
諭すという場面である。

これには批判的な意見が多く、芥川賞の
選評にも「小説の終わり方が分から
なかったのではないか」という意見
さえ出されていた。

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 しかしながら、これにも論理的な
一貫性はあると私は思う。

徳永が売れ始めて二人の地位が逆転し
始めたころ、二人の間にはこんな
議論の”火花”も散っていた。

性的な話題や下ネタも避けない過激な
笑いを追求する神谷は、お笑いの世界
では「美しい世界を、鮮やかな世界を
いかに台なしにするかが肝心」で、
「なんでも過度がいい」のだ、
「やり過ぎて大人に怒られな
あかんねん」と力説する。

    

これに食いついた徳永が「大人に
怒られなあかんねん、という表現も、
もはや月並み過ぎな不良ですもんね」
と批判すると、神谷は大いに反発する。

「聞いたことがあるから」といって
「その考え方を平凡なものとして
否定する」姿勢に疑問をぶつけ、
「自分がそういう物差しで生きて
いっていいのかどうかという話や
ねんけどな」とも付け加える。

 このあたりからは、”芸”に自分の
“人生”そのものをぶつけて行こう
とする神谷に対して、そこからは
一歩引いて、より穏やかで知的な
いわば”批評”的な笑いを追求しつつ
ある徳永との乖離が透けて見える。

神谷はそこにいら立つらしく、
「批評をやり始めたら漫才師と
しての能力は絶対に落ちる」と
断言してはばからない。

でも「物事を批評することからは
逃れられへん」と反論する徳永は、
たとえば露骨な性表現には自主規制を
かけるなど、客観的な自己批評を
芸風に取り込むようになっていたが、
それすらも神谷は否定する。

「面白いかどうか以外の尺度に
捉らわれるな」、とらわれた
時点で、すでに「不真面目だ」と。


 「面白いかどうか」だけが尺度
だという過激な”笑いの哲人”は
だから、芸人が身に付けていく
「キャラ」(キャラクター)にも
否定的である。

「自分とはこうあるべきやと思って、
その規範に基づいて生きてる奴」は
「結局は自分のモノマネやって」いる。

笑いはつねに新しいから「面白い」
のであって、自分で自分をまねた
「キャラ」なんか「面白い」はずが
ない。

「だから俺はキャラっていうのに
抵抗があんねん」と。

  

 実は私は、神谷のモデルとされて
いる漫才師の芸を一度テレビで見た
ことがある。

どこが「面白い」のかよくわからず、
ほとんど笑えないうちに終わって
しまったのだが、「キャラ」を作らない
という彼の姿勢は見て取ることが
ような気がする。

積極的に「キャラ」を作った又吉さんに
ここでも敗れているのかな、と少し
悲痛な思いにさえとらわれた。


 さて、小説中盤の二人の論争を
このように押さえて読んだ読者なら、
いささか奇警な結末も、そう受け入れ
にくいものではないと私は思う。

最後に豊胸手術を敢行した神谷は
「面白い」ことのためには「大人に
怒られなあかんねん」という生き様を
貫いたのだし、それを否定した徳永は
この師匠について行けなかった
(というか、ついて行けなかった)
のである。

その決別の構図をくっきりと映し出す
エンディングとして、私は十分に
納得がいった。

結びとして芸術的に華麗さに欠ける
と言われれば、そうかもしれないが。
       (1996字)

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どうです?

さすがによく書けていると
思いませんか?

これをそのままコピペすることは
もちろん厳禁ですが、ところどころ
つまみ食いして、自分らしい文章に
変えて使ってもらうのはかまい
ませんよ~;^^💦

    

もっと短い字数で要求されている
場合は、あらすじを書いているところ
とか、必要なさそうな部分を切り捨てて
スリム化してください。

逆にもっと字数がほしい場合は、
自分の経験や考えをどんどん入れて
膨らましていけばいいわけです。

  

女性の視点から書くなら…

さあ、どう思われましたか?
サクラさん作の上記の例文。

ん? なんだか理屈っぽくて
女性らしくない?


う~ん、そう言われれば
そうかもしれませんね。

もう少し女性らしい視点も
考えてみましょうか。


小説『火花』は男たちの間に散る
“火花”を追ったもので、女性の出番は
少ないのですが、なかで最も重要な
役割を果たしているのが、神谷の
同棲相手だった真樹さんです。

この真樹さんに男ができてしまい、
神谷は部屋から荷物をまとめて持ち出す
ことになって、それを徳永が手伝う
のですが、そのあと歩きながらの
二人の会話を読んでみましょう。

「徳永、なんでお前が泣いてんねん?」
 そう言って、神谷さんは笑った。
僕は未(ま)だ泣いているつもりは
なかった。
僕は真樹さんといる時の神谷さんが
好きだった。
「泣くにしても早くない? 夜、
酒でも呑みながら一番泣き浴びよう
と思ってたのに」
「風呂みたいに言わんといて
下さい」
 つらい。
「お前、かけ泣きもせんと、
いきなり泣き舟に浸かるって
常識ないんか」
「だから、風呂みたいに言わん
といて下さいよ」

    128916

 つらいと感じることは、こんなにも
つらいことだったのだ。
「せめて、○ンコと○ツくらい
泣いてから、泣き舟に入れや」
「文法おかしなってますやん。
○ンコと○ツくらい泣くって、
なんですの」
 つらいという言葉や概念を
理解しても、つらいことの
強度は減らない。
「しゃあないから、泣きタブに
泣きの実入れて入ろ、
今日は泣き色にしよかな」
「もう何のこと言うてるか
わかりませんわ」
 こんな時でも、僕たちは笑わ
なくてはいけないのだろうか。

👉「○ンコと○ツ」は念のため
伏せ字にしましたが、もちろん
お分かりですよね。
男性が隠す部分です。



こんな不思議で切ない会話が
作品中、いくどか出てきます。

これら一つ一つについて、その笑いの
パターンや洒落(地口)の構造などを
細かく分析してみるというのも
有意義な研究になるでしょう。

また神谷はなぜ真樹さんにフラれなければ
ならなかったのかを考えてみるというのも
面白いんじゃないでしょうか。



「出藍の誉れ」の悲痛な変形

あるいは神谷と徳永に戻るとしても、
上記の例文とはすこしずれたところ
から見ていくこともできますね。

たとえば、いったんは劇的に成立した
「師弟関係」がその後、どのように
変質して行くかに目をつけ、徹底的に
そればかり分析する。


かつて圧倒的な師匠として”神”のオーラを
まとっていた神谷が後半では、徳永の
上昇と入れ替わるように、坂道を転げ
落ちるばかりにその威光を弱めます。

しまいには、徳永の髪型や服装を   
露骨に模倣するという、笑っていい
のか、泣いていいのかわからない、
困った展開。

例の「豊胸手術」(叫び)もその流れで
そこまで行ってしまったという
意味合いもあるのですね。



「弟子にして下さい」と今度は神谷が
徳永に言っているのでしょうか。

「師弟関係」は逆転したのだ、と読むな
らば、これもまた「出藍の誉れ」の悲痛な
変形として、感想文のテーマとなるに
十分ではないでしょうか。

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太宰治に照らすと…?

ところで、又吉文学の出発点に太宰治が
あったことは、又吉さん自身も少しも
隠していません。

特に『人間失格』は100回以上読んでいて、
重要な部分にピンクのマーカーで線を引き
続けていたら、今や全ページがほとんど
ピンクでどこが重要かわからなくなった
そうです。

そのことを語っている談話を
お聞きください。




どうしても「人間」とか「女」とかの
カテゴリーで一括りにできない
各個人の個別性(singularity)……

これは『人間失格』にかぎらない
太宰文学全般のまさに核心を突いた
批評ですね。


太宰ファンなら、太宰文学との
関連や比較で又吉論を書くことに
挑戦してみることもできそうですね。

👉太宰文学に関しては当ブログでも
色々と情報提供していますので、
ぜひご参照ください。

人間失格(太宰治)のあらすじ “人間でなくなった”人間って…

人間失格で読書感想文【高校生用2000字の例文】伝えたいことは?

        

女生徒(太宰治)のあらすじと解説 女はいやだ…曲折する意識

斜陽(太宰治)の感想文を簡単に【800字の例文つき】




まとめ

ともかく『火花』は本当に、笑いながら
泣けてくる、読み応え十分の小説ですよ。

人気芸人の作だから、という理由だけで
売れたわけではないことを「芥川賞」が
証明してくれたともいえます。

   139600

読書感想文・読書レポートを書こう
という場合も、これだけ情報があれば
もう十分でしょう。     

ん? 書けそうなことは浮かんで
きたけど、でも具体的にどう進めて
いいかわからない( ̄ヘ ̄)?

それならまず、当シリーズ
取っておきの感想文の書き方
《虎の巻》の適用例をご覧ください。

👉当ブログでは、日本と世界の
種々の文学作品について、
「あらすじ」や「感想文」関連の
お助け記事を量産しています。

参考になるものもあると思いますので、
どうぞこちらのリストからお探しください。

「あらすじ」記事一覧

≪感想文の書き方≫具体例一覧

ともかく頑張ってやりぬきましょ~~(^O^)/

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